自認綾小路が行く実力至上主義(笑)の教室   作:Aoi2873

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好評だったら続けるかも


0.自認綾小路への路

「すいません。これください」

 

店員に渡したのは『ようこそ実力至上主義の教室へ』通称『よう実』の2年生編12.5巻。2年生編の最終巻であり、次巻はいよいよ3年生編となる。噂では()()()()()()()()()()()()()()なんて言われていたりするが、その噂が本当かどうかがこの巻でわかるのではないか、と睨んでいる

 

「ありがとうございましたー」

 

いつも通り無愛想な態度の店員を背に悠々と店から出た俺は、思わずハミングが漏れ出そうになる程興奮していた。いつも理由は同じ。新刊を開封し読み終わるまで毎度のことながらこの浮ついた気持ちを抑えることはできない。よう実という作品に出会って既に5年。出会った当初は中学校に上りたてで制服に着られていた俺も高2になり、もう少しすればキャラクターの年齢を超えてしまうだろう。だとしてもあの頃から現れたワクワク感は今も衰えることを知らず、こうして新刊を手に取ると、止まることなく溢れ出てくる

 

「ただいま」

 

玄関を見てみると、小さい靴が2足とスニーカーが1足。リビングに行ってみると、叔母さんがお母さんと姦しく談笑していた

 

「あら、湊。お帰りー」

「お帰り。ごめんね?リビング取っちゃって」

「別にいいですよ。気にしてないんで」

「それより何買ってきたの?エロ本?バレないように読m…」

「ちげーよ!ただのラノベだよ!」

「顔真っ赤っかwまるでトマトみたいww」

 

そう言いながら俺を揶揄するようにニマニマと笑う我が母。そんな顔が嫌になり、大きな音を鳴らしてリビングの扉を閉め、2階にある自室に向かう

 

「ちょっと姉s…」

 

なんて声が聞こえたが、俺を揶揄う母さんのあのニマニマとした顔が浮かび頭をブンブンと振る。自室でハサミを使い丁寧に傷がつかないように透明なカバーを切り、我慢できず乱雑に破くように剥がす。これで準備は万端…いや、喉が渇いてもあれだし先にお茶を用意しとくか

 

早く読みたい気持ちが抑えられず、急いで階段を降りようとした瞬間。足が何かに取られ、つるりと慣性に従い俺の視界に階段の角がゆっくりと近づいていく。多分…叔母さんの子供が車のおもちゃでも置いたのかな、なんてことをぼんやりと考えながら衝撃に備えた。だが今まさに転倒しているこの体が衝撃に備えられるはずもなく、そのまま俺の体は階段の下まで転がり落ちた

 


 

まるで雷が落ちたみたいな音がした。...まさか、ね。湊は多分ラノベを自分の部屋で読んでいるだろうし、小さいとはいえ2人がそんな大きな物音を立てるはずない...そう分かっているのに、私の体からは冷や汗が止まらなかった

 

「姉さん!」

 

妹の言葉で我に帰る。そうだ。大丈夫。湊は男の子だから今までもこんなことは何度かあった。だから、今回も…大……じょ………

 

 

 

 

 

「キャァァァァァ!!!!!」

 

 

 

 

 

頭から赤黒い血を流し、階段にうつ伏せで倒れる湊

 

 

 

 

 

()()を呆然と見つめる私

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

涙は流れなかった

 


 

転生して早3年。小学校に入学する今日、俺はある決意を胸に秘めていた。自認綾小路である

前世から既にその傾向はあったのだが、前世で『よう実』を知ったのは中学生の頃。綾小路のようになるべく行動しても。運動が苦手なのは変わらず、勉強は得意にはなったがそれでも綾小路レベルとは言い難く、せいぜいが幸村や堀北レベルの秀才止まりであった。だが今世は違う!

 

ゴールデンエイジという言葉は知っているだろうか。簡単に言うとこの時期にどれだけ体を動かしたかで、運動が得意になれるかが決まる一生に一度しかない、言うなれば黄金期だ。そんなゴールデンエイジは主に3〜8歳ごろのプレ・ゴールデンエイジ、9〜12歳ごろのゴールデンエイジ、13〜15歳ごろのポスト・ゴールデンエイジの3つに分かれており、この時期に体を動かし回ることで、運動を得意にすることができるのだ!

 

綾小路を構成する要素は

1.作中1.2を争うほど圧倒的な身体能力とそれに付随する戦闘能力

2.WRで叩き込まれた膨大な知識

3.交渉や策略を立てる優れた頭脳

4.世間一般に広く知られる常識の欠如

5.類稀な吸収力・応用力

 

この中で4番はどうしようもないが、それ以外はWRレベルとはいかなくても、体をいじめ抜くことで十分に達成可能…なはずだ。(5番は転生知識と体を動かしまくって乗り切ろう。うん)まだ高校入学(タイムリミット)まで9年ある。今度こそ俺は完璧な自認綾小路になるんだ!

 

 

 

それから俺は、自分の体をいじめにいじめ抜いた。早朝のランニングに始まり、退屈な授業では頭の中で綾小路として過ごすために己を見つめ直し、昼休みになればすぐに図書室に向かい推理小説やミステリー小説、心理学や交渉術について学び(なぜ小学校にこんな本が置かれているのかは謎である)学校から塾に直行し、前世で苦手だった高校数学や英語を勉強する。また週に2回ある合気道で戦闘能力を高め、現状取得可能な段位である1級を取得したら並行して原作でも綾小路や堀北兄がやっていた空手を始め、空手と合気道を融合させたオリジナルの武術を練り上げていった

 

中学生になる頃には、既に大学レベルの知識を身につけ始め(と言うより大学の範囲がデカすぎてどこから手をつければいいのかわからなかった)心理学や交渉術は同級生に実践することで実感が得られ(最近は帝王学に手を出し始めた)ゴールデンエイジに体を動かしまくったおかげかは分からないが、同級生と比べると抜きん出ている身体能力。空手と合気道を融合させた俺のオリジナル武術は高円寺レベルとは言い切れなくても、伊吹レベルは超えただろうと確信できる

 

転機になったのは、3年の春。そろそろ自認綾小路として行動する高校を決めようと、高校探しを始めた時だった。俺の眼前に映るのは()()()()()()()()()()の文字

 

 

 

スゥー…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここよう実の世界かよ!!!!

 

 

 

 

 

ふぅ。落ち着け。まず前提条件を確認しよう

 

都立高度育成高等学校。入学すれば望みの進学先が100%叶えられると言う謳い文句の学校だが、そもそも特典が最高クラスであるAクラスにしかない。なんなら入学できる人は試験関係なしに事前に決まっているという詐欺師っぷりだ

 

でも…

 

 

そうだとしても…

 

 

 

よう実見てえよぉ

 

"まるでテーマパーク"綾小路。"孤高(笑)の少女"堀北。"Mr.ナルシスト"高円寺。"天使の仮面を被った悪魔"櫛田。"強気な寄生虫"軽井沢。"BR(ブラックルーム)の生き残り"山内。"ドラゴンボーイ"龍園。"ミステリアスな文学少女"椎名。"無口なゴリラ"アルベルト。"慈愛の盗人"一之瀬。"謎の不人気"柴田。"天才幼女"坂柳。"堅物"葛城。"ハイエナ"橋本。"かませよりも酷い何か"戸塚

 

よう実を読んだことがある人の中に高育に入ってみたいと思わない人はいるのだろうか。いや、いない!

 

だが入学基準があまりにも謎すぎる。この入学基準さえ分かってしまえば、それを満たすことなど今の俺からしたら余裕なはずなのに肝心の基準が分からないせいで、入学できるか分からないのだ

 

 

 

何か

 

 

 

あと何か1ピースでこの状況を打破できる気がするのだ

 

 

 

そういえば時系列的には綾小路と同級生のはずだから、もうWRは止まってるのか

 

 

 

そうだ

 

 

 

 

 

坂柳のお父さんを脅せばいいんだ

 

 

 

 

 

幸いなことに電話番号自体は高育のホームページに載っていた。すぐにアポを取り数日後。坂柳のお父さん、坂柳成守さんと電話する

 

「もしもし」

「もしもし。都立高度育成高等学校理事長の坂柳さんで間違いないでしょうか」

「そうだよ。それでどうしたのかな?」

「単刀直入に言います。来年、私を高育に入れてください」

「いきなりだね。でも僕の一存じゃ決められないかな。入学試験に受かってからじゃないと」

 

「入学する生徒は既に決まっていて、入試は関係ないただのパフォーマンスなのに。ですか?」

「…っ。なんのことかな?」

「隠さなくてもいいですよ。進学率100%その実態は最高クラスのAクラスで卒業したものに与えられる言うなれば特権。一月で生徒の力量を試すSシステム。赤点なら即座に退学になる定期考査。まだ必要ですか?」

「…なんで分かったのかな?」

「それは企業秘密としか。ですが、もし私が高育に入れなかった場合。これらの事実が世間にばら撒かれ、最悪の場合は…」

 

ここで沈黙。成守さんは勝手に最悪の結末を想像して戦々恐々とするだろう

 

「何が望みかな?」

「最初に言った通り高育への入学ですよ。ああ、できればDクラスがいいですね。理事長ほどの方であれば追加でもう1人くらいねじ込めるでしょう?()()()()()()()()()()()()()()()

「何故それを!」

「企業秘密ですよ。ではお願いしますね」

 

相手の返答も聞かずにぶつ切り。普通であれば許されることではない。が、今回は話が別だ。成守さんは従うしかない。もし入学させなかったら、高育がどうなるかも自分がどうなるかも分からないのだ。さてDクラスになるために理由作りにでも行きますか

 


 

こうして中学校の卒業式当日。身長は174cmほどに伸び、体重は70kgあたりをうろちょろする細マッチョとなった。勉学も最終的には大学のメジャーな分野の基礎は学び終え、偏差値は75〜7、一部教科で見るなら80を超えた。また、体力テストの平均は9.7~8前後、武術に関しても改良を重ねることで堀北兄となら対等以上に戦えるだろうと言えるレベルまで鍛え上げた

 

大変だったのはDクラスになる理由作りだった。その辺にいる人たちに力を振りかざす気にもなれず結局やったことと言えば、地元の高校生主体のチンピラをボコボコにするくらいだった。学校の先生からは(相手が不良だったこともあり)厳重注意だけで終わり、恐らく高育にも伝わっているだろう。というか伝わってないと困るぞ(主に俺が)

 

 

 

そうして高育の入試も特にハプニングらしきものは起きずに無事終了。後日、入試の結果が送られてきた封筒には

 

入学おめでとうの文字がしっかり刻まれていた

 


 

そうして入学式当日。俺はバスに揺られながら今後の計画を立てていた

俺には2年生編12巻までの知識しかない。その前提を踏まえた上での高育での目標は

 

1.綾小路の1番の親友になる(最優先)

2.綾小路とAクラスで卒業する(できれば)

3.綾小路のサイコパス化を阻止する(1番と同じくらい大事)

4.綾小路を矢面に立たせない(3番のために必須)

5.作中の誰かと付き合う(同じクラスのメンバーが理想。できたらハーレムがいい)

6.坂柳にチェスで勝つ(完全に私情)

7.椎名と友達になる(私情)

8.高円寺に気に入られる(正直無理だと思う)

9.山内を退学させる(退学最速RTAさせてやる)

10.作中の誰かとまぐわう(よう実を読んでる健全な男子諸君なら分かってくれるはず)

 

とりあえず思いつくのはこれくらいだろう。こうしてみると結構私情多いな。ま、エアロ

 

「次は都立高度育成高等学校です」

 

お、着いたっぽい

 

 

 

バスを降りると眼前に広がる、あの日の景色。真っ白の校門から堂々と入り、人ごみをくぐり抜けて自分のクラスを確認する

 

 

 

Aクラスには…ない

 

 

 

Bクラスにも…ない

 

 

 

Cクラスは…ない

 

 

 

Dクラスは…

 

 

 

……

 

 

 

 

………

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

あった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

興奮を抑え、Dクラスに向かう。教室のドアをガラリと開けると、ポツポツと数人が座っているのが分かる。俺の席は主人公席の斜め前。綾小路とはかなり近いから交友関係自体は築きやすいだろうな、なんて思いながら本を読むふりをして待ち続ける

 

 

 

ブワリと身体が怖気立つ。じわりと脂汗が滲み、皮膚に鳥肌が現れる。身体が、心が、魂が訴えている。今すぐにここから逃げろと

 

 

 

カラカラと扉が開く。圧倒的な存在感をその身に纏った

 

 

 

最強の主人公(ラスボス)綾小路 清隆が教室を睥睨した




公式チートに対抗するためには養殖でもチート化しないといけないと思うんですよね
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