続・魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい   作:萩月輝夜

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ジャンクション

「それは…どう言うことですか?」

 

エアリスの言葉にラクスが真剣な表情を浮かべる。伊達や酔狂でその言葉を使うとは思ってもいないが立場としてそれを使うのを良しとはしないからだ。

その視線に気がついて苦笑しすこし考えた後に口を開いた。

 

「一年前…オーブのモルゲンレーテで”バーゼラルド”を強奪しに来た部隊のモビルスーツが”ユニウスセブン”にいた。あの時部隊は私以外全滅した…【B.L.U.E.M.】でも腕利きが勢揃いしていたんだけどね…」

 

そう告げ遠い目をしている。

 

「…あの時、襲ってきた連中の中に”ジン”の改修型を使っているのがいて一機だけ無力化して捕縛したんだけど…自害してね。情報を得ることは出来なかったけどその身元を調べた所元ザフト…メイア・シヴァの部隊にいたコーディネイターだった」

 

「だから、”ザフト”…コーディネイターが今回の事件を引き起こした、と。しかしでもそれと今回の事件…結び付かないのではないのですか…?」

 

そう問いかけられ首を横に振る。亡くなったもの達への想いを馳せていた目蓋を開き深い碧色の瞳が露になり対面に座るラクスを見据える。

 

「”ユニウスセブン”での戦闘中…襲撃してきた”ジン”に乗っていた一人のパイロットが言っていた…」

 

その言葉にラクスは驚きキラは物憂げな表情へと変わった。

 

「『パトリック・ザラ議長閣下とメイア・シヴァ閣下が我らコーディネイターが取るべき道だった』ってね…」

 

「ッそれは…」

 

「本当に参っちゃうよね…アスランがあの場にいなくて聞かせなくて良かった」

 

「エアリスさん…」

 

碧の瞳に力強い意思が宿る。こればかりは譲らない、と言わんばかりに凛々と燃えている。

 

「…主義主張を語るのは良い。それを掲げるのも。だけどさ…」

 

そこで言葉は途切れた。1拍おいてエアリスはこれから起こるだろう”出来事”に対して宣戦布告した。

 

「…あの子《エミリア》が守った未来を土足で踏み荒そう、とするなら私はそいつを許さない。必ず…必ずこの手で代償を支払わせてやる。”ナチュラル”と”コーディネイター”が生きるこの時代に再び混乱をもたらすのなら」

 

「エアリス…」

 

「…貴女だけには戦わせません。僕も…大切な人たちが生きるこの時代を出来るなら平和に暮らしたいと思います。でもそれが主張だけでは出来ないのなら…僕もまた武器を取ります」

 

「…わたくしもです。言葉を尽くします。ですがそれでも尚戦いが起こる、と言うのならばわたくしも武器を取りこの手が汚れることを厭わないですわ」

 

そう告げエアリスの握った拳に手を置く。伝わる暖かさはエアリスの感情の温度を下げていく。

 

「キラくん…ありがとう。ラクスも」

 

「笑っていてください…貴女の笑みはいつまでも見ていたいですから…」

 

そう柔和な笑みを浮かべ言葉を掛けてくるがそれを受け取ったエアリスは少しだけ顔を赤くしていた。

 

「……真面目な話してたら疲れちゃったね。休憩しよう。今は情報待ちで本当に連中が事を起こすのか分からないしね。今はつかの間の平和を楽しもう」

 

そう言って先ほどまでの鋭利な気迫は霧散しいつも通りの雰囲気を纏わせている。

それを見てラクスとキラが笑みを浮かべる。先ほどまでの空気は無くなり穏やかなモノへ変わった…はずだったがラクスの一言で一変する。

 

「…では、エアリスにはこのザフトの制服を着用していただきましょう」

 

「へーザフトの制服……ん?あれ、流れ変わった?え、え…?なんで?」

 

ラクスの手にはいつの間にか拝借したザフト軍の制服…しかもパンツスタイルではなくミニスカートタイプの女性制服(ザフトレッド)だ。

 

困惑するエアリスを他所にラクスは立ち上がり”素晴らしいほどの笑み”を浮かべじりじりと近づいてくる。

 

「エアリス」

 

「わたくし、申し上げましたよね?」

 

「心配を掛けないで下さい、と」

 

「まさか」

 

「大気圏突入する」

 

「なんて…聞いておりませんでしたので」

 

「心配」

 

「したんですよ?」

 

じりじりと圧を掛けてくるラクスに思わず身を引いて「ひっ…」と言葉を漏らしてしまうエアリス。しかし彼女はそれを無視して鼻先が近づくほどの距離にまでいた。

 

「い、いや私もそうなるとは思ってなかったと言うか…でも”セイバー”はスペック上は大気圏突入できるし…」

 

ラクスは悲しそうな表情を浮かべ長い睫が揺れ目元に涙が浮かび掛けている。

 

「あの時、無事に帰って来るって。エアリスから今度は会いに行く、と言って約束を破ったではないですか」

 

「うっ…」

 

泣いている…風を装いそう言われると途端に弱くなり言葉尻が小さくなるのは仕方がないことではあるのだが…不可抗力だ、と叫びたいが事実そうなってしまっているのでエアリスは自分を撃墜したアスランを一瞬だけ恨んだ。

と言うか二年前の事を持ち出すのは条約違反です!と言いたかったがラクスの言葉と表情を見ているとそんな言葉は霧散してしまう。

 

「(アコードの能力発動してないか!?)あ、う…それは…」

 

「と、言うわけなので罰としてエアリスのはザフトの制服を着て貰いますわ♪」

 

「…何故ッ!?」

 

「似合いそうだからですわ」

 

理由もへったくれもないただ本能の赴くままの願望に声を上げる。

 

「理不尽ッ!?え、ちょっと待って私連合の軍人、おk?」

 

「大丈夫です。わたくしの権限で大丈夫。少しおはだけさせて着替えさせるだけですから…」

 

制服を片手に手をワキワキさせているラクスの姿を見たエアリスは後ろへ後ずさるがすぐ壁に当たり逃げ場がないことを理解した。

 

「ちょっ…!?なんか手付きがイヤらしいんだけど!?あ、キラくん見てないでラクス止めてよっ!」

 

「あ、いや…僕もエアリスさんのザフト制服姿みたいなー…って」

 

頬をポリポリ、と掻きながら顔を見ないで告げるキラ。実際にエアリスがザフトの制服を着用しているのは見たい。

咄嗟にエアリスが反応する。

 

「キラくんの裏切り者ぉー!あ、ちょっ、ラクスやめてっ。ここでスーツを脱がそうとしないでっ」

 

「よいではないですか。もう、既にお互いの素肌を見ているのですから。ささ、移動してお着替えいたしましょうね♪」

 

「あ、いやそれとこれとは別っ…!あ、力強いっ!!」

 

ついぞラクスに手を掴まれ引っ張られる勢いでレクリエーションルームから更衣室へ連れ込まれる。

その状態をキラは後ろから見ている状態だ。

退路は既に無し。援軍も期待できない孤軍奮闘状態であり舞い降りる剣も蒼天の剣もなく一発逆転は期待できずハレンチな展開へ進展した。

 

「え、ちょっまっ…!………い、やぁ~~~~~~~~ッ!!」

 

連れ込まれた女性更衣室の内部にエアリスの叫びが木霊して外にいるキラは苦笑していた。

一方で”お着替え”という名目でエアリスは更衣室で着替えするときラクスとここでは憚られるめちゃくちゃ百合した。いやされた。(健全なスキンシップです)

 

◆ ◆ ◆

 

艦橋から見える空は鉛色と青空が混在した混沌とした空模様となっているのはそれは人の心がそう思っているからだろうか。

 

「…本部との連絡は?」

 

<…ダメだ。長距離通信が行えない。恐らくは落下の衝撃で舞い上がった粉塵の影響だろう>

 

「そう…引き続き”アーリントン基地”へ通信を。それにアズラエル総裁へもね」

 

<了解した>

 

”ミネルバ”の艦橋にて通信機器を借り受け共に大気圏と突破した”ドミニオン”のナタルへ通信をしていた。

”ユニウスセブン”が落下した影響を知りその事でエアリスはアズラエル並びに本部との連絡を取ろうとしたのだがそれも叶わないらしい。

距離の近いオーブ本島と通信が出来た”スサノウ”からの情報によるとオーブも少ない被害を受けたが首都ヤラフェスには無事、との報告を受けていた。

それは”ミネルバ”も同じで地上本部である”カーペンタリア”と”ジブラルタル”との連絡が取れず今後どうするか迷っているとカガリが声をあげた。

 

<一先ずは”オーブ”に寄港して貰う他無い、な…>

 

通信に参加していたカガリが提案したのは”ユニウスセブン”破砕の労を労う為でもあり着陸地点が”オーブ”に近いと言うこともあった。

 

<本音を言えば…”オーブ”の状態を知りたいというのもあるのだがな…>

 

苦々しい表情を浮かべるカガリを見てタリアも少し同情した。国家の政に関わる、と言ってもまだ若いティーンだ。その辺りの感情を隠すのはまだまだ幼い…とはいえ国を…大切な人を思う気持ちは分かるからだ。

 

「では…艦のチェックが終わり次第。進路を”オーブ”へ向かわせていただきますが…」

 

<ああ。こんなときにすまないな>

 

そう言って苦々しく笑うカガリ。

 

<到着次第貴君らの勇気と功績に感謝し”ミネルバ”及び”ドミニオン”へ出来るだけの便宜を図らせて貰う。これは首席補佐官カガリ・ユラ・アスハの名に誓おう>

 

「お心遣い、感謝いたしますわ。首席補佐官殿」

 

そう言って通信をアウトするカガリを見送り暗くなった画面から視線をはずすタリアはエアリスに視線を向ける。

それと同時にエアリスもナタルとの通信が終わったようでバートへ「ありがとう」と告げ艦橋から立ち去ろうとするがタリアが声を掛けた。

 

「それにしても…本当に凄まじいものでしたわ」

 

「?何がですか?」

 

こうしてみると普通の少女だな、とタリアは彼女が”彗星の魔女”と恐れられているのか疑問が沸いた。

しかし、”アーモリーワン”と”ユニウスセブン”の戦闘を目の当たりにしたらそうも言えなくなってしまうだろう。

エアリス・A・レインズブーケ…その情報は所属している大西洋連邦によって情報統制されておりザフトで知っているのは前大戦時猛威を振るった”ダガー”を駆って”バルトフェルト隊””モラシム隊”そして最強を誇っていた”ザラ隊”達を壊滅に追い込む。しかしアスラン・ザラの駆る”イージス”討たれたモノの奇跡の復活を果たしに後期には【B.L.E.U.M.】に所属、”ディスペアー”と呼ばれる前大戦最強の機体を駆って核の驚異から四隻同盟の機体と共に”プラント”と地球を守った…と言われているが連合の別部隊にもエアリス・レインズブーケがいてそちらは”ザフト”に多大なダメージを与えていた…と噂では同じ名前で同じ機体に乗っていた双子か、それとも完全な別人で同じ二つ名を与えられているのでは?と噂されていた。

 

タリアは目の前の少女が”ザフト”に多大な被害を与えた最強パイロットであるとは俄に信じがたかった。

 

「本当に貴方が”彗星の魔女”…だなんて未だに信じられないもの」

 

「…よく言われます。あ、」

 

「どうしたの?」

 

思い出したかのような声を上げ連合式の敬礼をして見せた。

 

「貴軍の機体借り受けを了承いただいた事感謝いたします。この礼は必ずや。…それに”セイバー”だったから大気圏を突入できました。ありがとうございました」

 

そう告げ微笑むエアリスを見てタリアも自然と笑みが溢れる。どちらかと言えば此方が感謝を述べる立場だ。

 

「いいえ。貴女のお陰で機体と貴重なパイロットを失わずに済んだわ。此方こそ感謝いたしますわ」

 

敬礼し艦橋をエアリスが退出した後クルーの誰かが呟いたのが伝播し皆が疑問に思っていた。

 

「どうして…彼女は我が軍の制服を着用していたのかしら…」

 

◆ ◆ ◆

 

「しかし…オーブに寄ることになるなんて思いませんでしたよ…」

 

「まぁね。でも丁度良いんじゃない?シン、家族に会うのなんて数ヵ月ぶりでしょう?」

 

「ええ。…でもこんな状態で戻って良いものなんでしょうか…」

 

”ミネルバ”の艦橋から出てレクリエーションルームから出てきたシンと共に自分達に宛がわれる部屋へ戻ろうとしている道中にふとシンがそんなことを呟くのを聞いたエアリスは困ったような表情を浮かべた。

 

「なるように、なるしかないわ…どのみちこの後の事を考えれば…家族と会えなくなるかもしれない」

 

その声色と表情にシンは息を飲む。その火蓋が切られたとき世界はまた”混迷”へ逆戻りとなる。

 

「っ…それって…」

 

「…まだ可能性よ。大事になる、何て決まった訳じゃない。今はどんと構えておきなさい」

 

そのシンの不安を掻き消すように笑って見せるその表情にシンは無意識に励まされていた。

この人がそう言うのならば大丈夫…とそうある意味で刷り込みがされていた。

 

「…はいっ。それはそうと…」

 

「ん?」

 

言い淀むシンへ顔を向けると言うか言う前か迷って意を決して口を開いた。

 

「……なんで、ザフトの制服着てるんですか?」

 

「………………………シン、世の中にはね?逆らえない存在ってのがあるのよ…」

 

『艦内にいる間はその制服を着用していてくださいね?』

 

「あはは…」と覇気の無い笑いと共にエアリスの瞳が一瞬だがハイライトを失って遠い所を見ていた。

 

「ああ…なるほど…大変っすね…」

 

エアリスのその一言に「あっ…」となったシンはこれ以上何も言わなかったのはそれを”命じた”人物に心当たりが有りすぎるからであり恐らく自分も逆らえないだろうと思ったからだ。

気の毒、とは思いつつ敬愛する上官の身姿を脳内フォルダに納めつつ手元に記憶媒体が無いことを本気で悔やんだ。

部屋へ戻るその最中、一発の銃声が木霊する。

 

「っ!?」

 

シンは思わず身構えたが隣にいる敬愛する上官が驚きもしてないのを見て状況と場所を判断しこれが訓練規定だと言うことを思い出して息を吐いたと同時にエアリスからチラ見され恥ずかしい想いをしていた。

開けっぱなしの外へ続く扉の向こうを確認すると複数の男女がデッキに射撃的と銃器整備用の移動机を持ち込み射撃訓練に勤しんでいたのだ。その光景にシンは。

 

(やっぱコーディネイターでも訓練するんだな…って当たり前か)

 

と至極当たり前の事を内心で想いながらエアリスと共にそちらへ足を向ける。

同じくエアリスも思っていたが別の事を考えていた。

 

「(そう言えばシンって誰とくっつくんだろう…ルナマリア?それとも”インパルス”のパイロット?…でも所属が違うからなぁ…そう簡単に会えないし、もしかすると敵対する可能性もあるけど…やっぱここはシンルナでしょ(健○&真○)はやっぱり鉄板だし!)シン、あの赤い髪の子の射撃を見てなさい」

 

「え?あ、はい…(いきなりなんだ…?…あれ、あの髪の赤い娘…手首が…?)」

 

デッキへ出るとそこにはハイネ、レイ、ルナマリア、オペレーターのメイリン。そしてあのクリスが射撃訓練に勤しんでおりルナマリアの方が先に弾倉1カートリッジ分撃ち終え結果を確認し舌打ちをしようと次のマガジンを交換しようとした。ハイネも同じく一弾倉を交換しようとするとその際に後ろに何故か”ザフトレッド”の制服を着用しているエアリスそして【B.L.U.E.M.】の制服を着用しているシン、そしてオーブの制服を着用した男がラクスの側にいるのを見て随員は何をしてるんだ…と思ったがラクス本人がある意味で特権だったことを思いだし突っ込むのをやめた。

 

「よぉ!エアリス。まさか大気圏突入しちまうとは思わなくてビックリしたが…既に経験済みだったり?」

 

手を上げるハイネ。それに気がついたエアリスが返答する。

 

「ええ。一度だけね。でも”セイバー”の性能があってこそよ…やっぱり慣れるものじゃないけど…」

 

「俺も大気圏を耐火カプセルに入ってやったことはあるが。俺も勘弁はして欲しいぜ。ガッツあるぜお前さん…それよりどうしてお前さんがその制服を?」

 

視線の先にある服装を見てハイネが尤もな疑問をぶつけるとエアリスは苦笑する。

 

「…まぁ、察してちょうだい…」

 

隣の人物を一瞥したのを確認しハイネは”プラント”の象徴の姿を思い浮かべあぁ、と少しだけ理想像から掛け離れていく音がした。

 

「……為る程、大変なんだな……大佐殿も」

 

「…なんか、ごめんね」

 

困ったような表情を浮かべるエアリスを見てハイネは雲の上の人物…の人物が自分が想像している人物には弱い、と言うことを知り苦笑する。

ハイネは目の前の人物の服装を見る。

 

「………」

 

ザフトレッドの制服を身に纏いルナマリアと同じスカートを着用し丁寧にオーバーソックスとブーツを着用しておりスタイルには自信があったのだが目の前のナチュラルの女性は…控えめに言って軍艦に乗っている男性兵士達からしてみれば目の毒だな、と思うほどには”暴力的”な体つきをしている。

それに自分より年上なのだろうがそれでも身長は高いが年齢に見合わぬ顔つきは幼く愛らしい童顔だった。

ともかくとして視線が制服をはち切れんばかりの”一部”に吸い寄せられてしまっていた。

が、その視線に気がついたのか目の前のエアリスを隠すように男が前に出るのを確認し視線をずらした

 

「ところでお前さんはオーブの?」

 

そう問われ少年はオーブ式の敬礼をして見せる。

 

「申し遅れました。オーブ宇宙軍第一艦隊所属のキラ・ヤマトです。こちらへ着艦させていただきました」

 

「オーブの…ああ、さっきのモビルスーツに乗っていたパイロットがあんただったとは思わなかった」

 

「ええ。まさかあんなことになるとは思いませんでしたが…最悪の事態は避けられたようで何よりです」

 

「全くだ…(しかし、本当に目のやり場に困るな…)」

 

「ところでヴェステンフルス隊長?なにかエアリスに言い掛けておられましたが…なにか?」

 

考え事をしているとラクス…顔は笑っているの目が笑っていないのを見てハッとするハイネは直ぐ様返答する。

 

「ああ。いえ…よく似合っていると思います。ですが、もう少し上のサイズを着た方がいいと思いまして…」

 

セクハラギリギリの言葉を掛けるがエアリスは苦笑しながら告げた。

 

「これ…一番上のサイズがこれしかなかったんですよ。正直胸がキツくて…」

 

そう言って制服の襟元を指で掴む。張り付いた制服がそのボディラインを際立たせた。

それよりもその言葉を聞いた女性陣。

 

「!?」(嘘だろ…アタシのサイズで少しダブついているぐらいなのに…それでも足りない、だとぉ…!?)

「!?」(嘘でしょ…?クリスと同じサイズ着てるのに…!?私が…ま、負けた…!?)

「!?」(クリスより大きい…?嘘でしょ…?これが”彗星の魔女”…!)

 

不承不承、と言った感じに告げるエアリスに”ミネルバ”三人娘は驚愕と畏怖で見ていた。

ハイネはこれ以上のコメントは不味いと話題を変更した。

 

「あ、ああ、いえ…それよりどうしてここに?」

 

「銃声が聞こえたから何をしてるのかな、って。そしたらみんなで訓練規定してたからつい」

 

「為る程…折角の地上です。場所が変われば部下の射撃訓練もなにか変わるかな、と思ってな。まぁ結果はご覧の通り」

 

「…為る程」

 

そう言ってエアリスはルナマリアのターゲットの結果を見る…そこにはお世辞にも”上手い”とは言えずに苦笑する。

 

「たはは…あ」

 

ルナマリアも誤魔化すように苦笑いし標的へ向き直ろうとするそこで思い止まって振り向いた。

 

「あ、一緒におやりになります?」

 

「え?」

 

唐突な提案に面食らうエアリスの表情を見てルナマリアは以前の喧嘩腰はなくなり柔らかな愛想を振り撒き、ニッと笑って見せた。

 

「モビルスーツ戦もあれだけ強いんですもの。射撃もお得意なんでしょう?」

 

邪気の無い…まぁすこし試すような微笑みにエアリスは少し困ったような表情を浮かべ手渡されたザフト軍の制式拳銃を受けとる…のはシンだった。

 

「うーん…いまいちなんだよね私…あ、私よりシンの方が射撃上手だよ。なんたって私の一番弟子だからね。いいかな?」

 

「え?…ええ。構いませんけど…」

 

ルナマリアはシンへ向かって貴方が?と言いたげだったが拳銃を受けとり弾倉を見てスライドを引いてチャンバーを

確認する。

 

「(ザフトの制式拳銃はこうなってるんだな…威力重視の大口径…か)…それじゃ」

 

海の方に設置された標的に向かい銃を構えスライド上部のサイトを確認しトリガーに指をおいて引き金を引くと的はランダム出現パターンだったがその全てが胴体心臓部、頭部に吸い込まれていく。

 

「うわっすっご!」

 

少女達が驚きの声を上げる。

 

「同じ銃撃ってるのになんで?」

 

心底不思議そうにシンの握る拳銃をみて裏切り者、とでも言いたそうな雰囲気を纏っておりシンは苦笑しながらルナマリアへ撃ちきった拳銃を手渡した。

 

「銃のせいじゃないよ。君がトリガーを引くときに手首を捻る癖があるんだ。だから狙いは正確なのに着弾が散っちゃうんだよ」

 

「え、どうして分かったの!?」

 

「さっきの射撃を見てたら分かるよ。俺、目はいいんだ」

 

「へぇ…ねぇねぇ!良かったら射撃見てくれない?」

 

「え?」

 

「わ、私も」

 

「あーお前ら!もっと静かに訓練しろ!」

 

わちゃわちゃ、と訓練する光景は射撃訓練でなければ部活動のように平和な光景だ。

シンはルナマリアとメイリンに迫られ顔を赤くしながら懇切丁寧に教えている光景を微笑ましく見ている最中ふと気配を感じてそちらへ意識を向けるとクリスが近くにいることに気が付くが此方の視線に反応し再び射撃訓練に戻る。

 

頬を撫でる風が彼らの髪をたなびかせる。

まるで良くないものを運んでくるような…そんな不吉な重さを感じさせた海風であった。

 

◆ ◆ ◆

 

オーブの領海に突入し暫くして群島が視界に入った。

暫くして進む傷ついた三隻はオーブポートコントロールの指示に従いその艦艇を湾口ドックへ入港させ降下用タラップが接続すると”スサノウ”のハッチが解放されるとカガリとアスランが姿を現し一息つきたいところだったが首長補佐官として真面目な表情を取り繕い降りていくのを確認し”ミネルバ”と”ドミニオン”から主要メンバーとエアリス達が降りてオーブの地に足をつけると向こう側から紫衣の一団から一人の男が飛び出してきた。

 

「カガリ!」

 

「ユウナ?」

 

タラップから降りたカガリを認めたユウナが抱き着こうとしたのを阻止するものがいた。

 

「良く無事で…ぐぉ!?」

 

「このような人目のつく場所で場をお弁えください。ユウナ様。…それと僕の妹に何をするつもりだったんですか?」

 

抱き着こうとしたユウナの前に割って入りその手首を掴み阻止したのはキラだった。

 

「っ誰が妹だ。私が姉だと言っているだろう…」

 

それを聞いたアスランはまだ言っているのか…とちょっとだけ呆れていたが何時も通りのやり取りだった。

その言葉使いは丁寧なモノだったが明らかな嫌悪感が浮かんでいるのをエアリスは感じていた。

 

「や、ヤマト准将…き、君もいたのか…」

 

「はい」

 

パッと手を離しカガリを守るようにアスランと共にユウナの接近を拒むように立ちふさがる。ユウナもキラの存在を確認しばつが悪い雰囲気を出していた。

 

それを尻目にその紫衣の集団から一人の男性が歩みよりカガリに近づく男性を確認したアスランは道を譲る。

 

「お父様…いや、ウズミ前代表」

 

「よくぞ戻ったカガリ…いやアスハ首長補佐官。無事な姿を確認できて漸く肩の荷が降りた、というものだ。怪我はないか?」

 

市政の者として接しようとしたがその言葉には実子に対しての気遣いが溢れており隠せていない。それを聞いたカガリは苦笑しつつも嬉しそうに返答する。

 

「ええ。問題ありません…そちらこそ身体のお加減は如何ですか?前代表」

 

「ああ。問題ない。早速で悪いが被害情報等詳しい話を首長が共有したい、と言っておる。迎えを用意させている…疲れているところ悪いが仕事だ」

 

「わかっております…それと彼らへ補給と整備を…」

 

「うむ。…ウナト、あとは任せるぞ」

 

「心得ました」

 

そう告げアスランとカガリと共にウズミは行政府へ向かう黒塗りの高級車へ向かう。

その際にタリア達へ目礼をしてその場を離れた。

 

「ザフト軍”ミネルバ”艦長タリア・グラディスです」

 

「同じく副長のアーサー・トラインであります」

 

「【B.L.E.U.M.】所属”ドミニオン”艦長ナタル・バジルールです」

 

「同じく同艦所属エアリス・A・レインズブーケです」

 

「オーブ連合首長国前宰相のウナト・エマ・セイランだ。この度は我が国の首長補佐官の帰国に尽力頂き感謝する。」

 

タリア達の目の前に現れたのはオレンジ色のメガネを掛けた禿頭の男が一歩前に歩み出る。

一方でキラに手首を掴まれていたユウナもおずおずとその男の隣にたった。

それを見たタリアは目の前のいかにも”政治家”らしい男の様相を見届けながら腹に一言隠しながら続けた。

 

「いえ、不足の事態とは言え貴国の首長補佐官へ多大なご迷惑をお掛けしたことを大変遺憾に思っております。また…この度の災害につきましても…お悔やみ申し上げます」

 

「お気遣い痛み入る…。ともあれゆっくりと休まれよ。事情は承知しておるクルーの方々もさぞお疲れであろう」

 

タリアとナタルは用心深く頷く。

 

「…ありがとうございます」

 

「…感謝いたします」

 

そう告げた後ウナト達オーブ高官達はドックから立ち去りモルゲンレーテから呼ばれた整備士達が忙しなく動き回る

のを確認しタリアはナタルへ向かい互いに労いの言葉を掛けた。

 

「そろそろ向こうに戻らなきゃ。此方に長居するとナタルに叱られる」

 

「…仕方がありませんわ」

 

「名残惜しいですけど…まだ修理まで時間があるのとカガリが融通を効かせて上陸許可を出してくれるから」

 

残念そうな声を上げるラクスに言い聞かせるように言うのはキラでありオーブ上陸の許可は既にカガリが許可を取っているがポーズが必要なのだろう。

少々不服そうな声を出していたラクスだったが二人へ近づき抱擁を交わす。わかれるときのお馴染みの行為だった。

オーブでの時間はある、と言い聞かせ三人はわかれた。

 

「…クリスちゃん?」

 

”ミネルバ”の格納庫へ向かう最中壁にもたれ掛かるクリスが此方に気が付き顔を向ける。なにかを聞きたい、という表情を浮かべていた。

 

「…お前、連合に戻るのか?」

 

「連合、というか【B.L.E.U.M.】に戻るんだけどね…なんで?」

 

「別に…いや、なんでもねぇ…ただアタシの前に敵で出てきたってんなら容赦無く潰す、ってだけ言いに来た」

 

「お前っ…!」

 

何て言い草だ!と頭に血が上りカッとなるシンを手で制止するエアリスはフッと柔らかな笑みを向ける。

 

「そうね…お互い敵にならないことを祈りましょう。それじゃあね。クリスちゃん…シン、行くわよ」

 

そう告げ踵を返しシンが何かを言いたそうにしていたが先に向かう上官について行く。

 

「ちっ…此方の台詞だっつーの…」

 

その後ろ姿を見てクリスは何か言いたげだったが踵を返して自室へ戻った。

 

◆ ◆ ◆

 

”ドミニオン”に”バーゼラルド”で帰投すると先に戻っていたナタルから呼び出しを貰いロッカールームに戻り制服に着替えた。

 

「戻ったか」

 

「ええ。迷惑を掛けたわ」

 

「総裁より通信が来ている。出るぞ」

 

『…漸く繋がりましたか。ま、心配はしていませんでしたがね』

 

艦橋に着くと同時に【B.L.E.U.M.】本拠地からアズラエルの通信が入る。スーツの上着を脱ぎ青いシャツにネクタイを絞めている。

 

「連絡が遅れてすみませんアズラエル。少々面倒なことに巻き込まれていたもので…」

 

『相も変わらず…貴女は面倒ごとに巻き込まれますねぇ』

 

「…私は悪くありません。巻き込んできている連中が悪いです」

 

開き直るエアリスを見てアズラエルは苦笑するが直ぐ様表情を真面目なものに改めた。

 

『さて…早速ですが少々…いや面倒なことになりそうです。これを』

 

そう告げアズラエルはモニターを操作しその光景を映し出す。

 

「これは…!」

 

(くそっ…結局こうなるのか…!)

 

そこに映し出された光景を見てエアリスは拳を握った。

 

◆ ◆ ◆

 

<砕かれはしたが…地球への被害は大きいな>

 

テレビには地球各地への被害が映し出されていた。”ユニウスセブン”の残骸は砕かれ地球突入の際に大半は燃え尽きた…がに見えたがその一部は燃え尽きず地球へ降り注ぎ少なくないダメージを与えた。

テレビに映し出された場面では落下片が墜落しクレーターを作り周辺の地域にはなにも残らず瓦礫の山と化して沿岸部の被害は大きく市街は高波に飲み込まれ住宅や商業施設が水没または流されてしまっている光景を命かながら逃げ出し途方にくれている人々が映し出されている。生き延びた人は幸福、と言ってしまえばそこまでだが逃げ遅れ運悪く落下した破片がシェルターに直撃し亡くなった人々も多い。それでも生き延びただけ儲けもの…と言うには簡単ではなく復興までには時間がかかるのは目に見えている。

原作であったような未曾有の被害は食い止められた…とはいえそれでも歴史的な建造物は一部が破壊され生活のインフラを破壊するほどのダメージを負っているのは事実であった。

 

しかしそんな状況を憂いる男達の身姿は小綺麗でありかつ空調設備の整ったビルや一戸建ての豪邸にその居を構えておりそんな状況下ですら満ち足りた…危機感など無いようにも思えた。

 

<ああ。中でも一番の被害はこれじゃろうて…>

 

中でも一番の被害を受けた場所がテレビに抜かれる。

北米…大西洋連邦の穀倉地帯であるとある州…そこに砕かれた破片が降り注ぎ大きなクレーターを作り収穫間際であった穀物が全滅し農夫達がこれからどうしたら良いか…と立ち行かなくなっている光景が映し出されていた。

 

「確かに…地球にすむ我々にとっては無視できないほどのダメージ、ですな」

 

沢山のモニターに囲まれた一室…シェルターに避難していた男はモニターの前に立って年代物のワインの栓を明け注ぎ入れグラスを揺らす。その光景は到底この傷跡を悼むようなモノではなく寧ろ喜びさえ感じさせていた。

 

<で、どうするジブリール。既にデュランダルとマクシミリアンは救助の手を差し伸べている>

 

両者の初動対応は適切だ、と言えるだろう。

”ユニウスセブン”落下の際に素早く世界各国へ警告を出して曲がりなりにも破砕作業を成功させている。

その後被害が発生した後は声明を発表し既に両軍から救援部隊が各地基地から発進し既に救援作業を開始している光景が映し出される。

デュランダルは”プラント”の国営メディアに出演し今も多くの市民に語り掛けていた。

そして同時にマクシミリアンも会見を開き地球の市民へ語り掛けている。

 

<我々の受けた傷は深い、そして悲しみも。だが、それは地球に住まう”ナチュラル”も”コーディネイター”も同じだ。我々は救援の手を惜しまない>

 

この声明にモニターに映る面々は面白くない、と思うのは自分達の属する大西洋連邦のトップが”プラント”現政権と親しくそれに呼応するようにデュランダルの動きが迅速であり窮地に立たされた人々からしてみれば”プラント”側に傾いてしまえば反”プラント”…いやコーディネイターへの感情を煽り開戦へ持ち込もうとするシナリオは空振りに終わるがジブリールは悠然としてモニターを操作した。

 

「もうお手元に届いているかもしれませんが…”ファントムペイン”が面白いものを送ってきてくれましてね…」

 

”ファントムペイン”…それは地球連合軍に属しながらその命令系統に属さずジブリール達の命令を受け動く遊撃部隊だ。その実情を知るものは少ない。

そもそも”ファントムペイン”が立ち上がったのは前大戦時に()()()()()()特務部隊【ネクロシス】が母体となっているが…軍内部でも少数となった隠れブルーコスモスの将校しかその実態を知らない。そしてアズラエルの【B.L.E.U.M.】に対抗するために作られた…とも噂されていたが…真相は闇のなかだ。

 

ジブリールから転送された映像を目にして唸った。

 

<むっ…これは…>

 

<なるほど…そう言う算段かジブリール…>

 

彼らの元には、現在ジブリールが見ているものと同じ画素数の映像が転送されている。それはかなり鮮明で()()()()()()()()()()()()()()()と錯覚を覚えるほどだ。

そこに映るはザフトの”ジン”がそこかしこに映りそれとは別に”ユニウスセブン”の各所に設備やそれに備え付けられるワイヤーに細工するのが激写されていた。

 

<フレアモーター!?>

 

<やれやれ…とんでもない事じゃな>

 

「ええ。とてつもない最高のカードです。それにこれもね…」

 

ジブリールがそう告げると映像が切り替わる。デュランダルの会見をジャックする形だ。

そこは何処かの会見場のようで中心に立つ人物はザフトの指揮官服を着用した四十代程の男が声明を発表する。

 

<今回の”ユニウスセブン”落下は我々が画策したものだ。本懐を遂げることは出来なかったが…偽りの安寧を過ごす裏切り者達と地上に住まう悪魔…”ナチュラル”達へ鉄槌を下すことに成功した!だがこれは序章に過ぎない…この世界よりナチュラルを葬るまで我々の聖戦は終わらぬと知るが良い…そして、未だに囚われている我らが同胞と指導者であるパトリック・ザラ議長閣下並びにメイア・シヴァ閣下の意思を継ぐ我らこそが真なるザフトでありコーディネイター…我々の名前は…>

 

「これが許せる人々はいるでしょうか?いないでしょう…落下事件にこの出来事…きっと外敵を排除しようとするそれは強い”絆”となる…コーディネイターと懇ろになるマクシミリアンを排除し扱いやすい男を首に据えれば我々は今度こそ返り咲く。”コーディネイター(野蛮な奴ら)”の死を、と言う言葉と共に。そして我ら”ブルーコスモス”の時代が再び始まります。」

 

モニターの中にいる面々はそれぞれが感情を露にする。愉快そうに、不愉快そうに、そして面白いものが始まると笑みを溢すもの達がジブリールを見つめた。

小火は広がりそれは大きな”火事”となって煽動するだろう。

最後にジブリールは笑みを浮かべ手にしたワイングラスを掲げ自分の言葉に酔うようにうっとりとしていた。

 

「”青き清浄なる世界のために”とね…」

 

同時に画面に映る男が大々的に声高に、その存在を明らかとしたのだった。

 

<”ネオ・ザフト”…!我々はこれより真なるコーディネイター自由を獲得する為に地球連合へ宣戦を布告する!>

 

ジブリール達の手元には()()()()()()データがあった。

今回の”ユニウスセブン落下”の主犯達のデータ、それに機体データ、製造場所など…全てが”プラント”の人員、施設で作られていたことを示していたのだ。

 

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