続・魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい   作:萩月輝夜

5 / 11
お気に入りとUAがすごいことに…有り難うございます。
基本的に原作に沿った流れになりますが後々変更有りです。

さて、ポカやらかしたシンちゃん。一体どうなるか…


予兆の砲火

"アーモリーワン"から出港した”ミネルバ”はその格納された翼を広げた。

就航するもいなやタリアは艦橋で声をあげ指示を出す。のんびりと処女航海を味わっている暇などないからだ。

 

「索敵急いで!”インパルス”セイバー””ザク”の位置は!」

 

索敵担当のクルーが素早く処理し声をあげる。

 

「インディゴ五三マーク二二にブラボーに不明艦”一”!距離一五○!」

 

「其が母艦か…」

 

背後の座席デュランダルが呟きを漏らす。一方タリアは報告を受け指示を飛ばした。

 

「諸元をデータベースに登録。以後対象を”ボギーワン”とする!」

 

正体不明艦を”ボギーワン”としたのは名前がないとやりづらい、と言うのもあるからだ。其にしてもあの三機は何処へいるのだろうか、と考えながらそう告げた直後にモビルスーツ管制官のメイリンが上ずった声で報告する。

 

「ど、同一五七マーク八○アルファに”インパルス””セイバー””ザク”が交戦中の模様!」

 

やはりか、とタリアは懸念が当たったことに内心で苦い顔を浮かべ素早く訊いた。

 

「呼び戻せる?」

 

「ダメです!電波障害激しく通信不能です!」

 

「敵の数は?」

 

奪われたあの三機だろうか?と思っているとメイリンが思わぬ答えを返した。

 

「一機です。でも…これは?」

 

「どうしたの?」

 

「ライブラリ照合…ありませんがモビルスーツのようです」

 

その返答に例の三機は既に強奪され母艦に収納されたのだ、と言うことで取り返せる可能性が一段と低くなった。

その一機も母艦から出撃した殿の機体だろうと推測できる。

今対峙しているのは我が軍の最新鋭の機体達だ。そう簡単に遅れを取るはずがない、と思っていたが其は艦橋に映し出されるモニターで覆された。

 

戦闘宙域ではビームが格子のように交差し”ザクファントム”は追尾しその”ザクファントム”は錐揉み状に回避し急加速、急旋回を繰り返していた。”インパルス”は盾を掲げ注がれるビームの雨を防ぐが脚部をかする結果となっていた。一方で”セイバー”は四方から放たれるビームを避けながら変形を繰り返し手にしたライフルとサーベルで攻撃してくるモビルスーツへ向かい攻撃を受けている”インパルス”を守る余力すら感じさせていた。

 

「な、なんだあの動き…!?」

 

その光景を見て副長のアーサーが戸惑った声を挙げていた。

其ほどにビームの数は多いと言うのに赤い流線型の機体は難なく変形と変身を繰り返し攻撃を仕掛けているモビルスーツに接近しそのライフルを奪い放たれる砲台を背中の【アムフォルタス】で撃ち抜く芸当を見せていた。

其を見ていた”ミネルバ”のクルー達も釘付けになっていたのだ。

そんな最中にメイリンが上ずった声で報告を行った。

 

「”インパルス”と”ザク”共にエネルギー残量危険域です!残り三○○!」

 

既に二機のエネルギー残量は危険域。このまま行けば三機、ではなく五機を失うこととなる。

そう判断したタリアの指示は素早いものだった。

 

「”ボギーワン”を撃つ!艦橋遮蔽!進路インディゴデルタ!加速二〇パーセント!信号弾及びアンチビーム爆雷準備…アーサー!何してるの!」

 

ボサッと突っ立っているアーサーをタリアが叱り付けると素早く副長席へ体を滑り込ませ砲撃の指示を下した。

 

「あ、はっはい!ランチャーエイト一番から四番”ナイトハルト”装填!”トリスタン””イゾルデ”起動!照準”ボギーワン”!」

 

”ミネルバ”の武装が立ち上がっていくと後ろからデュランダルが疑問の声をあげた。

 

「彼らを助けるのが先じゃないのか?」

 

「そうですよ?だから母艦を撃つんです。そうした方が手っ取り早いですから」

 

◆ ◆ ◆

 

「戦艦だと?…ちっ…アレが噂の”ミネルバ”かっ…!」

 

エイハブは回り込んでくる”ミネルバ”に気がついた。

戦況はあの”赤い機体”が出てくるまでは有利だったが此方を逃がすまいとしている其が出てきてからは悉く決定打を防がれていることに流石のエイハブも意識を削がれ四基ある内のビームガンバレルが既に二基撃ち落とされているし既に手持ちの武装も破壊されているこの状況を見て素早く決断した。

 

「潮時だな…欲張りすぎるのは元も子も失くす、ってね!」

 

迫る赤い機体から振り下ろされるビームサーベルをシールドを受け流した後に蹴りを見舞わせシールドを蹴りその反制動を生かし広げていた【ビームガンバレル】をバックパックに接続しブースターで急加速を行って距離を空けさせた。

其にしても、とエイハブは対峙していたあの赤い機体は【ビームガンバレル】を回避して見せたのをこの”エグザスダガー”に対抗して見せたのは従来、最新鋭のモビルスーツでも見たことが無かった。

まるでこの機体の特徴を知っているかのようなその動き…そして一瞬だが脳天に響いたあの稲妻はなんだったのだ?

 

確かに機体も確かに優れているだろうしかし其以上に()()()()()()()()()()()と言った方が良いのかもしれないなと”ダガー”のコックピットでエイハブは笑みを浮かべる。

 

「面白いな…」

 

そのパイロットが”ダガー”に乗ったのならどれ程の力を見せてくれるのか…叶いはしないかもしれないが願うことならば是非対峙してみたいものだな。とーーー。

 

◆ ◆ ◆

 

「きゃっ」

 

「ラクスッ!」

 

マゼンタ色の”ダガー”との戦闘の最中、蹴りを見舞われたがシールドで防ぐ。その衝撃がコックピットに伝わり膝に乗せたラクスがエアリスにぶつかりその胸元に顔を埋めていた。

 

ラクスが怪我をしていないかどうかの不安があったが反撃が来る、と身構えたエアリスはシールドを構えるが何時までも攻撃が来ないことに疑問を覚えると既にその機体は”アーモリーワン”から離れようとする”ガーティ・ルー”へ向かい離脱を取るための行動だったのだろう其を見届けた。追撃をして藪をつついて蛇を出したくなかった、と言うのが本音だが。

 

「ラクス大丈夫?ごめん…戦闘に巻き込んじゃって」

 

胸に埋もれていたラクスは埋もれたまま少し距離を取った。幸いにして何処も怪我をしていないようで何よりだったが何故か自分の胸元から離れてくれていない。

 

「ラクス?」

 

「……大丈夫ですわ。だってエアリスが守ってくれますから(…エアリスの匂い落ち着きますわ…)」

 

「せめて顔見て言ってくれないかなぁ…」

 

「キラもですが……ここ一年会えなかったのですもの。寂しかったですわ」

 

「はいはい…ごめんね」

 

ラクスの頭を撫でると更に深く抱きつくのを確認し呆れたような…微笑むような笑みを浮かべるとラクスも楽しそうな表情を浮かべている。

すっかりと”セイバー”のコックピット内部に百合の華が咲いていたがモニターを見て”ミネルバ”から帰艦信号が出ているのを確認し機体をAMBACで反転させ帰投する。エネルギー残量はまだ余裕がありそうだがこれ以上の深追いはよした方が良いだろう。此方にはラクスがいるし戦闘継続は無意味だからだ。

 

「…其にしても一体何者だったのでしょうか?これほどまでの行動力…まさかブルーコスモス?」

 

「さぁてね。他所の国の軍事工廠に突入して強奪していくなんて普通じゃあり得ないし…その線はあり得そうだけど(まぁ…十中八九”ファントムペイン”だけど。しかしガンダムは奪われるもの、とは言ったものだけど多くない?)…今は秘めておいて」

 

「はい」

 

凛とするラクスだったが膝の上に乗って甘えた素振りを見せているのはプラント国民大激怒だろうな、と他人事のように思っているのだった。

 

「…………ん?」

 

ふと、エアリスの脳裏に過るものがあった。

 

「どうしたのですか?」

 

「なにか…シンがやらかしているような…そんな気がする」

 

「???」

 

なんの事だ?と胸元でキョトンと首を傾げるラクスを見て空いている手でラクスの頭に手を置くと目を細める。

一先ず”ミネルバ”に着艦して安全を確保をしなくては、とエアリスの思考はそこに集中していた。

 

◆ ◆ ◆

 

「戦艦とおぼしき熱源接近!類別不能!レッド五三マーク八〇デルタ!」

 

オペレーターの報告を受けモニターを確認するリーは身を乗り出す。

 

「アレが報告に有った例の新造艦か?面舵十五、加速三〇パーセント!”イーゲルシュテルン”起動!」

 

進水式を控えていた戦艦がここにいると言うことは追撃の部隊なのだろうと予測し迎撃体勢の指示を出した。

 

「大佐の”ダガー”は!?」

 

問う間でもなく此方へマゼンタの機体が光の尾を引いて向かっている確認すると同時に敵戦艦からミサイルが放たれた。

 

「回避ーッ!」

 

船体下部の”イーゲルシュテルン”で迎撃すると至近距離で炸裂する炸薬の威力がスチールブルーの船体を揺らすそんな中で艦砲射撃を巧みに回避しながらハッチが開いた”ガーディ・ルーの”格納庫に足裏のアンカーを突出させ火花を散らしながら”エグザスダガー”が飛び込み着艦した。

回避と加速を巧みに活かしながら動いている戦艦に乗り込むその技量にリーは上官の腕を知っていても感心していた。同時にスピーカーからエイハブの声が響いた。

 

<撤収するぞ!リー!>

 

その言葉を受けリーはすぐさま指示を下す。

 

「回頭!機関最大!」

 

第二波の攻撃までに間があったのは敵モビルスーツを収容した後、ミサイルと主砲を発射してきたのを回避し”イーゲルシュテルン”で迎撃すると再び艦内が揺れる中で格納庫に到着したエイハブは”ダガー”を固定しコックピットから艦橋へ向かう最中強奪したモビルスーツの状態を見て眉をひそめる。

 

(随分と手酷くやられたな……先程の赤い機体の仕業か?)

 

「大佐!」

 

その光景を見てエレベーターへ乗り込み艦橋へ到着すると待ちわびていたクルー達から迎え入れられエイハブはリーに近づいて悪びれた様子もなく飄々と告げた。

 

「悪い。遊び過ぎた」

 

そう告げる上官に小言を言う程の時間はない。

 

「敵艦尚も接近!、ブルーゼロ!距離一一○!」

 

オペレーターの報告に二人の最上級指揮官はモニターを見て顔を見合わせた。

 

「かなりの高速艦のようですな。手強いですぞ?」

 

「ミサイル接近!数十二!」

 

「回避!撃ち落とせ!」

 

放たれるミサイルを迎撃し再び揺れる艦内でエイハブは荒っぽい語気でオペレーターへ指示を出した。

 

「両舷の推進材予備タンクを分離後爆破!アームごとで良い!鼻っ面に喰らわせてやれ!同時に上げ舵三五、取り舵一〇!機関最大!」

 

エイハブの予想だにしない戦術に舌を巻くリー。

普段は飄々としているのに想像もしえない自らが考え付かなかった戦術はこの状況を突破するに十分過ぎる機転であった。

 

◆ ◆ ◆

 

タリアの号令を受け”ミネルバ”は主砲とミサイル発射管を開き逃げようとするスチールブルーの戦艦へ迫るが向こうもかなり脚の早い艦艇らしい。しかしこの”ミネルバ”は高速艦である”ナスカ級”の流れを組んでいる俊足だ。逃がすわけがない。

例の三機を収納しこのまま敵に奪われるのなら敵の母艦事轟沈させるしかない、とタリアは覚悟を決め正面を見据えると事が動いた。

 

「”ボギーワン”船体の一部を分離!」

 

その指示を受けモニターの中の”ボギーワン”が船体の一部を分離した。

逃げるために艦艇の外装をパージしたのか?と考えが行き着いたがタリアはパージしたその構造体は慣性にしたがって此方の進路へ流れてくる。突き出した支柱の先端に吹き出し口のようなノズル、そしてタンクのようなもの。

その流れてくる構造物に検討が付いたタリアは鋭い声で叫んだ。

 

「撃ち方待てッ!面舵十!機関最大!」

 

機関手が舵を切るが遅かった。

次の瞬間には目の前に接近していた分離物が至近距離で爆発し視界をホワイトアウトさせ船体を大きく揺らした。

艦橋はメイリンの甲高い悲鳴が響き渡っている。タリアはアームレストを握りしめ衝撃を耐えて唇を噛む。

 

してやられた、と。

予備推進材のタンクを分離し此方へ叩きつけるとは…タリアは向こうの指揮官が一筋縄では行かない相手だと理解した。

 

◆ ◆ ◆

 

クリスは苦々しい表情を浮かべコックピットを出た。

同僚のヨウランとヴィーノが気を使って此方に声を掛けてくるが今は相手にする気分ではなかったのは全身の神経がピリ付いているからだ。

 

(くそっ…)

 

良いようにしてやられた、とクリスは思った。

味方をやられたと言うのに奪われた三機を取り返すことが出来ずに尚且つ途中で出てきた”ダガー”に手も足も出ずに良いようにされたこと、そして幾度か危ない場面を味方機体に救われたことが更に追い撃ちを掛けている。

今すぐにでもナニかに当たりたい気分だったが飲み込みロッカールームへ向かおうとすると格納庫に此方の配備ではない”ザクウォーリア”が二機、そして先程の戦闘で幾度も窮地を救われ複雑な心境の機体である”セイバー”が駐機されている事に気がついた。コックピットが閉じたままだったのを見てまだ外に出ていないのだろうか、と考えパイロットは誰だったのだろうか?と顔を見てやろうと考え”セイバー”へ近づこうと考えたその時、艦内が大きく揺れた。

 

「なんだ!?」

 

「被弾したのか?!」

 

衝撃によって様々なものが散らばり技術スタッフが声を上げる。

 

「艦橋!どうした!…くそっ…!」

 

愛機から降りていたレイが格納庫のインターフォンを取り通信を試みるが不通となっていたらしく受話器を放り投げ艦橋へ向かう。

 

「畜生ッ!」

 

そしてクリスは再び愛機のコックピットへ向かうため飛び込んだ。

 

◆ ◆ ◆

 

推進材が満載されたタンクを鼻っ面に喰らった”ミネルバ”は直ぐ様迎撃体勢を取るが既にその下手人たるスチールブルーの戦艦は遥か彼方へ逃げ去っていた。

 

「やってくれるわ…こんな手で逃げようだなんて」

 

「随分と手強い部隊のようだな」

 

後ろにいる議長へ振り向くといつのまにか艦橋にやってきていたレイを視界に納める。

 

「ならばなおのこと、逃がすわけには行きません。連中にあの機体達が渡る、となればその損害は計り知れないものだと思いますわ。本艦はこのままあの艦を追うべきだと、私は思います。今からでは下船していただくことは不可能ですが議長のご判断は?」

 

タリアの言うことは尤もだった。

戦後地球連合とプラントの間に結ばれた停戦条約”ユニウス条約”その中にはモビルスーツ、モビルアーマーの保有数を国力、例えばGNP、人口によって定めるという締結する当時の地球連合外相であるリンデマンの名前を取って”リンデマン・プラン”と呼ばれた其は『国力』の大きい方が有利だった。しかし、これに関して当時地球連合副大統領であったマクシミリアン・A・レインズブーケがこれに関して訂正を行い地球連合は逆にモビルアーマーの保有制限を掛る事でバランスを取った。最初は難色を示した”プラント”側であったが調印場所が嘗ての悲劇の地である”ユニウスセブン”、そして自らの技術に自信を抱いていたことによって無事に成立したのだ。

 

ならば、と持てるモビルスーツに制限が掛けられたプラントは一機の能力を高めるために開発されたのがミレニアムシリーズである”ザク”を筆頭に今回開発されたセカンドシリーズである”カオス”達なのだ。

”インパルス”に至っては前大戦で猛威を振るった”ストライク”、”ダガー”を”プラント”の持てる技術を搭載し開発された全領域万能機(マルチロールファイター)であり”ミネルバ”も其を十全に活かすために建造された最新鋭の戦艦なのだ。

本来であれば奪われた三機もこの”ミネルバ”に乗る筈だったのだが…。

其はともかくとして最新鋭の機体が奪われた、となれば機体の情報と機密情報が漏洩、尚且つ条約で締結している機体の保有数が限られている”プラント”と”地球連合”のパワーバランスが崩れてしまう恐れすらあるのだから。

 

その事を念頭にタリアは自らの意思を告げるとデュランダルは微笑み返した。

 

「私の事は気にしないでくれたまえ、艦長。私だってこの火種を放置したらどのような大火となって返ってくるのか、其を想像した方が怖い。アレの奪還、もしくは破壊が最優先事項だろう」

 

タリアは自分の意見が認められたことに満足感を覚えバートへ問いかける。

 

「ありがとうございます。…船尾追跡は?」

 

「まだ追えます!」

 

バートが即答したことを確認しタリアは指示を出した。

 

「では、本艦は更なる”ボギーワン”追撃を開始する!進路イエローアルファ、機関最大!」

 

タリアが毅然とした態度で号令を行うと水を打ったように静まり返った艦橋が慌ただしく動き出すと同時に副長であるアーサーの訓示が艦内に響き渡った。

 

「突然の状況から思いもよらぬ初陣となったが、これは非常に重大な任務である。各員は日頃の訓練の結果を発揮できるように務めよ!」

 

その間にタリアは艦内の警戒度をレッドからイエローに変更し遮蔽していた艦橋を上部へリフトアップさせると後ろの座席に座る議長へ艦長室で休むように言葉を掛け訪れていたレイへ案内するように指示を出す。

その直後に通信が入ったのはパイロットのルナマリアだ。

 

<艦長>

 

「どうしたの?」

 

<戦闘中の為ご報告が遅れました>

 

ルナマリアはてきぱきとした口調で報告を行う。その報告に嫌な予感がしていた。

 

<本艦発進時に格納庫にて二機の”ザク”に搭乗していた民間人三名を確認しました>

 

「え?」

 

これから戦闘に向かうと言うに民間人が紛れ込んでしまったことに困ったことになったな、とタリアは思ったが更に追い撃ちを掛ける言葉が続く。

 

<これらを拘束、三名の内一人はオーブ連合首長国議員である”カガリ・ユラ・アスハ”氏とその随員二名であること確認しデュランダル議長との面会を希望しております…>

 

「オーブの…!?」

 

そう聞き返すと退出しようとしていたデュランダルの表情にも驚愕の色が乗っていた。

今回の”ミネルバ”の進水式典に参加する、とは訊いていたが何故ここに乗っているのだ!?とタリアは頭を抱えそうになる。国の重要人物を乗せていると言うのに更に国外のVIPが乗艦?流石に多すぎる!

 

<僭越ながら士官室でお待ち頂いておりますが…>

 

その直後に通信が別の場所から入った。格納庫からの通信であることを確認しルナマリアへ了解した、との旨を伝え通信を切り入ってきた別の通信を受けとるとそこにはモビルスーツ隊の隊長であるハイネが映っていた。

 

<艦長ご報告が……って随分お疲れのようですが>

 

少しだけ疲労の陰りを見せていたのをハイネに指摘され咳払いして会話を続けさせた。

 

「なんでもないわ……其で?どんな問題が発生したの?」

 

問題が発生した前提で話を進めることに唖然とするアーサーだったが無視した。

 

<あ、はい。先程の戦闘終了後に格納した”セイバー”だったのですが…>

 

その事に艦橋にいるクルー達の意識が向けられていた。確かにあの戦闘で活躍していたパイロットが誰だったのか、と言うのが気になっていたのだ。

その報告をしようとしていたハイネが奥歯に物が挟まったような言いづらさが漂っていた。

話さなければ進まない、と決意しハイネが告げたその言葉は艦橋にいる全員を唖然とさせた。

 

<”セイバー”に搭乗していたのは二名、内一名はラクス様です>

 

「はい!?」

 

”プラント”最高峰の重要人物が乗り合わせていることにタリアは胃が痛くなるのを感じとる。

まさか、と式典の最中巻き込まれモビルスーツを操縦してあの戦闘を繰り広げていた…とは考えづらくもう一人乗っていた護衛が操縦したのだろうか、と考えていたが聞かずにいられずにハイネに問いかける。

 

「ラクス様が操縦されていたの…?」

 

「あ、いえそういうわけではありませんが…その操縦しているパイロットがですね」

 

次の一言でタリアは医務室から胃薬を貰ってこようと、決意した。

 

◆ ◆ ◆

 

(アレが”インパルス”のパイロットね…)

 

着艦し機体を固定されるのを確認していると目の前を一人の少女がメットを脱いで通りすぎ此方を見ているのを確認する。

朱色のツインウルフの髪型に後ろに結ぶ長い髪が無重力で揺れていた。

シンがこちら側にいるのでパイロットはレイか外伝で出ていたマーレか後に出るアグネスか、と思ったが違ったらしい。

機体を固定する少女とクルー達は”セイバー”を怪訝な目で見ているのは本来ここに存在しない筈の機体だからか、其とも暴れすぎたためか…どちらかはわからないが好奇の目で見られているのは間違いないだろう。

少しすると艦内が大きく揺れるのを確認しラクスが問いかけてきた。

 

「この揺れは?」

 

「恐らくナニかが至近距離で爆発したんだろうね…(推進材タンクが爆発した、だっけ?)」

 

着艦し機体を固定されたその時艦全体が大きく揺れるのを確認した。

コックピット内部で怪我をされないようにラクスを抱き締め暫くすると落ち着いた。

ふと下を見ると”セイバー”の足元に保安要員…そして見慣れた髪型の赤服を着用している青年を見て驚いた。

 

(そうか…ハイネがこっちの隊長に就任していたのか…まあ保安要員は動いている筈の無い”セイバー”を動かしているのが誰か、ってのを確認するためか)

 

ずっとここにいるわけには行かないのでコックピットハッチを解放し降りることにした。

当然ながら全員の視線がこちらに向いていた。

 

(まさか強奪事件が発生しこのまま追撃任務に出ることになるとはな…)

 

配属初日にまさかの事でが全くもっての驚きだ。しかしやることは変わらない。

不届きもの達を捕まえなければ俺たちに手痛いしっぺ返しが来るのは当然の帰結だからだ。

其にしてもまさかオーブの議員様が乗ってくるとは思わなかった、と思っていると先ほど着艦した”セイバー”のコックピットが解放されたのを見て眉をひそめた。

 

「誰が乗って…女?」

 

ハイネが上を見上げると”セイバー”のコックピットハッチが解放され顔を出したのは年若い女性だ。もう一人乗ってるのか、と確認すると軍服を着用していないことに気がついて下にいた保安要員がライフルを向けているのを見てラクスを庇うように抱き抱え壁を蹴って下におりる。

すると顔と衣装を見た保安要員がこちらに向けライフルを構える。

 

「貴様何者だ!民間人が何故その機体にーー」

 

「銃を降ろしなさい」

 

大きくもない声だったが広い格納庫に芯の通った声が響く。その声色に作業をしていたクルー達も意識を向ける”魔力”が有り其は保安要員も例外ではなくその動きを止め声の主に視線が集中した。

降りてきた民間人の後ろからピンク色の髪が無重力によってふわり、と揺れその顔を見た兵士達は構えていた銃を降ろさざるを得なかった。

 

「ら、ラクス様!?」

 

「どうしてここに…」

 

「そういえば”ミネルバ”の進水式典に出席されると訊いていたが…」

 

目の前に突如としてあの”ラクス・クライン”が現れた、となれば訓練を受けたコーディネイターと言えども動揺を隠せない。ラクスは安堵させる為に微笑みかける

 

「先の戦闘に巻き込まれやむ無く機体を借り受けた事は謝罪いたします。ですが銃を降ろしてください。今銃を向けているのは私の親友ですよ?」

 

保安要員の一人が銃を降ろすと続々と銃を下げる。一先ずの安心は確保されたがまだ終わったわけではないからだ。

保安要員を掻き分けハイネがラクスの後ろにいる人物を見つめる。その瞳には警戒の色が宿っている。

 

「…其はわかりましたがラクス様その後ろにいる人物は?」

 

今度はラクスの前に立ち自己紹介をした。ハイネに向け連合式の敬礼を行うと兵士がざわつく。

その空間にラクスとは違った凛とした声色が響いた。

 

「【B.L.E.U.M.】所属、エアリス・A・レインズブーケ大佐です。新造戦艦”ミネルバ”の進水式典にデュランダル議長に招かれましたが今回の騒動に巻き込まれたものです」

 

そう告げると保安要員とハイネは顔を見合わせたり驚愕や頭を抱えているものがいる。

今回の騒動で連合が関連している可能性もあり、幾ら大西洋連合に所属しているがクライン派の人物との関係がある。連合の兵士…となれば拘束することも出来たが隣にはラクスがいる為そんなことをしてしまえば問題になることは目に見えていた。

前大戦でクライン・オーブ・連合第八艦隊が手を組んで戦争を終わらせたことは誰もが知っておりその特に連合側のエース部隊【B.L.E.U.M.】の指揮官…その素顔は謎のままだった。其こそクライン派のシンパでなければわからなかった其を今目の当たりにして憎悪や畏怖、よりも驚きが上回っていた。

 

(其にしてもこんな美人が【彗星の魔女】とはねぇ…人は見かけによらない、ってことか)

 

コーディネイターに負けず劣らず、隣にいるラクスと遜色ない美貌はその立ち姿は目を惹かれるだろう。実際に何人かの若い兵士達は色めき立っているようにも見えた。

其が例の伝説のパイロット…【彗星の魔女】と聞けば”プラント”の兵士は怯えすくむか憎悪を向けるかのどちらかだがハイネはどちらかと言うと感心し目の前の美人に思わず口説き文句を言いたくなる程の良い女だな、と。

しかし、二人の指に嵌まっている指輪を見て其は直ぐにそんなことは霧散したが。

 

「…部下が失礼しました。ラクス様、レインズ殿は士官室でお休みください。私がご案内いたします」

 

そう言って前に出る。

だがまぁ…一先ず、あの”セイバー”を乗り込んでいた()()の事を報告しなくては、と思った。

 

◆ ◆ ◆

 

<…式典の最中の混乱を脱出するために機体に乗り合わせた、とのことで…その操縦していたパイロットは【B.L.E.U.M.】のエアリス・A・レインズブーケ氏です>

 

その報告を受けタリアの胃はキリキリと痛むのを感じ取った。

まさか強奪事件に居合わせた各組織の重要人物がこの艦に乗り合わせていることにタリアは「なんてこと…」と少しだけ自暴自棄になり掛けた。

 

「まさか彼女達がここに…其に”セイバー”は彼女が操縦していた、とはな…」

 

流石のデュランダルも驚きを隠しきれないようで言葉の端々に色が乗っている。

 

<一先ずは先に乗艦していたアスハ氏と一緒の士官室へご案内をいたしました>

 

その報告を受けタリアは「わかったわ。あとは私たちで対応します。お三方を艦長室へご案内して」と返しモニターを切った。

 

「…」

 

「…困ったことになりましたね。議長」

 

其もそのはず今から強奪されたモビルスーツを奪取するための作戦にはいるのに他国の…其も特務部隊隊長と議員を乗せ尚且つ”プラント”の象徴とも言える人物を乗せて戦場に向かう、となれば正気と疑ってしまう。

だから、と言ってここから戻れば確実に強奪部隊を取り逃がすだろう。

 

「ああ。全くだ………だが不幸中の幸い、と言ったところか」

 

「?」

 

艦橋から重要人物へ会うために艦長室へ隣り合って向かうタリアとデュランダルはその問いかけになにか意味深な事を呟いていたが聞き返すことはしなかった。

 

「苦労を掛けるね。”タリア”」

 

「…全くですわ”ギル”」

 

タリアは議長として彼女達に掛ける言葉を考えなくてはならないことを思えば自分はまだ楽なのかもしれない、と人の事のように思った。

 

◆ ◆ ◆

 

「本当にお詫びの言葉もない…」

 

デュランダルが目の前に座る少女三名…いやその存在は有る意味ビックネームなのだが見るものから見れば小娘に頭を下げるのか、と言われかねないがその立ち位置にいるのだから。

其を見ていて少しばかり複雑な胸中だったが実際に巻き込まれてしまったので仕方のない事だった。

隣にいるグラディス艦長を見てここが漸く”ミネルバ”なのだ、と実感する。

今”ミネルバ”の艦長室に私、カガリ、ラクス。そして護衛のアレックス(アスラン)とシンがいるため手狭だ。

 

「…あの部隊に関してはなにかわかっていることはないのでしょうか?」

 

ここでカガリ、ではなく私がその問いを投げ掛けるとデュランダルは歯切れ悪く答えた。

 

「ええ。まぁ…そうですね。()()()()()()()()()()()なにもありませんので…一体…どこの部隊でしょうか?」

 

背後に有るものを想定しているが確固たる証拠がない、其に今問いかけている私の所属を考えれば大っぴらに断言は出来ない、ということなのだろう。試すように私に問いかけるが首を振って「見当がつかない」とアピールする。

 

「…しかし、我々は一刻も早くこの事態を収拾しなくてはならないのです。取り返しがつかなくなる前に」

 

「ええ。そうですね。私どもも協力出来ることがあればお申し付けください。如何せん私は戦うことしか能のない人間ですので」

 

私たち【B.L.E.U.M.】は無関係です、という意思表明をしておかなければ不味い。

実際に現プラント政権とは友好な関係柄ではあるからだ。

 

「いえいえそんなことは…しかし流石、と言うべきですかね。」

 

建前を告げると議長が興味深そうにこちらを見てきた。

 

「?ナニがでしょうか?」

 

議長は”敢えて”その言葉を使った。その言葉に隣に控えるグラディス艦長が反応する。

 

「流石は”彗星の魔女”…英雄、と呼ばれたお方だ。我が軍の最新鋭機をあれ程乗りこなし撃退するとは…」

 

その二つ名は嘗て…クルーゼによって広められたもので正直余りいい気分はしない。

実際に”プラント”ではその名前は忌み嫌われるものだからだ。

しかし、ここで卑屈になると付け入る隙を作る、だからこそ開き直った。

 

「ええ。先ほど緊急で搭乗させていただいた機体…”セイバー”でしたか?非常に良い機体でした。()()()()()()()()()()()()()()()

 

其を聞いて二人は少しだけ驚いた表情を浮かべたのは”プラント”の最新技術を用いた機体をデートカー扱いされたことに不満があったからか。其とも技術を用いた其をナチュラルの私が軽々と扱い敵を被弾させたことか…分からないが虚をつかれただろう。

 

「さて…よろしければ艦内をご覧ください」

 

これ以上は引き出せない、と判断したのか議長が話題を変えてくる。

その言葉にグラディス艦長が反応する。

 

「議長、其は…」

 

「一時、とはいえ命をお預け頂くことになるのです。其が盟友としての、最大限の誠意かと」

 

よくよく考えれば幾ら友好状態と言っても外部組織、に最新鋭艦の内部を見せるのは正気の沙汰とは思えない。

議長なりの人心掌握術なのかもな、と思った。

 

◆ ◆ ◆

 

「なぁ、ルナ。あのザクに乗っていたパイロットって誰だったんだ?」

 

格納庫にてザクを見ていたクリスは整備していたヨウランに問いかけたが代わりに答えたのはルナマリアだった。

 

「ああ。あれに乗ってたのは”オーブ”のアスハ代表よ」

 

「オーブの”アスハ”だぁ…?」

 

その返答にクリスは眉をひそめる。

 

「うん。私もビックリした。まさかここにオーブのお姫様が乗ってるなんてね…でもなに?あのザクがどうしたの?」

 

「ああ、いや…”ミネルバ”所属の機体じゃねーから気になって…」

 

素直に”助けて貰った”とはクリスは言いづらかったのは弱さを見せることになる、と言葉を濁したがルナマリアはクリスの言葉を疑うことなく言葉を続けた。。

 

「そう?でも操縦してたのは護衛のアレックスって人らしいけど…」

 

そこで言葉を区切りクリスの耳元に近づいてささやいた。

 

「でも…”アスラン”かも?」

 

「えっ?」

 

「代表…じゃなくてもう一人の護衛の男の子…もう一機の”ザク”に乗ってた…確か、シンっていったかなぁ?その子が「アスラン」って咄嗟に呼んでたから。其にほら、今はオーブにいるって噂だし」

 

アスラン・”ザラ”…”プラント”で知らぬものは居ないだろう。

前大戦でよくも悪くも有名なそのファミリーネーム…その父親は今軍事裁判に掛けられ終身刑となっていた筈だ。その息子は消息が不明になっていた筈だが…そのアスラン・ザラ?がここに?だが、”ザク”?あの”セイバー”ではなくてか?

そんなことを考えているとルナマリアが首を傾げる。

 

「どうしたの?」

 

「あ、ああ。いや…”ザク”に乗っていたのはアスランとそのもう一人、だとして…あの”セイバー”に乗っていたのは誰だったんだ?」

 

そう問いかけるとルナマリア、ではなくもう一人のモビルスーツパイロットだった。

 

「ああ、其はね…」

 

「其ならそのパイロットはかなりのビックネームだぜ?」

 

そう話しかけてきたのはキャットウォークから降りてきてルナマリアの”ザク”の一部を掴み固定する。

その姿を見て小さく敬礼する。クリスはそれとなく対応する。其を見てハイネは小さく笑う。

 

「あ、ヴェステンフルス隊長。お疲れ様です」

 

「隊長…んでビックネームってのは?」

 

「聞いて驚くなよ?…あの【彗星の魔女】だよ。ラクス様とタンデムしてな?」

 

「え、嘘…あの【彗星の魔女】!?」

 

エアリス・A・レインズブーケ…”プラント”では【彗星の魔女】連合内部では【蒼い彗星】と呼ばれ恐れられている連合屈指のトップエース…しかしその二つ名と名前しか情報が上がっておらず外見は一切不明、一説には戦意高揚の偽装(イミテーション)ではないか、ナチュラル、ではなくコーディネイターだったのでは?と呼ばれていた人物だ。

其を聞いたルナマリアは驚愕していたがクリスは複雑だった。彼女にとって憎むべき組織の人物であり”オーブ”を守るために戦った英雄であったからだ。

 

「ど、どんな見た目だったんですか?屈強な女兵士…とか?」

 

どうやらルナマリアのイメージは筋肉モリモリのマッチョウーマンのイメージらしい。

そう問われハイネは何故か自慢げだった。

 

「いやぁ…あれは美人って言葉がそのまま当てはまるな。ラクス様と並んでも霞まない程度に美人だったぞ?…と噂をすればほら。来たぜ?」

 

ルナマリアが「ええー?ウソー」と言うと近くにいたヨウラン達が「本当だって!」と返していた。

 

そう指差す方向には議長と艦長…そして噂の一団が格納庫を一望できる通路にやってきていたのが視界に入る。

この場には似つかわしい三名の少女…一人は公の場で見たこともあるカガリに思わず拳を握りしめてしまう。

もう一人はピンク色の髪を無重力に遊ばせるラクス・クライン…正直彼女の歌は嫌いだ。

そしてもう一人…他の少女より身長が高い亜麻色を編み込んでいる女性…あれが…

 

「エアリス・レインズブーケ…【彗星の魔女】…か」

 

クリスはその姿を見てなんとも言えない不思議な感覚を感じるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。