”アーモリーワン”でエアリスが暴れすぎたせいでエイハブ達が弱体化しました。
流れだけ乗せてます。
ちょっとだけ外伝の【Eclipse】のお話有りです。(フレーバーで楽しんでください)
「しかし、この艦も大変な事になったものですよ」
通路を進みながらデュランダルが述懐する。
「進水式当日に実戦を経験せねばならない事態になるとはね…」
エアリス達はデュランダルに伴われ”ミネルバ”艦内を案内されていた。
先導するのはレイであり通りすぎた兵士が一同を確認し敬礼するのをアスランが反射的に敬礼していた。
(お前…隠す気あるの…?)
堂に入ったザフト式の敬礼を見て頭を抱えそうになったが体に叩き込まれた軍隊式の躾、と言うのはそう簡単に消せるものではないだろう、と半ば諦め具合で見送ったが。
「…そうですね。中々経験出来るものでは無いでしょう。此方に配属されているクルーの方々には同情しますが…私も初陣は今でも覚えています」
良い経験だ。と、告げるとアスランとカガリが苦い表情を浮かべていたのがチラリ、と見えた。
ここで言う”初陣”はヘリオポリス襲撃だ。
あの時から【彗星の魔女】と呼ばれ始め”ダガー”でここまで来るとは思っていなかった、と他人事のように思っていると側にいるタリアの表情がピクリと動かしたのを確認したが見ないことにした。
するとデュランダルは関心するような素振りを見せた。
「大佐は有る意味でモビルスーツ同士の戦闘を経験された、と…元々は技術士官だったというお話でしたが」
その反応に思わずエアリスは苦笑した。
「…ええ。今回と同じく戦闘に巻き込まれやむ無く、ですよ…あの時は何もかもが手探り状態でしたので…モビルスーツの戦術ドクトリンも乏しいものでしたから当時のザフトが羨ましかったですよ正直。そして今は前大戦で何処もかしこも人がいないですからね」
デュランダルやタリアを除けばここにいる皆二十代未満の若い少年少女、と言って差し支えない。
其ほどまでに戦争で人的資源が損耗していることに他ならないのだ。その事にデュランダルが飄々としたその端正な顔に演技ではなく苦いものを浮かべていた。
「…若者が戦場に出る、と言うのは心苦しいものがあります。だからこそ其を技術でカバーする。技術に関しては他の追随を許さない、と我々”プラント”は自負しておりますから」
「確かに。オーブもですが貴国の”技術力”は凄まじいものだ」
お互いに謙虚と謙遜を織り混ぜなから会話するのは聞いている身からすれば胃が痛くなるだろう。
だがこれが政治の場なのだ、と割りきる。
そうだ、とデュランダルが言葉を続けた。
「御父上のマクシミリアン氏が大統領となられアズラエル氏が【B.L.U.E.M.】の総帥になられてからそちらで我らが同胞であるコーディネイターの登用が多い、と聞き及んでおり安心しています。大西洋連邦内部で同胞が大手を振って安全に過ごせる場所と言うのは…正直な話”オーブ”や”スカンジナビア王国”しか有りませんでしたからな」
そう。前大戦時にコーディネイター、と言う種族は異端者扱いされておりバレれば魔女狩りの如く排斥を受けていた。実際に大西洋連合内に
同胞を止めるため…食い扶持を求めるため…と様々な理由で志願した兵士達はろくな装備や補給を与えられずに消耗させられ使い捨てられていた。
達成した任務であっても手柄は別物にすげ替えられる、と言った非人道的な行動を容認していたのは連合上層部…所謂”ブルーコスモス”派閥に属する者達が居たためだ。
…実際に其が原因で歴史の裏で発生した事件【エクリプス事変】は歴史の闇に葬られている。
「ええ。アズラエルは優秀な人物を登用したい…そのスタンスで動いていますからね」
ハーフコーディネイターにおける反乱が勃発…もとい”ブルーコスモス”によるコーディネイター殲滅を
一連の事件は当然ながら公表はされなかったのはその中心に”コーディネイター”が関係していた…そんなことを知られれば”プラントのザラ派”、そして”ブルーコスモス”に付け入る隙を与えるのと再び大戦の戦端を開くこととなるからだ。
大西洋連合は自軍内に”ハーフコーディネイター部隊”が存在した事を公表し式典を開き大戦中に
その後アズラエルは能力の有る”コーディネイター”や”ハーフコーディネイター”を会社や【B.L.E.U.M.】での部隊のメンバーや業務委託先の会社など…登用し基地があるアーリントン基地やアズラエル財団の本拠地があるデトロイト周辺都市にコーディネイター、ナチュラル問わず数多くの居住区域がある。
そしてまたアズラエルは”ブルーコスモス”関連の人物、軍上層部達の更迭を行い一掃を図った…。
そのスタンスに切り替えたのはある意味でレインズブーケ一家が関わっているのだが…割愛するとしよう
そのときの激戦を思いだしエアリスは内心で苦笑いを浮かべていた。
(マジであれはキツかったなぁ…まさかブーストレイダーとゲテモノが過ぎるキメラティックダガー…《ハルピュイア・ファーブニル・レヴィアタンの三機の特徴とストライカーが合体》と戦闘するとは…オーブとアズラエルがタツミくんと私に”エクリプス”と
その事をしみじみと思い出していた。
その際生き残りのハーフコーディネイターを部隊に引き入れることが出来たため御の字、と言ったところか。
「ここからモビルスーツデッキに上がります」
そんなことを考えているとモビルスーツデッキへ上がるエレベーターに到着しレイがドアを開きながら告げる。
促されるがままにエレベーターへ乗り込む。
「艦のほぼ中心に位置する、とお考えください。無論搭載可能数をお伝えすることはできません。現在その数量が乗っている訳ではありません」
軍事機密を伝える、と言うことにアスランとシンは顔を見合わせていたのは「そう簡単に他国の兵士にペラペラと喋って良いのか?」ということを視線で話しているのを見てそう思うのが普通だ。ここにいる人物は年齢の割りに役職が重い…舐められているのかもしれないが…それ以前に
エレベーターの扉が開くと広々とした空間に出る。
そこには”ザク”とその上位機種である”ザクファントム”に近代化改修された”ゲイツR”にエアリスが先程乗り込んだ”セイバー”…そして。
「この”ミネルバ”最大の特徴とも言える発進システムを使う”インパルス”…工廠や宙域でご覧になられたそうですが…如何ですか?」
「ええ。良い機体ですね。人手が足りない【B.L.U.E.M.】にも是非欲しいぐらいですよ」
素直に”良い機体だ”と伝えると満足しているのが感じ取れる。
実際に大西洋連合や所属している技術開発局ではこれ程までに洗練されたものは未だ開発出来ていない…というよりも実用化に至るほどになっていないというべきか。
「技術者から言わせると、これは全く新しい、効率の良いモビルスーツシステムなんだそうですよ。私にはあまり専門的な事はわかりませんが…」
”インパルス”の分離合体機構事態は”プロヴィデンス”…いや”アヴァロン”の【ドラグーンシステム】を用いられた応用なのだろう其は戦場で活動するのに洗練されたシステムだ。
元はと言えば”インパルス”のシルエットシステム自体が”ストライク”と”ダガー”のストライカーシステムのパクり…基、オマージュでありザフト版ストライカーシステムなのだが。
ストライカーを運搬する、という意味では前大戦中に戦闘機として”スカイグラスパー”が存在し攻撃要因として活動していたがどうしてもパイロットが必要になる、という点では無人機で装備換装できるというのは刻一刻と変わる戦場では大きなアドバンテージだろう。
”ドラグーンシステム”を搭載していた”アヴァロン”のデータは”ブルーコスモス”側に渡ったがその技術をアズラエルが手引きし【B.L.U.E.M.】の装備開発局へ移した後に削除した。
鹵獲した”アヴァロン”の技術を用いて技術屋でもあるエアリス手ずから
それほどまでに”インパルス”の完成度は高いものだ。その特徴をあげれば記憶にある機体と結び付くが。
その事を説明されている最中にエアリスは先の戦闘で”セイバー”を借り受けたことを謝罪していた。
「(まぁ…C.E版ヴィクトリーガンダム、と言えばそこまでだけどね)…先の戦闘で緊急とは言え貴国の機体を借り受け戦闘したこと、誠に申し訳ない」
先の事を形の謝罪をするとデュランダルが柔らかい笑みを浮かべる。
「いえ、お気になさらないでください。貴女が居なければラクス様は大ケガをされていたかもしれませんでしたからね。随伴の方々もアスハ氏を護るための行動です。そちらの方も容認いたしますのでご安心を」
「ありがとうございます」
最高権力者から許しを得たことで後ろに居たシン達…シンが「ほっ…」と胸を撫で下ろしているのを見て小さく吹き出しそうになった。
今度は視線の先にある
「あれはZGMF-X23S”セイバー”…あれも我が軍の最新鋭機で”インパルス”と同じシステムを一部採用し可変システムを組み込んだ機体…とレインズ氏は既に乗り込まれ機体を熟知しているようですが…如何でしたか?」
「良い機体、だと思います。先ほどの強奪犯の殿が操る”ダガー”のオールレンジ攻撃を避けられたのは”セイバー”の機動性が大きいでしょう。それに火力もある。…私はこの機体に”フリーダム”と”ジャスティス”の面影を感じましたね」
”セイバー”は”フリーダム”と”ジャスティス”の火力と運動性をバッテリー機体で再現するために建造された機体なのだから。その事を告げると再びデュランダルは驚く素振りを見せた。
「これは…流石の観察眼です」
「恐縮です。まぁ…前大戦で共に肩を並べて戦いましたから……?」
「………ッ」
そうして”インパルス”を見て議長が”セイバー”に関しての評価?をしているとエアリスは自分に視線が向けられていることに気がつきそちらへ顔を向ける。
「?如何しました?」
「あの子は?」
「彼女ですか?ああ…彼女はクリス・アマネ。あの”インパルス”のパイロットです」
「クリス・アマネ…彼女が…」
視線の先には栗色の瞳と髪を持つ色白のトランジタグラマーの少女がザフトレッドの制服を着用している。
そうすると先程の栗色の瞳の少女が視線を逸らしたのを確認し怪訝な表情を浮かべる。
「彼女がどうしましたか?」
なにか言いたいような素振りで此方に来ようとしていたが…一先ず置いておいた。
「ああ。いえ…”インパルス”のパイロットが自分と同じ女性だったことに驚いたもので…」
「なる程。そういうことでしたか」
そうこう会話をしながら見学している内に議長自らの案内する格納庫ツアーは無事終了した。
カガリが議長に突っかかる訳でもない…恐らくあの少女がシンの立場なんだろう、と勝手に推測していた。
そうこうしていると艦内にアラートが鳴り響いたのはトレース中の”ガーティ・ルー”を発見し戦闘に突入したからだ。
艦橋にどうぞ、と議長の言葉にグラディス艦長が「やめてくれ」と視線で訴えていたが見なかったことにした。
その際議長がやはりアレックスに対してあの言葉を発して「アスラン・ザラ君」と爆弾を投げ入れて空気が固まったがカガリとラクスがフォローするが”ミネルバ”の外ではモビルスーツの戦闘が繰り広げておりクリス達は”ガーティ・ルー”より出撃した奪取した三機と戦闘を繰り広げショーンとゲイルの”ゲイツR”は呆気なく撃墜され…る事が無かったのはエアリスが咄嗟にメイリンのインカムを奪い取り通信すると回避し生き残った。
三機のセカンドステージに翻弄され窮地に陥るが”アーモリーワン”でエアリスが暴れたせいか修繕が間に合わず弱体化していたせいもあったが。
一方”ミネルバ”は出撃した”エグザスダガー”…もといコスモストライカーを装備した”ダガー”とドッペルホルン二連装無反動砲”を装備したウィンダム・D”の襲撃を受けハイネとレイの”ザクファントム”が迎撃するがその練度が高く苦戦し小惑星帯を飛行する”ミネルバ”は”ガーティ・ルー”の作戦…いや、エイハブの作戦でそれはデコイであり実物はミラージュコロイドを散布しステルスを発動”ミネルバ”が前に出た瞬間に解除し後ろをとって小惑星帯に誘い込む。
岩塊に前方を塞がれ小さな岩塊を艦砲射撃とモビルスーツの射撃でぶつけシルバーグレーの美しい船体は見る影もなくボロボロの状態にされてしまったがアスランとエアリスのアシストによって危機を脱し敵艦へダメージを与えたものの轟沈することは出来ず強奪部隊を取り逃がす。議長の言葉を皮切りにその追撃は打ち切りとなった。
(私が出撃できていたら解決できていた…いや、立場とかあるしね…)
力はあるがそれはできない、今の立場では”出撃”はできないのだ。
アスランも前代表の恩赦があり許されているだけで離反、軍を脱走は銃殺刑は免れない。この段階でアスランへ動揺を仕掛けるために先程の場面で「この艦にモビルスーツはいないのか!?」と声高に告げたのはその為だったか本当に焦っていたのかは分からないが。
(それにしても…)
盲点だったのはデコイにブースターを付け熱分布を偽造し”ミネルバ”は追い抜かした瞬間に後ろからミラージュコロイドを解除し後ろをとったのはなかなかだな、と感心していた。
(向こうの指揮官は随分やり手らしい…)
感心は”ガーティ・ルー”の指揮官…恐らくあの”ダガー”に乗っているであろう人物に映っていた。
(厄介だな…ムウさん、いや”ネオ・ノアローク”の立ち位置の人物か…)
そんなことを考えていると”ミネルバ”としての初陣は失敗に終わってしまったが議長がそれとなくフォローしていたのを見てこれも描いている図面なのか?と疑ってしまったがラクスが”プラント”にいる。強行手段に出られる程無謀ではないだろう。
その後議長達と別れた後にエアリス達とクリス達は出会った。
◆ ◆ ◆
「アスラン・ザラ?あいつが!?」
戦闘終了後帰還したクリス達に当直を終えたメイリンがやってきて艦橋で起こったことを嬉々として説明している。
まさか本当だったとは、と彼女は驚愕をルナマリアと共に浮かべているが一方でレイは顔色一つ変えずに聞いているが興味はあるのか聞き耳を立てながらハイネと共にレクリエーションルームへ歩みを進めている。
「しっかし…本当にアスラン・ザラ、とはなぁ…本当なのかぁ?メイリン」
メイリンの報告にハイネはわざとらしく疑うような言葉を掛けると問いかけられたメイリンは姉のルナマリアと違い年頃の女の子っぽく言い返した。
「本当ですよ隊長ぅ!議長が言ってたんですもの!『アスラン・ザラ』って!その事にアスハ議員やラクス様も否定しなかったんですよ。でもでもッ!それだけじゃないの、すごかったんだから!」
危機的な状況に置いてアスランの起死回生の案は”ミネルバ”を確かに救った。しかし、それだけでなくもう一人のお陰で生き延びたモビルスーツパイロットもいる。
「確かにな。それにしても急に通信であの【彗星の魔女】から『後ろだ!』って言葉が飛んで来るとは思わなかったぜ。危うくショーンとゲイルがあの世に行ってたと思うとゾッとするね」
「ホントホント!一体なんなんですかねあの人…エスパーか何か?」
そう、あの艦橋で衛星デブリの付近の戦闘を見ていたエアリスは立ち上がってメイリンのインカムを引ったくり物陰に隠れている敵機とその位置を告げるとその直後攻撃が飛んで来たのだ。
そのお陰で二機の”ゲイツR”は撃墜されることはなく帰還した。
その事には感謝しているがメイリンの言葉にクリスは苛立っていた。自分達が苦戦していた、と言うのに呑気に”ヒーロー”の役目をかっさらって行った男と女の話題をしていることに。
それに追い討ちを掛けるのはそんな奴らに助けられた。”アーモリーワン”で戦闘し被弾箇所を応急処置し本来のスペックを発揮できていない例の三機を撃墜することが出来なかった。アシストされた?と…もしかしてあの”セイバー”ならば…と自分達の練度が足りないと突きつけられているような感覚を味わったがそれでもクリスは”セイバー”を乗りこなしていたあの女性…エアリスに興味を覚えていた。
「……」
そしてハイネの言葉にレイがピクリ、と反応を見せていたがそれは一瞬過ぎてここのメンバーは気がついていない。
「インカムを引ったくられた時はビックリしましたけど…でも本当にあの人が『彗星の魔女』なんですかぁ?おっかない奴だ、ってザフトの教本には書いてましたけど落ち着いた大人な女性って感じで…そんな風には見えませんでしたけど…」
その話を聞いていたクリスは確かに、と思っていた。
大人しそうな女性が前大戦でザフトに猛威を振るった【彗星の魔女】の二つ名を持つエースパイロットだとはにわかに信じられない、と言うか信じたくないと言う方が自然か。
「それにしてもわざわざ名前まで変えなきゃならないもんなの?」
「何いってんのよあんたは…いくら前大戦で…あ」
レクリエーションルームの道中をルナマリアとメイリンが会話しながら扉の付近へ近づくと突如として足を止めるとメイリンがルナマリアへぶつかり睨み付けるがその視線の先の答えを確認しハイネの後ろへ隠れる。
その理由はレクリエーションルームの中のベンチに腰かけて人物達がいたからだ。
ベンチに座るのは大人びた黒髪の少年とオーブの議員が呆れた表情を浮かべてスツールに腰かけ足を組んでいる亜麻色の髪が美しい女性が鬼気迫る微笑を浮かべながら幼い顔立ちの少年の頭…所謂ヘッドロックを決めているのをピンクの髪色の少女が「あらあら」と楽しんでいる混沌とした表情を浮かべているのを見ているのを目撃したからだ。
なに、やってんだ…?とクリスの頭に浮かんだがその会話に聞き耳を立てると「あぁ…」となった。
「シーン~?な・に・し・て・く・れ・ち・ゃ・っ・て・る・の・か・な・ぁ!?」
「んぎゃああああああッ!!?ちょ、師匠!?ギブッ!ギブギブッ…!」
「ったく…迂闊だぞシン…」
「ちょ、見てないで助けてくださいよカガリさんッ!?」
ヘッドロックを受けタップし助けを求めるシンを無視しながら締め上げる。その光景を見てカガリは呆れた表情を浮かべている。
「自業自得だシン…ったく…あれ程こいつの名前は”アレックス”だと言っただろう?それをわざわざザフトの兵士の前で言うなんて…甘んじて受け入れろ!」
「シーン~?なに逃げようとしちゃってるの~?」
「ぎゃいあああああああああああッ!!?」
「まぁまぁ…カガリさんもアスランも。エアリスもシンは悪気があってやったわけではないのですからその辺で…」
こいつ…と指差されたのは黒髪の少年…これが例の”アスラン・ザラ”なのだろう。
其をばらしたのがこの今ヘッドロックを決められている少年なのか、と見ながら「バカかこいつ…」と言う視線を向ける。…心なしか技を掛けられている少年が嬉しそうにしているのは頭に自分より”デカいモノ”が形を崩し押し当てられているのを見て「男って奴は…」と呆れているとふと視線が再びかち合いホールドしていたシンを解放する。
「けほっ、けほっ…う、うへぇ…酷い目にあった…」
苦しそうにしているシンにラクスが「大丈夫ですか?」と声を掛けエアリスとラクスは共に入室したクリス達へ向け歩き出す。
「あら…騒がしくして申し訳ありません。先程の戦闘お疲れさまですヴェステンフルス隊長」
ラクスが浅くお辞儀するとハイネは敬礼して返答した。
「いえ、此方こそ申し訳ありませんラクス様。快適な航海とはほど遠く」
ラクスがハイネと会話して隣に立つエアリスへ視線を向ける。
一方で指揮官同士の業務的なやり取りをしているルナマリアが件の人物達へ近づいていて声を掛けていた。
「へぇ…ちょうど貴殿方の話をしていたところです
あっさりと本人に言ってしまう辺りがルナマリアの恐ろしい所だ。
「まさかと言うか、やっぱりと言うか。こんなところで前大戦のエースとお会いできるなんて…光栄です」
白々しい、と思えるほどの発言にアスランは目を逸らしたがエアリスはフッと優しく微笑み掛けて返した。
「此方も…艦橋から貴殿方の戦闘を拝見しましたが良い動きでした。恐らくあの部隊はかなりの手練れ…一機も欠けることなく無事に帰還しているのは非常にクルーの練度が高い証拠でしょう。うちの
暖簾に腕の押し…とはまさに其で意に介せずにルナマリア達へ言葉を返すとその裏表のない言葉に呆気にとられていると手を差し伸べられており当の本人はキョトンとしていたが敵わない、と悟ったのか手を握り返した。
その握り返す手は華奢でおおよそ戦うものの手とは思えなかった。その姿からは先ほど自軍の最新鋭機を要人を乗せて戦闘していたとは到底思えなかった。
「…本当に貴方が【彗星の魔女】?意外でした。もっと怖い人かと…」
「意外ですか?あ、これでも技術士官なんですよね…(うわぁ…本物のルナマリア…うわっ手スベスベ…!顔良ッ!?)」
「あ、いやそう言うことじゃなくて…(やりづらいなぁ…もしかして天然?)」
しかし、その一方でクリスはその発言にはあの三機と強奪部隊を討ち取れなかった…それが事実としてありクリス達は討ち取れず逃走を許してしまっている。
その皮肉、は案に『お前達の力が足りてない』と言われている、と取った。
そして彼女の力を目の当たりにしたクリスは思わず握りこぶしを作る。其が無性に感に触った。
「はん?地球連合の部隊がここに乗ってるのも怪しいもんだな…!」
「なっ…!?」
「クリス!」
「お前…ッ!」
後ろにいたクリスの声はエアリス達の耳に入った。其を咎めるようにレイが怒鳴るが振り返りその場から立ち去る。
その言葉にルナマリアも皮肉を言われたことを忘れ振り返るが既にその場からいなくなっていた。
シンは食って掛かろうとするがエアリスに制止される。
「あちゃー…随分と嫌われてるなぁ…まぁ所属してるところが所だから仕方ないか」
少し悲しそうな表情を浮かべるエアリスにラクスが優しく肩に触れる。
ハイネは申し訳なさそうにしていた
「すみませんね…あいつ…クリスなんですが前大戦時に”オーブ”に住んでたんですよ。貴方が悪い奴ではないとは分かっていると思うんですが…戦争で親を亡くして”プラント”に」
「オーブに…?」
その発言に今度はカガリが表情を曇らせる。恐らく”オーブ解放戦”時に避難し”プラント”へ移住したのだろう。
年齢も自分達と近しいものでその若さで成人年齢が十五歳の”プラント”とは環境も違うし親も亡くしている…その不安は計り知れないだろう。
カガリ、ラクス、アスラン、そしてエアリスは物憂げな表情を浮かべるのは少なからず関係しているからだ。
戦争を拡大させたもの達…その関係者だ。
しかし、とシンは声をあげた。そう言わないと行けないと思った為に。
「…でも、俺たち【B.L.U.E.M.】は”ブルーコスモス”と違う!コーディネイターと手を取り合って…平和の為に動いてる!…俺も…コーディネイターだから…最初はナチュラルなんて嫌いだったけど…いい人は人種なんて関係ないだろ」
「…!シン…うん。そうだね」
その言葉にこの場にいる全員の視線が突き刺さる。
それはある意味でこの世界の人種へ対しての捉え方を示していた。
一方。
「…それだけ強かったら、なんであの時パパとママを助けてくれなかったの…?」
一人部屋に戻りベッドに腰かけ譫言のような呟きが部屋へ響く。先ほどの男勝りな口調は鳴りを潜め机の上にはボロボロに煤けたお手製のトートバックの中には楽譜が入っており置かれたそれに手を伸ばし抱き締める。
大好きだった歌も、ピアノを弾くのがあれ以来嫌いになった。だが残されたこの楽譜を破いたり捨てたりすることが出来なかったのはこれが唯一の形見だった其を未練がましく残していたのは彼女の優しさが欠片でも残っていたからだろうか。
彼女は憎む。
戦争を引き起こした”地球連合”、理想とやらを守り故郷を焼いたオーブ、そして戦火を拡大した”プラント”。
争いそのものを彼女は憎んだ。
クリスはベッドに倒れ込み身を縮こませる。
その姿を照らす室内の照明は影を伸ばす。その姿は弱々しき少女の姿を切り取っていた。
クリスをシンのアナザーっぽく描くの難しい…(寄せすぎてもダメ)
差異出せるようにしたいですね…
シンちゃんのラキスケ発動…!エアリスからヘッドロックは普通にご褒美な気がする。
前向きな感想&お気に入り登録、好評価ありがとうございます。
励みになりますのでよろしくお願いします。
誤字脱字報告毎度の事ありがとうございます…!