続・魔改造ダガーでC.E世界を駆け抜けたい   作:萩月輝夜

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混迷の大地

<スカード1!”ザフト”の新手だ!>

 

「あん?あれは…ザフトの新型か」

 

味方であるザラ派の”ジン”からの報告と同時に正体を割れるのを防ぐためコードネームで呼ばれるアッシュは同時に放たれたビームをシールドで防ぎながら機体を確認する。

 

「ほう…?ガンダムタイプか」

 

”アンノウン”と表示されている機体の名称を呟くアッシュは笑みを浮かべる。

可変と加速を多用し突っ込んでくるその姿を見てライフルを撃ち掛けるが回避されてしまう其は相手が強敵であることを知らせている。

 

「いいねぇ…!腕が鳴るってもんだ!」

 

「避けられ…!?ぐっ…!当てられた!?」

 

攻撃を回避され驚くエアリス。更に機体を翻し通り抜ける”セイバー”の背後を取り背面のレールキャノンを発射し主翼部分に直撃し体制を崩されるが直ぐ様変形しバランスを取りサーベルを抜刀し斬りかかる。

 

「ははッ!直ぐに立て直すたぁ大したもんだな!」

 

「こいつッ!一体どこの所属なんだ…!」

 

”セイバー”と”ガルド”の持つサーベルとシールドが激突する。

エアリスは目の前のモビルスーツの目的が”ユニウスセブン”の落下…だがそれだけでない気がしてイヤな胸騒ぎがしていた。

 

「機体の手足を破壊してふん縛って連れていく…!」

 

狙う場所を手足へ変更し無力化することを選択したエアリスはスロットルレバーを押し込んだ。

 

「ッお!?ザフトもまだ捨てたものじゃねぇらしいが…おらぁ!」

 

出力は当然セカンドステージの”セイバー”の上であり直ぐ様押し返されるがアッシュは素早く距離を取りレールキャノンを放ち追撃を阻止する。

 

「動きが一般機じゃない…!エースか!」

 

放たれたレールキャノンが頭部に直撃する、と判断したエアリスは無意識に機体のFCSを手動解除し回避するとシールドを突きだし視界を狭めさせる。

【アムフォルタス】を放ち撃墜させる…までは行くことが出来ず”ガルド”の左足を少し焼く程度に収まるがその背後にいた”ジン”を巻き込み撃ち抜いた。

 

「外したッ!?」

 

<グああああああッ?!>

 

「チッ…!外しても只で起きないって訳か…だが」

 

目の前の二機のガンダム…赤い機体は自分が一撃で落とせない程強い。

それに青い機体も”ジン”とベテランが乗っている筈だが武装やカメラを奪われ後退する程の手強さを誇り任務遂行の邪魔になっているのは事実だった。

 

「仕事は八割がた終わってるが…このままじゃ作戦自体が失敗する」

 

これほどまでに手強いのはあの大戦以来だろう。

 

「まさか…?」

 

放たれたビームを寸前で回避しながら脳内に浮かぶ嘗て猛威を振るったモビルスーツの面影が重なっていた。

”フリーダム”と”ディスペアー”…連合とザフトに畏怖を与えた伝説的な機体…形は違えどその戦い方と似ていた事にアッシュは狂暴な笑みを浮かべる。

 

「…しょうがねぇ…俺と遊んで貰おうかぁ!」

 

◆ ◆ ◆

 

「ええいッ!」

 

彼のパイロットとしての能力はエアリスによって限界まで引き出されていた。

出撃したシンは眼下にいる”ゲイツR”と”メテオブレイカー”、”01ダガーL”と”ブリオネイク”が凍りついた”ユニウスセブン”へ降下していくが其を”ジンハイマニューバ弐型”が飛来するのを確認したシンは”バーゼラルド”のM113Sビームライフルを構えながら突撃する。狂うことなく放たれたビームはコックピットに吸い込まれ爆発した。

そんな機体…肩に描かれたエンブレムを確認した”ジン”達は側面から攻撃を仕掛ける。

 

<【B.L.U.E.M.】だと!?ええい、邪魔させるかァ!>

 

<やらせはせん!!>

 

ビームを放ちながら突撃するのを確認したシンは素早く機体を翻し機体背面に装備された白銀と青色の空間宙域戦闘用ストライカーである”アルファストライカー”のスラスターが点火し射線を一機目を回避し手にしたライフルを放って撃ち抜き二機目を反対側の手でサーベルを抜刀し接近する”ジン”を切り裂くと三機目が放つビームをシールドで防ぎ回し蹴りを見舞わせて頭部を吹き飛ばし手にしたライフルを再び放って撃墜させた。

 

「なんだってこんなものを地球へ落とす!このままじゃ沢山の人が死ぬんだぞ!」

 

怒りに震え叫びながら追加の”ジン”を撃破していくシン。

地表へ到達した工作隊を再び別方向からのビームが襲う。

 

「あれは…くそッ!」

 

「あのエンブレム…【B.L.U.E.M.】か!」

 

スティングがエイハブからの指示を受け出撃し”ユニウスセブン”を降下させているザフトの機体達を攻撃していると

見慣れない機体があるのに気がつくがその機体の左肩に描かれたエンブレムを見て目を剥いた。

同じ地球連合であるがある意味で創設者同士が対立し思想の違いもあるため相容れない無論此方は非合法の部隊で向こうは正規の部隊なのだが。

上空からの攻撃を仕掛けるのは奪取された機体”カオス”が応戦し放ったビームを回避し背面の武装ポッドを分離して攻撃を仕掛けてきた。

 

「くそッ!またお前らかよッ」

 

シンはエアリスから教わったあれが”ドラグーンシステム”であることに気がつき対誘導兵器対処法を脳内で構築して応戦しいると機動攻撃ポッドから放たれたビームとミサイルをバルカンで迎撃、シールドで防ぎ爆発が視界を覆うがシンは敵を見失っていなかった。

 

「いっけぇ!!」

 

爆発から飛び出す”バーゼラルド”がシールドを保持していた左腕に装備し隠していたサーベルを”カオス”目掛け投擲し発振中のビーム目掛けライフルを発射した。

 

「ビームコンフューズ!!」

 

発振しているビームサーベルにビームは直撃し荷電粒子が拡散し広範囲に広がる其はPS装甲を搭載している機動攻撃ポッドの装甲を食い破り爆発し一気に無力化させた。

 

「何ッ!?」

 

「邪魔するな!!」

 

「押されている…俺が?…ぐぉっ!?」

 

”バーゼラルド”の飛び蹴りが”カオス”に直撃しその質量で大きく後方へ吹き飛ばされる。

これに乗っているパイロットはエアリスが想像している通りならば地球連合の兵士の筈の其が攻撃を仕掛けてくるのが理解できなかった。今はそんなことをしている場合ではないだろう!?

時間がない、とシンは操縦桿を握り立ちふさがる敵機を排除するために機体を操るが下方からビームが飛んでくるのをアラートが知らせ脚部スラスターを吹かし回避すると”ジン”達が追撃を仕掛けてきていた。

 

「いい加減に、しろッ!!」

 

”アルファストライカー”を吹かし突撃する。

コイツらと良い…一体何がしたいんだ!?

目の前に立ち塞がる敵に対して怒りをぶつけた。

 

◆ ◆ ◆

 

一方でも出撃した”アビス”と”ガイア”も”ミネルバ”から出撃したモビルスーツと激突していた。

 

「お前らのせいかよ!こいつが動き出したのはッ」

 

通信回線越しにアウルの叫びを聞いたステラは眼前のザフト軍を睨み付ける。

 

「コイツらのせい…ワルい奴ら!」

 

白いガンダムと赤いザクが此方に向かってやってくる。この間撃ち漏らした白と赤い敵、ワルい奴らの仲間だ!

ステラは”ガイア”を駆ってルナマリアの”ザクウォーリア”へ目指しビームライフルを発射するとクリスとルナマリアが散開し撃ち返してくる其は互いの機体を掠め交差するように回避し決定打を与えられずにステラは苛立った。

 

「こいつ、墜ちない…!」

 

あの白い機体と目の前の赤い機体と良い…何故落とせない!?

 

両者の機体は降下しながら地表へ降り立つ。

ルナマリアの機体は地表へ降下し朽ち果てた建物を縫うように移動するのを追いかけるように”ガイア”は変形し地表を駆け抜けると背中に装備したビーム突撃砲とマウントしたライフルを目掛け放つと地表と建物が倒壊していくが回避に成功したルナマリアは機体を上空へ翻し背面の【オルトロス】を展開、腰だめした超高エネルギー砲の奔流が”ガイア”を狙うが既におらず”ユニウスセブン”の地面を穿つに留まった。

 

避けられた!?と焦るルナマリアは索敵すると既に地表を踏み抜けている”ガイア”が地表を蹴り上げ飛翔し打ち上げられた崩落物を蹴り上げ目前に接近し”ザクウォーリア”を蹴り上げた。

 

「ぐぅっ…!?」

 

回避できずに蹴り飛ばされ慣性のまま大きく後ろへ吹き飛ばされたルナマリアは呻きながらその機体を凍りついた大地へ背中から叩きつけられ深い溝をつけながらようやく止まった。

 

無防備に隙を晒すルナマリアの”ザクウォーリア”へ勝ち誇ったようにステラは”ガイア”を飛翔させビーム突撃砲を放とうとする。

 

「これで終わりね、赤いのッ!」

 

「…このぉッ!」

 

しかし、彼女が撃ち掛けたその瞬間にルナマリアは【ガナーウィザード】をパージ、その場で跳ね上げバク転するように跳ね上げ放たれたビームを回避し接近してきた”ガイア”を蹴り飛ばす芸当をみせた。

蹴り上げられ頭部がシールド事持ち上げられコックピットが持ち上げられ体に凄まじい衝撃が走る。

 

「なにぃッッ!?」

 

ステラは吹っ飛ばされる機体を制御していると”ザクウォーリア”がシールドからトマホークを抜き出し勢い良く投擲するのを確認するとその攻撃が肩のライフルを切り裂き同時に放ったビームが肩のスパイクアーマーを吹き飛ばしていた。

 

「くぅッ!?さっさと墜ちなさいよ、この泥棒たちめッ」

 

反撃を受けたルナマリアは揺れる機体を制御しライフルを撃ち掛ける。

 

「あとちょっとで…!」

 

ステラは”ガイア”をモビルスーツへ変形させシールドを掲げ防ぐ。

憤りながら眼前の赤い機体を撃墜せんと追いかけるのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

「はぁ…はぁ…アハハはッ、やるじゃねぇかよ新顔ぉ!……あん?起動させたがったか」

 

目の前に現れた新型モビルスーツ《壊しがいのある玩具》の登場うち震えるアッシュ。

其々が戦闘を続けるなか漸く地表へ取りついた”ゲイツR”達が【メテオブレイカー】の起動に成功したその様子を二機のガンダムを相手取っていたアッシュが舌打ちして確認していた。

 

「…そろそろ潮時、だな。こっちもエネルギーが尽きかけているしな…ま、所詮砕いたところでもう()()は蒔かれた、しなっ!各機此方”スカード1”より戦線を離脱せよ!」

 

そう呟くと斬りかかる”ライジング”によってライフルが破壊されるが反撃、と言わんばかりに蹴りを見舞わせその反動を活かし背面のウイングバインダーを全開にしてその場を離脱し信号弾を放つ。

 

”ガルド”を目標に撤退していく”ジン・ハイマニューバ弐型”達。

しかしその中でも撤退を選ばずに戦い続けている機体があったがアッシュは無視した。

 

(ま、本来なら命令違反だが…やりたいようにやらせてやろう。そうしたい奴もいるのも一定はいるしな)

 

彼らの恨み辛みは分からんでもない。しかし彼らの”ナチュラルを滅ぼす”と言うのは理解できなかった。

急速に離れていく景色を見ながらアッシュは堪えられない笑みを溢した。

 

「ははッ!ははははははッ!!さぁ…始まるぜ…楽しい()()がよぉ!」

 

急速に離れていく正体不明機と複数の”ジン・ハイマニューバ弐型”の部隊が下がっていく。

その行動に疑問の声が浮かんだ。

 

<なんだ…撤退していく?>

 

カガリと共に移乗し”スサノウ”に予備機で置いてあった”ムラサメ”を強引に乗り込んだアスランはここ”ユニウスセブン”へ破砕作業の協力に来ていたが突如として開かれた戦端に戸惑うも培われた戦闘技術を遺憾なく発揮し”ジン”と正体不明機達と戦っていた。

其が突如として潮が引いていくように敵意が急速に薄まっていく感覚を覚えたエアリスは怪訝な表情を浮かべる。

 

「撤退する…?でもそんなことを気にしてる場合じゃないか……准将、少佐!」

 

<わかりました>

 

<ああ>

 

キラが准将。アスランがオーブ軍籍で少佐、となっている。

撤退した、と言っても未だ残っている”ジン”達を確認し設置した【メテオブレイカー】を破壊せんと今でも動いているの視認したエアリスは”セイバー”を動かしそしてキラの”ライジング”も動きだし迫る”ジン”部隊を息のあったコンビネーションで蹂躙していく。

”セイバー”はスラスターを吹かし両肩のサーベルユニットを抜刀しビームの中を潜り抜け頭部、武装を切り裂き”ライジング”は手足を奪い無力化するが”ジン”の胴体が破裂した。

 

「ッ自爆か…!」

 

<!?なんでそんな…>

 

捕らえて目的を吐かせようとしたが相当に覚悟が決まった連中らしい。屍を晒すのを拒否し負けたものは潔く散る…敗者必滅、と言うべきか。だがそんなものは美しくない。ただの自己満足であり意味のない犠牲だ。

 

「その覚悟…どうして平和のために使えない…?」

 

襲撃から守った【メテオブレイカー】が起動し”ユニウスセブン”の大地が鳴動する。

地表はひび割れる、がしかし其は表面だけであり底部までは届いていない。

まだまだ装置を作動させ砕く必要があるが他で起動しようしている装置へ例の”ジン”部隊が襲いかかる。

 

「まだ、足りないか…!」

 

”ゲイツR”達を守るように青に塗装されたスラッシュザクファントムが身の丈より大きいビームアックスを振るい”ジン”を両断し黒いザクがビームランチャーを放ち機体の脚を奪い後退させエメラルドグリーンのザクがミサイルユニットを展開し敵機を寄せ付けない。

 

其々の機体が光弾と光刃が交差し、爆発と閃光が響き渡るその眼下の大地が大きく震えた。

その一瞬だけ戦闘が停止し凍りついた大地が大きく亀裂を産み出してみるみる内に深まり巨大な底部が砕けその先に星空が覗かせた。

 

「やりました…!」

 

「グゥレイト!やったぜ!」

 

隊員達の声に強張っていたイザークの表情が和らいでいく。

その光景をみていたスティング達も驚き攻撃の手が止まる。

 

「おいおい…なんだこりゃ…」

 

「割れたぜ?」

 

「割れた…?」

 

”ユニウスセブン”が割れた瞬間に反動で撒き散らされる岩塊を割けるようにイザーク達はその場から離脱し強奪された”セカンドステージ”達も驚き攻撃の手を緩めてやや下がっていく。

 

一仕事終えたような達成感を覚えていたがその最中に冷静な声が通信回線に割り込んできた。

 

<だが、まだだ…!>

<未だだよ。未だ完全には砕かれていない…!>

 

そうだ。只半分に割れただけで完全に砕かれているわけではない。

この質量が地球に落ちれば人が住めない星になってしまうのは確実だ。

 

「この声…」

 

「こいつは…」

 

その言葉と声色に聞き覚えのあるディアッカとニコルは耳をそば立てるより先に一機の赤い機体…”セイバー”と随伴する”ライジング”が変形し地表へ向かうのを確認する。

しかし、気を取られたのは其ではなくコックピットに映るその顔をみて二人は驚きディアッカは声を上げる。

 

「アスラン!?」

 

「エアリス!?」

 

「レインズブーケ…だとぉ?何故貴様がザフトの機体に乗っている!それにアスラン貴様ぁ!」

 

イザークが吠えるのも無理はない。

モニターに映るのは前大戦で敵対しそして共に肩を並べて戦ったエアリス・レインズブーケがそこにいたのだ。

その陣営は”地球軍”…その軍服を纏っていた筈の少女は何故かザフトレッドのパイロットスーツを着用し、さも当然のように自軍の機体を操っているのだろうか?それにアスランは前大戦後に極秘裏にオーブへ亡命した、と聞いていたが何故ここにいるのだ!?と疑問が沸き上がってくるが其は当の本人は苦笑を浮かべながら説明してくれた。

その言葉に丁度疑問に思っていたキラも其を聞いて納得した。

 

<”アーモリーワン”でちょっとした騒ぎに巻き込まれて成り行きでね…で、ここに破砕作業で協力してる、ってこと>

 

<俺も成り行きでだが…同胞が眠っていた墓標を地球に落とすわけにはいかない>

 

そうアスランに言われイザーク達は気を引き締めた。

そうだ。この質量のものを地球に落としてはいけない…まだ作業は完了していないのだから。

皆が黙ってしまったことに気がついたエアリスは別の意味での補足説明を行う。

 

<?…あ、大丈夫。議長から機体に関して借り受けを許可もらってるから。其よりも”ユニウスセブン”を砕くために協力して頂戴>

 

「あ、ああ…」

 

「わ、わかりました…」

 

「わかっている!貴様達が仕切るなッ!」

 

其々が反応しディアッカの機体が残っていた【メテオブレイカー】保持し其を護衛するように五色の機体が並んで”ユニウスセブン”の地表を飛翔していく。

 

(第一段階はクリアした…予想外の襲撃があったけど…引き際が良いのは…妙な胸騒ぎがする)

 

今はいない正体不明機の事は置いておく事にしたて思考を次の事へ移行させる。

更に”ユニウスセブン”を細かく砕く為には持ち込んできている【ブリオネイク】を起動する必要がある。

その機材を持ち込んできている部隊を確認していると前方から”ジン”が飛翔し行く手を阻むように迫るのを視認しエアリスとキラ、アスランはディアッカの護衛をイザーク達に任せて突貫した。

 

「まだ来るのか…二人とも!」

 

<はいっ!>

 

<左は任せろ!>

 

”セイバー”は急加速と急速変形を行い放たれたビームを回避すると同時に【アムフォルタルプラズマ収束砲】と【スーパーフォルティスビーム砲】を一射すると武装と胴体を撃ち抜き無力化して斬りかかろうとする”ジン”を”ライジング”のマルチロックオンにて手足を奪い無力化するものの自爆する。

そして残る一機も”ムラサメ”が飛翔、変形しモビルスーツ形態へ移行、抜刀したサーベルで切り裂いた。

 

<…自爆か>

 

<ッ…見ていてあまり良いものではないですね…>

 

「…ふんッ」

 

ニコルの言う通り見ていて気持ちの良い光景ではない。

恐らくあの機体に乗っているのはコーディネイターだろう、とイザークは当たりを付けていた。

しかし、あの機体を圧倒しているのは機体の性能だろう、と言いたかったがイザークは口をつぐんだ。

その光景を見ていたイザークは二年前を思い出す。

”ストライク”と”ダガー”のパイロット…嘗ては敵対し命のやり取りをしていた自分達が同じ目的のために手を取っている事へ奇妙な感覚を覚えた。

イザークの脳内には絶対に口には出さない言葉が広がってた。

 

「敵にするのは恐ろしいが、味方すれば頼もしいことこの上ない」と…。

 

そんなことを思っていると警告がコックピット内部に広がる。

後方より接近する機影…敵に回った”アビス”と”カオス”…確認し意識を切り替える。

今度は”ライジング”と”セイバー”が【メテオブレイカー】防衛に回り”ザク”と”ムラサメ”が飛び出した。

 

◆ ◆ ◆

 

「なんだよあれ…」

 

クリスは先ほどまで対峙していた”アビス”が”ユニウスセブン”の岩塊によって一瞬見失ってしまう。

その機体は【メテオブレイカー】を運搬している”ザク”達に迫り胸の【カリドゥス複相ビーム砲】を放ち周辺の大地を破壊するがその攻撃を受けた”ザク”と”ガンダム”達がパッと散開する。

 

味方として参加している”オーブ”との機体との通信を伝ってアスラン・ザラの声が聞こえてくる。

クリスは正直彼の事を甘く見くびっていたのは戦後に素性を隠し()()オーブへ逃げ護衛なんかをしている”腰抜け”だと思っていたが其は違っていた。

 

<イザーク!>

 

<分かっている!>

 

アスランが駆る”ムラサメ”が巧みに”アビス”の射撃を回避しライフルの連射を浴びせかけその隙を着いてイザークの”ザク”が背後に回り込み腰部にマウントされたビームアックス【ファルクスG7】を抜き放ち猛々しく叫んだ。

 

<今は俺が隊長だ!命令するなッこの部外者がッ!!>

 

そう言い放ちイザークの”スラッシュザクファントム”のビームアックスが防ごうとするビームランスを切り裂き機会を逃さずにムラサメが抜刀したビームサーベルによって”アビス”の左足が宙に舞う其をクリスは息を飲む間もない一瞬の事だった。

 

通信越しに聞こえる会話はあからさまに不仲である筈なのに”ザク”と”ムラサメ”は見事な連携を見せ、今度は駆けつけた”カオス”へ向かって行く。

アスランの精密な連射が”カオス”を牽制しその隙を突いて背後に回り振り下ろしたビームアックスがアンチビームシールドを切り裂きこれたまらずと撤退するが其を逃さず”ムラサメ”のサーベルがビームライフルを保持した右腕を切り裂き戦闘力を奪った。

 

クリスは戦闘中であることを忘れてそれに見入っていた。

彼ら二人はクリス達がどれ程戦っても傷一つ付けられなかった敵機をわずか数秒にして戦闘力を奪ってしまったのだった。

思わず口を突いて出た感嘆の言葉。

 

「あれが…ヤキン・ドゥーエを生き残ったエースパイロットの実力だって言うのか…?」

 

イザーク・ジュール、と言えば”ヤキン・ドゥーエ”での戦いにて”デュエル”を駆って大きな戦果を上げたとクリス達の間でも名高い人物として知られている。その人物とアスランが旧知の仲…と言うか元”クルーゼ隊”に所属し戦っていたと言うのは知っていたがアスラン・ザラの技量はその彼に負けず劣らずであり伝説のエースと呼ばれるのも納得することが出来た。そんな相手を『オーブにいるから』と言う理由で見下していた自分が恥ずかしくなった。

 

<おいクリス!ボサッとするな!>

 

不意に飛び込んできた声にクリスはハッと我に返る。聞き覚えのある声だったが見慣れない機体が近くにいた其は自分が駆る”インパルス”と同じ見た目の機体だ。モニターにパイロットの顔が映し出され苦虫を潰した表情を浮かべた。

 

「ッ…シンか」

 

<ああ。アスラン達の戦闘に見とれるのは分かるが作業を進めようぜ。未だ終わっちゃいないんだ>

 

「分かってるよ…」

 

そう言われクリスは一瞬でカッとなる。言われなくとも…!と思ったが実際にあの二機の戦闘に見入られていたのは事実であり恥ずかしさとばつの悪さが同居していた為言葉を飲み込みシンの機体と共に破砕作業を進める為に”ユニウスセブン”の地表へ向かうクリスは背後の戦闘を見ずにはいられなかった。

 

◆ ◆ ◆

 

”ガーティー・ルー”艦橋

 

「”オーブ”に”ザフト”…そして【B.L.U.E.M】、ねぇ…こりゃスティング達が苦戦する訳だ。それに正体不明の部隊と来たもんだ」

 

指揮官席でごちるエイハブ。

「まぁ、俺たちも彼らからしてみれば”アンノウン”なんだがな?」と内心で補足していたが腕時計と作戦時間にセットした艦橋モニターの時間を確認しモニタしていたクルーへ声を掛ける。

 

「そろそろ時間だ。彼らへ撤退命令を」

 

「了解しました」

 

指示を出し信号弾を放つ。

戦場で咲く色鮮やかな三色が戦場での争いに終止符を打つ希望の灯火だが向こうからしてみたら不気味だろう。

突如として現れ敵味方問わずに戦闘を仕掛けていた部隊が帰還するのを目の当たりにしたらどう言うことだ?と疑問を浮かべるがもう時間が残されていないは確かだ。

呼び掛けが終わり戦闘を繰り広げていた三機が帰投するために此方へ向かうのを確認しているとイアンが口を開いたのを確認した。

 

「先ほど”ミネルバ”から国際救難チャンネルで問いかけがありましたな」

 

”ジン”の改造型が出てきた辺りで”ミネルバ”からの国際救難チャンネルを通じ破砕作業を行っている、との旨を受け取っていたがエイハブ達は無視していた。

返答しなかったのではなく返答する理由がなかったからだ。

 

「…ああ。だが俺たちは表だって動けない部隊だぜ?ま、此方がなにも知らずに攻撃を仕掛けている謎の部隊って勘違いさせるには十分な行動だ。どっちなのか、って勘違いして貰っていた方がいい」

 

「そうですな。破砕作業を妨害していた機体…あれは”ザフト”と?」

 

「ああ。十中八九そうだろうな。”ジン”…以外の機体は見たことはないがあれは”シグー”のラインか?ハインライン設計局のシルエットに似ている。恐らくはコンペ落ちしたのを盗用したか…だな。どうやらかなりの戦力らしい」

 

重装備の機体…あれほどの機体スペックを動かすのならコーディネイター…ザフトだろう、とエイハブは考えていた。

それに関しては諜報部の調べ次第だろう。

一先ずはどうでも良い、とエイハブは帰還する三機を見て苦笑を漏らす。

手足武装は破壊され戦闘継続は厳しい…どうやら出撃した部隊は手強い強敵らしい。

 

「どちらにしても、だ…」

 

エイハブはそこで言葉を区切る。その様子を隣で見ていたイアンは背筋に冷たいものが走る。

昼行灯の雰囲気から軍人として如何なる命令を実行する冷徹な仕事人としての側面が見えた上官の姿に言葉を失い畏怖を感じた。

 

「…これで世界…お偉いさん達は”共通の敵”を得る。”コーディネイター”と言う世界を害する敵を。滅ぼすべき巨悪を討つべし、ってな」

 

ニヤリと笑みを浮かべるそのマスクの裏に怪しい光が宿っていた。

 

◆ ◆ ◆

 

同時刻”ドミニオン”艦橋

 

「撤退する…?」

 

信号弾が上がり襲撃を仕掛けてきた部隊が引いていくその光景を見てナタルは呟いた。と同時にその意図を理解したのだ。

 

「…高度か。管制官、”アンノウン”に対する情報収集は?」

 

そう問いかけるがクルーは首を横に振る。目ぼしい情報は得られなかったらしい。

さておき既に作戦限界値点へ到達する、と言う高度に差し迫っており機体を回収しなくてはならない。

引き際を見極めなければいけないのは艦長としてのナタルの役目であった。

 

(…破砕作業は進んでいるが完全ではない。このままでは地上に破片が落ちる。出来ること…モビルスーツが大元を砕いた、となれば後は此方の番だな)

 

ナタルは少し思案した後にクルーへ指示を出す。

 

<信号弾撃て!モビルスーツ回収急げ!モビルスーツ回収後ブルーチャーリーへ転進!”ミネルバ”並びに”スサノウ”へ回線開け!本艦はこれより更なる()()()()へ向け行動を開始する>

 

「了解!」

 

信号弾が放たれ”ユニウスセブン”へ散っていたモビルスーツが”ドミニオン”目指し近づいてくるのを確認した。

しかしその中にいる筈の”バーゼラルド”がいないことに気がついたクルーが問いかけた。

 

「オメガ1撤退です!…シン、戻りなさい!シン…!ああ、もうっ…!」

 

コレットが苛立つ声を出すがナタルは苦笑する。

 

(弟子は師匠に似る、と言うが…全く…)

 

シンとエアリスの事だからこの構造物を破壊するまでは限界ギリギリまで作業を続行するのだろうと言う確信がナタルにはあり返ってきたら懲罰ものだな、と一人心の中でゴチながら通信が開いた各艦艇の艦長へ通達した。

 

同じく”ミネルバ”艦橋

 

「漸く信じてくれたのか…」

 

「そうかもしれませんし別の理由かもしれません」

 

安堵する息を吐くデュランダルにタリアはドライな言葉をぶつけた。

 

「別な理由?」

 

デュランダルが問い返す。タリアが短く返した。

 

「高度です」

 

そうだ。既に”ユニウスセブン”は地球の重力圏に引き寄せられ地上へ向け落下を始めようとしていた。

その眼下に青い星が近づいている。

モビルスーツ隊の尽力によって直径八キロメートルあった底部は四つに分かれていた。がしかしそのまま地上に落下すれば甚大な被害は回避することは出来ないのはもう決定事項だった。

 

「我々も命を選ばねばなりません…助けられるものと助けられないものを」

 

そう告げタリアはデュランダルへ顔を向ける。その不敵な笑みはデュランダルを困惑させたのはその意図を測りかねたからだ。

続ける言葉に流石に驚かせた。

 

「議長、ラクス様。至急”ボルテール”へ移譲願いますでしょうか?」

 

「どうするつもりかね?」

 

そう問いかけタリアが答えようとしたそのとき通信が開かれた。

 

<グラディス艦長>

 

「…バジルール艦長、如何されました?」

 

<あれを砕くには既にモビルスーツでの作業は困難を極めるだろう。ソコで提案なのだが…ここから大気圏を突入しながら特装砲を発射しながら破砕作業を進めたい。貴艦らにも協力を願いたいのだ」

 

その言葉に驚くタリアとデュランダル。一方でラクスはその成り行きを静かに見守っていた。

そしてタリアが口を開いた。

 

「大佐殿…我々も同じことを考えていました。本艦もこれより大気圏へ突入しながら限界まで艦主砲での破砕作業を行いたいと思います」

 

<…なに?>

 

その提案が受け入れられるとは思っていなかったからナタルは面を食らう。

同時にクルー全員が息を飲んだ。

中でもアーサーが目を丸くして問いかけるがタリアは然程気にせずに言葉を続ける。

 

「どこまで出来るか分かりませんが…やれる力があると言うのにやらない、何て言うのは後味が悪すぎますもの。それに地球は我々にとっても母なる大地です」

 

<……>

 

<ハハハッ。流石は肝が据わっておられる両艦長殿ですな。私どももいることを忘れんで欲しい>

 

「イーストエイト艦長…」

 

そう告げるタリアにナタルは呆気に取られたが別の回線が開く。

”スサノウ”からのものだった。

 

<此方の”スサノウ”にも陽電子砲が搭載されておる。ここにはあれを破壊できるほどの武装が揃っておられますぞ?>

 

向こうにはVIPが乗っているにも関わらず危険な圏内突入作業をしながらの作戦…明らかなリスクがあった。

それを許可したのは恐らくカガリだろう、と二人は思いながら老獪な笑みを浮かべるヘイハチを見て二人の女性艦長は顔を合わせ頷いた。

 

「既に一連托生、と言うことですわね。…了解しました。協力お願いします」

 

<協力感謝いたします>

 

<此方もモビルスーツを収容次第そちらへ向かう>

 

それぞれの通信が終了しタリアはデュランダルへ向き直る。

 

「…お聞きの通りです。議長」

 

「しかし、タリア…」

 

デュランダルが気遣わしげに声を掛ける。

心配するのは尤もであり補修作業を行った、とは言え被弾し本来の装甲強度ではないし幾らこの”ミネルバ”が前大戦で活躍した”アークエンジェル”を参考にして作られた大気圏内航行可能な戦艦だとしてもそれはあくまでもシミュレーションでの実績であり今回が初でありかなりのリスクがあるのだ。

 

「ご安心を。私は運の強い女ですので」

 

「…分かった。苦労を掛けるグラディス艦長…」

 

そう告げたデュランダルへ敬礼を行うタリアはクルーへ素早く指示を出した。

 

「議長もお急ぎください。…”ボルテール”へデュランダル議長の移譲を通達!モビルスーツへの帰還命令!信号弾!」

 

「ラクス様も此方へ」

 

デュランダルは立ち上がりラクスへ手を差し伸べるが首を横に振る。

 

「議長…わたくしはこちらに残らさせて頂きますわ」

 

その返答にデュランダルと一度は正面に向き直っていたタリアが驚きラクスを見つめるが凛とした佇まいで窓に映る砕ける”ユニウスセブン”を見ながら告げた。

 

「この騒動の終結をこの先何をもたらすのか…わたくしは見届けなくてはなりません。コーディネイターのラクス・クラインとして」

 

「しかし…」

 

タリアが言い淀むのを聞いてラクスは微笑を浮かべる。

 

「小難しいことを申し上げましたが実際は未だあの場所にエアリスがいますの。彼女達だけを置いて自分だけが安全な場所に移る、と言うのが嫌いなだけです。ワガママを申しますが乗船許可を願いますわ。グラディス艦長」

 

そう告げラクスはタリアに頭を下げる。

そう頭を下げて”お願い”されてしまえば一軍人であるタリアに拒否権など無い。彼女は象徴ではあるが国の権威を持つモノではない…がそれでもその立ち位置はそこいらの評議会議員とは比べ物にならないのだから。

そしてタリアは内心で目の前の少女が少女らしい”我が儘”を言うことに人間らしさを感じて少しだけ自分と同じ人間なのだ、と感じることが出来た。

 

「分かりましたわ…許可いたします」

 

その返答を聞いたデュランダルはタリアを見て「任せた」とだけ伝え諦めたようにラクスに言葉をかけた

 

「ラクス様がそう仰るのならお止めはしません」

 

「ええ。ご心配無く。」

 

そう告げラクスは大気の断熱摩擦で燃え始めている…未だにエアリスがいるであろう”ユニウスセブン”を見つめた。

 

◆ ◆ ◆

 

「…限界か。アスラン、お前は戻れ」

 

<いや、俺も作業を継続する…>

 

<エアリスさんの言う通りアスランは戻って。”ムラサメ”に大気圏突入能力はないんだ>

 

<しかし…>

 

凍りついた大地が鳴動している。

”ミネルバ””ボルテール””ドミニオン””スサノウ”より信号弾が打ち上げられ作業していた機体達が母艦へ帰投していく姿を見てクリスは既に作戦時間と計器を見てハッとしたのは高度限界が近づいていたのだ。

撤退を促されるアスランは難色を示すがキラからその事を指摘され不承不承、と言った感じに食い下がっていたがカガリから通信が入る。

 

<いや、アスランは戻ってくれ。また正体不明の部隊が来ないとも限らない。お前の腕が必要なんだ>

 

<…分かった。帰投する。二人とも気を付けろよ…>

 

三名からの説得に漸く折れてくれたのか渋々だが機体を翻し帰投する”ムラサメ”を見届け二人は機体を”ユニウスセブン”へ向かわせる。

 

二人きりとなり通信回線を開いたままお互いの顔を見つめていた。

 

<…お久し振りです。エアリスさん>

 

「うん、一年、振りかな?キラ”くん”」

 

役職や立場を一旦忘れて二人はお互いの表情から感情を読み取り目に焼き付けていた。

 

<……>

 

「………」

 

言葉を交わさず視線だけで会話をしていた。二人の間に少しだけ緩い空気が流れていた。

 

◆ ◆ ◆

 

既に”ユニウスセブン”の破片は四つに分かれ更に細分化されていたがそれでも未だ直径で4キロを越える破片が残っているのを見てクリスは歯噛みする。

 

(連中が邪魔しなきゃ作業に集中出来たと言うのに…!)

 

だが、もう限界だ。

最後まで作業に当たっていた”ジュール隊”の機体達とオーブの”オオツキガタ”と”01ダガーL”、そしてハイネ、レイ、ルナマリアの”ザク”が離脱していくのを見届けていると遅れて”ミネルバ”よりレーザー通信が入った。

 

「大気圏突入しながら”ミネルバ”の艦主砲で”ユニウスセブン”を砕く…?」

 

完全に作業を諦めたわけではないとクリスは安堵していた。

対拠点攻撃用の”タンホイザー”を用いれば…どれ程砕けるか分からないが少しでも地上の被害を減らせるかもしれない…!

それを受け取り今度こそ見きりを付けてクリスは機体を翻し母艦へ帰投しようとすると視界を返したその下に動くものを確認した。割れているが一番大きい破片の上で動くものがいたのだ。

 

「ッ!?敵か!?」

 

驚くクリスは索敵を掛けるがそれは複数機の機体…先ほどまで作業を進めていた”ライジング”と”セイバー”そして後から合流したであろう”バーゼラルド”の三機が破砕装置を新たに設置しようとしている。

”セイバー”は”ミネルバ”所属の機体…エアリス・A・レインズブーケだ。

 

クリスは彼女達の蛮勇に怒りを覚え機体を翻す。

 

「なにやってんだあんたッ!」

 

<クリスさん?>

 

<クリス?何やってんだお前…>

 

会釈挨拶も無しに怒鳴りをいれると”ライジング”のパイロットと”バーゼラルド”…シンが驚いていたがエアリスは無視しながら装置を設置と起動を行っている。

 

「帰還命令が出てる。通信も入った筈だ!あんた達も!」

 

作業している他のモビルスーツに対しても声を張り上げるが声を掛けられた当の本人はどこ吹く風で作業に尽力していた。

 

<…ええ。わかっているよ。貴女も早く戻りなさい。破砕で吹っ飛ばされるわよ?>

 

「そりゃこっちの台詞だ!木っ端微塵になりたいのかよ!?」

 

乱暴な台詞だったが先ほどまでの戦闘を確認し気遣うような言葉になっているのは当の本人は気がついていない。

エアリスは落ち着いた声色だったがその内心は焦りが滲む。

 

<…各艦艇の艦主砲で攻撃する、と言っても不確実だよ。だからこそこの破片を砕かないと>

 

そう告げもくもくと作業を続ける”セイバー”に付き従うように動く機体達を見つめてクリスは呆れた。がそのつぎの言葉にハッとした。

 

<此が落とされそうとしているのは私達の住む星…ソコには大切な人たちもいるのよ。ナチュラルもコーディネイターも関係なく…被害に遭うのは見たくない>

 

「…ッ!」

 

この人が前大戦の英雄、と呼ばれるのは分かる気がするがこいつを一人でやるのは流石にバカだろう…と一周回って冷静になったクリスは”バーゼラルド”と共に【メテオブレイカー】の設置と機動作業を手伝い始める。

それを見たシンが驚いて手を止めてしまうがクリスは構わずに作業を進めながら呆れた声を呟いた。

 

「ったく…お前らの上官は無茶苦茶だな…!」

 

その呟きに答えるようにシンが反応する。

 

<それがまぁ…師匠が師匠たる所以だしな。…つか、お前も手伝ってくれるのは嬉しいぜ>

 

「ッ…るせぇ!さっさとやって帰るぞ!」

 

クリスの散々のぼやきにすんなりと好意的に受け入れるシンの言葉を聞いてクリスは恥ずかしさとばつの悪さを感じとり誤魔化すように声を上げるのを聞いたエアリスとキラは笑みを浮かべた。

設置作業と起動を開始した【メテオブレイカー】を見てクリスは「やった…!」となっていたがこの宙域には既に敵はいない、と決めつけていたがそれは直ぐ様裏切られた。

 

「ッなんだ!?」

 

一条のビームが”インパルス”達を掠める。同時にアラートが鳴り響き振り返ると先程の”ジン”部隊が手にしたビームライフルと腰の重斬刀を引き抜き襲いかかってきた。

六機とも無事な機体は無く手足やカメラどれかが欠けていたが迫ってくる”ジン”達からは気迫が感じられ躊躇いなど毛ほども見せずに突撃してきた。

 

「こいつら…!性懲りもなく…!」

 

既にライフルを失っていたがサーベルを引き抜き”ジン”へ向かっていく。

 

「エアリスさんは作業を!僕が守ります」

 

<キラく、…ええ。”准将”お願いします>

 

思わず私的な言い方でキラを呼ぼうとして口ごもるエアリスを見て少しだけ残念そうにしていたキラ。

 

装備を失っていないシンはライフルを構え迫る部隊を牽制しキラの”ライジング”は【メテオブレイカー】と”セイバー”を守る為に前に出て立ちふさがる。

 

戦闘に入った二人の耳に”ジン”のパイロット達の怨嗟の声が入った。

 

<我が娘の墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!>

 

それが目前に迫る”ジン”のパイロットだ、と気がついたときには染み付いた反応で”ジン”の胴体を横一文字に薙ぎ払う。

 

「娘…?」

 

勢いのまますれ違い背後の”ジン”が爆発したのをクリスは振り返る。

 

<なにをッ!?>

 

シンもこの通信を聞いていたに違いなく困惑の声を上げるが斬りかかってきた”ジン”を一撃で胴体に光条を撃ち込見無力化するが別の”ジン”が言葉を引き継ぐように叩きつけた。

 

<ここで無惨に散った命の嘆きを忘れ…撃ったものらと偽りの世界で笑うのか貴様らは…!>

 

その糾弾の続きを聞いたキラは無意識に操縦桿を強く握りしめた。

 

<軟弱なクラインどもの言葉に惑わされて”ザフト”は変わってしまった…!>

 

二機の”ジン”は”ライジング”のビームキャノンとライフルの攻撃を受け戦闘力を奪われるが攻撃の手を止めることはないが無力化された”ジン”は”バーゼラルド”のライフルと”インパルス”のサーベルで切り裂かれる。

 

「しまった…!エアリスさん!」

 

爆発し残った三機の間を抜け二機の”ジン”が【メテオブレイカー】と”セイバー”へ接近する。

 

(こいつらは…ザフト…?)

 

”ユニウスセブン”を落とそうとした謎の部隊はザフトでありこの地で家族を失った被害者だったことをクリスは知った。彼女は彼らに同情してしまった。

 

<うぉおおおおおおッ!?>

 

一方で突撃してくる機体と対峙するエアリスは目の前の”ジン”達を冷たい目で見ていた。

”ユニウスセブン”で亡くなった人がいることは理解している。その片棒を担いだ組織に属しているし多くの”コーディネイター”を葬ったエアリスはだからこそこの地を戦争を忘れてはならない、と言う意味を理解しているからこそこのような行動を「不毛だ」とコックピットで吐き捨て切り捨てた。

 

<なぜ気が付かぬか!我らコーディネイターに取って”パトリック・ザラ”の取った道こそが唯一正しいものであると!>

 

”セイバー”のコックピットで操縦桿を握るパイロットスーツのグローブがギリリ、と音を立てた。

 

<…ふざけるな>

 

「…!?」

 

突如として響いた少女の声に”ジン”部隊が驚いていた。

 

<貴方達はいつもそう…過激なことをして他の同胞を省みないその行動…恥を知れ!貴方達の行動は欺瞞だ!その怒りを正当化するための”理由”を他人の言葉を使っているだけだ!>

 

例え胸が引き裂かれそうな出来事があったとし同情はするとしよう。だが”ユニウスセブン”を落として良い理由にはならない。

あれが落ちれば地球は人が…”ナチュラル”や”コーディネイター”が住めなくなる死の星に変貌してしまうそれを許せる筈がない。

前大戦で散っていった様々な兵士達…彼女の脳裏に浮かぶは利用され目の前で命絶えた(エミリア)の姿。

だからこそだ。自分達の行動が正しいと、正当化するためにパトリックの名を出したそれは彼女の逆鱗に触れた。

”青き正常なる世界の為に”、正当性を持ち出すために自分と…妹の名前を持ち出す外道(ブルーコスモス)と同じだ。

 

迫ってきた”ジン”を手にしていた巨大な砲身【ブリオネイク】を放り投げ正確なビームライフルの一撃がコックピットを撃ち抜く。

接近を行おうとしていた狂気の妄言を叫ぶ”ジン”にぶつけ怒りながらも冷静に肩から抜刀した二本のビームサーベルによって四つに分割され破壊された。

 

背後に流れていった”ジン”が爆発し設置していた【メテオブレイカー】が衝撃によって起動し凍りついた大地が鳴動を始める。

 

残った最後の一機が”セイバー”に特攻を仕掛けるために雄叫びを上げながら突撃を仕掛けた。

 

<我らの想い、ナチュラルどもにぃ!>

 

抱きつき地表へ叩きつけようとしたのだろうがエアリスは放り投げていた【ブリオネイク】を回収し”ジン”目掛け突き刺した。

 

「終わりよ」

 

<ぐぁああああああッ!>

 

次の瞬間突き刺した筒状の砲身…【ブリオネイク】が火を吹いた。同時に砲身後方に装着されたカートリッジが勢いよく弾け飛ぶ。

炸裂し”ジン”が真っ二つに引き裂かれたと思えば崩壊している”ユニウスセブン”に着弾すると凄まじい勢いで破裂、爆発し分断されてかけていた大地が更に細かく破壊された。

 

【ブリオネイク】…由来はケルト神話の光の最高神が持っていたとされる光の槍【ブリューナク】の英語読みであり対拠点・要塞攻略武装、重粒子炸裂型地底貫通弾(バンカーバスター)である。それはエアリスが極秘裏に開発し試作品が一つであり着弾と同時に一メガトンの威力を発揮する特殊カートリッジ式のエネルギー兵器だ。

 

大きい破片は砕かれ細分化する。

断熱摩擦によって赤熱化した破片は地球へ降下をし始めるのだ。

先ほどまで戦闘が行われていた宙域は別の意味で慌ただしくなるのを確認したエアリスは先ほど撃墜した”ジン”が墜落した箇所を一瞥し機体を翻す。もうできることは無い、と判断した。

しかし、先程の妨害があったためか機体がぐんと、下へ引っ張られる。機体スラスターを吹かしても上昇しない…完全に地球の重力圏内に嵌まってしまった。

 

「くっ…!時間切れか……!連中が突っ込んでこなきゃ大丈夫だったのに…!」

 

キラ達に通信を行おうとしたが電波障害が酷く接触でもしない限りは繋がらないだろう。

圧縮断熱の乱気流に捕まり機体が大きく揺れる。

フラッシュバックするは数年前の記憶、低軌道会戦で頭から重力に引きずられる感覚…!

 

「少しトラウマだなぁ…でも、やるしかない……!」

 

”セイバー”のツインアイが輝きエアリスは機体を変形させ大気圏突入を決意した。

あの時は油断、というかシャトルを庇って後ろから撃たれ頭から大気圏突入したが…だが前回よりも状況は最悪だ。艦主砲による攻撃に晒されながらの突入、勿論経験などある筈がない。

 

「運は良い女、って自負してるからね…!」

 

乗っている機体はあの時のPS装甲非搭載(ダガー・アーキバス)ではないのだから。

 

◆ ◆ ◆

 

「降下シーケンス・フェイズツー!」

 

クルーが告げタリアが歯噛みする。

 

「”インパルス”と彼女の”セイバー”の位置は!」

 

語気荒く訪ねるとメイリンが強く首を振りながら泣き出しそうな声で報告する。

 

「ダメです!位置特定できません………」

 

「エアリス…キラ…」

 

シートに座るラクスが祈るように手を前に組み目を閉じながら呟いた。

もはやこのタイミングではモビルスーツを収容することは出来ない。其よりもタリアが呻くのは其よりも深刻な問題があったのは大気との摩擦熱によりレーダーが殆ど使えずモビルスーツという小さな対象を見つけることは出来ないのだから。

 

「間も無くフェイズスリー!」

 

「砲を撃つにも限界です艦長!」

 

「しかし!”インパルス”と”セイバー”の位置が!特定できなければ巻き込みかねません!」

 

問題はそこだ。僚機が斜線上にいればただではすまない。だがこの作業を中断してしまえばまだ地表に落ちれば被害が出る破片も未だある。一射で…その一射で地上にいる数万、いや数億の人々が助かるかもしれないのだ。

タリアは振りきるように顔を上げ決断した。

 

「”タンホイザー”起動」

 

その言葉にクルー達全員が息を飲む。言葉を継ぐまもないままタリアは冷徹に告げる。

 

「”ユニウスセブン”落下阻止は何があってもやり遂げなくてはならない任務だわ。…照準、右舷前方、構造体!」

 

クルーが苦々しく復唱する

 

「”タンホイザー”照準、右舷後方、構造体」

 

タリアはチラリ、と後ろを見る。

後ろにいるラクスは赤く燃えているガラスの向こうを冷静な面持ちで見つめているのは”セイバー”…彼女がこの状況を生き延びる事を信じているのだとタリア含むクルー達は短い間であったが彼女とラクスが固い絆で結ばれていることを見て取れた。彼女もまたこの一射の重大さを知っている…その後の結果がどの様な事を産み出すのか…真摯に、覚悟を決めて見据えていた。

 

「……”ローエングリン”照準、右舷前方、構造物!」

 

同じく”ドミニオン”でも”艦主砲”での破砕作業を決行しようとしていた。

その号令を聞いてコレットが声を上げようとするが他クルー達は覚悟を決めた表情で艦長の判断を指示した。

 

「艦長ッ」

 

「コレット准尉…鬼、悪魔と罵ってもらっても構わない。だが、我々は”あれ”を破壊するために派遣された。アスカ特務少尉とレインズ大佐も承知の上だ。あれを壊さねば未来はない」

 

艦長席に座るナタルがオペレーターシートに座るコレットに柔らかな微笑を浮かべる。

 

「其にな准尉。この状況でも必ず奴らは帰ってくる。此よりもひどい状況に昔に私たちは叩き込まれたことがあるのでな」

 

コレットはナタルの言葉を信じた。いや信じられたと言うべきだろうか。

復唱し武装を起動させる。

 

「…!はいっ…”ローエングリン”一番、二番。照準右舷前方、構造物」

 

復唱するコレットの声が艦橋に響き渡り”ドミニオン”の両舷下部に備えられた”ローエングリン”が起動し同時に”スサノウ”のローエングリン”も起動しユニウスセブン”へ向けられた。

同時に”タンホイザー”も起動して狙いを定めた陽電子の波動が目標へ放たれる。

次の瞬間地球へ落下していた”ユニウスセブン”が破片となって地球へ降り注いだのを二人の女性艦長は散らばった破片巻き込まれていない事を祈り親友達は無事に帰ってくることを祈っていた………。

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