ARMORED CORE VERDICT DAY“BREAK”   作:KM_ACVDミグラント

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008 あっけない結末

 夕暮れの砂漠。落ちかけの日の下。橙に染まる砂の大地。線路が走り、廃墟の駅舎が並ぶ。その上に、二つの影。二機の、アーマード・コア。

 緑色のAC。白いしゃれこうべのような頭を持つ中量二脚型。

 赤色のAC。黄金に輝く一つ眼の中量二脚型。背中には、六つの巨大なチェーンソーが繋がった、巨大なる暴力。オーバード・ウェポン。グラインドブレード。

 AC“クレイニアム”と、AC“アラストル・ブーロー”。

『来たか、ダン』

「――コックス」

『始めよか。仲良くおしゃべりするような仲でもないやろ。――死んでもらうで、今度こそ』

 そして、二機は向かい合う。向かい合うしゃれこうべと黄金。両者は睨み合い――一気に、ブースターを全開にして飛び出した。

 お互いが、お互いの射程距離に到達する。

 その途端、コックスは機体を蛇行させながら、大きく左に回り込んだ。アラストル・ブーローの両肩が開き、現れるはミサイルポッド。12発のショートレンジミサイルが飛び出す。

 降り注ぐような機動で飛んでくるミサイル。しかし、ダンは構わずに前進。クレイニアムの機体は、勢いよく突っ込んでいく。ミサイルを被弾しながらも、ブースターの出力で無理やり突き進む。

 バトルライフルとヒートマシンガンを撃ちながら距離を詰めてくるクレイニアム。コックスはライフルを撃ち返して対抗。高貫通型のライフル弾が次々と突き刺さっても、ダンは前進を止めない。

 距離が縮まって、近距離と言えるぐらいにまで。ダンは、ヒートマシンガンをショットガンに換装。そのまま、引き金を絞る。撃って、撃って、撃つ。

 コックスは散弾を喰らいながらも、パルスマシンガンを撃ちながら後退していく。そして、ブースターを吹かしてもう一度大きく後退したかと思うと、またもミサイルをフルバースト。12発のミサイルがダンを襲う。

 ダンはそれを喰らいながらも、喰らいつくように突き進んでいく。右手にはヒート・パイルバンカー。

「――おおぉぉォッ!」

 ダンが大きく振りかぶったのを見て、左に回避するコックス。しかし、ダンはその場でドリフトをするように急速ターン。ヒートパイルを突き出す。

 コックスは咄嗟に左腕で防御。直後、二つの杭が前腕を貫く。

『ぐ……!』

 コアまでは貫通しなかったものの、左腕の中で弾頭が炸裂。前腕が爆ぜる。

『――へ、やっぱ、巧いわ。そんな武器、普通当たらんて……!』

 言いながら、コックスは蹴りを繰り出す。

 しかし、ダンは飛び退き、銃に換装して構え直す。

「死ななかったか。だが、次で殺してやる。いや――確実に殺す」

『…………なぁ、ダン。お前は俺が裏切ったの、怒っとるんやろ』

「あ?」

『――俺だって裏切りとうなかったよ、殺しとうなかったよ。お前らはクズや、けど――確かに、心がある人間やった。スパイになって潜入して、それを知ってしもうたからな』

 ライフルを撃ちながら、大きく回り込む。

 コックスは震える声で言う。

『お前らが心も何もない怪物だったらどれだけ良かったことか。でも、人と知ったうえで俺はお前らを殺す。何でか分かるか?』

「…………っ」

 ダンが動揺した一瞬、ライフルの弾がダンの手からショットガンを弾いた。ダンは体制を立て直すと、バトルライフルを連射、コックスはそれをジグザグに躱す。

 コックスは、激情に駆られたように叫ぶ。

『お前らが俺達の家族を殺したからや! お前らは、仲間を“家族”いうて大切にするよなぁ⁉ 何で、お前らが虐げてきた連中にも家族がいると思えへんのや! クズが……クズ共が……ッ!』

 コックスは、勢いよくペダルを踏み込んだ。そして、ライフルを乱射しながら突っ込んでいった。

「――コックス!」

『胸糞悪いわ、こなクソがぁッ!』

「それでも俺はお前が憎い! 俺達ZEBRAはクズだ。分かってる、だがな――俺を救ってくれた家族なんだよ!」

 ダンは、ハンガーからヒートマシンガンを抜いて、バトルライフルと共に構えて突っ込んでいった。地面を蹴ってぐんと浮き上がり、そのまま、乱射しながら低空飛行。

 コックスは弾丸を受けながらも、回り込もうと円を描くような機動でダンの周りを回る。

 そのままの姿勢で機体を横に傾け、無理やりダンの方向を見る。そして、その体制からショートレンジミサイルを発射。ダンの周囲で、大量の弾頭が炸裂する。

 しかし、ダンはそれらを躱して、爆炎の中から飛び出した。そのまま勢いよく突っ込んでいき――蹴りを放つ。

『――クソッ!』

 コックスは咄嗟に飛び退くが、蹴りは右腕のライフルを直撃。弾き飛ばされたライフルは、遠くに飛んでいき、砂に埋もれた。

「貰った……!」

 ダンはパイルバンカーを放つが――その杭先は、空を切る。HEAT弾頭の薬莢が排出されて、残弾がゼロに。

 ダンはパイルバンカーを投げ捨て、素早く離脱する。

 ――“ぞくり”。

 その時、ダンの背筋が凍り付いた。今までの比ではないほどの、嫌な予感。鼻が曲がるほどの、濃密な死の匂い。

 一気に遠くまで飛び退いて、コックスの方を見る。

『――まだや、まだ、終わってない!』

 コックスは、ACの左腕をパージした。そして、そこに背中からエネルギーケーブルを無理やり接続。右腕に接続するは、巨大な殺意の塊。

 六枚のチェーンソーが集まったそれは、ゆっくりと動きだし、まるで大きな翼のように広がる。それと同時に、黄色く光る刀身が、ゆっくりと赤熱し始めた。その熱は、アラストル・ブーローの機体全体に伝播していき、機体から、どす黒い煙が立ち昇り始める。

 禍々しく陽炎に歪んだその刃は、ゆっくりと集まっていき、まるでミキサーの刃のような回転機構を作り出す。

 甲高い音が鳴り始め、異様なまでの威圧感を、アラストル・ブーローの右腕は纏う。

 高速回転する六つの刃が、丸ごと回転を始めた。ゆっくりと、されど確実に加速していく。

『いくで』

 そして、とんでもない勢いで突っ込んでいった。ブースターは、出力の限界をも超えて炎を吐き出している。

「――くそ、冗談じゃないぞ……!」

 ダンは勢いよく距離を取って逃げようとする。しかし、アラストル・ブーローの機体は、異常なほどの勢いで追いすがる。

「く、来るなッ!」

 ダンは両手の銃を撃ちながら後退するが、アラストル・ブーローは止まらない。結果として距離はどんどん縮まっていく。

「――チィッ!」

 ダンは両手の銃を投げ捨てて、さらに機体を加速させる。だが――ブースターは、ぷすんと音を立てて止まってしまう。

「――エネルギー切れか! こんな時に!」

 追いすがる、アラストル・ブーロー。

 死刑執行人は、すぐそこに。

「やめろ……、来るな……! 来るんじゃねぇぇっ!」

『――死ねや』

 突き出される、高速回転する六つの刃。

 クレイニアムは、熱と刃の濁流に飲まれていく。ミキサーにかけられたトマトのように、あっけなく砕け散っていく。復讐の象徴たる白いしゃれこうべも、誇りたるZEBRAのエンブレムも、全てミキシングされていく。

 あっけなく。

 

 

 黒煙を上げる、深紅のAC。その眼前には、原型を留めないスクラップ。

 背負う六つの刃には、大量のオイルが、べったりと。

「もう、動かんか」

 操縦桿を動かしても、機体はピクリとも動かない。コックピットハッチも、開かない。

「――俺は、何がしたかったんやろな……」

 コックスは、顔を上に向けた。軽く、天を仰ぐように手を挙げる。

「お前を仲間と思ってた。か――」

 そして、ぴったりと閉じていた糸目を開ける。エメラルドのような目が、露になる。

「俺も、そう思ってたよ」

 その時、辛うじて動いていたセンサーが、多数の反応を捉えた。コックスを囲むように現れた、ZEBRAの軍勢。モニターから見る限り、その全てが重火器を構えている。

 コックスは、フッと笑った。そして、ため息を吐く。

「――ダチを殺して、ただそれだけ。俺のしたことは、何のためになった?」

 そして、力を抜いて、一言。

「――“ざまーみろ”」

 耳をつんざくような轟音の嵐が、辺り一帯を埋め尽くした。

 

 ―― ―― ――

 

 ZEBRAは、今も昔も変わらず悪事を働いている。誰が生きようが、誰が死のうが、それは決して変われない。

 ビルの屋上、一人の影。

 浅黒い肌の、巨躯の男。濃いサングラスを掛けた彼は、静かに煙草を吸っていた。

 咥えた煙草をつまんで、天に向ける。

「お前もどうだ? 兄弟」




ダン・G・バローとコックス・ジューダ。二人の物語はこれで終わり。

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