ARMORED CORE VERDICT DAY“BREAK” 作:KM_ACVDミグラント
夕暮れの砂漠。落ちかけの日の下。橙に染まる砂の大地。線路が走り、廃墟の駅舎が並ぶ。その上に、二つの影。二機の、アーマード・コア。
緑色のAC。白いしゃれこうべのような頭を持つ中量二脚型。
赤色のAC。黄金に輝く一つ眼の中量二脚型。背中には、六つの巨大なチェーンソーが繋がった、巨大なる暴力。オーバード・ウェポン。グラインドブレード。
AC“クレイニアム”と、AC“アラストル・ブーロー”。
『来たか、ダン』
「――コックス」
『始めよか。仲良くおしゃべりするような仲でもないやろ。――死んでもらうで、今度こそ』
そして、二機は向かい合う。向かい合うしゃれこうべと黄金。両者は睨み合い――一気に、ブースターを全開にして飛び出した。
お互いが、お互いの射程距離に到達する。
その途端、コックスは機体を蛇行させながら、大きく左に回り込んだ。アラストル・ブーローの両肩が開き、現れるはミサイルポッド。12発のショートレンジミサイルが飛び出す。
降り注ぐような機動で飛んでくるミサイル。しかし、ダンは構わずに前進。クレイニアムの機体は、勢いよく突っ込んでいく。ミサイルを被弾しながらも、ブースターの出力で無理やり突き進む。
バトルライフルとヒートマシンガンを撃ちながら距離を詰めてくるクレイニアム。コックスはライフルを撃ち返して対抗。高貫通型のライフル弾が次々と突き刺さっても、ダンは前進を止めない。
距離が縮まって、近距離と言えるぐらいにまで。ダンは、ヒートマシンガンをショットガンに換装。そのまま、引き金を絞る。撃って、撃って、撃つ。
コックスは散弾を喰らいながらも、パルスマシンガンを撃ちながら後退していく。そして、ブースターを吹かしてもう一度大きく後退したかと思うと、またもミサイルをフルバースト。12発のミサイルがダンを襲う。
ダンはそれを喰らいながらも、喰らいつくように突き進んでいく。右手にはヒート・パイルバンカー。
「――おおぉぉォッ!」
ダンが大きく振りかぶったのを見て、左に回避するコックス。しかし、ダンはその場でドリフトをするように急速ターン。ヒートパイルを突き出す。
コックスは咄嗟に左腕で防御。直後、二つの杭が前腕を貫く。
『ぐ……!』
コアまでは貫通しなかったものの、左腕の中で弾頭が炸裂。前腕が爆ぜる。
『――へ、やっぱ、巧いわ。そんな武器、普通当たらんて……!』
言いながら、コックスは蹴りを繰り出す。
しかし、ダンは飛び退き、銃に換装して構え直す。
「死ななかったか。だが、次で殺してやる。いや――確実に殺す」
『…………なぁ、ダン。お前は俺が裏切ったの、怒っとるんやろ』
「あ?」
『――俺だって裏切りとうなかったよ、殺しとうなかったよ。お前らはクズや、けど――確かに、心がある人間やった。スパイになって潜入して、それを知ってしもうたからな』
ライフルを撃ちながら、大きく回り込む。
コックスは震える声で言う。
『お前らが心も何もない怪物だったらどれだけ良かったことか。でも、人と知ったうえで俺はお前らを殺す。何でか分かるか?』
「…………っ」
ダンが動揺した一瞬、ライフルの弾がダンの手からショットガンを弾いた。ダンは体制を立て直すと、バトルライフルを連射、コックスはそれをジグザグに躱す。
コックスは、激情に駆られたように叫ぶ。
『お前らが俺達の家族を殺したからや! お前らは、仲間を“家族”いうて大切にするよなぁ⁉ 何で、お前らが虐げてきた連中にも家族がいると思えへんのや! クズが……クズ共が……ッ!』
コックスは、勢いよくペダルを踏み込んだ。そして、ライフルを乱射しながら突っ込んでいった。
「――コックス!」
『胸糞悪いわ、こなクソがぁッ!』
「それでも俺はお前が憎い! 俺達ZEBRAはクズだ。分かってる、だがな――俺を救ってくれた家族なんだよ!」
ダンは、ハンガーからヒートマシンガンを抜いて、バトルライフルと共に構えて突っ込んでいった。地面を蹴ってぐんと浮き上がり、そのまま、乱射しながら低空飛行。
コックスは弾丸を受けながらも、回り込もうと円を描くような機動でダンの周りを回る。
そのままの姿勢で機体を横に傾け、無理やりダンの方向を見る。そして、その体制からショートレンジミサイルを発射。ダンの周囲で、大量の弾頭が炸裂する。
しかし、ダンはそれらを躱して、爆炎の中から飛び出した。そのまま勢いよく突っ込んでいき――蹴りを放つ。
『――クソッ!』
コックスは咄嗟に飛び退くが、蹴りは右腕のライフルを直撃。弾き飛ばされたライフルは、遠くに飛んでいき、砂に埋もれた。
「貰った……!」
ダンはパイルバンカーを放つが――その杭先は、空を切る。HEAT弾頭の薬莢が排出されて、残弾がゼロに。
ダンはパイルバンカーを投げ捨て、素早く離脱する。
――“ぞくり”。
その時、ダンの背筋が凍り付いた。今までの比ではないほどの、嫌な予感。鼻が曲がるほどの、濃密な死の匂い。
一気に遠くまで飛び退いて、コックスの方を見る。
『――まだや、まだ、終わってない!』
コックスは、ACの左腕をパージした。そして、そこに背中からエネルギーケーブルを無理やり接続。右腕に接続するは、巨大な殺意の塊。
六枚のチェーンソーが集まったそれは、ゆっくりと動きだし、まるで大きな翼のように広がる。それと同時に、黄色く光る刀身が、ゆっくりと赤熱し始めた。その熱は、アラストル・ブーローの機体全体に伝播していき、機体から、どす黒い煙が立ち昇り始める。
禍々しく陽炎に歪んだその刃は、ゆっくりと集まっていき、まるでミキサーの刃のような回転機構を作り出す。
甲高い音が鳴り始め、異様なまでの威圧感を、アラストル・ブーローの右腕は纏う。
高速回転する六つの刃が、丸ごと回転を始めた。ゆっくりと、されど確実に加速していく。
『いくで』
そして、とんでもない勢いで突っ込んでいった。ブースターは、出力の限界をも超えて炎を吐き出している。
「――くそ、冗談じゃないぞ……!」
ダンは勢いよく距離を取って逃げようとする。しかし、アラストル・ブーローの機体は、異常なほどの勢いで追いすがる。
「く、来るなッ!」
ダンは両手の銃を撃ちながら後退するが、アラストル・ブーローは止まらない。結果として距離はどんどん縮まっていく。
「――チィッ!」
ダンは両手の銃を投げ捨てて、さらに機体を加速させる。だが――ブースターは、ぷすんと音を立てて止まってしまう。
「――エネルギー切れか! こんな時に!」
追いすがる、アラストル・ブーロー。
死刑執行人は、すぐそこに。
「やめろ……、来るな……! 来るんじゃねぇぇっ!」
『――死ねや』
突き出される、高速回転する六つの刃。
クレイニアムは、熱と刃の濁流に飲まれていく。ミキサーにかけられたトマトのように、あっけなく砕け散っていく。復讐の象徴たる白いしゃれこうべも、誇りたるZEBRAのエンブレムも、全てミキシングされていく。
あっけなく。
黒煙を上げる、深紅のAC。その眼前には、原型を留めないスクラップ。
背負う六つの刃には、大量のオイルが、べったりと。
「もう、動かんか」
操縦桿を動かしても、機体はピクリとも動かない。コックピットハッチも、開かない。
「――俺は、何がしたかったんやろな……」
コックスは、顔を上に向けた。軽く、天を仰ぐように手を挙げる。
「お前を仲間と思ってた。か――」
そして、ぴったりと閉じていた糸目を開ける。エメラルドのような目が、露になる。
「俺も、そう思ってたよ」
その時、辛うじて動いていたセンサーが、多数の反応を捉えた。コックスを囲むように現れた、ZEBRAの軍勢。モニターから見る限り、その全てが重火器を構えている。
コックスは、フッと笑った。そして、ため息を吐く。
「――ダチを殺して、ただそれだけ。俺のしたことは、何のためになった?」
そして、力を抜いて、一言。
「――“ざまーみろ”」
耳をつんざくような轟音の嵐が、辺り一帯を埋め尽くした。
―― ―― ――
ZEBRAは、今も昔も変わらず悪事を働いている。誰が生きようが、誰が死のうが、それは決して変われない。
ビルの屋上、一人の影。
浅黒い肌の、巨躯の男。濃いサングラスを掛けた彼は、静かに煙草を吸っていた。
咥えた煙草をつまんで、天に向ける。
「お前もどうだ? 兄弟」
ダン・G・バローとコックス・ジューダ。二人の物語はこれで終わり。
人気投票アンケート
-
ダン・G・バロー/クレイニアム
-
マルコ・ゴンザレス,Jr.
-
コックス・ジューダ/アラストル
-
アルド・ゴールドスミス/オレイカルコス
-
ダークスリーパー/イールトラップ
-
ソラロ・F・コブラ/サンドバイパー
-
カマキリ・ゴロー/マンティスサイズ