ARMORED CORE VERDICT DAY“BREAK” 作:KM_ACVDミグラント
砂漠の街MALDAN CITY、年中砂嵐の絶えないここの地下には、戦場となった地上からかき集めたガラクタで築かれた、歪な地下都市があった。
金属で覆われたサビ臭い世界。つぎはぎの天井と壁からは絶えず砂が漏れていて、乱雑に配線されたケーブルは所々漏電しており、下手に触れれは感電死。陽の光が差すところは、地上に繋がる長い長い階段のみ。その階段からは灼熱の風が吹き込み、どこであろうと蒸し暑い。
治安も決して良いとは言えず、怒声と銃声の響かない日はない。犯罪組織ZEBRAの触手が伸びており、昼夜を問わず、怪しげな男たちがアサルトライフル片手にうろつく。
そんな地獄のような街で、少年は育った。
少年は、短い金髪と、青い瞳の少年であった。服はあちこちがつぎはぎで、体のあちこちには生傷が。げっそりとこけた頬と、枝のように細い手足は、生きてきた環境を想像させる。
砂に汚れた瓶を片手に、少年は重たい足取りで通りを歩く。狭い通りの真ん中には、胸から血を流して倒れた死体。血は乾いているが、代わりに猛烈な腐臭。
少年は僅かに顔を歪めると、死体を跨いで通りを過ぎていく。
「ただいま……」
錆び付いた重いドアを開け、少年は呟くように言う。埃っぽい部屋の中には、険しい顔をした男が座っていた。髪の色も目の色も少年のそれと似通っていて、少年ほどではないが、痩せている。髭は伸び放題で、薄汚れている。
「遅い! どれだけ待たせるんだ!」
「ご、ごめんなさい……!」
男は立ち上がり、どっかどっかと歩いて少年の前に立つ。「ひっ」と声を漏らし僅かに俯いた少年から、男は瓶をひったくる。
そして、瓶を開けて中身を一気にあおる。しかし、半分ほど飲んだ所で顔を顰め、飲み口から口を離す。
「――マズい!」
そう叫ぶと、男は瓶を壁に向かって投げつけた。割れた瓶の破片が、床に散らばる。
「安酒買ってきやがって! このボンクラが!」
男は少年の髪を掴み、鍔を散らしながら怒鳴りつける。少年は顔を引きつらせながらも、なんとか言葉を口にする。
「だ、だって、お金、足りな――」
「言い訳すんじゃねぇ!」
男は少年を地面に叩きつけるように投げ飛ばした。髪が何本か抜けて、それを手を払って捨てる。そして、男は少年の頭を何度も踏みつけた。強く、叩き潰すように、怒りを叩きつける様に、何度も、何度も。
「や、やめて。父さん……!」
「うるせぇ!」
最後に少年を力強く蹴飛ばすと、男は大きくため息を吐いた。そして、丸椅子を引き寄せどっかりと座ると。散らばったガラス片を指して言う。
「片付けろ」
「はい……」
これが、少年の日常。これが、少年の人生であった。
―― ―― ――
少年は泣いていた。誰も来ないような裏通りで、一人、膝を抱えて泣いていた。
父親に家から締め出され、あてもなくここにやってきたのだ。
とめどなく出る涙の理由は、少年にも分からなかった。それでも、少年はこのまま泣いていたいと思った。このまま涙の一粒となって消えてしまいたいと思った。
その時、通りの表から声が聞こえてきた。時折「ぎゃはは」と下品な笑い声。複数人のように聞こえた。声はだんだんと近づいて来て、裏通りの前で止まった。
「お、なんかガキがいるぜ」
「ホントだ、おい、なんか泣いてね?」
そんな会話を交わしながら、男たちは少年の方に近づいて行く。少年は、近づいてくる男たちが怖かった。父親のように、自分を殴ったり、蹴るのではないかと思ったからだ。
けれど、逃げたりしようとは思えなかった。いっそ、ここで。と、思ったのかもしれない。
その中の一人、ニット帽の男の手が、少年に近づいてきた。少年が目をつぶったその時――
「おう坊主、ガム食うか?」
「――え?」
少年が目を開くと、目の前には開かれた手。そして、その上には銀紙に包まれた四角いガムがあった。
「――なるほどなぁ」
サングラス男が、腕を組みながら深く頷いて――
「お前の親父クズだなーッ! 俺らといい勝負だよ!」
盛大に笑った。吹き出して、膝を打って笑った。ニット帽の男とネックウォーマーの男もつられて笑った。
少年は俯いて、膝の上で拳をぎゅっと握る。そんな少年の様子を見て、男は顎に手を当て考え込む。しばらく考えた後、ニット帽の男が言う。
「……お前、俺らんとこくるか?」
「おじさんたちの、所?」
男は「おうよ」と頷き、少年の前にしゃがみ込んだ。そして、俯いたその顔を見つめる。
「俺達はZEBRA。お前みたいなはぐれモノの集まりさ」
―― ―― ――
かつて栄華を極めた大都市、砂に埋もれたVICTORIA CITY。その一角に、ZEBRAの本部はあった。
巨大なコンクリートの壁で囲まれた、難攻不落の要塞であるZEBRA本部。その中にあるビルの屋上で、一人の男が煙草を咥え、紫煙をくゆらせていた。
金髪の、青い目の男。その左眼は、黒い眼帯に隠れている。無精ひげは伸び気味で、あまり手入れをしていない様子。羽織る緑色のフライトジャケットは、吹き付ける風に、たゆたうように揺れている、
本部の街並みを眺めながら、息を吐く男。紫煙は緩やかに渦を巻き、風に散って消えた。
男の名はダン・G・バロー。壊滅した、ZEBRAの麻薬栽培拠点の元メンバー。
「……やっぱりここだったか、兄弟」
そう言って現れたのは、浅黒い肌の巨躯の男。マルコ・ゴンザレス,Jr.。彼はダンの隣へ行くと、二本指を差し出した。
それを認めたダンはやれやれと言った様子で箱から煙草を一本取り出し、銀のジッポ―で火を点けて、ゴンザレスの指に挟ませた。
「サンキュー」
ゴンザレスは煙草を咥えて、ややサビた手すりに寄りかかった。手すりの纏っていた砂が、少し剥がれて落ちる。
「……なぁ、ダン」
「なんだ」
「本部からの伝達だ。諜報班が“LYCAON”の情報をキャッチした。……近いうちに、本部へ攻勢を仕掛けてくるらしい。――奴等に情報を流したのは、コックスだ」
その言葉に、ダンは少し固まって――ペキ、と煙草を折った。
「コックス……!」
「最初っからLYCAONの諜報員だったらしい、あの狐野郎は。ったく、あいつのおしゃべりも全部演技だったと思うと、胸が悪くなってくるぜ」
LYCAON――反ZEBRA自警団。
「あの野郎には、俺が引導を渡す」
「――おう」
ダンは折れた煙草を地面に落とすと、靴で踏みつけて火を消した。
「哨戒に出てくる」
「了解。俺も行こうか?」
「いい。その辺の賊連中にやられるほどヤワじゃない」
ダンは屋上に供えられた塔屋に入って行き、階段を下って行った。
基地のACドックの中、ダンは目の前のセクターに収まる一機のACを見上げる。
やや陰りを帯びた右目で、ACを見つめる。
角張った中量二脚型フレーム。左脚には、大きな盾型の厚い装甲板。グリーンベースの暗いカラーリング。丸みを帯びた頭だけは白く塗られており、その色は頭蓋骨を思わせる。頭部前面のスリットからは、複数のカメラアイが覗く。
右手にはバトルライフル。左手にはヒートマシンガン。左ハンガーにはショットガン。そして、最も目を引くのは右ハンガーのパイルバンカー。
全体的にインファイト型に纏められたAC。ダンはゆっくりとACに歩みより、その脚に触れた。ゆっくりと、冷たい装甲を撫でる。
「……“
それが、ACの名前。それが、AC乗りとなったダンの、相棒の名前であった。
ACピクチャ&フレーバーテキスト
ダン・G・バロー/クレイニアム
https://www.pixiv.net/artworks/140695304
ACVD対戦DISCODE鯖「ミグラントの集い」
https://disboard.org/ja/server/1465729386073297006