ARMORED CORE VERDICT DAY“BREAK” 作:KM_ACVDミグラント
砂漠の一角、即席で設営された拠点。並ぶ緑色のテントの一つ、赤毛の男が、椅子に座ってくつろいでいた。金属のカップに注がれた、黒いフィーカを一口啜る。
「――いよいよやね」
コックス・ジューダ。LYCAONのエースであり、幹部の一人。
机を挟んで反対に座っていた男、白金のやや長い髪をオールバックに纏めた、色の濃いサングラスの男が頷く。
男の名はアルド・ゴールドスミス。LYCAON現リーダー。
「あぁ。――積年の恨みを、晴らす時が来た。これだけ兵力を用意した上――敵は、ダークスリーパーの罠で何機も沈んでいる。勝ちの目はこちらにある」
「それはどうやろか」
アルドはコックスの言葉に、一瞬面食らったような顔をした。そして、小さくため息を吐いてから、冗談交じりに言う。
「コックス、お前が弱音なんて珍しいな」
「そんなんやない。ただ、ダークスリーパー殺ったパイロットの事が気になってな」
「あぁ、そいつは心配ない。諜報員によると落としたパイロットは最近ACに乗り始めたルーキーだ。奴を墜とせたのも偶然だろう」
その言葉に反応するように、コックスは目を開いた。糸目故いつもは見えない、グリーンの瞳がアルドを見つめる。
「そいつは、“ダン・G・バロー”なんて名前じゃないやんな?」
「……いや、その名前で間違いない。知ってるやつか?」
「あぁ……俺があの基地に潜伏してた間にな。情報ぶっこ抜いたからぶっ潰しとこおもて、離脱のタイミングであの基地襲撃したのは言ったよな?」
「あぁ」
「そん時戦ったAC乗りがあいつや。強かったで、初めてACに乗ったとは思えんほどにな。それが、経験を積んで俺らの前に立っとる。危険や、極めて」
「……お前がそこまで言うとはな」
「臆病風に吹かれたわけちゃうで。――あいつは、俺がキッチリ殺す。だから、安心しいや」
「……そうか。頼んだぞ」
「おう」
そう言うと、コックスは幕を捲って、テントの外に出て行った。肌を焼くような陽光が、薄暗いテントに目の慣れたコックスの瞳を照らす。
「――見といてや」
コックスは、首に下げたロケットペンダントを開ける。
中には、赤毛の少年と、その両親と思われる男女が笑顔で映る写真が。三人とも身なりは良くないが、それでも、幸せそうに笑っていた。
―― ―― ――
VICTORIA CITY。砂に塗れた高いビルの廃墟が立ち並ぶ一帯。ZEBRAの本部があるそこは今、戦場となっていた。無数の弾丸と砲弾が降り注ぎ、廃墟が次々と倒壊していく。そこに隠れ住んでいた人々と共に、潰えていく。
進軍する通常兵器、偵察型のヘルカイトと防衛型のゴーレムの群れ。そのはるか後方からは狙撃型のウェタが、伸びた長い砲身を敵に向け、次々と狙撃を飛ばしていく。
その様子はまさに混沌。ZEBRA側の機体もLYCAON側の機体も、次々と撃墜されていく。
――ダン・G・バローは、ZEBRA本部のドックで、クレイニアムのコックピットの中に居た。画面には光が灯らず、薄いライトだけが照らす。そんな中、ダンは静かに目を閉じていた。外からは、機械音。長く続いていたそれは、ぴたりと止んだ。
『応急修理は完了した、出れるぞ』
ゴンザレスの声に、ダンは答える。
「了解だ。――行くぞ、クレイニアム」
――メインシステム、戦闘モード起動――
クレイニアムの目に、赤い光が灯る。
目の前のシャッターが開く。同時に、ダンは飛び出した。ビルとビルの間を滑るように進んでいき、ZEBRA本部を囲む巨大なコンクリート壁の前へ、そのまま門を抜け、戦場へ。
坂の上にあるZEBRA本部から飛び出し、そのまま高度を保ち飛行。機体の高度は変わらず、地面の方が下がっていく。
機体は、そのまま敵部隊上空へ。
クレイニアムのコアが、小型のリコンユニットを機体上部に放つ。同時に、周囲の敵反応がモニターに表示される。
ダンはブースターを切り、敵部隊の真ん中に降下した。
クレイニアムに銃口を向ける、ヘルカイトとゴーレムの部隊。ダンは右腕のバトルライフルとヒートマシンガンをそれぞれ別方向に向け、細かいブーストによる回避軌道を取りながら弾幕を張る。所詮は量産型の通常兵器。攻撃を受けたものから次々と墜ちていく。
「……む」
その時、妙な音がした。――直後、青い二筋の閃光がダンのいる地点の上空を通り過ぎ――築かれたバリケードを吹き飛ばす。
舞い散る青い残光。ダンは、光の飛んできた方向を見る。
そこには空を飛ぶ巨大兵器。――大型戦闘ヘリ、シュヴァーンが。形状は普通の輸送ヘリとそう変わらない。が、機体の下部左右に、大型のレーザーキャノンを一門づつ、計二門搭載している。ACに搭載されるものと比べても、さらに大型。威力はそう変わらないが、弾速が強化されているタイプ。
並のACなら、一方的に破壊できるほどの戦闘力を秘めた兵器。
『死ねっ、死にやがれクズ共がッ! 俺が、俺が全員殺してやる……ッ!』
シュヴァーンのパイロットは、広域無線に怨嗟をまき散らしながらも正確な狙撃をZEBRAの部隊へ降り注がせる。ダンの事は、ビルの残骸が死角となり見えていないようだ。
その時、無線からゴンザレスの声が。
『ダン、おまえの近くを戦闘ヘリが飛んでいる』
「分かってる。レーザーキャノン搭載型の奴だろ?」
『あぁそうだ。もうすでにかなりの被害が出ている。これ以上の被害が出る前に、そいつを仕留めてくれ』
「言われなくても――行くぞ」
ダンは銃を握り直すと、残骸の影から飛び出して勢いよくブーストを吹かした。低空飛行で大通りを飛び、シュヴァーンの元に向かって行く。その姿を認めたシュヴァーンのパイロットは、二つの砲口をクレイニアムに向ける。
『ACか! わざわざ射線に出てくるとはバカな奴だ、消し飛ばしてやるッ!』
レーザーキャノンがチャージを開始した瞬間、ダンはすぐさま建物の影に飛び込んだ。つい先程までいた所に、レーザー弾が弾ける。
『避けただと……! バカな、長距離爆撃型のレーザーキャノンだぞ……ッ⁉』
言いながらも、シュヴァーンのパイロットはその場からやや退くように距離を取る。そのままゆっくりと旋回し、ダンが隠れた建物の方に砲口を向ける。
しかし、ダンはシュヴァーンの側面に回り込むように、大きく回り道をしていた。その道中に遭遇した通常兵器の部隊を蹴散らしながら。
そして、一つの高いビルを見つけると、ダンはそれの壁を連続で蹴って、ビルの上に登っていく、それに気が付いたシュヴァーンのパイロットは素早く旋回しようとするが、既にダンはビルの屋上から飛び出し、水平飛行でシュヴァーンに向かって行く。
クレイニアムの両腕がシュヴァーンの側面を捉え、両肩が開きミサイルポッドが現れる。
『し、しまっ――』
次の瞬間、シュヴァーンの左側面に炸裂弾と近接信管ミサイルが殺到。凄まじい爆風が、シュヴァーンの機体を大きく揺らす。
『うああああああッ!? クソッ! 被弾した、被弾した! て、撤退する! 援護してくれ――』
「遅い」
次の瞬間、迫ってきていたクレイニアムの左脚、分厚い装甲盾が、シュヴァーンを勢いよく蹴り飛ばした。機体が大きく凹み、プロペラが外れ飛んでいく。その機体は豪炎を上げながら錐もみになって墜落。地面に激突し、爆散した。
ダンはそのまま落下して降下し、途中でブースターを点火して勢いを殺し、着地した。
『――ヘリの撃墜を確認した。まさか、あそこから蹴りで仕留めるとはな。シビれるぜ』
「言ってる場合か。それより、次のポイントは?」
「あぁ、次は――」
―― ―― ――
しばらくして、ダンはVICTORIA CITY南端の、大きな塔があるエリアに来ていた。詳細は確認できないが、このエリアに向かった部隊からの連絡が途絶えたのだという。その原因など、一切の詳細は不明。ダンは、リコンユニットを展開しながら、エリアを進んでいく。
報告の通り、周辺にはZEBRAの機体残骸が。ごうごうと炎を上げる残骸が、そこら中に転がっていた。
「ゴンザレス。先鋒部隊の全滅を確認した。確かにここで戦闘があったようだが――妙だ、余りにも静かすぎる。まるで、何もなかったみたいだ」
『伏兵の可能性があるな、警戒しておけ』
「了解、索敵を継続する――他の部隊の状況はどうだ?」
『概ね順調。ACが何機か墜とされたが、それでもLYCAON連中の損害の方が大きい。勝ってるのは、俺達だ』
「――コックスの奴は?」
ダンの質問に、ゴンザレスはオペレーティングルームで一人、首を横に振った。
『分からん、そもそも今回の作戦に参加しているかも怪しい』
「そうか」
ダンは短く答えると操縦桿を握り直し、ペダルを踏んだ。そして、広場に出た。広場というより、以上に横幅の広い大通りとも表現できるようなそこからは、中央の塔がよく見えた。太陽を背に、逆光で真っ黒に染まった高い塔。
その最上階、大きな錆びた鐘のある所。そこに緑色の光が灯った。
――“ぞくり”。
ダンは素早く横に回避するが――クレイニアムの右肩に、何かが直撃した。大きな穴が開き内部に格納された近接信管ミサイルが誘爆。
右腕は吹き飛び、地面にゴトリと落ちた。主武装たるバトルライフルと、虎の子のヒートパイルを失う。
「――狙撃か……!」
ダンは急いでブースターを吹かし、建物の影に滑り込む。
『ほう。“外した”か。コアを撃ち貫くつもりだったのだが。――しかし、我の狙撃に気が付くとは、良いカンをしている。楽しい踊りを見せてくれそうだ』
――傭兵、“ソラロ・F・コブラ”。AC“サンドバイパー”。
砂色と黒鉄色の機体は、耐久性の高いタイプの軽量逆関節。右腕には、大きな狙撃銃。砲口から緑色の硝煙を立ち昇らせるそれは、大型の狙撃用レールキャノン。
騎士甲冑の兜のようなデザインの頭部からは、左右2つずつのカメラアイと、中央の大きなスリットアイが。
サンドバイパーの目は、ダンが逃げた方向をじっと見つめている。
ソラロ・F・コブラは狙撃の名手、狙った獲物は――逃がさない。
『ダン、何が起こった⁉ 機体が損傷シグナルを出しているぞ!』
「狙撃だ、右腕が吹っ飛ばされた。――敵は、手練れだ。恐らく先鋒部隊は奴にやられたんだろう」
『分かった。一時撤退しろ、兄弟。それ以上の深追いは危険だ』
「――いや、それは難しい」
『なんだって?』
「奴の狙撃武器――何かは分からんが、異常な弾速だった。威力も。ライフルやスナイパーキャノンの類じゃない。下手に背中を見せたりすれば、一撃で撃墜されてもおかしくない」
『――分かった。増援を向かわせられないか、上に打診する。――死ぬなよ兄弟』
「当たり前だ」
ダンは塔の方向を警戒しながらも、リコンユニットを展開し周囲を索敵する。
建物と建物の間を滑走し、塔の方向を見る。そこには、先程と同じように緑色の光が灯っていた。それを見たダンは急いで建物の影に滑り込む。直後、つい先程までいた所に弾丸が着弾した。地面に刻まれた弾痕の位置と角度から察するに、少し動きが遅ければコア直撃コース。
「――野郎、完全にこっちを捉えてやがるな」
恐らく広範囲型か散布型のリコンユニットを搭載している。そう判断したダンは、しかし、特段の対処法を思いつくことも無く、ただ狙撃から身を隠すように動く。
蛇から逃げ回る、鼠のように。
しばらく隠れていたダン。
ダンは、建物の影でじっと息を顰めていた。位置がバレているのは分かっているが、それでも、動くリスクの方が大きいからだ。
結論、ダンは何もできていなかった。
壁に背中を向け塔の方向からの狙撃を防ぎつつ、後方を警戒。
――その時、モニターの端に黒い影が映った。それを見たダンの背筋を、何か冷たいものが貫く。
ダンが地面を蹴って左に飛び退いた直後。また、さっきまで立っていた所に弾痕が。これも当たっていたらコアを貫いていたであろう位置だ。
ダンは影の見えた方向を見る。ここでようやく、ダンは敵の姿を捉える。
レールキャノンを構え、こちらを見つめるスリットアイ。ACサンドバイパーを。
ダンはブースターを全開で吹かして離脱、そのまま迷路のようになった建物の間を駆け抜けていく。
「クソ、厄介な奴だ。やりにくい……!」
その時、ダンはあることに気が付く。――敵が、先程からかなり慎重に狙ってきているという事実に。通常なら、すぐに二撃目を撃った方がいい。回避した先の相手を狙って、確実に当てられるからだ。
だが、敵はコアだけを狙って正確に、一発ずつ狙撃してきている。
全滅した先鋒部隊。特殊な狙撃武器。そして、敵の不自然な動き。
ダンはそこで、一つの答えに辿り着いた。
「――弾切れが近いのか?」
考えてみれば当然だ、とダンは思う。スナイパーキャノンの類は、多くの場合装弾数が少ない。いかんせん弾が大口径なために、大量に積むことが出来ないからだ。
さらに、ソラロは高所という有利を捨て、近づいてきた。これは、ダンにとって絶好のチャンスでもある。
「なら、勝機はある」
ダンは建物の壁を蹴って、屋上に乗り出した。そこからは、移動しているサンドバイパーの姿が見えた。当然、レールキャノンは構えるどころか、展開すらしていない。折り畳み式のレールキャノンは、展開しなければ撃てない。
ソラロはレールキャノンを構える。だが、その瞬間ダンは屋上から建物の陰に飛び込んだ。展開してから、チャージしなければレールキャノンは撃てない。チャージせずとも一応撃つことは出来るが、それをすれば大幅な威力と弾速の減少。弾を無駄にするに等しい。
ソラロはブースターを前向きに全開で吹かして、高速で後ろに飛び下がる。そして、後ろ向きのままやや高いビルの壁を蹴って昇り屋上に。リコンを周囲に撒いてからレールキャノンを構える。
左脚を前に、右脚を後ろに。安定した射撃姿勢で、ダンを待ち構える。
その時、リコンの一つが反応した。――前方。狙い通りの方角。その時点で、ソラロはレールキャノンのチャージを開始した。
『仕留めた……!』
クレイニアムの機影が屋上から飛び出した刹那――引き金を絞る。
『何だ?』
モニターに映るクレイニアムは、何か金属の板のようなものを持っていた。焼け焦げたシールド。先程ソラロが全滅させたZEBRAの部隊、その防衛型、ゴーレムに搭載されていたものだ。
ダンはヒートマシンガンを捨てていた。残骸から引っぺがした盾を持って、ソラロに向かっていった。ブースターを点火し突き進み、、建物の屋上を次々と飛び移りながら。
「どうした、撃って来いよ!」
『……やるではないか、この我を出し抜くとは』
ソラロはレールキャノンを捨てた。もう、弾がないのだ。
向かってくるダン、クレイニアムを待ち構える。
レールキャノンを捨てたことを確認したダンは、盾を投げ捨て、ハンガーのショットガンに換装。そのまま、サンドバイパーに銃口を向け、猛然と突っ込んでいく。
その時、サンドバイパーの右肩からロケットポッドが展開された。飛び出した三発の弾頭が、ダンに向かって行く。ダンは咄嗟に脚でブレーキを掛ける。
ダンの目の前に着弾した弾頭は――猛烈な閃光を放ち、ダンの視界を真っ白に染めた。
「――閃光弾!」
フラッシュロケット。センサー妨害兵器。
クレイニアムのモニターは光が焼き付いて。なにも見えないコックピットの中、ダンは咄嗟にペダルを強く踏み、操縦桿を後ろに倒す。
そのまま真後ろに跳躍。
戻りつつある視界。ぼやけた視界の中ダンが見たのは、飛び降りてきたサンドバイパーと、さっきまで立っていた場所を袈裟切りにするレーザーブレード。地面を掠った刃先が、コンクリートをどろどろに焼き溶かす。
サンドバイパーは、ブレードを振り抜いた勢いでそのまま一回転。流れる様に、右腕のショットガンをダンに向ける。二つの銃身と二つのチューブ弾倉が縦に並んだ、板のような形状の重ショットガン。
飛び出した散弾が、クレイニアムの機体を揺らす。
「――グッ⁉」
機体が硬直する。
ダンは左肩から近接信管ミサイルを放ちつつ、ブースターで飛び退った。
ソラロは軽量逆関節の跳躍力を活かして高く跳躍し、左腕のレーザーブレードをヒートマシンガンに換装。ミサイルに向かって弾幕を張る。
一発は迎撃したものの、二発は打ち落とせず。近接信管が作動し機体付近で爆発。機体が叩き落とされる。が、ソラロは脚を縮めて衝撃を殺し、フラッシュロケットを次々と放つ。
ダンはフラッシュロケットを躱して、大回りでソラロに向かって行く。ソラロは高く跳躍し細かく何度もブースターを吹かし、後退。
しかし、ダンは喰らいつくように追いすがる。何度もショットガンを撃ちながら、距離を詰めていく。
その時、ソラロは空中でピタリと止まった。前方に飛び出し、ブースターを吹かして降下。そのまま、両足を振り上げる。
『――喰らうがいい!』
迫りくる、二つの脚。鉄をも喰らう蛇の牙。
しかし、ダンはブーストを吹かして飛び退りながら、ショットガンを構える。
ソラロのサンドバイパーは、ダンの目の前で脚を空振り。大きな隙を晒す。脚を大きく振り上げ、体勢を崩したまま。
「喰らえ」
叩き込まれる散弾。硬直した機体に向かってダンは勢いよく突っ込んでいき、装甲盾の付いた左脚を振りかぶる。繰り出される蹴り。
しかし、ソラロは寸での所で左に飛び退り、散弾と炸裂弾、フラッシュロケットを乱射しながら低空飛行で後退する。
『おぉ、危ない危ない……黄泉の川が見えたぞ』
「仕留めたと思ったんだがな。次はその黄泉の川とやらに送ってやるよ」
『中々言うな、やはり面白いヤツだ。もう一曲御一緒願おうか!』
そう言うと、ソラロは高く跳び上がった。それから、左右に機体を揺すりながら、急降下と跳躍を繰り返す。独特なステップ、敵の射線を外すための動き。
奇妙な動きでダンの攻撃を避けながら近づいて行く。
ばら撒かれるヒートマシンガンの炸裂弾が装甲を削り、ダンは焦りを募らせていく。
ダンは後退しながらミサイルを撃ち続けるが――
「――くそ、弾切れか……!」
元々、右腕を失い弾が半分減っていたのだ。当然、すぐに弾は尽きる。それを好機とみて、ソラロは回避軌道から追いすがる直進軌道に切り替える。
勢いよく突っ込んでくるソラロに、ダンは散弾を放つ。しかし、それではサンドバイパーの勢いは止まらない。
『貰った……!』
ソラロはショットガンを放ってダンの機体を固め、機体の腕を後ろに引き、レーザーブレードを突き出す。
「この――」
迫りくるレーザーブレード。ダンは、苦し紛れにショットガンを撃った。その苦し紛れに放った散弾が、レーザーブレードの本体を破壊する。
指向性を失い、弾け迸るエネルギー。それは、サンドバイパーの左腕を吹き飛ばした。
『――何だとッ!?』
「う、おおおおおああッ!」
ダンはそのままの勢いで、ブースターを吹かしてソラロの機体に激突。そのまま、左脚の装甲盾でサンドバイパーの機体を蹴った。
装甲が砕け、仰向けに倒れるサンドパイバー。黒い炎が上がり、火花が散る。
『――なるほど。面、白い――』
直後、サンドバイパーは爆散した。後に残るのは、真っ黒に焦げた機体のみ。
ダンは、コックピットの中で深くため息を吐いた。そのまま、ゆっくりとシートに体を沈める。
「ゴンザレス、聞こえるか」
『ダン。増援部隊が到着した。状況を報告してくれ!』
「勝ったよ。敵ACを撃破した」
それを聞いたゴンザレスは、絶句したのち――ふっ、と笑った。
『全くとんでもないな、お前は。右腕をやられといて、勝っちまうとは。――戦況は、完全にこっちに傾いてる。あと少しで、俺達の勝ちだ。一度帰投しろ、流石にその損傷はマズいだろう』
「あぁ、増援部隊に先導を頼んでくれ」
『了解。ご苦労だったな、兄弟』
ダンはサンドバイパーの残骸、もといソラロの死骸を一瞥すると、踵を返して飛び去って行った。VICTORIA CITY南端の小さな戦争は、こうして終わりを告げた。
ACピクチャ&フレーバーテキスト
ソラロ・F・コブラ/サンドバイパー
https://www.pixiv.net/artworks/140756066
コックス・ジューダ/アラストル
https://www.pixiv.net/artworks/140720909
ACVD対戦DISCODE鯖「ミグラントの集い」
https://disboard.org/ja/server/1465729386073297006