ARMORED CORE VERDICT DAY“BREAK”   作:KM_ACVDミグラント

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006 ZEBRA本部進攻/防衛作戦・2

「――ホンマにあんたが行くんか、アルド」

「戦況は最悪だ。ここで俺が出なければさらなる士気の低下を招く。……そう心配するなコックス。俺は“無敵の男”だ。必ず、成し遂げて見せるさ」

 砂漠の前哨基地、激しい日光に照らされる中、コックスとアルドは言葉を交わす。

 アルドはオールバックにした長めの髪を、胸ポケットから取り出した櫛で梳いた。キッチリと整えられた髪。手鏡を取り出して、「うむ」と頷く。

「これでいい。行ってくるよ」

「髪型なんてACで戦ってたら崩れるやろに……まぁええ、頑張ろか」

「あぁ」

「死ぬんやないで」

「お互いにな」

 二人はお互いの右拳をぶつけ合わせた。そして、微かに笑って踵を返す。向かう先はお互いの機体。騒がしいはずの基地に、砂を踏む音がいやに響く。

 コックスは自らの機体の前に立ち、見上げる。

 一つ眼の巨人。深紅のAC。その肩には、深く張った根と黒いクローバーのエンブレム。

「やろか、“アラストル(復讐の精霊)”」

 コックスの首に提げられたロケットペンダントが、微かに揺れた。太陽の光を弾き、煌めくように。

 

 ―― ―― ――

 

 ソラロとの戦いの後、ダンはACドックに戻り、クレイニアムの修理を待っていた。

 吹き飛んだ右腕は総取り換え。その接続ジョイントも熱で溶けていたため交換。装備していた武装はほとんど失っていたため新調。各装甲もベコベコに凹んでいたため金属プレートを溶接し補修。

 メインエンジニアのゴンザレスは、やや苦い顔をしていた。

「ここまで酷いとは思わなかった。……無茶したな、兄弟。下手をすれば死んでてもおかしくなかったぞ」

「それはどれだけ損傷してようが、してなかろうが変わらんだろ。一瞬の油断が、死に繋がる。それだけの話だ」

「まぁ、お前が生きているならいいさ。なるべく早く終わるようにする。ダン、お前も準備しとけ。軽食取るとか、便所行くとか。水分補給も忘れんな」

「お前は俺のオカンか」

 言いつつ、ダンはドックを離れる。去り際に「ま、俺にはオカンいないけどな」と呟いて。

 

 ――ダンは、施設内の廊下のベンチで休んでいた。妙に甘ったるくて苦味のある栄養ゼリーを数本手早く摂取、口の中に残った嫌な味を水で流し込む。

 少し顔を顰めて、ダンは呟く。

「――まじぃな、相変わらず」

 パイロット用の経口栄養補給剤。味は不評だが、体力回復効果はバカにできない。

 その時だった。

 廊下奥から、濃い橙のゴーグルを着けた男が、大股開きでどっかどっかと歩いてきた。不意にダンと目が合うと、男はダンに近づいてくる。

「お前、ダン・G・バローか?」

「そうだが、何か用か?」

「お前、最近調子乗ってんだってな? エースたるこの俺様を差し置いてさァ……」

「――ウチのエース組に、お前がいた記憶は無いが」

「ッカー! 俺様の事を知らねぇのか⁉ てめー、新参とは聞いてたがマジで何も知らねぇのな! 教えてやるよ、俺様はカマキリ・ゴロー。ZEBRA1のエースさ!」

 自分を親指で指して、そう豪語するゴローと名乗った男。しばらく考えて、ダンは「あぁ」と呟く。

「カマキリ・ゴローか。知ってる。出撃しては返り討ちに遭って、“本当の”エースたちに何度も救助されてる奴だろう」

「あぁ⁉ テメ、喧嘩売ってんのか? あぁん⁉」

「で、ここに居るという事は今回の作戦にお前も出るんだな?」

「そーだよ。エースたるこの俺様は、この戦場で華々しく戦果を挙げてやるのよ! 評価もうなぎ上り! 目が節穴の上もようやく、この俺様を認めてくれるはず! 目玉がでんぐり返るような大金、俺を下に見てた奴を顎で使える権力! 女どもを侍らせて……ぐふふ、今から笑いが止まんねぇぜ」

 ハッとした様に、ゴローは言う。

「テメェもさっき俺をバカにしたな? 覚悟しろよ。俺が上に上がったら、テメェも顎で使ってやる。死ぬほどこき使ってやるからな!」

 そんなゴローに、ダンは呆れっぱなしといった様子。一つ、ため息を吐いて、ダンは言う。

「――一つ、忠告しておこう。今までお前が生きてこられたのは、エースたちがお前を助けていたからだ。だが、今回は救援は来ないと思え。エースたちは皆、最前線にいるか死んでいるからな。――精々、死なないようにするんだな」

 そう言うと、ダンは立ち上がってドックの方に戻って言った。何やら喚き散らしているゴローを背に、もう一度、ため息を吐いた。

 

「――来たか。もう調整は終わってる」

「流石、仕事が早いな」

「マシンはガキの頃から弄ってる。これぐらいお茶の子さいさいだ」

 ダンは金属階段を昇り、クレイニアムのコアの上に立つ。頭ごと開くコア上部ハッチ、ダンはコックピットに入り込み、ハッチを閉じる。

 モニターが起動し、ドックの景色が映る。

 クレイニアムのカメラアイに赤い光が灯る。しゃれこうべの瞳に、炎が宿る。

「行くぞ」

 開いたシャッターから飛び出し、ダンは戦場に向かって行く。

 

 ―― ―― ――

 

 ――前線、ダンは迫り来る敵を片っ端から撃墜していた。通常兵器に混じってUNACも見られたが、アーキテクトの腕が原因か、動きが悪い。頑丈なだけで通常兵器の方が厄介なほどに。それでも、UNACを壁にして動く通常兵器は厄介。そこで、ダンは、

「――うらぁっ!」

 次々とUNACを蹴り飛ばしていく。ACの蹴りは凄まじい速度を持った質量攻撃。ACですら、横っ腹に撃ち込まれれば一撃で撃墜されかねない。ダンは、旋回の遅い粗製UNACの横に回り、次々と撃墜していく。

『敵反応、減少している。最初とは比べ物にならないぐらいだ。このまま押し切れば勝てそうだな、兄弟』

「あぁ。そう、だな」

『……コックスの事が気がかりか?』

「まぁな。奴は、俺を育ててくれた皆を殺した。――殺してやりたい。俺が、この手で」

 操縦桿を握り締め、ぎり、と歯を鳴らすダン。

『だよな。お前にとっちゃ――』

 そこまで言って、ゴンザレスは言葉を止める。

『――機体反応接近。この速度は大型ヘリか? ――いや、違う。ACだ、ACを積んでやがる! ダン、お前の近くにACが投下される! 迎撃用意!』

「了解…………?」

『ダン? どうした、応答しろ!』

 しばらく、沈黙が続く、

「あの、機体は――」

 見上げる空、晴れ渡った空に、大型ヘリが一機。その下部の懸架装置には、深紅のAC。

 AC“アラストル”。

 ヘリは街の上空を通過する刹那、懸架装置を解除。アラストルを投下する。

 投下されたアラストルは、勢いよく落下。着地の寸前にブースターを点火し、ドスン、と重い音を立てて着地する。

 ダンの立つ大通りの奥、あの日と同じ燃える炎の上に、コックスは立っていた。

『――おーおー、また会ったな、ダン』

 ダンは言う。地獄の底から響くような声で。

「コックス――ッ!」

『はは、感動の再開やな? でも、感傷に浸るつもりはあらへん。――死んでもらうで、今度こそ』

 そう言って、コックスはダンに銃を向けた。右腕のライフルと、左腕の拳銃型レーザーライフル。黄金に輝くモノアイが、クレイニアムを真っ直ぐと捉える。復讐の炎を灯すしゃれこうべを、見つめる。

『噂をすればご登場が。ダン、全力でかかれ。皆の仇を、取るんだろ?』

「――あぁ」

 コックスはブースターを点火し、ゆっくりと加速。ふわりと浮かんだかと思えば、そのままブースターを全開に。低空飛行でダンに向かって行く。ライフルを撃ちながら前進していくアラストル。ダンはジグザグの起動を描いてライフルの弾丸を躱しながら、距離を縮めていく。

 その途中で、左腕の武装をヒートマシンガンからショットガンに換装。それを認めたコックスはブースターを切り前進を停止。足でブレーキをかけ滑る勢いを殺しながら、拳銃型レーザーライフルをダンに向かって三連射。しかし、ダンは右斜め前に向かって連続で短くブーストを吹かしこれを回避。

 コックスの側面に回り込んだダンは、バトルライフルとショットガンをぶっ放した。炸裂弾と散弾に晒されたアラストルが体勢を崩す。そして、そのままバトルライフルをヒートパイルに換装し、大きく振りかぶる。

 しかし――

「――ッ!」

 ダンは、ブーストを吹かして後方に飛び退いた。直後、突き出される黒鉄の刀身。青い光と赤い炎を纏ったそれが、つい先ほどまでダンがいた所を貫いた。

『へぇー今の躱すんか。やるやん』

 コックスは突き出したブレードを振り抜くと。そのままの勢いで後退。

 アラストルの両肩が開き、ミサイルが放たれる。計六発のハイスピードミサイル。ダンはお返しとばかりに近接信管ミサイルを放ちつつ、横に急速回避。

 コックスは後方に機体をかっ飛ばし、大きく円を描くようにして近接信管ミサイルを躱す。ロックオンが外れたミサイルは後方の建物の窓を突き破り、吹き飛ばす。

 ダンはすぐ背後の壁をけって切り返し、ミサイルを躱そうとする。だが、異常な追尾性能を誇る高追尾型ハイスピードミサイルは、その程度では追尾を止めない。最初に放たれた二発は軌道変更が間に合わず壁に突き刺さるが、残る二発目、三発目のミサイルは、クレイニアムの正面を捉える。

 弾頭の衝突と、爆発による二重の衝撃。クレイニアムは一瞬、コンピューターの異常を起こし硬直する。空中で、機能不全を起こす。崩れて、仰向けになった姿勢で。

「しま――っ⁉」

 その瞬間、コックスは急接近してレーザーブレードを構えた。そして、下から突き上げる様に。

『串刺しになれや』

 その瞬間――クレイニアムが、上下入れ替わるように回転した。ブースターを時計回りに吹かせて、無理やり空中でターンし機体上下を入れ替えたのだ。そして、構えるは右手のヒート・パイルバンカー。突き出されたそれは、レーザーブレードの熱で溶かされながらも突き進んでいき――アラストルの右腕を貫いた。

『――なんやて』

 直後、爆ぜるアラストルの右腕。撃ち込まれたパイル先端のHEAT弾頭が炸裂したのだ。

 機体の右前腕を失ったコックス。迫るは左脚の蹴り。無理な体勢から無理やり繰り出された蹴り。それでも、当たれば致命傷は免れない。

 コックスは左腕でコアを守るようにしながら飛び退る。

 しかし、直撃こそしなかったものの、蹴りは拳銃型レーザーライフルを直撃。コックスの手から離れたレーザーライフルは、青と橙の混じった閃光と共に爆散。

『……おー、おー、やってくれるやないの。正直ビビったわ』

 言いながら、コックスは機体の左腕を背部ハンガーに伸ばす。手に取るは、大型のヒートマシンガン。

『やけどな、まだ俺はやれんで。第二ラウンドや』

「――コックス。俺は、お前を仲間と思ってた。ウザったい奴だけど、仲間だと思ってたよ。だから、だからこそ、裏切りやがったお前を、必ず、殺してやる……ッ!」

 

 その時だった。遠くから風を切る音と共に、一機の機影が近づいてくる。

 黄金と鋼。その機体を表すのに、それ以上ぴったりな表現はないだろう。暗い黄金と鈍い鋼色の装甲。そして、右肩に描かれた、六角形、もしくは箱、様々なものに見える騙し絵のようなエンブレム。それは同時に、異常なほどの硬さを感じるものだった。

 縦に長い頭部の右側に取り付けられた大きなモノアイ。白く輝くそれが、向かい合うクレイニアムとアラストルを捉える。

 無線にノイズが走った。

『――そこまでだ、下がれ、コックス』

 無線に割り込んできたのは。LYCAON現リーダー、アルド・ゴールドスミス。

 機体名、AC“オレイカルコス”。

『何言うとる。アルド、俺はまだ――』

『その機体で何ができる。良いから下がれ。これは、命令だ』

『……分かった。恩に着るで!』

 そう言って、コックスは踵を返し、アルドとすれ違うように撤退していった。

「――待てッ! 逃げるな、逃げるんじゃねぇ! コックス!」

 ダンは荒々しく吠えながら、ペダルを乱暴に蹴って追いすがる。だが――

 ――“ぞくり”。

 嫌な予感が体を駆け巡り、ダンは咄嗟に飛び退く。直後、飛んできたミドルレンジミサイルが目の前を通過して、その先にあった建物を吹き飛ばした。

『邪魔をして悪かったな。アイツの代わりは、このアルド・ゴールドスミスが務めよう。大将首だ、相手にとって不足はないだろう?』

 その言葉の直後、アルドは右腕のパルスマシンガンを乱射し始めた。青緑色の閃光が迸り、泡のように弾ける。見た目とは裏腹に、ACの装甲を溶かすほどの破壊力を秘めた兵器。ダンは飛び退って、オレイカルコスに向かい合う。

『ダン! ……気持ちは分かるが、目的を見失うな。今は、目の前の敵に集中しろ』

「――あぁ、分かってる。分かってるさ……!」

 ダンが操縦桿を握り直した、その時だった。

『ひぃーやっはぁーっ!』

 素っ頓狂な声を挙げ、現れたのは――

「お前は――」

 緑色の機体。アンテナが三つ伸びた独特な形状の頭部に、前にせり出た前傾姿勢に見えるコア。左脚に排土板のような装甲が取り付けられた重量逆関節。両腕はヒートショットガンに変形する武器搭載型腕部。そして、その両腕には実体ブレード。

 全体的にカマキリを思わせる珍妙なAC。それはまさに、ZEBRAの自称エース、カマキリ・ゴローの“マンティスサイズ”に違いなかった。

『なんでLYCAONの頭がここに居るのかは知らねぇが好都合だ! コイツを殺れば拍がつく! ダン・G・バロー、テメェはそこで指を咥えて見てやがれ、テメェの獲物を、俺様が華麗に頂く姿を――』

「やめろ! そいつには手を出すな!」

 ダンの制止も聞かず、カマキリ・ゴローは両腕のブレードを振り上げ突っ込んでいく。

『死ねぇぇェェェェェェエエ――!』

 ガゴン!

 オレイカルコス、重量二脚。分厚い装甲盾が取り付けられたその太い脚が、全開のブーストの勢いを以ってマンティスサイズのコアを打ち砕いた。

『げぇ……っ』

 マンティスサイズの機体は弾き飛ばされ、ゴロゴロと転がっていき――建物にぶつかって爆散した。ひしゃげて開いたコックピットの中からごうごうと吹き上がる炎。搭乗者は生きているはずもない。

 カマキリ・ゴローは死んだ。ちょうど、サンダルで踏みつぶされて死ぬ道端のカマキリのように。

 

『…………始めようか』

 まるで、何事も無かったかのように。アルドは銃をダンに向けた。左手の獣は、ハンガーに格納していたシールドに換装する。

 アルドは、最高出力でブースターを吹かして突っ込んでいった。そして、その勢いのままに蹴りを繰り出す。

後ろに飛んでそれを躱したダンは、バトルライフルとショットガンを撃ち込もうとするが――アルドは、それを左手のシールドで受け止める。

「――ちぃっ」

 ダンは舌打ちをすると、ミサイルをばら撒きながら後退。放たれた近接信管ミサイルはシールドの表面を削るも、破壊には至らない。

『なるほど、反応速度は中々のものだ。悪くない』

 オレイカルコスの右肩上部が開き、ミサイルポッドが現れる。放たれる、四発のミドルレンジミサイル。ダンはショットガンをヒートマシンガンに換装し、乱射してそれらを撃ち落とした。

 そして、バトルライフルを向けて連射。しかし、アルドはそれらを盾で受け止めながら突っ込んできた。同時に、ミドルレンジミサイルを発射。ミサイルを先行させ、突っ込んでくる。

 そこで、ダンは連続でブーストを吹かして飛び退き、大通りの脇の建物の前へ、壁を背にしたまま壁を蹴り、やや高い建物の上へ。そのまま向こう側へ飛び降り、ミサイルをやり過ごす。

 ダンが壁を背に様子をうかがっていると、さっきダンが昇った建物の上に、オレイカルコスの機体反応。

 ダンが咄嗟に横に回避すると、さっきまで立っていたところをアルドの脚が抉った。

 大きく割れた地面。避けるのが遅ければ、ああなっていたのはダンの機体、クレイニアムだった事だろう。

 ダンはくるりと回るようにステップを踏んで旋回すると、アルドに銃を向けた。ショットガン。アルドは咄嗟に盾を構えるが――

「おらぁっ!」

 ズガン!

 シールドの表面装甲に、雷のような衝撃。続くように大爆発。オレイカルコスの左腕から、シールドがバラバラのスクラップになって消し飛ぶ。

「――流石に、こっちも持たなかったか」

 そう言うと、ダンは大きくひしゃげたヒートパイルを捨てた。コックスに撃ち込んだ際に重要部品が溶解していた。そんな状態のものを撃ったのだ、壊れないはずもない。

 そして、そのまま流れる様に散弾を撃ち込む。

 ゼロ距離の散弾、揺さぶられる機体、大きく剥がれる黄金の装甲。アルドは堪らず後退し、パルスマシンガンを乱射する。

 ダンはそれを数発喰らうも、素早く離脱して射程範囲外に出る。パルスマシンガンは、一定距離で弾が爆発する。その距離の外にさえ出てしまえば当たらない。

 その時だった。

 ガコン!

「――なんだ⁉」

 ダンの機体が、一瞬にして硬直する。

 オレイカルコスの左手には、大型のドラムマガジンが取り付けられた拳銃。

 AC用の拳銃は、ほとんどの場合、大量の火薬を使った特殊なマグナム弾を装填している。弾頭はわざと尖らせず、フラットな形状か丸みを帯びた形状。それにより、着弾点に強い衝撃を与える。要するに、ACを硬直させるための兵器。

 アルドは右手のパルスマシンガンを、ハンガーに背負っていた大型のプラズマガンに換装した。六枚の羽が取り付けられたような砲身。

 左脚を突き出し、右脚を後ろに構えると、アルドはトリガーを引き絞った。

 青緑の閃光が砲身から迸る。それは先端に集まり、光り輝くエネルギー球を形作った。

『――喰らえッ!』

 放たれるエネルギー球。迫りくるそれは、凄まじい熱を以ってして、クレイニアムを焼き溶かさんと。

 機体の硬直が解ける。が、回避は間に合わない。後ろに飛び下がっても追いつかれる。左右に飛んでも間に合わない。

「一か八か……!」

 ダンは、右手のショットガンを光球に向かって投げた。そのまま、ブースターを全開で吹かして後方へ。

 光球とショットガンがぶつかった瞬間、凄まじいエネルギーの波が爆ぜた。ショットガンはどろどろに溶けて地面に落ちて、エネルギーの余波で周囲の建物も焼け焦げる。

 直撃していたら、大ダメージは免れなかっただろう。

 ダンは脚でブレーキを掛けながら、ヒートマシンガンを抜く。そして、そのまま右腕のバトルライフル、そして肩部のミサイルと共に連射する。

 アルドは建物の壁を蹴って上に昇ろうとするが、この距離、この狭さの通路では近接信管ミサイルは躱せない。

 機体の付近で炸裂した近接信管ミサイル。その衝撃で固まる機体。アルドはそのまま、バトルライフルとヒートマシンガンによる炸裂弾の雨を喰らった。

 そして――当たり所が悪かったようで、脚部の関節が破損。そのまま墜落するように着地して、左脚の装甲盾がははじけ飛ぶ。自重で左脚が潰れ、機体が大きく体勢を崩す。

『――しまったッ!』

 その隙を、ダンは見逃さない。壁を蹴って高く跳躍し、オレイカルコスに蹴りかかる。アルドは咄嗟にブースターを吹かすが、間に合わない。

 ガキン!

 コアに、綺麗に蹴りが入る。ブーストの勢いも相まって、オレイカルコスは勢いよく吹き飛ばされる。重装甲のおかげで即座の撃墜は免れたが、半壊状態。

『くそ、まさか――』

 所々から煙をあげながらも、起き上がろうとするオレイカルコス、しかし――目の前には、ダンのクレイニアム。

 プラズマガンを向けるが、銃を持った左手で軽く退かされる。そして――

「終わりだ」

 ダンは跳躍して左右の壁を蹴る。そのまま、オレイカルコスの真上を取る。開く両肩のミサイルポッド。6発の弾頭、近接信管ミサイルが覗く。

『まだだ! 俺はこんな所で終わるわけにはいかない! 俺には、まだ――』

 直後、降り注ぐミサイルの雨。その全てが、オレイカルコスのコアへと向かって行った。

 

 轟々と燃える、かつての黄金。

 コックピットの中で、ダンは一つ、息を吐く。

『アルド・ゴールドスミスの撃墜を確認した』

 ゴンザレスの声が、ダンの耳に届く。ダンは、小さくフッと笑って、短く答える。

「あぁ」

『LYCAONの残党も次々と逃走している。――まさか、お前がこの戦いを終わらせるとはな。兄弟』

「――まだ、終わっちゃいないさ。アイツを――コックスを殺すまではな」

 こうして、LYCAONのZEBRA本部進攻作戦は、敗走という形で幕を閉じた。互いに多大な犠牲を払って、それで終わりの戦い。

 意味があったのかは分からない。だが、この戦いは確実にLYCAONを壊滅状態まで追い込んだ。そして、ZEBRAを脅かす敵を一つ減らした。それだけは、間違いようのない事実だった。




ACピクチャ&フレーバーテキスト
アルド・ゴールドスミス/オレイカルコス
https://www.pixiv.net/artworks/140856380
カマキリ・ゴロー/マンティスサイズ
https://www.pixiv.net/artworks/140833748

追記・機体について
本小説に登場する機体のデータを文書としてすることを決定いたしました!
具体的には機体構成、カラーリング。ものによってはちょっとした小話も添えて。
PIXIVのACピクチャ&フレーバーテキストからアクセスできるので、ゲームを持っている方は実際にゲーム内で組み立てて楽しんでみてください!

※注意点としましては、ゲーム内では使えたもんじゃない機体が多いです。観賞用か縛りプレイ用にするといいでしょう。ただ、クレイニアムやオレイカルコスなどは軽くカスタムすればまだ戦えるほうだと思います。マンティスサイズは……お察し。

ACVD対戦DISCODE鯖「ミグラントの集い」
https://disboard.org/ja/server/1465729386073297006
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