ARMORED CORE VERDICT DAY“BREAK”   作:KM_ACVDミグラント

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007 嵐の前の静けさ

 多数の犠牲を払いつつも、LYCAONに勝利したZEBRA。彼らは、先日の戦争の事後処理に追われていた。

 瓦礫の撤去やスクラップの解体。地道な作業に加え、爆発物の処理など危険な作業。ZEBRAは荒くれの集まり、当然、不満を漏らすものも多かった。しかし、現実として目の前にある問題には、向き合わざるを得なかった。

 いくつもの通常兵器が、作業のために駆り出された。戦争で減ってしまったAC乗りも、作業に駆り出された。その中には――この戦争の英雄たる、ダン・G・バローの姿もあった。

『――しっかし、お前、やっぱり真面目だな、変わってる。やんなくていい、って上から言ってもらえたのによ』

 防衛型、ゴーレムに乗ったゴンザレスが、作業をしながらダンに語り掛ける。

「俺にとって、ZEBRAは家族だ。家族の為に何かしたい、そう思うのは当たり前だろう。――というより、お前もそうだったはずだが?」

 ダンがそう返すと、ゴンザレスは「ははは」と笑った。

『そうだな、確かに、それもそうだ。俺達変わってんな、兄弟』

「――ふっ、だな」

 言いながら、ダンは瓦礫を持ち上げ、運んでいく。作業用のアームを付けたゴーレムより、武装を解除したACの方が遥かに効率がいい。

 所定の場所に瓦礫を重ねると、ダンは再び、瓦礫塗れの街中へ戻っていく。

 

 ―― ―― ――

 

「ようやく、終わったって感じだな……」

「……あぁ」

 分厚いコンクリートの壁に囲まれ、損害の無かったZEBRA本部。ビルの一つ、その屋上で、二人は煙草を吸っていた。昇る煙が、空にゆっくりと消えていく。

「3日か……意外と、早いもんだな。あんだけ激しかった戦いの跡が消えるには」

「そんなもんだよ、兄弟」

 ゴンザレスは、口の中に溜まった煙を吐き出した。そして、もう一度咥えて手すりに体重を預ける。すると、手すりが軋んで、少し歪んだ。

 ゴンザレスは慌てる様子も見せず、少し離れて言う。

「おっと、あぶねぇあぶねぇ。中まで錆びてやがったか」

「……ゴンザレスお前、その取り合えずよっかかる癖止めた方がいいぞ。せめてよっかかるものはよく見ろ。いつか死ぬんじゃねぇかと見てるこっちがヒヤヒヤする」

「はは、考えとく」

 少しの間、沈黙が流れる。嫌な沈黙ではない。ただ、静かに。

 流れる雲を見上げながら、二人は時が流れるのを待つ。煙草の先が、短くなるのを。

 

「おっと、もう吸えねぇな」

 ゴンザレスは煙草を地面に落とし、靴裏で火を潰す。ダンも、同じように。

「――俺はもう一本吸うよ。そういう気分なんだ」

 ダンが二本目を咥えながら言うと、ゴンザレスはふっと笑った。

「んじゃ、俺もそうするかね」

 ダンは頷くと、自分の煙草に火を点けた。そして、もう一つ煙草を取り出し、火を点けてからゴンザレスに手渡す。

「サンキュー兄弟」

 ゴンザレスはそう言うと、煙草を加えて笑った。

 ――ダンは、銀色のジッポーの火に目を落とした。めらめらと燃える。小さく、されど確かな火。その光を、見つめて――

「どうした、兄弟?」

「――なんでもない」

 カチン。と、ジッポ―を閉じた。

 

 ―― ―― ――

 

 LYCAONの残党は、廃棄された地下施設に逃げ込み、そこを拠点としていた。

 仲間たちの諦観、恐怖、そして、絶望。それらは、ただでさえ淀んだ地下の空気をさらに重く、暗くしている。

 コックス・ジューダはその端の方で座って、パイロット用の経口栄養補給剤、不味い栄養ゼリーを飲んでいた。そして、五本すべてを飲み尽くした後、どこか慌てたように水をがぶりと一気飲みし、咳き込む。胸をドンドンと叩き、むりやり流し込む。

「――ふぅ」

 コックスが一息吐くと、そこに、一人の女性が近づいてくる。黒い髪の、やや地味な印象の女性。髪はやや野暮ったく、長い。顔には、不安の色が浮かんでいる。

「コックスさん……」

「おぉ、ルーちゃん。どないした?」

「――本当に、やるんですか?」

「……おうよ。アイツは、俺にしかやれへん」

 そう言うと、コックスは小さく息を吐いた。

「前、俺には未来が分かる~言うたの覚えとる?」

「……え? あ、はい……?」

「あれな、百パー嘘な訳やないねん」

 困惑するルーと呼ばれた女性。コックスは、そのまま続ける。

「俺は昔っから分かるんや、自分に迫る危険っちゅーか、そういうもんがな。理屈やない、感覚でな。背中にぞぞーって感覚が走って、反射的に逃げられる」

 そして。と、コックスは区切る。いつもは閉じている狐のような糸目が、開く。

「アイツも、ダン・G・バローにも、多分同じ力がある」

 仕掛けられた爆弾をダンだけが回避した時から、その予感はあった。

 二度目の対決、不意打ちのレーザーブレードを、まるで、反射のように躱された時。仕留めたと思ったら、ありえない機動で機体の右腕を吹き飛ばされた時、その疑念は、確信へと至った。

「だから、俺がアイツを殺すんや。おんなじ事ができるこの俺が」

 コックスは立ち上がると、ルーを手招いた。

「ついてきや、見したる」

 

 ルーが連れていかれた先、そこは、即席のACドックだった。即席の足場が建てられており、大きな何かを囲んでいる。コックスはただ黙って指を指す。

 その示す先、そこに立つは、深紅の巨人。

 コックスの愛機“アラストル”。しかし――

「これは――」

「そ、新型や。ーーこの新型で、俺はアイツを殺す」

 コックスは振り返って、薄く笑う。

「“アラストル・ブーロー(処刑人)”や、……カッコええやろ?」

 深紅の巨人の背中には――巨大なる殺意、暴力の象徴が。

 煌々と光るそれを、ルーはただ息を呑んで見つめるしか出来なかった。

 

 ―― ―― ――

 

 “ダン・G・バローへ

 この間の戦いぶりやな、元気しとる?

 ここんとこ砂嵐が酷くて、ほんま参るわなぁ。そっちも大変なんとちゃう?

 なんて、ご挨拶はここまでや。

 結着つけようや。EDUNA YARDの、送信した座標で待っとる。

 一対一、決闘や。一人で来るんやで? ママがいないと怖~いってんならええけどな。

 コックス・ジューダより”

 

 ダン・G・バローは、タブレットに浮かんだその文章を、ただ、じっと眺めていた。




ACピクチャ&フレーバーテキスト
コックス・ジューダ/アラストル・ブーロー
https://www.pixiv.net/artworks/140994271

ACVD対戦DISCODE鯖「ミグラントの集い」
https://disboard.org/ja/server/1465729386073297006
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