「そろそろ……かな」
外では、大嵐のために避難警報が出ていた。
今日まで、四人の魔法少女は一人もかけることなく今まで生き残った。
そこには、たとえ自分たちが魔女になっても、討也が戻すことができるという安心感もあったのかもしれない。
いよいよ、《ワルプルギスの夜》がこの街に来たのだ。
黒いコートを羽織って、討也は《ワルプルギスの夜》が現れると事前に教えられた位置へ、人気の消えた街を歩きだした。
「さぁ、出てこいよ。さっさとケリをつけようぜ」
「事前に打ち合わせした通りよ。美樹さんと佐倉さんで使い魔を、私と巴マミで《ワルプルギスの夜》本体に遠距離から攻撃を掛けるわ」
暁美ほむらのその言葉に、3人の魔法少女がうなずいた。
それから、佐倉杏子は不満げに溜息をつく。
「で?なんで神無さんは参加できないんだよ?」
ジロリと視線を向けた先には、《ワルプルギスの夜》がすぐ近くまで来ているというのに、楽しげな笑みを浮かべてマチェットのような武器を肩に担ぐ人外の姿があった。
その様子を一言で表すなら、場違い、だ。
何というのか、これから決戦だというような雰囲気を感じないのである。
まあ、実際、《ワルプルギスの夜》と直接戦うのは討也ではないのだが。
「いやいや、だから前にも言ったろう?俺はもともとこの世界の人間じゃないんだから、この世界の存亡にかかわることはこの世界に住む君たちが何とかしなさい」
それ以外の事は、俺が請け負ってやるから。と、言う討也に対し、全員がそれ以外とはなんだろうと首をかしげる。
まさか《ワルプルギスの夜》の他にも魔女でも来るというのだろうか?と考え出す魔法少女たちをよそに、討也はこの世界の《神》がいつ出てくるだろうかと楽しげに待ち構えていた。
「《ワルプルギスの夜》の方が先に来たな」
「………やっぱ他になんか居るのかよ?」
討也の言葉にツッコみを入れつつ、少女たちは上空を見上げた。
「あれが……」
「…《ワルプルギスの夜》…」
「他の魔女なんか問題にならないくらいデカいな…」
「小っちゃいなぁ……何あれめちゃくちゃ弱そう」
「「「「え?」」」」
自分たちとは真逆の事を言う討也に驚いて少女たちが視線を向けると、既に討也はマチェットを肩の鞘に納め、拳撃を放つ予備動作を取っていた。
げ。と慌てて四人は討也の背中側へと退避する。下手すれば討也のこの一撃が決定打にすらなりうると期待しつつ、様子を覗った。
相変わらず、構えから一瞬で拳を突き出した姿勢へと変わったようにしか見えない出鱈目な速度で衝撃波が繰り出される。
目で見ても全く分からないのだが、間違いなく衝撃波が《ワルプルギスの夜》に向かって突き進み……空気を震わせる轟音と共に途中で阻まれた。
討也の後ろに居た少女たちは、この時討也がいつになく楽しげな笑みを浮かべていることには気づかなかった。
「そんな……今のでも倒せないというの…」
正確には、討也の攻撃は防がれたのだが、衝撃波が目に見えないが故にそれに気づかないほむらは、絶望したような声を出す。
『いいや、違う』
「ああ、そうじゃないぜ」
聞いたことのない何者かの声とそれを肯定するかのような討也の言葉。
え?と、その言葉の意味を確かめる暇もなく、いきなり討也の前方に何者かが現れると同時に、討也が立つ場所に光る何かが振り落される。
当然。それをバックステップで躱した討也は、肩からマチェットを抜き放ってノーモーションを取った。
「《ワルプルギスの夜》以外にもなんかいるのかよ!?」
慌てて槍を構えた杏子を手で制しつつ、討也は楽しげに突如現れたソレに話しかけた。
「さすがに《ワルプルギスの夜》もアレを食らったらタダじゃ済まないって事かい?」
『タダじゃ済まない?いいや、十分に撃破して余りある一撃だったよ。だからこちらも仕方なく防いだのだ』
「「「「……ッ!?」」」」
大したことでもないという風に、防いだという目の前の乱入者に、四人の少女は戦慄した。討也のあの一撃が《ワルプルギスの夜》を撃破できたという事もそうだが、それをあっさり防げる乱入者だって只者ではない。
どちらがヤバいかと言えばどちらもヤバい。
改めて乱入者を見てみると、それは明らかに人間ではなかった。
外見の印象を一言で表すなら、金ぴかのマネキン、だ。
肩や肘と、膝から下の一部分が鎧の様な形状をしており、背中には頂点だけが欠けた円盤から均等な間隔を開けて剣のようなものが突出している。さらに、頭部は顔の部分に断面があり空洞になっていて、眉間くらいの位置に青いひし形の宝石が浮かんでいる。
先ほど出現と同時に討也に放った攻撃は、おそらく両手に持った十字槍によるものだろう。
「あー、君たち。と言うわけだ、俺はコイツの相手で忙しくなるから《ワルプルギスの夜》はそっちで何とかしなさい」
「わ、わかりました」
金ぴかのマネキンの相手をする位なら、《ワルプルギスの夜》を相手にする方が数倍マシだと思いながら、少女たちは超弩級の魔女との決戦を開始した。
「ふぅん……アイツらを止めなかったってことは…」
『…四人そろったところで敵うわけでは無い』
成程、と納得しつつ、討也は楽しげな笑みを浮かべた。
「それで?鹿目まどかが神になったら、その力を奪ってこの世界群を侵攻する予定だったのかい?」
『ゆくゆくは、私がアドレナクに取って代わる』
「ああ、つまり統括神の座を奪うって事か…君たちホントに揃いも揃っていう事が同じだねぇ…」
これまでの世界での事を思い出しながら、討也は呆れたように言った。
『何が悪い?この世界群では奴が他世界への侵攻を禁止しているというだけの事……ほかの世界群では腐るほど行われていることだ』
や、他の世界群の事は知らないけどね?行ったことないし。と呟きつつ、討也はマチェットの切っ先を、金ぴかのマネキン……この世界の『神様』に向ける。
「ま、俺がここであんたを滅ぼせばできなくなるんだけどね?」
『既に勝ったように言うな小童。貴様が最近アドレナクが拾った《神殺》であることは知っているが……他の神と同じように逝くと思うなよ?』
「おいおい…俺が転生者になったの数万年前の話なんだけどね?最近ときましたか…」
やっぱりスケールが違うねぇ、と苦笑する。
神が十字槍をゆらりと掲げる。討也も一歩、足を踏み出し、マチェットを正面に置いた。
『《神》に勝てると思うなよ?』
「《神》を殺してきたから《神殺》なのさ」
楽しげに笑みを浮かべながら、討也は神を屠るべく、まずはその距離を殺しにかかった。
結構途中端折ったけど討也居ても展開は大きくは変わらないので、一応希望があればそちらも後々書くかもしれません。