外伝.魔法少女まどか☆マギカの世界に転生   作:錯也

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第17話 遠慮なさ過ぎない?あの人たち

 討也と《神》の戦いは、一見拮抗していた。実力的には互いに同レベルなのだが、《神》の方はいささか余裕が無かった。それというのも…。

『(何をぐずぐずしているのだ!?たかが人間四人を潰すのになぜここまで時間がかかる!?)』

 《神》の予想以上に、魔法少女四人が《ワルプルギスの夜》を相手に持ちこたえていたからだ。今回は別に、今までの世界でやってきたように特訓させたり有効な攻略法を教えたりということを討也はしていない。そんなことをすれば、おそらくもう少し早く《神》は討也を始末しに来たかもしれない。それをわかっていながら、討也はここまで来たんならせっかくだしとあえて四人を鍛えたりはしなかった。

 もっとも、戦闘前にこっそりとバフスキルを掛けておいた。《神》の予想に反して四人が《ワルプルギスの夜》と戦い続けていられるのはこの辺りが原因である。

 《神》としては、鹿目まどかが魔法少女にならないことよりも、まどかが魔法少女になる要因でもある《ワルプルギスの夜》が撃破されるのは非常に困るのだ。だからこそ討也の攻撃によって《ワルプルギスの夜》が瞬殺されるのを防いだのだ。例え討也を倒せたとしても、《ワルプルギスの夜》が倒れてしまっては意味が無い。

 そしてそれを討也に感づかれるわけにはいかない。

 下手に相手や自分が火力を出しすぎれば、《ワルプルギスの夜》が流れ弾で倒れかねない。それはつまり最低限それくらいの火力が無ければいくら《神》でも討也に有効打を打てないという事でもある。実際に《ワルプルギスの夜》への被害を考慮し生半可な威力で放った攻撃はあっさりと防がれてしまっているのだ。

 逆に引き撃ちに専念すれば討也はとっとと《ワルプルギスの夜》を始末しかねない。

 結果として、《神》は完全な火力をたたき込むことも、無難な攻撃を一方的にたたき込むことも出来ないままでいた。

 そして、そんな中途半端な戦い方で倒せるような相手ではないのが討也である。

 討也とて四人への影響を考えなければいけないとはいえ、そこは《神》が《ワルプルギスの夜》への影響を考えるのとは比べものにならない気楽さがある。

 具体的に言うとうっかり流れ弾で倒れれば後で蘇生させることも可能なのだ。

 討也が放った衝撃波が、動きに粗さが目立ち始めた《神》を捉える。とはいえ腐っても《神》、この程度ではかすり傷が関の山だ。だがこの攻撃はダメージを与える事が目的では無い。衝撃波の煽りと防御のために止まった一瞬の隙を突いて、討也は影からダークマターを製造し、それを形を変えないままの黒い炎状のまま叩き付けた。ダークマターはいつでも討也の思い通りの性質を付与することが出来る。つまり見た目が黒い炎のように見えても、実際に当たってみるまでどんな属性の攻撃がわからない。

だったら最初から当たらない努力をする。

 これまで放っていた金色のビーム状の攻撃を中止した《神》は、威力は低いが範囲の広い波状攻撃でダークマターを吹き飛ばしていく。なんとかダークマターを防いだものの、波状攻撃では位禄が低すぎて(強い魔女程度なら一撃で倒せるレベル)討也には風が吹いた程度の影響しか与えられず、その間に距離を詰められる。距離を詰めてきたところに《神》渾身の極太ビーム砲を叩き込んだ。

『消えろ、イレギュラー!』

「そりゃ無理だ、申し訳ないけど」

 空中を蹴り飛ばしあっさりと躱した討也が、急接近し右手に保持したマチェットを超高速で叩き付ける。それこそ振っただけで衝撃が発生するほどだ。これを食らえばそこそのダメージになると判断した《神》は回避を諦め迎撃する。《神》の武器は超至近戦に不向きな十字槍だが、それでも超物質で作られた代物だけあって、持ち手の部分でなんとか受け止める。

 重苦しい金属音と共に砕けたのは、討也の持つマチェットの方だった。ここぞとばかりに攻勢に転じようとした《神》だったが、獲物を砕かれてなお余裕の笑みを浮かべる討也の様子に一瞬動きが遅れる。そしてそれからすぐに気付いた。

 マチェットもダークマターで出来ているのだ。

 ではマチェットを構成するダークマターがどんな性質を持たせた物質だったのか。その答え合わせをするかのように、砕かれ破片となり舞うダークマターの刃が炸裂音と共に破裂した。

 

 《ワルプルギスの夜》と戦う四人の魔法少女も、残念ながら討也と《神》の戦いを眺めている余裕など無いほどの激戦を繰り広げていた。眺めている余裕がないとはいえ、討也と《神》の戦いは意識しておかないといけない。なんせ流れ弾でもとんでもない威力なのだ。先ほどは《神》放った波状攻撃で使い魔が木っ端みじんに吹き飛び、慌てて瓦礫を盾にして防いだのだが、続く斬撃の衝撃波で《ワルプルギスの夜》の巨体ですらぐらりと傾いたほどだった。自分たちだって気をつけていなかったら吹き飛ばされていただろう。

「遠慮なさ過ぎない?あの人たち」

 《ワルプルギスの夜》の死角に入りながら、美樹さやかは隣にいる佐倉杏子に愚痴る。一方それを聞いた杏子の方は諦めと呆れの混ざったげっそりした表情を浮かべるだけだ。

 正直、《ワルプルギスの夜》も魔法少女たちも討也と《神》の戦いの流れ弾や余波で受けたダメージの方が大きい。お互いに二人の戦いに巻き込まれないようにしながら散発的に攻防を繰り返すことしか出来ないのだ。

 早く終わらせるかどこか離れたところで戦ってほしい。

「これじゃあ事前にしておいた役割分担もあんまり意味ないな」

 使い魔が討也と《神》の戦いに巻き込まれないようにする知能が無いのかもしれないが、先ほどから現れてはほっといても流れ弾で倒され、また再召還されというのを繰り返しているのだ。使い魔の担当は二人がすることになっていたが、これの相手よりも巻き込まれないように立ち回るので忙しい。

「……いっそ本体狙いに行くか」

 そう言った杏子と、つられて見上げたさやかの視線の先には、自分たちが居る場所とは全く違う方向の地面を見下ろす《ワルプルギスの夜》の隙だらけ(に見える)な姿があった。

 

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