『と、いうわけだ。さっそく転生しようか』
「うん、ごめん。とりあえず今戻ってきたところでどういうわけか分かる訳無ぇから」
『え?なんでわからないの?』
「え?なんでわかると思ったの?」
真っ白な世界に、突如として現れた少年は、目の前の無茶苦茶な神の言い分にツッコミを入れた。
目の前の、「曖昧な存在」を見ながら、少年は呆れたように質問する。
「で?今度はどこの世界に行くんだよ?……って言ってもどうせ「行ってからのお楽しみ」とか言い出すんだろうが」
『魔法少女まどか☆マギカ、の世界だ』
「おお、今回はなぜかあっさり教えたな。それよりもお前の口から魔法少女なんて単語が出たことに爆笑したいかな」
少年は、アドレナクを「曖昧な存在」として捉えているが、実をいうとそれこそが正解である。アドレナクを「曖昧である」と認識していることは、アドレナクの姿を正確に認識できているということだ。理由は言ったって単純。アドレナクが明確な「姿」を持っていないからである。
『うん、とりあえず今回は特典無しで飛ばしてやろうか?うん?』
「あ?それでもいいけど?ロードラの世界の「スキル」は使えるんだし、肉体強度は特典関係ないし?」
割と本気で、特典無しでも構わないと少年は思っていたりする。
それを聞いてアドレナクは少年に聞こえるように舌打ちをしつつ言った。
『まあ、いいやそんな些細なことでムキなるのも僕らしくない。とりあえず、「三つ目の特典」は変更しておいたよ』
「ああ、おっけー」
こちらに指を向けただけでそれを完了させてしまうアドレナクにも、少年はもう慣れているという様子で質問を口にした。
「そういえば、なんで今回はあっさり行く先の世界のこと教えたんだよ?」
『今回は君にやってもらいたいことがある。その目的さえ達成できればあとはどう行動しても構わない』
「ふーん。で?何すればいいの?」
『鹿目まどかが魔法少女になるのを阻止しつつ、「ワルプルギスの夜」を始末してくれ。ついでにあの世界にいる「神」をぶっ殺してきてくれるとありがたいかな』
「むしろそっちが本命だろ」
『まあね、はっきり言って鹿目まどかが魔法少女になった場合は「神」の方を先に殺ってくれると助かる』
「わかったよ、いいぞ、送ってくれ」
『……………………』
少年は準備はできたと告げるがアドレナクはふと何かを考え出した。
「ん?どうした?」
『いや……君……。魔法少女まどか☆マギカの内容覚えてるよね?』
「…………………………………………………早くおくれよ(覚えてねぇよそんなもの)」
『うん。怪しいな。とりあえずアニメ全話見てから行けよ』
「仕方ねえな……」
少年は文句を言いながらも自分の影からテレビを取り出したのだった。
「それじゃあ、行ってくる」
『ああ、よろしく』
全話見終わった少年はすぐに魔法少女まどか☆マギカの世界に転生していった。
『あれ?今回俺は出番なしかよ?』
『やあ、ベリタスか。残念だけど今回は君の出る幕は無いよ』
「なるほどね、こういう能力か……。ぶっちゃけコレこの特典無くても「タイム・オブ・ゼロ」でできるんだけどなぁ……まあ、つまりもしミスったらって事か」
そう言いながら少年は割れた窓ガラスが元あった場所に集まり、ヒビがきれいに消えていく様子を観察していた。
「で、これって全員もう結界内に居るってことかな?」
そう考えながら病院の自転車置き場の柱の前にあるおかしな模様を眺める。
魔女の結界。
「まあ、入った時にほむらちゃんが拘束されてれば、全員揃ってるって事だよねぇ……とりあえず行ってみますか」
そう言って少年、いや、少年の姿をした本来この世界にはいないはずの人外「神無討也」は、楽しげな笑みを浮かべ、魔女の結界に足を踏み入れた。