魔女を少女に戻した討也は、ほむらと共に先ほどのファミレスに戻ってきていた。ちなみにキュウべえの姿は既に消えていた。
意識を取り戻した少女とほむらを向かいに座らせた討也は、適当に二人に食べたいものを注文させ、少女にいくつか質問をすることにした。
「君、名前は?」
「百江なぎさなのです」
白い髪の小学生くらいの少女は、大量にチーズをかけたハンバーグを頬張りながら答えた。
なんでもチーズが好物とか。
「この子本当に魔法少女だったの?」
あまりにもなぎさが幼かったためか、疑問に思ったほむらが聞いてくる。
「魔法少女になる直前の身体を俺の特典を使って製造したからね、若干信じられないけどこの年で魔法少女だったんだろうな」
劇場版を見ていない討也は、当然なぎさの事を知らないのでそうとしか答えようがない。
「製造?」
討也の言葉に疑問を持ったほむらだが、討也はそんなほむらの疑問など気にも留めず、次の質問をする。
「キュウべえと契約して魔法少女になったのは覚えてるかい?」
コクリとハンバーグをモグモグしながら少女は頷いた。
「うーん……魔女になってからしばらく経ってるとしたら…当然行方不明者として捜索願とかが出されてそうだよなあ」
さすがにこの年の少女が両親も親戚もいないという事はあるまい。どうしようかと考える。
「それの何が問題なのかしら?」
ほむらが聞いてくる。対するなぎさは自分の事を話しているのにもかかわらず食事に夢中なようだ。まあ、さすがに外見通りの行動かな、と討也は苦笑する。
「今まで、どこに行ってたのかって聞かれてどう答えるんだ?魔女になってましたとでも言うのか?そもそも本人にその自覚がないのに?」
もっとも行方不明だったという事については簡単に解決する方法がある。
「俺がこの子の記憶を持っている人間全員を「対象」に設定してこの子についての記憶だけを「範囲」に指定して、行方不明になる前に時間を「巻き戻す」って手段もあるにはあるけど……」
「そんなことができるなら、それをすればいいじゃない?」
と当たり前の事のように言うほむら。ぶっちゃけその通りなのだが…。
「言うほど簡単じゃ無ぇんだよ」
と、討也はほむらに返した。
「…そう」
これは嘘である。やろうと思えば今このレストランの中で、一歩も動くことなく対象人物たちの記憶を、なぎさが行方不明になるであろう時点のものに巻き戻すことは容易いことだ。
しかし、討也には今それをしたくない理由があるのである。
正確には出来ない理由か。
その理由については残念ながらほむらに教えてやる気にはならない。
まあ、とにかく今現在はっきりしていることは、百江なぎさについての記憶を巻き戻すわけにはいかないという事だけである。
「とりあえず、適当に部屋でも借りて…」
そう言えば、なぎさはキュウべえの事を知っているようだが、キュウべえはなぎさの事を覚えているのだろうか?と討也はふと疑問に思った。
それから、覚えているとすれば、魔女になったはずの魔法少女が人間に戻っていたらどんな反応をするのかと。
「(とりあえずやることも思いつかないし……あの小動物を探してみるか…くははははッ!……原作とは違う展開もなかなか面白い…)」
討也は、なぎさを見ながら楽しげな笑みを浮かべた。
それを見たほむらは、とりあえずなぎさに危険があるようなら即刻警察に通報しようと再び心に誓うのだった。
翌日、適当なマンションに部屋を借りた討也は、昨日の病院に行ってみることにした。なぎさが行方不明者として捜索願が出されているかを確認するのと、キュウべえを探すためである。
確認のためなら警察に行けばよくね?と思うかもしれないが、まさか警察に行ってこの子の捜索願出されてますか?とは聞けない。最悪討也が誘拐犯である。
まあ、警察ごときでどうにかなる討也でもないのだが好んで面倒事を引き起こすこともあるまい。
手がかりも何もないのでとりあえず昨日の病院から見てみることにしたのだ。うまくいけばなぎさがここに来たことが有るのではないか、とかも考えたりしたのだが、どうにもよく覚えてないらしい。
討也が、手がかりも何も得られないのでそろそろマンションの部屋に戻るか、などと考えていると、後ろから声が掛かった。
「アンタ!昨日の!」
「ん?」
振り返ると、そこに青いショートヘアーの中学生美樹さやかがこちらを睨み付けるようにして立っていた。学校からここに直接来たのか、制服のままである。
ちなみに、討也は昨日、と言うか普段着ている銃弾も防げる黒いコートでは無く、ごく普通の青いフードつきのパーカーを着ている。討也は着るものは基本第二の特典で作り出している。
それにしても、昨日と服装も違い印象も結構違うはずなのに良く分かったな。とか考えながら、討也は適当に反応してやる。
「あー昨日の……人の話を聞かない子だね」
「だから、あたしはその時居なかったって……それよりも!」
何か文句を言いかけたさやかは、すぐに脱線した話を戻すように声を上げる。
ところでここは病院なの理解してんのか?と思いつつ討也は首をかしげた。なぎさは最初から訳が分からないためかキョトンとした顔をしている。
「アンタなんでこんなところに居るのよ?」
なんだそんな事か、と討也は溜息をついた。
「そんなことも分からないのかよ…」
分かれと言う方に無理がある。
理不尽なものを見るような目をさやかは討也に向けていた。
とりあえずさやかが何故そんな表情をしているかに興味がない討也は、さやかならキュウべえの居場所が分かるのではないかと思い尋ねてみることにした。
「そういや、あの奇妙な小動物はどうした?」
「小動物……キュウべえの事?それならまどかと一緒だと思うけど…」
「ふーん」
そう言えば原作では巴マミは死ぬけど、昨日自分がかき回したから死んでなくて、今も二人は魔法少女になるかを検討中なんだっけ?と考える。
「ふーんってアンタが聞いたんじゃない…何よそのどうでもいいやみたいな反応は?」
さやかが何か言っているがとりあえず無視して討也は考える。
どうせしばらくすれば関わる機会はあるのだし無理して探す必要もないかなと考える。と言うか探すの飽きてきた。
そんな事を考えていると、さやかがなぎさを見て首をかしげた。
「その子…誰よ?」
と聞いてくる。
「(あーどう答えようかなぁ)」
珍しく、答えに迷う人外であった。