なぎさの事を、適当にごまかして討也たちはマンションに戻った。
ちなみに討也はさやかが魔法少女になるのを止めるようなことは一切していない。なぎさが討也に直してもらった(魔女から人間に)と言い出したのを聞いたさやかが、腕などの怪我でも治せるのかと聞いてきたのだ。
ぶっちゃけ楽勝。余裕過ぎる。
肉体を修復するスキル「セイント・ヒール」などを使えば、腕の怪我と言わず両足吹き飛んだって、瀕死の重体だって一瞬で元通りなのだ。
腕の怪我、と言うのが上条恭介の事を指しているのは討也だって理解しているし、その怪我を治すためにさやかが魔法少女になるのも知っている。
恐らく、討也がスキルを使って上条恭介の怪我を治したら彼女は魔法少女にならない。
討也としては、ワルプルギスの夜と戦うための戦力として彼女が魔法少女になった方が都合がいい。
「(まあ、どうせ途中でアウトになるんだろうけどね☆)」
まあ、さやかが魔女になったら自分が戻せばいいだけだし、と討也は考えつつ、なぎさが寝たのを確認してから、楽しげな笑みを浮かべマンションを後にした。
数日後。思った通り、美樹さやかは魔法少女になったようである。鹿目まどかはまだだ。
どうやら、廃工場でテレビに羽が生えたような魔女を倒したようで、今は暁美ほむらと何かを話しているようだ。あまりいい雰囲気とは言えない。どちらかと言うと険悪。
そんな様子を、討也は上空から眺めていた。肉体強度だけではなく身体能力まで規格外な討也は、何も使わなくても点のように見える人間の顔を識別できる。上空から、しかも夜であったとしてもそれは変わらない。
「さて……巴マミが居ないのはちょっと予想外だったが…」
あの後電話番号の交換とかしなかったのかよ?などと考えつつ空から周りを見渡す。
そして探していた者を見つけた。
「原作では、巴マミが死んだから来たはずだけど……さて、原作と違って巴マミが死んでないなら、あの娘はなんでこの街に来たのかねぇ?くははははッ!何にせよ…面白い」
ていうか理由は大体分かるんだけど、俺が原因だし☆と討也は付け足した。
そして楽しげに笑う。
人外が上空から見下ろす先には、ポニーテールの赤い髪の少女と白い小動物が何かを話す姿があった。
「ワルプルギスの夜が来るって…なんでアンタがそれを知ってんのさ?」
クレープのようなものを齧りながら赤い髪の少女、佐倉杏子は隣のキュウべえに話しかける。
『う~ん。まあ気配で分かるとしか言いようがないかな』
「話にならないじゃん。ていうかさっきの青い魔法少女はなんなわけ?この街には二人も魔法少女が居るっての?」
『いや、正確には3人いるね。もっとも…僕も正体は分からないけど』
「はぁ?アンタと契約したんじゃあないの?」
キュウべえの言葉に疑問を持った杏子はそう聞いてみるが。
『おそらくそのはずなんだけどね』
と言う、ハッキリしない物だった。
「まあ、いいか。最近あたしがいた場所から魔女が消えちまったからよ。魔法少女が一つの場所に何人も集まるのはちょっと面倒だけど…仕方ないな」
『…魔女が消えた……?君がこっちに来たのはそうゆう理由だったんだね』
二人(正確には一人と一匹)は知る由もないが、杏子の縄張りの魔女をどこぞの人外が殲滅したのが理由の10割である。
あ、とキュウべえはいま思い出したフリをして最近現れたイレギュラーの事を教えておくことにした。
『そう言えば、魔法少女じゃないけど、厄介な奴がこの街には居るから気を付けたほうが良いよ』
は?と言う顔で杏子はキュウべえを見る。
「呪われてんのかこの街?ワルプルギスの夜は来るし変なのは居るし。そいつ何者な訳?」
そう聞かれてもキュウべえには答えようがない。
『それは僕にも分からないけど…少なくとも相当強いよ』
「強いってどのくらいさ?」
それもキュウべえには分からない。なんせ戦ったところを見たことがない。少なくとも以前マミと魔女の戦いに乱入してきた時の能力で話すなら……。
『もしかしたらこの街の魔法少女…君も合わせた4人が手を組んでも相手にならないと思うよ』
と、魔女を素手で簡単にコンテナに押し込んだのを思い出しながら言ったのだった。
「人間かよソイツ…」
「さて、もうしばらくはこの状態のままにしておくか…」
そう呟いた討也は、以前なぎさを魔女から人間に戻した空間倉庫内にいた。
目の前には大量のグリーフシードが時間を止められた状態で地面に散らばっている。
討也が魔女を倒した時に、倒した魔女が落とした物だ。放っておくと孵化する可能性があるし、人間に戻してしまうとなんかの拍子にインキュベイターにバレる可能性がある。
バレてもいいのだが、キュウべえの反応を自分が見れない所でバレるのはつまらない。
さすがにキュウべえも自分が契約した相手の顔くらい覚えているだろうから、なぎさをキュウべえに会わせて反応を楽しんでから、このグリーフシードを人間に変えなおすとしよう。と討也は考えたのだった。
「しかしまあ、いい暇つぶしになったな。魔女と使い魔を一夜で殲滅するってノルマは。くははははははッ!」
この通り、討也にとっては一人の魔法少女の縄張りの魔女を一夜で殲滅することくらいはゲーム感覚でやってのける。
「つじつまを合わせたから干渉してこないのかな…まあ、その方が今は好都合か」
と、討也は空間倉庫を出ながら意味ありげな事を楽しげにつぶやいた。
もっとも、それを聞いている者は誰もいないのだが。