東方廻転界 〜幻想郷唯一の「境界術師」に関する一記録〜 作:ゆっっくりなつめん
すみませんでした。
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202X年7月24日
「……て」
「Zzz…」
「…き…さい」
「あと…1時間…」
「起きなさい!遅刻するでしょ!?」
耳をつんざく怒声と共に、無慈悲にも毛布は取り上げられる。
「ぅ……おはよう母さん…」
「言ってる場合なの?終業式くらい早く起きればいいのに…」
それは確かに。
そう、他人事のように考えてふと気づく。
「…今って、何時?」
「もうとっくに7時回ってるけれど?」
ベッドの側の時計に目をやると、時刻は7時35分を指していた。始業まであと1時間と少し、登校に50分かかることを思えば一刻の猶予もない。
「嘘だろ!?なんでもっと早く起こしてくれなかったのさ!」
「何度も起こしたじゃない!『あと1時間』だなんてふざけたこと言って、起きなかったのは
「そうだけど!もっとさぁ…!ああもういいや!」
「第一だらしないとは思わないの!?3年生にもなってまで…ちょっと待ちなさい!?」
口論を早々に切り上げて、俺は支度を始める。制服を着て、軽く寝癖を整えたのちにリュックを背負う。
「ちょっとー?ご飯くらい食べてきなさいよ?昼までもたないでしょ?」
「いやそんな時間…分かったって。」
今にも爆発寸前の爆弾のような気配を前に気圧され、パンだけ詰め込んで牛乳で流し込む。
そのまま家を飛び出して、自転車で駆け出した。
この時の取り留めのない会話が、母さんとの最後のやりとりになるとも知らずに。
「ちょっと!…もう、あの子行ってきますもなしに…」
「はぁ、はぁ…」
その後俺は、なんとか駅に着いて電車を待っていた。今からなら普段の二本遅れ、流石に遅刻だろうが、終業式までには間に合うだろう。
ここで、俺のことについて軽く紹介しておこうと思う。我ながら誰に向かって行ってるのやら。イテェ。
俺の名前は
俺の人生を一言で表すなら、「適当」であろう。適当に勉強して、適当に進学して、適当に毎日を過ごしている。成績は可もなく不可もなく…いや、正直赤点ギリギリだ。先生曰く、俺は少し消極的すぎるらしい。
確かに勉強にはイマイチ熱が入らないというか、正直面倒くさい。かといって運動も、得意かと言われると少し微妙である。
シュートやドリブルなどの行動そのものはそこそこできるが、試合になるとからっきしダメ。相手がいて、本気で相対してくるという事実に気圧されてしまってアガってしまうのだ。
趣味と言えるようなものも…あるゲームに熱中しているくらいだろう。それに関しても全然下手くそだが。
きっとこれからも適当な大学に進学して、適当に就職するのだと…そう思っていた。
電車の到着を知らせるアナウンスを聞いて顔を上げた俺は、不思議とある女性が目に留まる。
輝くような金髪にすらりとした長身。顔は見えないものの、そこにいるだけで気を引きそうなオーラのようなものを放っているのに、誰も、不自然なくらいに気にかけていない。まるで、
その人の後ろ姿をぼんやりと見つめていると、女性は気を失ったようによろけ、前に倒れ込む。アナウンス通り、そこには電車が迫る。
気づけば俺は人混みを押しのけ、彼女へ手を伸ばしていた。
「あっ、ちょっ!!」
思えば、非常停止ボタンを押せばよかっただろうに、何故か俺はそうしなかった。そうすべきだと感じて、それ以外には、何も考えられなかった。
ギリギリで手が届き、彼女の手を引こうとした瞬間、俺の手は
「・・・・・・は?」
身体が投げ出され、電車に轢かれる…現実を受け入れきれず思わず声が漏れた時、彼女は振り返る。雰囲気に違わぬ美貌の彼女は手招きをしながら、
おいで
と呟いた。正確には、そう呟いたように、口が動いて見えた。
「・・・・・・!?」
呟いた途端に、彼女の姿は砂のように崩れ始め、それと呼応するように辺りの景色が歪み始める。その現実離れした光景に、俺はいつしか、自分が置かれた状況すら忘れ困惑する。
彼女の姿が崩れ落ちると共に、俺は気を失い──
──次に目が覚めた時には──
「ここ…どこだ…?」
知らない天井──ではなく、知らない森のなかにいた。