東方廻転界 〜幻想郷唯一の「境界術師」に関する一記録〜   作:ゆっっくりなつめん

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1周目
夢見た世界


1周目

2002年8月1日

 

「ん、ぐっ…」

 

 知らない森の中で、俺──夏目(なつめ)蒼生(そうせい)は目を覚ました。

 

「ここ…どこだよ…」

 

 手頃な倒木に座り込み、スマホを取り出す。電源は入るものの、画面には「圏外」の二文字。それに落胆したのも束の間、それよりも気にかかったのは…

 

「2002年…?」

 

 そう、スマホの日付は…しっかりと8月1日を指していた──2002年の。

 

「なんだよこれ…イタズラか…?」

 

 8月1日を指していただけなら、数日眠っていたってことで説明できる。それでも十分おかしいが…

 年まで違うとなると、イタズラか…或いは──

 気を失う寸前の、奇妙としか言いようのない光景が脳裏をよぎる。

 

「考えても仕方ない…か。」

 

 ひとまず考えるのをやめ、山を降りることにした。

 

「つか…この服、なんだ?それに…」

 

 立ち上がってすぐ、自分の身に起きた異変に気づく。

 確かに制服に身を包んでいたはずの俺は、今はファンタジーアニメにでもありそうなローブに身を包んでいる。

 一つ異変に気がつくと、立て続けに違和感に気づく。

 腰と懐。懐から確認する。

 

「これは…時計?」

 

 出てきたのは、いわゆる懐中時計と呼ばれる代物。(ふた)がついており、開けると何の変哲もない時計が現れる。ベゼルや蓋は全体的に金色であり、シックでカッコいい。

 懐中時計を懐にしまって、今度は腰の刀に注目する。

 長さは大体70cmほど、アニメとかでよく見る打刀って感じだ。恐る恐る抜いてみる…

 

「これは…金色?」

 

 その刀の刀身は、オレンジっぽい金色…山吹色?に近い気がする。とにかく、普通の刀とはかけ離れた色をしている。少し重たいので、また(さや)に納めた。

 もう一度よく見てみると、刀の(つば)は、独特な八角形の意匠になっている。というよりこれは…まあいい。

 

 辛うじて山道とわかるような道に沿って、山を下っていく。代わり映えのしない森の中。しかし、すぐに変化は訪れた。──望まない形で。

 

「グルゥ…」

「…は?」

 

 目の前に現れたのは、獣のような姿をした"何か"。何か、と形容したのは、その生き物が、今まで見た動物の何にも似ていないから。

 毛並みはどこか赤く、四足獣のように地を()っているが、その足は六本あり、額からは、一本の角が生えている。大きさは大体虎くらいはあるだろうか。

 はっきりと分かるのは、今こうして目の前にいる時点で、逃げることは不可能だということ。

 

「……」

 

 それでも、一歩、また一歩と後ずさる。当然だ、俺だって死にたくはない。

 

「グルル…」

 

 しかし、目の前の獣は、俺が一歩下がるたびに、一度に俺の三歩分は前に進み、近づいてくる。

 俺が獣に追いつかれ、あっけなく喰らいつかれるまで、そう時間はかからないだろう。

 

 ああ、こんなにも、あっけなく死ぬのか。

 こんな、何が起きてるのかも、わからないまま…

 

 そう、思っていたのだが…

 

「あー?珍しく山道に人がいるかと思ったら…襲われてるじゃないの。」

 

 そう、カラッとした声が響いた途端──

 

「グ、ルァ…」

 

 これまたあっけなく、獣は頭部を潰され息絶えた。

 そのまま、獣を殺したであろう少女が降りてくる。

 

「アンタ…大丈夫?それともその格好、獲物の横取りでもした?」

 

 その時、俺は彼女の言っていた言葉を、あまり覚えていない。

 何故なら、俺は事実を受け止めるので必死だったから。

 

 目の前にいるのが「あの」博麗(はくれい)霊夢(れいむ)で。

 今俺がいるここが、恐らく幻想郷(げんそうきょう)であろうことを。

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