こちらハンドレッド技術研究部   作:神永陽江

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まず手始めは仮面ライダーリュウガです。
原典では鏡の中にしか居られない人外でしたがハンドレッドのリュウガは…?


鏡の怪物は人間になれるか、或いはその逆か

ハンドレッド新兵器のテストスレ PART753

 

1:名無しの技術部員

ハンドレッドの技術部の新兵器に関する討論スレです。

次スレは>>1000を踏んだ人が立ててください。

 

前スレはこちらです

https://hundred.org

 

2:名無しの技術部員

立て乙

 

3:名無しの技術部員

立て乙です。

 

4:名無しの技術部員

いやー前スレのマジュンガサウルスドーパントは大成功でしたねぇ…

 

5:名無しの技術部員

どこがだよ!

 

6:名無しの技術部員

いいですか? 落ち着いて聞いて下さい

 

暴走して巨大化した挙句の果てに他のドーパントをメモリごと共喰いしてキャパオーバーして自爆した事を成功とは呼べないんですよ…

 

7:名無しの技術部員

こんな酷い爆発オチがあるかよ…

 

8:名無しの技術部員

あの爆発でドーパント研究部が壊滅した上にガイアメモリの被験者8割が死んだんだけど…テストするってレベルじゃねえぞおい!

 

9:名無しの技術部員

新入りのモンブランドーパントが命懸けで止める姿に涙が止まらなかった…

 

10:名無しの技術部員

>>9

そいつ頭から捕食されていたじゃないですか…あいつの死に様まで夢に出てきたの勘弁してくれ…

 

11:名無しの技術部員

いくら共食いといったって他のドーパントを食べ尽くすまでいくとは思わないじゃん普通…

共食いって追い詰められた動物が仕方なくやるもんだぞ…

 

12:名無しの技術部員

俺たちが研究しているのは怪人定期

 

13:名無しの技術部員

まあこの前テストしたクロックアップとファイズアクセルを掛け合わせたらお星様になって消えた被験者もいるから基本的に怪人の技術ってろくでもないのよね。

 

14:名無しの技術部員

でもどうするよ、このまんまダラダラやってたら上がなんて言ってくるか分らんぞ

既存のコピーだからダメって話なんだろ? 今は強いライダーのコピー品作っててもある程度戦力になるからいいけどさ、いい加減新しい物作ったらどうなんだ?

 

15:名無しの技術部員

それで辞めた幹部いたからなー

元気にやってるといいけど

 

16:名無しの技術部員

>>15

そいつが保有してたのってミラーワールドのライダーだっけ?

 

17:名無しの技術部員

>>16

そうそう。

仮面ライダーファムのデッキを持ち逃げしちゃったけどライダーたちのデータ自体は残ってたから研究は恙なく進んでいてさ。

 

18:名無しの技術部員

つまり…このスレはその研究の発表でいいってコト!?

 

19:名無しの技術部員

ミラーワールドのライダーってモンスターによって結構性能差がピーキーだろうけどそこら辺どうなんだろうな

 

20:名無しの技術部員

話によればもうテストすればいいだけの段階に入っているらしいから俺たちはそのデータと映像が来るまで新しいアイデア(妄想)を浮かべてましょうや

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界はハンドレッドによって滅んだ可能性の世界の一つ。

 

一人の少女が立っている。

 

青い海嘯を思わせるサファイアの両目が特徴的で、白く長い髪は背中までまっすぐ伸びている。目鼻立ちは整っていたが、その顔の片側は焼け爛れたような傷跡が目立ち、グレーのパーカーから覗く腕は人間のそれではない。

 

人外じみた少女。

 

その名前は…

 

 

 

 

 

 

 

「あー……だるい」

 

あくびを噛み殺す。

 

軽く力を抜いて、コンクリートの地面をトントンと蹴って地面から浮いてみる。澄んでいるはずの青空は既に黒煙で包まれて見えなくなり、目の前にはゴモラを焼いたような灼炎が町を焼き尽くしている。ふうと吐き出した息は重く、曝け出した白い肌に風で届いた火の粉がじりりと焼きを入れる。

 

「あーあ、面倒面倒ひたすら面倒」

 

自分を取り巻く状況も、自分のこれから成さねばならぬ義務も、自分の生まれすらも、己にとっては至極どうでもいい。しがらみとは凡そ鞭であり、かといって怠惰は毒でもある。どうしたものかと空を仰ぎ見るが、黒く濃い雲には答えは無い。

 

どうするか?

 

「戦うしかないよね」

 

闘争。闘争。闘争。それだけがただの正解だ。自分の体を生きるか死ぬかの瀬戸際に放り込み、思考の園を極限まで生きるために燃やし尽くす。そうすれば、きっとこの身に蔓延る倦怠感を吹き飛ばせるに違いない。

 

持たされていた黒いカードデッキを、地面に広がる水たまりに突き出す。

 

己の腹に浮き上がるようにして装着される溝のあるベルト。これにデッキを装填すれば、晴れて自分は生まれ変わることが出来るのだ。仮面ライダーへと。

 

もはや人間ではない自分に

 

ただの兵器でしかない自分に

 

ハンドレッドの手先でしかない自分に

 

ひと時ばかりのさよならを、嫌悪を以て捧げるとしよう。

 

 

「………変身」

 

カードデッキが装填されると黒い3つの虚像が重なり合って女性を変える。

 

鉄仮面を彷彿させる多数のスリットが入った仮面。額から頭頂部にかけて描かれる黒い龍の紋章は、契約した怪物が何たるかの証明であり、スリットの向こう側には赤い双眼が血の様に輝く。上半身に纏う黒一色の装甲。左腕に龍の頭部を模したバイザーが装備されていた。

 

失われた鏡の世界における最強の仮面ライダー

 

ハンドレッドにより再現された劣化品ではあるが、ほぼオリジナルと遜色ない出来で生まれ落ちた仮面ライダーリュウガ。

 

リュウガになっているその時だけ、一時の最強という事実が脳を酷く酩酊させる。脳内麻薬とはこの様なものであったかと、スッキリした頭脳で把握する。

 

「さて…」

 

ハンドレッドから与えられた任務は裏切り者の始末。仮面ライダーファムの技術を持ち逃げしようとしている幹部・クロノスの粛清である。ハンドレッドとしては大した損失でもないのであるが、組織からの脱走者という前例を作るのがよくないということで、自分にお鉢が回ってきたというわけだ。

 

「やるか」

 

自分の声に応じるかのように水たまりの裏側から黒い龍が飛び出してくる。名はドラグブラッカー。リュウガの契約モンスターであり、自分にとっては唯一の身内に等しかった。その背中に飛び乗ると、彼は咆哮を上げて遥か上空へと飛び上がっていく。

 

雲を超え、空に挑むその感触は重力に縛られていた自分にとっては非常に心地いい。

 

空からの贈り物のお陰か、件の人物はすぐに見つけることが出来た。奇しくも自分と同じく、仮面ライダーに変身していて、契約モンスターの背中に乗り合わせている。どうやらクロノスとはかなり好戦的な人物らしい。ミラーワールドではなく、現実世界での決着を望むとは。

 

「あんたがクロノスか」

 

「ええ、そういうあなたは私の同僚…になるはずだった人よね?」

 

白鳥の姿をした戦士は呟く。なるほど、人か。人か…

 

「人であるならば、私はそうでありたいと言いたいよ」

 

自分はもう人間じゃないのだ。とっくの昔に人だったころの残滓は消え失せている。家族の記憶も、好きだった食べ物もその匂いも、趣味も、友達も、全部忘れてしまった。これを人でなしと言わずしてなんという。自分が弱く縛られた存在だからこそ、大切なものも忘れてしまったんだ。

 

「あら、あなた人外? ミラーモンスターって訳でもなさそうだし…何者?」

 

聞かれたならば答えよう。

 

「私は…ハティ。お前を呑み込む者だよ」

「という訳でさ、死んで私の糧になれ」

 

相棒の頭を蹴って空中からクロノスをぶん殴る。落下と加速の勢いによる拳がクロノスの変身した仮面ライダーファムのクロスした両腕に防がれるが。

 

「甘いんだよ」 

 

「ぐっ!」

 

これを無理矢理蹴り上げて開き、そこに更に拳をねじ込む。殴る。殴る。殴る。拳の勢いが風を切り、風切音が遥か下の大地に向けて流れてゆく。両手で抑えられようが、バイザーで切りつけられようが構うものか。

 

目の前の敵をぶっ飛ばす。

 

傷つけること、そうさせることが、私を人間らしくしてくれるのだ。だから、もっともっと耐えてくれ。

 

『『SWORD VENT』』

 

カードをバイザーに装填すれば空中で絡み合うミラーモンスターたちが、己の主人へと武器を授ける。片や青龍刀、片や薙刀。お互いの契約モンスターの一部を模した武器が火花を散らしてぶつかり合う。

 

「空中で飛べもしないあなたが、白鳥の翼には届かないわ」

 

「白鳥…? アヒルの間違いだろ」

 

「言わせておけば!」

 

事実を言っただけじゃないか、何をそんなに怒る必要があると言うのだろうか。所詮私もお前もコピーに過ぎないだろうに、何故そこまで怒ることができる?自分を正しいと思えるんだ?

 

空中をワルツを踊るように舞い、自由落下する私を四方八方から切りつけるファムに心底ウンザリする。こんなんじゃ足りないんだよ!私を!人間で居させてくれるには、強くさせるにはまるで足りないんだよ!

 

「ドラグブラッカー! この愚か者を、私ごと焼き尽くせ!」

 

相棒はブランウィングを尻尾で弾き飛ばすと、躊躇なく口から黒い焔を吐き出して二人ごと炎で包み込んでいく。その姿にファムは慌てたのか新しいカードをバイザーに装填していた。無駄だというのに。

 

『GUARD VENT』

「あなたイカれてるの⁈」

 

「生憎イカレた連中の手本は腐る程いるからな!」

 

落下に伴う空気の圧と風の刃の感触は既に過ぎ去っていた。ドラグブラッカーの炎は固形化する性質があり、これを背中に2つ付けることで擬似的な燃える炎の翼として空中に留まる。さながら気分は天使の様だ。とは言え、今の私は悪魔だろうが。

 

「人じゃなくなった私にはピッタリか。ラファエル、ガブリエル、ミカエル…天使なんて大抵人を救ってくれやしない。…まぁ、求めてもいないんだけどね。自分を救えるのは自分だけだよ」

 

ファムの盾から放たれる無数の白い羽の群れを、翼を振るい急降下することで全て焼き尽くす。そのまんまの勢いで彼女を殴り飛ばすと、彼女は呻き声を上げてバランスを崩す。生み出された灰の雨が体中に降り注ぐ中、目の前にいるファムにカードを切った。

 

「死ぬほど痛いけど死ぬんじゃないよ」

『STRIKE VENT』

 

右腕に相棒の頭部を模した手甲・ドラグクローが装着され、その口から黒い炎が燻っている。あともう少しでファムを殺せる。そうした確信が全身を駆け巡る一方で、残念だという気持ちも同時に湧き上がっていた。

 

ハンドレッドの改造人間として生み出された自分はどうにも戦闘を好むようにプログラムされている。自分でも制御出来ない程に。だからこそ、戦って相手を殺すという形でしか生を実感できない程私は狂っている。

 

「死ね!」

 

そんなハンドレッドの操り人形にされ、どうしようもない自分を憎みながら、ドラグクローの炎を放つ。その刹那。

 

『ATTACKRIDE BLAST!』

 

青い光が私の目を焼いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

とあるビルの屋上に二人。

 

 

 

「やってくれたな!」

 

「あまり恨まないでくれたまえ」

 

横柄な態度を取る青と黒のプレートが何枚も重なった様な見た目の仮面ライダーディエンド。彼は幾つもの平行世界を股に掛ける大怪盗であるわけだが、新たに訪れたこの世界で戦っていた両者を目撃してちょっかいを掛けた訳である。それを知ったリュウガこと変身解除していたハティはその赤い目を細く睨み付ける。

 

「お前…コソ泥がこの戦いに茶々を入れる義理も無いだろうに」

 

「何、君の変身するライダーに少しばかり縁があっただけさ」

 

「それだけじゃないだろ、やってくれたお礼参りに今からでもあんたを殺してもいい?」

 

「辞めてくれないか、君にそんな度胸も余裕も無いだろう」

 

実際にディエンドの言う通りであった。ハティの体にはファムとの戦いによる裂傷と火傷が全身にこれでもかと刻まれていた。ハンドレッドによる再現は完全ではなく、防御性能が落ち、ハティ本人の戦闘スタイルも相まって全身は傷まみれだった。

 

「…こんな姿じゃ外も出歩けない」

 

白く、時々黒が混じった長髪がカーテンの様に顔を隠し、その隙間からは青くなった瞳が揺れている。体育座りのハティのその姿は、犬小屋でしょぼくれている飼い犬を彷彿とさせる。ディエンドにとってはこの時の弱みを見せる彼女の方が人間らしく見える。

 

「君にそうする自由も時間も無いだろう…おっと!」

 

「黙れ…」

 

彼女の瞳が再び赤く染まり、瞳孔は蛇の様に細くなる。その瞳にはドラグブラッカーがとぐろを巻いてディエンドを睨みつけていた。

 

「事実だろう? 君がハンドレッドに改造された哀れな人間で、彼らの操り人形に過ぎないんだからさ。その鬱憤を晴らしたい、現実から逃げたいから鏡の世界に逃げ込んだ。違うかい?」

 

「だから黙れって…黙れって!」

 

彼女が地面に拳を叩きつければ、ヒビ割れその隙間から腐った液体が漏れ出している。それを見ると彼女は嫌がる様に目を伏せる。

 

この姿からも分かる通り、ハティは改造人間である。元は市井の人で一般人らしい生活を謳歌していた少女は、無辜の悪意と興味により人外と成り果てたのである。幸せだったはずの記憶を消され、ただ屍の様に闘いに身を浸す。

 

「お前は…なんでそんな事ができる? 私への優越感か? あてつけか? 何がしたいんだよ、私には何も残ってない。人間らしい感性も性格も人格も…なのにお前は何故私にちょっかいを出すんだ」

 

人間であろうとして強くなろうとした。弱くなければ、きっと前の様な改造を受けなくて済む、強ければ人間でいられる。それなのに戦い続けた先に待ち受けていたのは、更なる人間離れだった。

 

強くなればなるほど自分は人間ではないと思い知らされる。

 

でも弱ければ人間ではいられないと思う。

 

だから戦いに没頭する。何も考えられない程に。

 

ウロボロスの様な悪循環自体には彼女も気づいていたが、分かっていても辞めるわけにはいかなかったし、出来なかった。その姿を、ディエンドは哀れに思っていたのだ。

 

「人間なんて案外脆くて弱い生き物だ。だから威張るし、見栄を張るし、大口を叩く。特にそういう人とは僕も縁が深くてね。ちょっとばかし彼の姿が過ったからね…彼なりに言えば、通りすがったのさ」

 

その言葉に彼女は呆れた様に目を見開いてため息を吐いた。

 

「なんだ、ただのおせっかいならノーサンキューだよ」

 

「先輩の話はよく聞いておくべきだと思うよ? 何せ僕は『人生』の先輩なんだからね」

 

少し落ち着いたのか、青い瞳がディエンドを覗いていた。

 

「じゃあ何? お説教でも講釈でも垂れる訳?」

 

「君にこれをあげよう。ちょっとしたお宝にもなれないプレゼントだ」

 

手を差し出したディエンドの手の平には、コーヒーゼリーの容器にメガネと目と口がついた可愛らしい生き物。ぷるゼリーノアールゴチゾウと呼ばれる生き物は、ぴょんと飛び出すと、ハティの頭に乗り掛かって跳ね回る。

 

「ちょっと、辞めて辞めて…」

 

頭を振るうと今度は膝の上に乗る。膝に手を添えるとそれを階段にして肩に登り出す。絶対に捕まらないぞ!と言わんばかりの動き方に、いつしかハティも愛おしさを思い出していた。

 

「君、お菓子は食べたことはあるかい?」

 

「忘れた。多分ここに来てからは一度もかな。多分、味覚は残っていると思うけど…」

 

自分を口を切った時の血の味を覚えているから、多分。

 

「ならば僥倖だね。君は少しばかり頭をゼリーみたいに柔らかくした方がいい。人間らしい感性というはね、当たり前を当たり前の様に感受して初めて発揮されるんだよ」

 

人間にとっての当たり前。例えば、寝たり食べたり、どうでもいい事に泣いたり怒ったり、嫌な仕事を面倒臭がったり、そうしたことを受けて感情を表に出すこと。それが一番出来るのが子どもだという事を、彼は長い旅で分かっていた。

 

「君はまだ見たところまだ少女だ。ならば色んなことを試してみるといい。そうすればきっと、自分がやりたいこと、自分がなんなのかが分かると思うよ」

 

「…そっか」

 

ピョンピョンと手の平に跳ねるゴチゾウを見つめるハティ。更にそれに嫉妬したのかドラグブラッカーも反射物から飛び出して彼女の周囲を旋回する。まだ彼女が怪物を惹きつける程の優しさを残している。その証明だった。

 

「僕はそろそろ行くとするが…まぁ、君の組織のことだからまた会うかもしれないね。じゃ、またね」

 

彼女も見慣れたオーロラカーテンを潜り抜けて新しい世界へと旅立っていくディエンド。

 

「…行っちゃったか」

 

それを見送るハティ。

 

「まぁ、ちょっと仲間が増えただけだけど…」

 

辛い現状はあんまり変わってない。彼女の人間離れした体はそのまんまだし、喪われた記憶も戻ってはいない。ハンドレッドの操り人形である現実も何も変わっていない。でも、少しばかり前に進めた気がしたような、後ろを振り返れたような…そんな気がした。

 

「やれるだけやってみるか」

 

彼女は立ち上がると、うんと背を伸ばし、本来ならば飛び降りれるはずのビルを階段を使って降りていく。

 

彼女たちの上にある空は黒い雲が切れて、少しだけ青空を覗かせていた。

 





彼女が何の改造人間なのかは次回のレポートで明らかになります。
予想してみた人は感想と共にお願いします。

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