東京武偵校の射撃場。
一人の男がシューティングレンジに立っていた。男の手にはS&W M29 通称44マグナムが握られている。
的との距離は15mほどだ。
ブザーの音が鳴る。それと同時に彼は引き金を引いた。片手で保持された銃から連続して放たれた弾丸が、正確にターゲットの中心に穴を開けていく。
6発全てを撃ち切ると、シリンダーを開いて空薬莢を足元の缶へ捨てた。
「大口径の拳銃、しかも片手でその命中率。流石サンフランシスコ武偵校のトップね」
後ろで見ていた小柄でツインテールの少女 、神崎・H・アリアも驚きの声を上げた。
「大したことじゃない。今使ったのはライトロードスペシャル(弱装弾)だ。普通のならこうはいかない」
男はポケットからスピードローダーでまとめられた弾薬を取り出して装填し、再び的に向かう。
引き金を引くと先ほどと比べて大きな銃声が鳴った。
今回の弾薬は本来の火薬量の弾薬だった。ライトロードの弾薬を使った時よりも跳ね上がりも大きく、連射速度は先程よりもゆっくりだった。
放たれた弾丸のいくつかは中心からやや外れた場所に命中したが、それでも十分な命中率だった。
「大したことない? 謙遜もそこまで来ると嫌味よ」
「動かない的に当てても意味がない。相手は動く人間だ。しかも武器を持った手に当てなければならない」
リロードした銃を、腋のホルスターへ納め、
「今の俺はな」
自虐的に言い放ち、苦笑いした。
「そうね、私達は犯人を生け捕りにしないといけないわ。そこだけは間違わないでね」
「法律は守るさ」
「少し、心配だわ」
アリアは頭を抑え目を瞑る。
目の前の男はアメリカの武偵の中でも射殺率が飛び抜けているのだ。殺した犯人は全員銃を持ち抵抗したので、無駄に殺したというわけではないのだが、それでも多すぎる。
「仲間を信じ、仲間を助けよ。だろ」
武偵の心得である武偵憲章の一文を言われたアリアは苦笑いし、ため息をつく。
高すぎる犯人の射殺率。故に厄介払いとしてサンフランシスコ武偵校から東京武偵校へ転校を命ぜられた男。
しかし彼は粗暴なだけではない。頭も切れるのだ。実際彼がいなければ迷宮入りしていた事件も数多くある。推理力と武力を彼ほど持ち合わせた武偵は日本にはそう多くいないだろう。
今アリアに手を貸している元Sランク武偵、遠山キンジと彼の3人ならば、
(ママを助けることができるかも知れない)
「まあ、信じないと始まらないわね。頼んだわよ、
そういわれた男、ハリー・キャラハンはニヤリと笑った。