時系列が分かりにくくなってしまいました。変なテンションでプロローグを書くんじゃなかった。
三か月前
一月のサンフランシスコ。今日は久しぶりに雨がなく、雲一つない透き通った青い空が広がっていた。時々冷たい風が吹くものの、街を歩いている人々はこの青空を満喫していた。
時刻は12時、丁度昼飯時だった。キャラハンは昼食をとるために、なじみのファストフード店に来ていた。
気難しげな顔をしながら、ゆっくりとカウンター席に座り、にこやかな顔をした店主に言った。
「いつもの」
「ランチ? それともディナー?」
「大して変わらないだろ」
店主は鼻歌を歌いながら、背の割れたパンに野菜とソーセージを挟み、仕上げにマスタードをかけてキャラハンに手渡した。
「いつもと変わったことはないか?」
そう言ってからキャラハンは特製ホットドッグに齧りつく。
「ないね。特になんにも」
このやり取りもホットドッグと同じく、キャラハンがここに来る度に行っていた。彼はこの店と店主を気に入っていて、彼なりに店主を気にかけていたのだ。店主は自分の信念を認めてくれる数少ない人物だったからだ。店主の方も、口数は少ないが自分を気にかけてくれているキャラハンを気に入っていた。
数少ない会話を終えて、キャラハンは後ろのにあった窓から外を眺める。数多くの車や人が、目の前を横切っていく。その中で1台の奇妙な車を見つけた。彼はホットドッグを齧りながら、窓に近寄り、目を細めつつ様子見た。
その車は銀行の前に止まっていた。運転席にいる男は窓からタバコの灰を捨てている。車の下には大量の吸い殻が捨ててあった。
「後で取りに来る」
キャラハンは食べかけのホットドッグをカウンターへ預け、店から飛び出した。そして怪しまれないように、車の近くにあった屋台の陰に隠れた。
再を観察を始める。男はアジア系だった。車はエンジンをかけっぱなしにしていて、ただ人を待っているようには思えなかった。そしてに男の目はとても一般人には見えない。人殺しのそれだ。
ここでキャラハンは、ここ周辺で銀行強盗が相次いでいることを思い出した。強盗は4人組で、逃亡時の運転手はアジア系の男であることは知っていた。
キャラハンは携帯を取り出し、サンフランシスコ武偵校の
「
その時甲高い警報が鳴り響く。案の定銀行のほうからだ。警報から数秒もたたないうちに武装した三人の男たちが飛び出してきた。男たちはそれぞれ、ショットガン、サブマシンガン、拳銃を持っていた。
「場所はビッグドッグの店の前だ」
キャラハンは脇のホルスターからS&W M29を引き抜き、親指で撃鉄を倒し、左手で右手首を添えるようにして構え、逃走用の車へ駆けて行く集団の一人に狙いを定める。
放った弾丸はショットガンをバトンのように持ちながら走っていた男の肩に当たった。男は衝撃でのけぞり後ろに倒れこむ。
突然の襲撃に、実行犯二人は体制を低くし車の陰に隠れ、運転手は車から降りて、ジャケットの内側から拳銃を取り出して、二人のところへ合流した。
「なんだ!? 何が起こった!?」
アジア系の男は喚く。まさか犯行直後にこんなことが起ころうとは思ってもいなかったのだ。
「警察に警戒されてたのか......?」
拳銃の男は冷静に状況を把握しようとする。
「いや、武偵だ」
拳銃を持っていた男の視線の先には武偵校の制服を着ていたキャラハンがいた。
「どうする? 応援が来るのは時間の問題だぞ!」
アジア系の男の焦りは静まらない。自然に拳銃を握る力が強くなる。
「俺が奴の気を引く。その隙に車に乗り込こめ。あいつを忘れるなよ」
サブマシンガンを持った男は立ち上がり、引き金を引いた。当てることよりも、弾幕を張るようにしてキャラハンの動きを止めようとしたのだ。
キャラハンは再び屋台の陰に隠れ、弾丸を躱す。屋台の持ち主は、最初の発砲でどこかに逃げていたため、自分以外に被弾する心配はない。
銃声が鳴り止み顔を上げると、男たちは怪我をした男を回収し車に乗り込んでいた。運転手はアクセルを思いっきり踏み込み、車を走らせる。
しかし完全に射線から外れる前に運転手を狙って引き金を二回引く。最初の一発は外したが、二発目が頭部に命中し、コントロールが失われた車は、送水管に激突し、動きを止める。
破損した送水管から水が噴水のように飛び出している中、男たちは車から降りて走りだす。キャラハンは男たちを警戒しながら追った。
捕まるまいと、男たちは逃走りながら後方のキャラハンに向かって銃を乱射した。キャラハンは違法駐車されていた車の後ろに飛びこんでそれを回避し、反撃の機会をうかがう。
男たちは足を止めてキャラハンの追走を逃れるため、ここで決着をつけることを望んだ。無駄弾を撃つことをやめ、緊張した面持ちで、車の陰に隠れたキャラハンに近づいて行く。
キャラハンは防弾仕様の制服を着ているため、体に当たる弾丸は決定打とはならないものの、首から上は守るものが何もない。強盗たちもそれをわかっていたので頭部を狙うことに集中した。
万事休すか、とキャラハンが思ったとき、あるものを見つけた。塗装に使うスプレー缶だ。それは新品のようで中にはまだ大量のペンキが入っていた。
キャラハンはスプレー缶を向って来る男の目の前に投げ、すかさずそれを銃で撃った。缶はキャラハンの狙った通り、爆発し中身をぶちまける。中身は男たちの目に入り、目つぶしの役割を果たしてくれた。
「くそ! なんだこりゃ!?」
男たちがひるんだ隙を突いて、マシンガンの男と拳銃の男を撃ち殺し、未だ混乱しているショットガンの男に近づいていく。足音を聞いてショットガンを構えようとしたものの、すでに目の前には撃鉄を倒した銃を構えたキャラハンがいた。
(あいつは何回銃を撃った?)
「考えてるな? 弾が残っているかどうか。それは撃ちまくって俺にもわからん。だがこの弾は44マグナム、世界最強の拳銃弾の座から退いたが、それでもお前の頭を吹き飛ばすには十分だ。それでも賭けてみるか?」
殺すか、殺されるか。生きるか、死ぬか。極限の選択を突きつけられ数秒考える。思考の中で、肩にもらったマグナム弾の衝撃を思い出した。今度はそれが頭に......。
結局男は自分の命を取った。男は持っていたショットガンを落とし、頭に両手を乗せ跪いた。
パトカーのサイレンの音。いまさらになって警察と武偵の応援がやってきた。キャラハンは男の足元にあるショットガンを回収し、応援のもとへ歩いて行こうとする。
「待てよ、答え合わせをしてくれ」
振り返ったキャラハンは撃鉄が倒れたままの銃を男に向ける。突然の行動に男は驚き目を瞑る。しかし聞こえてきたのは銃声ではなく、金属のぶつかる音だけだった。
この時キャラハンはいたずらが成功した子供の用に笑顔になった。
「このくそ野郎」
男はとびっきり恨みと怒りを込めて呟いた。