シャインポスト Be your family 作:陽HARU
事務所の5年目最終ライブが終わった夜。
武道館のステージを全ユニットで踏み切った達成感と、疲労と、安堵と、少しの寂しさが混じった空気の中。
控室でいつものように片付けを手伝っていた小夢さんが、
珍しく手が止まってた。
「…ねえ、マネージャーくん」
「ん? どうしたの、小夢さん」
「今日で正式に5年契約、満了だよね」
「ああ、そうだね。…延長の話、まだしてなかったけど」
小夢さん、いつもの「にゅふふ」じゃなくて、
ちょっとだけ震えた声で、目を逸らしながら言った。
「私…もう、コンサルとかダンス講師とかじゃなくて、
ただの和泉野小夢として、君のそばにいたいんだけど…
だめ、かな」
「……え?」
「――妊娠、してるの。
君の子」
一瞬、頭真っ白になった。
ライブの歓声も、打ち上げの喧騒も全部遠くに行って、
目の前にいる小夢さんの顔しか見えなくなった。
「…いつから?」
「気づいたのは…3ヶ月前くらい。
言えなくて。
だって、君、今まさに一番大事な時期だったし…
アイドルたちの夢を、絶対に邪魔したくなかったから」
小夢さん、泣き笑いみたいな顔で続ける。
「でも、もう隠せない時期だし…
私、アイドルだった経験があるからわかるの。
夢を追いかける子たちを一番近くで見てきたからわかるの。
――君がこれから先もずっと、誰かの夢を支え続けたいって気持ちも」
「だからこそ、私も…
君の夢の隣で、ちゃんと一緒にいたい」
俺は、震える手で小夢さんの手を握った。
「…俺も、俺もだよ。
もうコンサルとかマネージャーとかじゃなくて、
ただの、君の旦那として、そばにいたい」
小夢さん、ぽろっと涙こぼして、
でもすぐにいつもの猫っぽい笑顔に戻って。
「にゅふふ…じゃあ、
籍入れるタイミング、ライブ後の打ち上げでみんなに報告しちゃおっか?
『これからは家族みんなで武道館目指します!』って」
「…それ、最高に恥ずかしいんだけど」
「えー、いいじゃん!
だって私たち、
アイドルたちを一番近くで見守ってきた家族なんだからさ」
その夜、打ち上げの途中。
小夢さんが俺の手を引いて、みんなの前に立った。
「大事なお知らせがあります!」
全員が「おおー!?」ってざわついた瞬間、
小夢さんが俺の肩に寄りかかって、満面の笑みで宣言。
「私たち、デキ婚します!
これからはマネージャーくんと小夢ママで、
みんなの夢を、さらに大きく支えていきますね♪」
一瞬の静寂のあと、
アイドルたちから爆発的な歓声と、
「ええええええ!?」「小夢さん妊娠!?」「マネージャーくん責任取れー!!」「おめでとうーーー!!」の嵐。
誰かがクラッカーを鳴らし、
誰かがシャンパンを開け、
誰かがもう泣いてた。
そして小夢さんが、俺の耳元で囁いた。
「…これからも、ずっと一緒に、
キラキラした世界を作っていこうね」
俺はただ、強く頷いて、
小夢さんの――これから家族になる人の――お腹に、そっと手を当てた。
「…ああ。
今度は俺たちが、
新しい『シャインポスト』を、作る番だ」