シャインポスト Be your family 作:陽HARU
ひめちゃんが中2になった頃。
もう完全に「ティーンエイジャー」で、
小夢さんに似た大きな目と長い髪が、
鏡を見るたびに小夢さんを少し不安にさせるみたいだった。
学校から帰ってくると、
「ただいま」も言わずに部屋に直行。
夕飯の時間になっても「いらない」って一言。
小夢さんが「何かあった?」って声かけると、
「別に。うざい」ってドアをバタン。
最初は「反抗期だな」って笑ってた俺だけど、
小夢さんの顔がだんだん曇っていくのがわかった。
ある夜、ひめちゃんがリビングでスマホいじってる時に、
小夢さんが「宿題終わったの?」って聞いたら、
ひめちゃんが急にキレた。
「ママこそ! 昔アイドルやってたってだけで、
今はただの普通のおばさんじゃん!
私のことなんか見てないでしょ!
いつもパパばっかり見て、気持ち悪い!」
小夢さんの顔が一瞬で青ざめた。
俺はすぐに間に入ったけど、
ひめちゃんは「もういい!」って部屋に逃げて鍵をかけた。
その夜、小夢さんはベッドで膝を抱えて、
またあの産後3ヶ月の頃みたいに震えてた。
「…また、私が悪いんだ。
ひめちゃんに愛情注げなかったから、
こんな風に恨まれてる。
あの時、消えちゃえばよかったのかも…」
俺はただ強く抱きしめて、
「違う。お前はひめちゃんを一番愛してる。
今だって、毎日ひめちゃんの帰りを待ってるだろ。
反抗期は、親を試してるだけだよ。
俺たち、逃げないって決めたじゃん」
翌朝、ひめちゃんは無言で学校行った。
小夢さんは一日中ぼーっとして、
夕方、俺が「ドライブ行こう」って誘ったら、
珍しく素直についてきた。
ミニバンの後部座席を倒して、
小夢さんが横になって、
「…ひめちゃんに嫌われたら、私また壊れちゃうかも」
って小さな声で言った。
俺はハンドル握りながら、
「壊れないよ。お前はもう、壊れても立ち上がれる人になった。
ひめちゃんも、いつか気づくさ。
ママがどれだけ頑張ってきたか」
その週末、ひめちゃんの学校の文化祭。
小夢さんは「行かない方がいいかな」って迷ってたけど、
俺が「家族で行くよ」って決めて、
3人でミニバンに乗った。
車中、ひめちゃんはイヤホンつけて無視。
小夢さんは助手席で俯いてた。
文化祭会場で、ひめちゃんのクラスの出し物(カフェ)を見に行ったら、
ひめちゃんがエプロン姿で忙しそうに働いてる。
俺たちが入ってきたのに気づいて、
一瞬顔をしかめたけど、
小夢さんがそっと「…おいしそう」って呟いたら、
ひめちゃんがトレイ持ってきて、
「…これ、サービス。
ママの好きなやつ、作ったから」
って、コーヒーとクッキーを置いた。
小夢さんの目が一瞬で潤んだ。
帰りの車中、ひめちゃんが後部座席からぽつり。
「…ごめん。
この前、ひどいこと言った。
ママのこと、おばさんとか言って…
本当は、ママみたいにキラキラしたかったのに、
今は全然ダメで…イライラして、当たっちゃった」
小夢さんは振り返って、
「…ママも、ごめんね。
昔、ひめちゃんのことちゃんと愛せなくて、
ずっと怖かった。
でも今、ひめちゃんがこうやって話してくれるだけで、
生きててよかったって思うよ」
ひめちゃんがシートベルトのまま前屈みになって、
「ママ、産後うつだったって知ってるよ。
パパから聞いた。
…だから、ママが今笑ってるの、すごいって思う。
私も、ママみたいに強くなりたい」
俺はバックミラー越しに2人を見て、
「…ミニバン、買ってよかったな。
こんな風に、3人で話せる時間が増えた」
小夢さんが俺の手を握って、
「うん。
反抗期も、全部ひめちゃんの成長だもんね。
パパがいてくれたから、私も耐えられた。
これからも、3人で…新しいステージ、続けよう」
ひめちゃんが小さく頷いて、
「…うん。約束」
家に着いて、ひめちゃんが初めて自分から小夢さんに抱きついた。
小夢さんは少しびっくりした顔して、
でもすぐにぎゅっと抱き返して、
「…大好きだよ、ひめちゃん」
って、震える声で言った。
あの産後うつのどん底から、
ここまで来れた。
闇はまだ完全に消えないけど、
家族の形は、もっと強くなった。