シャインポスト Be your family 作:陽HARU
ひめちゃんが高2になった。
もう完全に「大人」の入り口に立ってる。
小夢さんに似た透明感のある肌と、
少し長めの前髪が目にかかる感じが、
鏡を見るたびに小夢さんを懐かしくも苦しくさせるらしい。
最近、ひめちゃんは家にいてもスマホかノートパソコンをいじってるか、
イヤホンつけて音楽聞いてるか。
話しかけても「うん」「別に」「あとで」の3択。
でも怒ってるわけじゃない。
ただ、どこか遠くを見てる。
ある日、夕飯の後。
小夢さんが「進路、どう考えてる?」って聞いたら、
ひめちゃんがぽつり。
「…わかんない。
大学行っても、何かやりたいこと見つからない気がする。
ママみたいに、キラキラした仕事したかったけど…
私には無理だよ。
結局、普通の人生でいいかなって」
小夢さんの手が、箸を持つ途中で止まった。
その夜、小夢さんは俺の隣で、
久しぶりにあの産後の頃みたいな震え方をしてた。
「…ひめちゃん、私のせいだ。
私がアイドルやってたこと、
『キラキラ』って言葉を軽く使っちゃったから、
ひめちゃんにプレッシャーかけちゃった。
あの頃の私、ステージで笑ってるけど、
裏では毎日『消えたい』って思ってたのに…
ひめちゃんに、そんな闇を見せたくなかったのに」
俺は小夢さんの手を握って、
「違う。お前がキラキラしてたのは本当だよ。
でも今のお前は、それ以上に強い。
ひめちゃんは、お前の全部を知ってるからこそ、
『ママみたいになりたい』って言ってたんだろ。
無理にキラキラじゃなくていい。
ひめちゃんのペースでいいんだ」
次の週末、
大学のオープンキャンパスがいくつか重なってた。
俺が「ミニバンで回ろうか」って提案したら、
意外にもひめちゃんが「…いいよ」って頷いた。
朝早く出て、まずは小夢さんの地元近くの大学へ。
車中、ひめちゃんが窓の外見て、
ぽつぽつ話し始めた。
「ママの昔の動画、こっそり見たよ。
すっごい可愛かった。
でも、コメント欄にひどい言葉がいっぱいあって…
ママ、毎日そんなの読んでたの?
私、そんなの耐えられないかも」
小夢さんはハンドルを握る俺の横で、
静かに頷いた。
「…うん。耐えられなかった日もあった。
叩かれたこともあったし、
『消えろ』って言われたことも。
それでもステージに立ってたのは、
誰かに『好き』って言ってもらいたかったから。
でも本当は、自分が好きになれなくて…
ひめちゃんが生まれてからも、
ずっと『母親失格』って思ってた」
後部座席のひめちゃんが、
シートベルトのまま身を乗り出して。
「…私、ママのそういうところも全部知ってるよ。
産後うつで、泣いてたことも。
『触らないで』って言ってたことも。
でも、ママが今ここにいて、
笑ってて、私のこと見ててくれるのが、
一番のキラキラだと思う」
サービスエリアで休憩した時、
小夢さんがひめちゃんを抱きしめて、
「ありがとう。
ママ、ひめちゃんに救われてるよ。
進路、焦らなくていい。
やりたいことが見つからなくても、
一緒に探そう。
パパもいるし、車もあるし」
ひめちゃんが少し照れくさそうに笑って、
「…うん。
私も、ママみたいに『壊れても立ち上がれる人』になりたい。
でも今は、まだ壊れやすいから…
ちょっとずつでいいよね」
帰りの車中、
夕陽がミニバンの車内をオレンジに染めてた。
ひめちゃんが後部座席で寝息を立ててる。
小夢さんが俺の肩に頭を預けて、
「…高校生になっても、
まだ甘えてくれるんだね。
あの暗闇から、ここまで来れた。
ひめちゃんのおかげで、私のステージは続いてる」
俺はバックミラーで2人を見て、
「家族の形、守り続けてるな。
これからも、新しいステージ、3人で」
小夢さんが目を閉じて、
穏やかに微笑んだ。
「うん…約束、ずっと」