シャインポスト Be your family   作:陽HARU

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7話

ひめちゃんが高2になった。

もう完全に「大人」の入り口に立ってる。

小夢さんに似た透明感のある肌と、

少し長めの前髪が目にかかる感じが、

鏡を見るたびに小夢さんを懐かしくも苦しくさせるらしい。

 

最近、ひめちゃんは家にいてもスマホかノートパソコンをいじってるか、

イヤホンつけて音楽聞いてるか。

話しかけても「うん」「別に」「あとで」の3択。

でも怒ってるわけじゃない。

ただ、どこか遠くを見てる。

 

ある日、夕飯の後。

小夢さんが「進路、どう考えてる?」って聞いたら、

ひめちゃんがぽつり。

 

「…わかんない。

大学行っても、何かやりたいこと見つからない気がする。

ママみたいに、キラキラした仕事したかったけど…

私には無理だよ。

結局、普通の人生でいいかなって」

 

小夢さんの手が、箸を持つ途中で止まった。

 

その夜、小夢さんは俺の隣で、

久しぶりにあの産後の頃みたいな震え方をしてた。

 

「…ひめちゃん、私のせいだ。

私がアイドルやってたこと、

『キラキラ』って言葉を軽く使っちゃったから、

ひめちゃんにプレッシャーかけちゃった。

あの頃の私、ステージで笑ってるけど、

裏では毎日『消えたい』って思ってたのに…

ひめちゃんに、そんな闇を見せたくなかったのに」

 

俺は小夢さんの手を握って、

「違う。お前がキラキラしてたのは本当だよ。

でも今のお前は、それ以上に強い。

ひめちゃんは、お前の全部を知ってるからこそ、

『ママみたいになりたい』って言ってたんだろ。

無理にキラキラじゃなくていい。

ひめちゃんのペースでいいんだ」

 

次の週末、

大学のオープンキャンパスがいくつか重なってた。

俺が「ミニバンで回ろうか」って提案したら、

意外にもひめちゃんが「…いいよ」って頷いた。

 

朝早く出て、まずは小夢さんの地元近くの大学へ。

車中、ひめちゃんが窓の外見て、

ぽつぽつ話し始めた。

 

「ママの昔の動画、こっそり見たよ。

すっごい可愛かった。

でも、コメント欄にひどい言葉がいっぱいあって…

ママ、毎日そんなの読んでたの?

私、そんなの耐えられないかも」

 

小夢さんはハンドルを握る俺の横で、

静かに頷いた。

 

「…うん。耐えられなかった日もあった。

叩かれたこともあったし、

『消えろ』って言われたことも。

それでもステージに立ってたのは、

誰かに『好き』って言ってもらいたかったから。

でも本当は、自分が好きになれなくて…

ひめちゃんが生まれてからも、

ずっと『母親失格』って思ってた」

 

後部座席のひめちゃんが、

シートベルトのまま身を乗り出して。

 

「…私、ママのそういうところも全部知ってるよ。

産後うつで、泣いてたことも。

『触らないで』って言ってたことも。

でも、ママが今ここにいて、

笑ってて、私のこと見ててくれるのが、

一番のキラキラだと思う」

 

サービスエリアで休憩した時、

小夢さんがひめちゃんを抱きしめて、

「ありがとう。

ママ、ひめちゃんに救われてるよ。

進路、焦らなくていい。

やりたいことが見つからなくても、

一緒に探そう。

パパもいるし、車もあるし」

 

ひめちゃんが少し照れくさそうに笑って、

「…うん。

私も、ママみたいに『壊れても立ち上がれる人』になりたい。

でも今は、まだ壊れやすいから…

ちょっとずつでいいよね」

 

帰りの車中、

夕陽がミニバンの車内をオレンジに染めてた。

ひめちゃんが後部座席で寝息を立ててる。

小夢さんが俺の肩に頭を預けて、

 

「…高校生になっても、

まだ甘えてくれるんだね。

あの暗闇から、ここまで来れた。

ひめちゃんのおかげで、私のステージは続いてる」

 

俺はバックミラーで2人を見て、

「家族の形、守り続けてるな。

これからも、新しいステージ、3人で」

 

小夢さんが目を閉じて、

穏やかに微笑んだ。

 

「うん…約束、ずっと」

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