同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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011.連携

 

 

 茶の国から戻った俺たちは、直接三代目に連絡することになった。帰ってすぐだが、嫌とは言えない。

 

「シビよ、ご苦労じゃった。よくあの霧の忍刀七人衆を退けた」

「ありがとうございます。しかしそれについてはヨフネとマイト・ダイ、両名の功績が大きいかと」

「ヨフネはまだしも、マイト・ダイじゃと?」

「はい、ここからは俺が」

 

 ダイさんのことは俺が答えるべきだと思い、一歩前に出て説明する。

 

「あの人は忍術が使えない代わりに体術を極め、八門遁甲を使うことが出来ました。あの場にいた息子であるガイを守るため、死門まで開き、忍刀七人衆の内、四名を倒してました」

「なに? 八門遁甲じゃと? あれは全盛期の儂でも全ては習得できんかった術じゃぞ」

 

 やっぱり凄いよ、ダイさん。プロフェッサーと言われる火影をも凌ぐなんて。

 

「あの人が他の七人衆にも手傷を負わせてくれ、また俺に八門遁甲を教えてくれたおかげで、もう一人、雷牙と呼ばれていた男を倒せたんです」

「お主も使えるのか?!」

「とはいっても、開門だけですけど」

 

 それを聞いたヒルゼン様の眼光が鋭くなる。

「……代償は知っておろうの?」

「はい、全てを開くつもりはありません。というよりも無理そうです。忍術全てを捨てる覚悟で修行すれば別かもしれませんけど」

「誰も全てとは言っておらん! 開門だけでもかなりの痛みだったはずじゃ!」

 

 みんなのいるところで言わないで欲しい。今度は横からのシビ先生やトンボの眼光も鋭くなってきた。

 

「俺としても無闇矢鱈に使う気はありませんよ。まだ体も出来てないですし、今回は仲間がやられそうになる中、初めて使えたんですから。それにあの人からもキツく言われてますしね」

 

 お、少し横からの眼光が減った!

 

「よいじゃろう。だが、コハルには報告せねばならんぞ」

「待っっって下さい! それだけは! 八門遁甲使う前に死んじゃう!」

「諦めろ、どうせすぐにバレるんじゃ。早い方が良かろう」

 

 嫌だ、家に帰りたくない。確かにあの婆様のことだ。帰ったらすぐにバレるだろう。しょうがないけど……あー帰りたくない。あ、そうだ。

 

「それと、ダイさんの息子のガイも使えますよ。俺よりもよっぽど、あの術の才能はあります」

「そうか、あやつにも落ち着いたら釘を刺しておくかの」

 

 ガイすまん、兄弟弟子なんだから一蓮托生だ。

 

「ところでヨフネよ、敵からの情報は何か手に入れられたか?」

「いえ、死体を探していたら大蛇丸様が来られ、情報収集は任せろと言われたので」

「あの近くに大蛇丸がおったのか。……まだ報告は入っておらんが、さすればすぐに詳しい情報が得られるだろう」

 

 あいつめ、報告してないか。蛇でも使ってサッサと報告しろよ。あと本当に極秘すぎるだろう。火影も知らないなんて。

 

「最後にじゃ、忍刀はどうした?」

「俺が倒した男からは雷刀“牙”を奪いました。他の刀については、敵が撤退する際に持って行ったようです」

 

 嘘と真実を織り交ぜて話す。他の三丁にしてもこちらで確保しておきたかった。とりあえずは左の腰に差していた雷刀を見せた。ここで里に提出しても何かのタイミングで行方不明になりそうな予感がする。

 

「そうか、それはお主が使うと良い。雷遁使いであるし、これも運命だろうて」

「良かった。ありがとうございます」

 

 本当に良かった。こいつがどんな能力を持っているのか、詳しく調べたかったのだ。でも体が回復してからだな。

 

「ところで霧隠れの里で最近何か有ったのですか?妙に好戦的になっている気がするのですが。今回の件にしても、むやみに戦線を広げて。元々奴らは波の国を狙っていたはずです」

「うむ。それは儂らも気にしておるが、あそこは元々閉鎖的な里でのう、特に三代目になってからはそれが顕著じゃ。情報もほとんど入ってこん」

 

 彼らの意思決定はどこまでがマダラの影響で、どこまでが彼ら自身の選択なのだろうか。

 

「しかし、これからは雨隠れに加え、霧の動向にもより一層注視していかねばならん。お前に頼ることも増えるじゃろう。頼むぞ」

「「「はい!」」」

「……はい」

 

 もうちょっと感知タイプの忍を増やして欲しい。前世のブラック企業も真っ青だよ。

 

 

 *

 

 

 そうやって毎日こき使われ、殺し殺されの任務をこなしていると時が経つのも早い。俺達が六歳の時から始まった第三次忍界大戦も泥沼化し、いつの間にか五年近い歳月が流れていた。

 

 戦争による人手不足が深刻化する中、アカデミーの卒業が非情なまでに繰り上げられ、臨時に中忍試験も開催された。戦時下においても戦争以外の任務は発生する。それに充てる人材をそれらによりカバーし、前線の戦闘員を増やすつもりなのだろう。

 

 アスマやガイなんかはもちろん、他の同期メンバーも中忍試験に臨み、皆中忍となった。後で聞けば試験内容は筆記試験とサバイバル演習、試験官との戦闘と、犠牲者が少なくなるよう設定されていたようだ。

 

 その結果、普段よりも甘い判断基準により能力に疑問のある者を含め、多くの下忍が引き上げられ、完全に総力戦の様相を呈してきている。原作を知っていてもまだ不安になるほどに。

 

 現在、俺とトンボは十一歳。

 本来ならまだアカデミーで平和に授業を受けているはずの年齢だが、この狂った戦時特例の下では、立派な部隊長(中忍)として扱われていた。

 

 今度俺が配属されたのは、木ノ葉の東側、陸地から比較的近い大きな島だった。かつては多くの人が住んでいたであろう廃屋の跡が多数残っているが、ここは霧隠れとの最前線。すでに住民は誰一人としていなかった。

 

 ここは島であるため、当然周りは海。水遁を得意とする霧隠に利がある土地で、敵に囲まれて標的にされやすいことから、何よりも感知タイプが必要とされている現場だった。

 

 また雲隠れからも橋頭堡として使いやすいこの島は、常に狙われていた。

 シビ先生は別任務で前線に出ており、今回は俺が隊長となる班が組まれることとなった。

 

 新しい班の構成は、今までも一緒だった飛竹トンボ。

 一度任務で一緒になったことがある二つ下の日向ホヘト。

 そして残る一人は、今年下忍になったばかりの山中サンタ。

 

 戦時下のいま、担当上忍をできる余裕のある忍も枯渇しており、十歳前後の子供達が班を組み戦争をさせられているのだ。

 

 トンボも今は中忍となっており、中忍二人と下忍二人の編成だ。

 視力をほとんど失った代償に勘や感知能力が高い飛竹トンボ。

 感知において右に出るものはいない日向家から、ホヘト。

 一族の特性として感知タイプが多く、里でも「結界班」や「解析班」といった重要なポストに就くことが多い山中家から、サンタ。

 そして、管狐のコン平による感知ができて医療忍術も多少は使える俺。

 

 一般的に見れば、まあ見事なまでの感知特化班だ。戦闘能力はホヘトと俺の近接戦闘頼り。そもそも感知班は接敵を許した時点で負けみたいなものだ。普通ならトラップ忍術や遠距離攻撃できる忍が護衛に配置されるところだが、今回は俺があえてこの編成を希望した。

 

 このメンバーが揃えば、戦況を俺たちだけで変えることができるかもしれないと思っているからだ。

 

 

 *

 

 

 さて、俺たちの任務地となった島だが、中心部が凹んでいるカルデラ地形である。俺たちが陣地を構築して連携を確認していると、ホヘトが忍鳥からの伝令文を持ってきた。

 

「ヨフネ隊長、伝令です。拠点から何かの巻物が盗まれた模様。内部の犯行のようで、霧隠れに持ち出すつもりでこちらに向かって来ているようです」

「それで、本隊は何と言ってきている?」

「拠点の方で被害が出たようで、こちらだけで奪還せよ、とのことです」

「全く、来て早々ついてない……」

 

 俺は少し考えてから口を開いた。

 

「これがただ内部の者が雲隠れや霧隠れに寝返るつもりで奪っただけなら、それでも良いけどな。敵国が手引きしていると考えるのが普通だろう」

 

 今、俺たちがいなくなれば、その隙を突いて奴らは攻めて来るだろうな。

 

「よし! 早速例のアレを試すいい機会と思おう。トンボは後方を警戒して安全確保に努めてくれ。あとトラップを警戒パターンから攻撃パターンへ変更を」

「大丈夫?」

「大丈夫だよ、トンボ。俺たちを信じろ」

「分かった、気をつけろよ」

 

 雷刀“牙”を手に入れて気づいたのだが、この刀には雷遁の増幅機能があった。普通に使っても雷遁を纏わせれば斬れ味が増すので重宝するのだが。

 

 それよりも俺にとっては、雷刀を『銃身』に見立てることで、ずっとやりたかった「電磁砲による超遠距離狙撃」が可能となったことが大きい。

 

 電磁砲の射程距離と速度を上げるためには、長い銃身が必要となるため、普通にやると倍以上のチャクラが必要となってしまう。今までの俺のチャクラ量では撃てて三発しか持たなかった。まあ雷刀を使っても、五〜六発も撃つとチャクラがほとんど無くなってしまうのだが。

 

 俺が『銃』となり、ホヘトが『照準器(スコープ)』となる。

 そしてサンタが心伝身の術でホヘトの視界を俺に共有することで、精度の高い狙撃が可能になると考えた。

 

 実際に班を組んでから、発射はしていないもののこの術についてはみんなに話し、協力をしてもらって連携だけは確認していた。

 

 これで遮蔽物の多い場所でも、ホヘトが白眼を使用し照準を合わせることで、木などの障害物を一切気にせず撃ち抜けるようになった。

 

 当然、弾も特別製で、円錐形の銃弾を忍具屋に特注して作ってもらった。発射する際に風遁を纏わせることで、貫通力もケタ違いとなった。

 また弾が超高速のため風などの外乱の影響も受けにくい、とんでもない凶悪兵器となってしまった。

 

 俺達は巻物を持った敵の予想進行ルートに、前もってコン平を配置している。ホヘトが一点に集中した時の有効視界距離は約一・五キロ。そのため二キロ先にコン平を展開させており、敵の正確な方角を教えてくれる手はずだ。

 

 着弾までは約〇・六秒で、敵の数は二人。いくら白眼の視界が共有されるとはいえ、確実に当てることができるわけではない。まあ、マッハの衝撃波のおかげで掠っただけで致命傷を与えられるんだが。

 俺たちは忍の世界には似ても似つかぬ兵器を準備し、息を潜めて待つこと一時間。とうとうコン平からの合図が来た。

 

「二時の方向、数は報告通り二。街道を進行中」

「了解」

「合図の後、すぐに発射する。計四発だ」

 

 サンタの術を介して、ホヘトの白眼の視界が俺の脳髄に直接流れ込んでくる。他人の視覚情報、それもモノクロで透視された異質な景色が強制的に上書きされる感覚は、何度やっても吐き気を催しそうになる。だが、標的はくっきりと見えた。

 

「……捕捉……発射」

 

 その瞬間、雷刀が強く発光する。

 鼓膜を破るような轟音と共に、肩の骨が軋むほどの強烈な反動が俺の身体を襲った。

 弾の一部が電気抵抗による発熱に耐えられず、蒸発を通り越してプラズマ化する。そのため、一直線上に貫通した木々は一瞬にして内側から焦げてしまっていた。

 

 そして白眼の視界共有のおかげで、初撃が命中し、遠く離れた森の中で血の花が咲いたことがすぐに確認できた。敵は何が起きたか分からず足を止めてしまった。もはやただの的である。俺は残り一人に向けて素早く次弾を放った。

 

「目標沈黙。任務終了」

「うっし、お疲れさん。まさか二発で終わるとは思わなかった」

 

 サンタはすぐに術を解いて声をかけてきたが、ホヘトは青ざめた顔で固まっていた。

 ようやく口を開いたかと思えば、「これは自分が知っている戦闘ではないですね……」と呟き、また黙り込んでしまった。

 

「何、別に卑怯って訳じゃないさ。戦争なんだから」

 

 俺は肩の痛みを散らすように息を吐いた。

 

「さて、感想は後からにして巻物回収に行きますか」

 

 そう言って雷刀を腰に差す。雷遁を使用した後も刀身があまり発熱しないのもありがたい。おかげで連射が可能だ。やっぱ使えるなと確信しながら、俺たちは着弾現場へと向かい、巻物を回収した。

 

 

 *

 

 

 現場は、焦げた肉と血のむせ返るような匂いが充満していた。

 周囲の木々は衝撃波で薙ぎ倒され、着弾点はクレーターのように地面が抉れている。

 

 するとすぐに、動物の面を被った暗部の忍が数名、音もなく木々から降り立ち姿を現した。拠点は大した被害を受けていないのか?

 

「よく仕留めた。しかし……ここは何があったんだ?」

 

 追跡部隊の暗部が、惨状を見て少し声を上ずらせながら聞いてくるのも無理はない。

 最初に狙撃した者は胴体から下が完全に吹き飛ばされており、そして棒立ちになって眉間を撃ち抜かれたもう一人の死体は、肩から上が丸ごと消し飛んで血だまりを作っているのだから。

 

(……威力が有りすぎてひどい惨状だな。少しでも射線がズレてたら、巻物ごと消し飛んでただろうな。いやあ回収出来て良かった。)

 

 俺は冷や汗をかきながら、表面上は子供らしくとぼけてみせた。

 

「……ちょっと、手加減を間違えちゃいまして。俺たちのとっておきなんで」

「……巻物から血がずっと滴り落ちてますけど、読めますよね?」

 

 サンタの無邪気な言葉に、暗部の忍は呆れたように息を吐いた。

 

「本当におたくら、なにやったの……」

 

 俺たちは揃って顔を逸らした。

 

「と、ところで巻物の中身は確認しなくて良いんですか?」

「ん……ああ、こいつらが持ってたのは偽物だからな」

「……?」

「こいつらは元々マークされていた間抜けな裏切り者で、お前達はここに配属されたばかりの『新顔』ってことさ」

 

 狐の面を被った暗部が、冷たい声で種明かしをした。

 

「つまり、裏切り者が処分できて、新顔の素行調査も兼ねてたってことさ」

 

 俺たちは唖然として顔を見合わせた。

 十歳前後の子供たちにやらせるテストの質じゃない。これが、木ノ葉の暗部。

 

「ようこそ、血みどろの最前線へ」

 

 暗部の男の低い声が、むせ返るような血の匂いの中で不気味に響いた。

 

 





うたたねコハル
猿飛ヒルゼン、志村ダンゾウ、水戸門ホムラの三人と同期
里のご意見番。情に流されやすいヒルゼンと冷徹すぎるダンゾウの間を取り持った。
本作においてはヨフネの祖母。
 
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