同情するならチャクラくれ   作:あしたま

22 / 60
022.編成

 

 

 火影執務室。

 窓の外には、九尾襲来の爪痕が生々しく残る里の風景が広がっている。三代目火影・猿飛ヒルゼンは、パイプの煙を燻らせながら、俺が提出した部隊編成案の書類に目を通していた。

 

「……ふむ。部隊の趣旨はよく分かった」

 

 ヒルゼン様は書類を机に置くと、どこか試すような目で俺を見た。

 

「中隊規模の独立運用部隊を持つこと、確かに許可はした。……だがヨフネよ、無条件で『はいそうですか』と通すわけにはいかんぞ。お前のような才気走った若造に兵を持たせること、ダンゾウあたりが黙っておらん」

「……でしょうね。俺が私兵を作って反乱を企てている、とか言い出しそうだ」

「左様。そこで条件がある」

 

 三代目は指を二本立てた。

 

「第一に、構成員は十代の若手で構成すること」

「そして第二に……構成員の中に、最低でも八名以上の『下忍』を含むこと」

「……は?」

 

 俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

 

「十代ばかりで、それに下忍を八名? ……あの、Sランク任務も想定した部隊を作るって話でしたよね? アカデミーを作るわけじゃないんですが」

「そう言うな。これは周囲への『建前』でもあるんじゃ。『若手の育成を兼ねた試験部隊』という名目なら文句も出ん。……それに、これからの里を背負うのは若い世代じゃ。お前のその新しい戦術、真っ白な下忍たちにこそ叩き込む価値があると思わんか?」

「……要するに、厄介な横槍を避けるために、俺に子守りをしろと」

「人聞きが悪いのう。『次世代の育成』と言え。それにお前も普通に考えれば子供じゃ」

 

 俺は深いため息をついた。なるほど、老獪な政治判断だ。俺の権力を制限しつつ、若手の底上げにも利用する。

 まあ、変に手垢のついたベテランよりは、俺の言うことを素直に聞く新人のほうが扱いやすいかもしれないが。

 

「……わかりましたよ。基本的にその条件さえ満たしていれば、こちらの人員の要望は通ると思っても?」

「うむ。よほどの人材でない限りは認めよう。……で、小隊長候補は決めてあるのか?」

 

 俺は頭の中で考えていた組織図を展開し、説明を始めた。

 

「構想としては、部隊を身体の機能に見立てて五つの班に分けます。各班四名、総勢二十名の編成です」

 

 俺は指を折りながら説明した。

 

「まず、指揮・統制を行う『本隊(頭脳)』。これは俺と日向ホヘト、山中サンタ。この2人は俺の直轄です」

「ふむ、山中と日向か。お前を守るには良い布陣じゃ」

「次に、索敵・解析を行う『索敵班(眼)』。隊長には、飛竹トンボを」

「トンボか。アカデミー卒業からずっとお前と一緒にやっておる子じゃな。適任じゃろう」

「続いて、地形操作と近接支援の『工兵班(脚)』。隊長は、奈良ダエンです」

「次は奈良家の者か。詳しくは知らぬが里内のバランス的には良いのではないか」

「それだけでは選びません。彼の土遁と影真似、そして判断能力は敵の足を止めるのに最適と思っています。……で、ここからが少し政治的に面倒な話になります」

 

 俺は声を潜めた。

 

「殲滅・破壊を担う『火力班(牙)』。隊長には……うちはシスイを希望します」

 

 ピクリ、とヒルゼン様の眉が動いた。

 執務室の空気が、少しだけ重くなる。

 

「……うちは、か。彼らは警務部隊の管轄じゃ。そう簡単には外に出せんぞ」

「知ってます。里中が彼らを疑ってることも」

 

 俺は率直に言った。

 

「囲い込めば囲い込むほど、彼らの不満は溜まるし、里との溝は深まる。……なら、いっそ外に出して、日向や他の忍と一緒に泥にまみれて戦わせた方がいい。もっとみんなに『あいつらは仲間だ』って認識させた方が良いんです。シスイには、その架け橋になってもらいたい」

「……ふむ。シスイはカガミの孫じゃな」

 

 ヒルゼン様は顎髭を撫でながら、しばらく考え込み、やがて頷いた。

 

「よかろう。フガクにはワシから話を通しておく。……お前のその考えに賭けてみよう」

「感謝します。……最後に、後方支援の『医療班(尾)』。隊長には、タシ特別上忍を」

「タシか。……彼女は二十代じゃぞ。条件から外れるが」

「そこを何とか三代目火影の権限で。……名目は『お目付役』でどうでしょう?」

 

 俺は提案した。

 

「十五歳になりたての上忍が中隊長なんて、調子に乗って何をしでかすかわからない。だから、元火影直属暗部であるタシを監視役としてつけ、手綱を握らせる……とすれば、上層部も納得するはずです」

 

 これはタシさんを守るための嘘だ。

 彼女は九尾事件の唯一の生存者であり、「仮面の男(写輪眼)」を見た証人だ。

 ダンゾウ様の目から守るためにも、俺の目の届く範囲に置いておきたい。

 

「……ふん、自分から監視を求めるとはな。ちゃっかりしておるわ。よかろう、タシについては『監視役』という名目で特例として認めよう」

「ありがとうございます」

 

 これで役者は揃った。

 頭、眼、脚、牙、尾。

 やれやれ、苦労しそうな面々だ。

 

 

 *

 

 

 その日の夕方。

 俺は胃の痛みを抑えながら、うちは一族の居住区を訪れていた。通り過ぎる警務部隊員の視線が痛い。完全に「余所者」を見る目だ。

 

「……ふむ。シスイを、お前の部隊に?」

 

 うちはフガクの屋敷。

 通された客間で、フガク隊長は腕を組んで渋い顔をしていた。隣には幼いイタチも控えている。

 

「断る。……三代目からの口添えがあったとしても一族は今里から疑われている。そんな中、大切な同胞を外の部隊に預けられるか。痛くもない腹を探られるのは面白くない」

「逆ですよ、フガクさん」

 

 俺は努めてフランクに、しかし真剣に切り返した。

 

「閉じこもってるから疑われるんです。シスイみたいな優秀で人当たりのいい奴が、日向や秋道と一緒に戦って活躍すれば、周りの目も変わります。『うちはも同じ木ノ葉の忍なんだ』ってね。……彼を、里と一族の架け橋にしたいんです」

 

 フガクが押し黙る。

 痛いところを突かれた顔だ。

 すると、横にいたイタチが口を開いた。

 

「……父上。シスイさんは、一族のため里の役に立ちたいと言っていました」

 

 息子の言葉に、フガクは大きなため息をついた。

 

「……わかった。シスイ本人も、お前の部隊に興味を持っていたようだしな。……ただし、あいつに変な怪我をさせたら承知せんぞ」

「善処します」

 

 俺は頭を下げて屋敷を後にした。

 一番の難所は超えた。

 

 

 *

 

 

 翌日。木ノ葉病院。

 俺は特別治療室の前で、タシさんを待っていた。

 ドアが開き、私服姿のタシさんが出てきた。以前の凛とした暗部の雰囲気はなく、どこか儚げで、疲れ切った表情をしている。

 

「……ヨフネ君。私に何か?」

「お加減はいかがですか」

「身体は、もう大丈夫。……でも、心はまだ、あの夜に置いてきたままよ」

「タシさん。……あなたに、俺の部隊の医療班長を任せたい」

 

 俺は単刀直入に告げた。

 

「……無理よ。私は役に立たないわ」

「そんなことはありません。それに俺の『監視役』になってほしいんです」

「監視?」

「ええ。俺はこれから、かなり無茶な部隊を作ります。十五歳の若造がトップじゃ、暴走するかもしれない。……だから、元火影直属暗部であるあなたが、『お目付役』として睨みを効かせてくれないと困るんです」

「……ふふ、何それ。私に子守をしろってこと?」

 

 タシさんが小さく笑った。

 

「それに……ダンゾウ様のような古株が、あなたという『証人』を放っておくとは思えません。……俺の部隊にいれば、監視役という名目で俺があなたを守れます。あなたの証言は、いつか必ず役に立つ時が来る」

 

 タシさんは驚いたように俺を見つめ、やがて静かに頷いた。

 

「……わかったわ。ヨフネ『隊長』。……あなたの手綱、しっかり握らせてもらうことにするわ」

 

 

 *

 

 

 数日後。火影邸の地下にある作戦会議室。

 集まったのは、これまでのメンバーと小隊長候補の三人。

 山中サンタ、日向ホヘト、飛竹トンボ。そして、うちはシスイと、奈良ダエン。

 少し遅れて、タシさんが到着する。

 机の上には、ヒルゼン様から借り受けた『下忍・中忍名簿』と『アカデミー成績表』、そして『任務報告書』の山が積まれている。これが、大隊の「編成会議」だ。

 

「……というわけで、三代目から許可は降りた。名称は『戦術対応混成大隊』。通称ヨフネ大隊だ。……ダサいとか言うなよ」

 

 俺が言うと、ダエンが早速あくびをした。

 

「で、条件がある。部隊の半数近く、八名以上を『下忍』で構成しろとのことだ。各班四名、合計二十名の大所帯になる」

「はあ!?」

 

 トンボが机を叩いて立ち上がった。

 

「冗談だろ隊長! 俺たちに子守りをしろってのか? Sランク任務遂行を目的としているんじゃなかったのかよ?」

「仕方ないだろ。俺たちだって充分に子供だ。それにいきなり組んだって実績をどうせ積まなきゃならないんだ。……年下の言うことを聞きたくない先輩方が来るよりよっぽどマシだろ」

 

 俺は積まれた書類の山をパンと叩いた。

 

「てなわけでここからは、書類審査だ。各小隊長の要望に合わせて、このデータの中から必要な人材を探し出す。……直感じゃなく、数字と実績で選べ」

「……なるほど。宝探しですね」

 

 シスイが苦笑しながら、分厚いファイルを手に取った。

 

「じゃあ、索敵班(眼)から。トンボ、どうだ?」

 

 トンボは腕を組み、唸った。

 

「俺にはない、物理的な索敵範囲を広げられる奴が欲しい。それに敵地を探るために先行することもあるだろう。そうすると隊を守れる前衛も欲しいな。……犬塚ツメさんあたりがいれば最高なんだが」

「ツメさんか。……それは無理だ」

 

 サンタが首を振った。

 

「なんでだよ? 鼻はいいし、戦闘力も申し分ないだろ」

「出産直後なんだよ。赤ん坊が生まれたばかりだ。しばらく任務には出られない」

「げっ、マジかよ……。じゃあ、代わりを探さないとな」

 

 トンボが困った顔をする。

 俺は助け舟を出した。

 

「なら、油女一族はどうだ? ……シビ先生に相談してみないか?」

「確かに」

 

 トンボがポンと手を打った。

 

「油女の蟲は広範囲索敵に最適だ。……先生の推薦なら、間違いのない新人を回してくれるだろう」

「だな。後で挨拶に行こうぜ。シビ先生の推薦ならハズレはねえ。それにトンボの言う通り索敵の種類を増やすことには賛成だ。情報の精度も上がる。ゆっくりリスト見ててくれ。……次は、工兵班(脚)。ダエン」

 

 ダエンは名簿を見るまでもなく、気だるげに手を挙げた。

 

「1人はすでに決まっている。……力仕事と陣地構築だろ? なら、こいつしかいない」

 

 ダエンが一枚の写真を放り投げた。

 ふくよかな体型の少年、秋道シトウと書いてある。

 

「奈良と秋道、それに山中は腐れ縁だ。こいつの実力も性格も知ってる。……食費がかさむのが難点だが、倍化の術での整地能力は重機並みだ。俺が使うならこいつがいい」

「なるほど、猪鹿蝶のラインか。……よし、採用だ」

「あとは……お、下忍で、手先が器用なのがいるな。おあつらえ向きにトラップ設置が得意な子だ。これもつけよう」

 

 ダエンがサクサクと書類を選んでいく。

 その反面、シスイは真剣な表情で、戦術書を見つめていた。

 

「僕の班は『牙』……つまり殲滅担当ですよね。なら、中途半端な小細工はいりません」

 

 シスイの声色が、少しだけ鋭くなった。

 

「僕は火遁で戦場全体を焼き尽くす『面制圧』を想定しています。敵を逃げ場のない火の海に沈める……そのためには、火力を増幅させる『風』は必須ですよね」

「そうだな。場所は脚が整えてくれる」

 

 俺は頷いた。うちはらしい、攻撃的な思考だ。

 

「火遁なら……まずはうちは一族と猿飛一族だよな。この両一族が一緒にいる意味も大きい」

「そう……ですね。あと一人、風遁使いがいれば、火遁の威力を爆発的に上げられます」

 

 シスイが名簿の中から一枚のシートを抜き出した。

 

「この子、どうでしょう? アカデミーの属性判定で風の性質変化が強いと書かれています」

「どれどれ……。ふむ、素質はありそうだな。面接してみよう」

「最後に、医療班(尾)。タシさん」

「私は……そうね。スクイちゃんを入れたいな」

「スクイ? 知り合いですか?」

「ええ。病院で私の手伝いをしてくれていた子よ。まだ下忍だけど、判断が早くて度胸があるの。結界術のセンスもあるわ」

「タシさんのお墨付きなら間違いないかな。採用しましょう……で、本隊(頭)なんだが」

 

 俺は腕を組んだ。

 本隊は、俺とホヘト、サンタの3人。残る枠は1つ。

 トンボが抜けた穴を埋める必要がある。

 

「んー正直今までと違って各隊に考えられる隊長を置いたから、どんなタイプ入れるか迷ってるんだよな」

 

 俺はアカデミーの成績優秀者リストに目を通した。

 

「……こいつはどうだ? 聖シモン」

 

 トンボが一枚のシートを指さした。

 

「十三歳。アカデミー時代の筆記試験のスコアも高いが何より音響を使った索敵と幻術が得意ってのは面白くないか?」

 

 ふむ。『冷静沈着』『事務処理能力が高い』と評価もある。とりあえずキープだな。議論は数時間に及び、机の上は選抜された約二十名分のファイルで埋め尽くされた。

 

「よし。……これで大枠は決まりだな。これを持ってまた俺は三代目のところに行って調整してくる。」

 

 俺はまだまだ終われそうになかった。

 

 

 *

 

 

 翌日。俺とトンボは、かつての恩師である油女シビ先生の元を訪れていた。シビ先生は、サングラスの奥の目を見せずに、静かに俺たちの話を聞いていた。

 

「……なるほど。混成部隊か。面白い試みだ」

 

 相変わらずの低音ボイス。だが、そこには確かな温かみがある。

 

「で、先生。油女一族の中から、下忍で有望な奴はいませんか? 先生のお墨付きなら迷わないですみます」

 

 メンバー選びに悩みに悩んでいるトンボが笑いながら言うと、シビ先生は顎に手を当てた。

 

「……ふむ。今年アカデミーを出たばかりだが、ムタという少年がいる」

「ムタ、ですか?」

「ああ。まだ若いが、蟲の扱いは丁寧だ。それに、私の教えをよく守る。……お前たちの部隊で揉まれれば、良い忍になるだろう」

「ありがとうございます! 」

 

 俺たちは頭を下げた。

 シビ先生の推薦なら間違いない。ムタ、確保だ。

 

 

 *

 

 

 数日後。第三演習場。

 雨上がりの空に、大きな虹がかかっている。

 そこに集められた総勢二十名の忍たちは、緊張の面持ちで整列していた。タシさんを除き全員が十代。

 

 特に、突然の辞令で呼び出された下忍たちは、自分がなぜここにいるのかわからず、不安そうにヒソヒソ話をしている。

 

 彼らの視線の先には、十五歳の俺が立っている。

 

「……おい、あれってヨフネ上忍だよな?」

「ああ……九尾の足止めをして、里の被害を抑えたっていう……」

「15歳でもう戦線を戦い抜いてる天才だよな?……俺たち、何させられるんだ?」

 

 ざわめきには、畏怖と緊張が入り混じっていた。十三歳で上忍になり、あの九尾戦で前線を張った俺の顔は、若手の中では嫌でも知れ渡っているようだ。

 

「静かに!」

 

 俺は手を叩き、彼らの注目を集めた。

 

「今回ここにいる二十人が常時チームを組むことになった。隊長は俺、ヨフネが務める。……文句がある奴は後で聞く。今はとりあえず話を聞け」

 

 俺は全員を見渡した。彼らの瞳には不安がある。それを払拭するには、正確な情報と、明確なヴィジョンが必要だ。

 

「まず、一つ訂正しておくことがある。……一部で『ヨフネが九尾の息の根を止めた』なんて噂があるらしいが、それは間違いだ」

 

 俺ははっきりと言った。

 

「俺はただ『足止め』をしただけだ。九尾の気を引いて、時間を稼いだに過ぎない。四代目が来なければ、俺は今頃消し炭になっていた。……俺たちは英雄じゃないし、個人の力で災害には勝てない。それが現実だ」

 

 下忍たちが顔を見合わせる。

 過度な期待を削ぎ落とし、現実的なラインを見せる。

 

「俺たちは四代目のように個人で戦争に、そして九尾に勝つことはできない。だから、役割を決めて助け合う。この部隊は、全員で一つの巨大な生物として機能する」

 

 俺は一歩前に出た。

 

「各小隊長、前へ!」

 

 俺の号令と共に、四人の隊長たちが一歩前に出る。

 飛竹トンボ、奈良ダエン、タシ、そしてうちはシスイ。

 

「これより各班の役割を説明する。……自分の所属する班の長が誰か、そして自分たちが『身体のどの部位』なのか叩き込め」

 

 俺はまず、自分の横に立つサンタと、後ろに控える日向ホヘトを指した。

 

「まず、俺たちが『本隊(頭)』だ。俺と日向ホヘト、山中サンタ、そして聖シモン。……俺たちが脳となり、意思決定を行う。部隊全体の指揮、通信、そして最終的な戦術判断はここで行う」

 

 続いて、俺はトンボに目配せをした。

 

「『遊撃班(眼)』。……トンボ、説明を」

「おう」

 

 飛竹トンボが、鋭い視線を下忍たちに向けた。

 

「遊撃班の隊長を務める飛竹トンボだ。……俺たちの班(眼)の仕事は、索敵と解析だ」

 

 トンボは言葉を続ける。

 

「戦場での死因の第一位は『不意打ち』だ。敵が見えなければ、どんな強力な術も意味がねえ。……それぞれの能力を使い、誰よりも早く敵を見つけ、本隊へ情報を送る。俺たちの『眼』が節穴なら、部隊は全滅すると思え」

 

 下忍たちがゴクリと唾を飲む。

 トンボの迫力に、責任の重さを痛感したようだ。

 

「次に、『工兵班(脚)』。……ダエン」

「へいへい」

 

 奈良ダエンが気だるげに、しかし自信ありげに口を開いた。

 

「工兵班を預かる奈良ダエンだ。……俺たちは『脚』だが、ただ歩くんじゃない。地面を掘り返し、壁を作り、障害物を撤去する」

 

 ダエンはニカっと笑う。

 

「戦場ってのは、自分たちに有利なように書き換えるもんだ。敵を俺たちの得意な『土俵』に引きずり込む。……泥仕事になるが、一番重要な土台だ。覚悟しとけよ」

「次に、『医療班(尾)』。……タシさん」

「はい」

 

 タシさんが優しく微笑みながら、一歩前に出た。

 

「医療班長のタシです。……私たちの班(尾)は『命綱』であり、『城壁』よ」

 

 彼女の声は柔らかいが、そこには修羅場をくぐった者特有の芯の強さがあった。

 

「怪我をした者の治療はもちろん、結界忍術による陣地構築も担当するわ。後方や休憩地点を物理的に遮断し、絶対安全な『聖域』を作るのが仕事。……傷ついたら、迷わず結界の中へ逃げ込んで。そこでは絶対に死なせないから」

「そして最後に……『火力班(牙)』。……シスイ」

 

 俺が名を呼ぶと、小柄な少年が静かに前に出た。

 その瞬間、下忍たちの間に衝撃が走った。

 

「うちは……?」「あのシスイか?」「天才と言われてる……」

 

 畏怖と好奇の視線が集まる中、シスイは穏やかな表情で口を開いた。

 

「火力班を任されました、うちはシスイです。……僕たちの役割は『牙』、すなわち殲滅です」

 

 シスイの声は澄んでいたが、語られる内容は冷徹そのものだった。

 

「眼が見つけ、脚が固め、頭が指示を出した後……僕たちが責任を持って、敵を逃げ場のない火の海に沈めます。文字通り、灰になるまで焼き尽くすのが仕事です」

 

 シスイはニコリと笑った。

 

「皆さんが作った隙を、僕たちは決して無駄にしません。……巻き込まれないように注意してくださいね」

 

 その笑顔の裏にある、圧倒的な自信と実力。

 これが「うちはの天才」かと、誰もが納得させられた瞬間だった。

 

「……以上だ!」

 

 俺は再び全員を見渡した。

 

「頭、眼、牙、脚、尾。……どれか一つでも欠ければ、この部隊は機能しない。お互いがお互いの手足だと思って動いてくれ」

 

 俺は肩の力を抜いて、笑ってみせた。

 

「英雄は死んだ。俺たちに残されたのは、知恵と結束だけだ。……まずはそれぞれの力量を上げるための特訓と連携訓練だ。いずれは俺達でSランク任務を行えるようになるまで仕上げるぞっ!」

「「「応ッ!!!」」」

 

 演習場に、返事が響き渡った。まだ凸凹で、頼りない部隊。だが、そこには確かな熱があった。

 

 こうして、後に他国に恐れられることになる、木ノ葉の特殊混成部隊が産声を上げた。

 

 





 
奈良ダエン
普段は大人しい性格だが、原作において産まれたばかりの子供を思い、十尾を前にして一歩も下がらず戦った。
カカシと同い年
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。