同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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031.欲望

 

 

 潮の香りに、強烈な香辛料と鉄錆、そしてむせ返るような金と欲望の匂いが濃密に混ざり合う。波の国の港は今、かつてないほどの熱気と喧騒に包まれていた。

 

 行き交うのは、木ノ葉や雲隠れといった大国の正規商人たちだけではない。素性を隠して護衛につく歴戦の傭兵、横流しの品をさばく密輸業者、一攫千金を狙う流れ者たち。彼らが落とす莫大な金が、この小さな島国を異常な速度で肥え太らせていた。

 

 俺がタズナたちと蒔いた、訳ありの荷を全て受け入れるグレーな市場という種は、歳月を経て、忍界有数の巨大な闇市へと成長を遂げている。

 

 「すごい活気ですね、隊長。歩いているだけで財布どころか、身ぐるみ剥がされそうだ」

 

 俺の隣を歩く男が、喧騒に目を細めながら呆れたような声を漏らした。猟犬部隊の装束を纏う俺の副官、うちはシスイだ。

 

 あの日、彼が南賀ノ川へ身を投げたのは、親友であるイタチの心をへし折り、その瞳に万華鏡写輪眼を開眼させるためだけの悲壮な芝居だった。タシの決死の救命処置を受けた彼は今、公式記録にも名を残す猟犬部隊の副官として俺の隣に立っている。

 

 彼の左目には、イタチに託した元の眼の代わりに、戦時中に俺が極秘裏に回収し保管していた彼の父親の左目が移植されている。定着には慎重を期したため戦線復帰は遅れたが、今では完全に馴染んでいた。

 

 別天神を使用した右眼は、強烈な反動により再使用まで約十年という途方もない歳月を必要とする。だが、万華鏡の文様が消えたとはいえ、通常の写輪眼としての機能は失われておらず、その天才的な洞察力と体術は健在だった。

 

 「スられないように気をつけろよ。ここは今、忍界で一番欲望が剥き出しになってる場所だ」

 

 俺は壮年の男性に変化した状態でここの主として、シスイと肩を並べ、港の目抜き通りにある巨大な商館へと足を踏み入れた。ここは火の国の資本が入ったシラカワ商会であり、実態は俺たちの諜報・資金管理の中枢拠点である。

 

 最奥の執務室の重厚な扉を開けた瞬間、氷のように冷たく、理知的な少女の声が室内の空気を凍りつかせた。

 

 「――だから、二度目はないと言っているのよ」

 

 部屋の中央では、顔に刃物傷のある大柄な密輸業者が、色付き眼鏡をかけた一人の少女を前にして滝のような冷や汗を流していた。

 

 「あ、あんたの商会が提示した手数料が高すぎるから、少し帳簿をいじっただけじゃねえか! 次からは誤魔化さねえ! だから取引停止だけは……!」

 

 分厚い革張りの帳簿が、鈍い音を立てて机に叩きつけられた。ビクッと肩を跳ねさせる大男を冷徹に見下ろす少女の瞳は、眼鏡越しにも赤く色付いていた。

 

 「二月前の十五日、雲隠れの雷光商会への横流しで利益を隠蔽。先月十日、指定倉庫以外での荷下ろしによる規約違反。……あなたは自分の浅知恵で誤魔化せたと思っているようだけど、この島に落ちる数字に死角はないわ」

 

 膨大な数字の羅列を写輪眼の視覚効果で瞬時に処理し、一切の不正を暴き出す。言い逃れを許さない少女の冷徹な一言に、男は絶望に顔を歪めた。

 

 「信用を失った商人に、この波の国で呼吸する資格はない。二度とこの島に船を接岸させないで。……つまみ出しなさい」

 

 部屋の隅に控えていた屈強な用心棒たちが無言で進み出ると、抵抗する気力すら失った業者を両脇から抱え上げ、部屋の外へと引きずり出していった。

 嵐のような静寂が戻った執務室で、少女は深くため息をつき、俺たちの方へ振り返った。

 

 「遅いですよ、お父さん。こっちは数字が合わなくて発狂しそうなんですけど」

 

 彼女はうちはイズミ。あのうちは滅亡の夜から三年。十六歳になった彼女は、あどけなかった少女の面影を美しく残しつつも、写輪眼を事務作業と真贋の見極めに用いることで、冷徹な経理の腕と圧倒的な情報処理能力を身につけた、波の国の影の女帝へと変貌していた。

 

 当初はシスイの幻術で無理やり攫って来たようなものだから、説明には苦慮した。実際にうちは地区をコッソリと見せに行き、ようやく納得してくれた。彼女は公式には死者であり、そうすることで彼女の身は守られている。

 

 優しい顔して意外と頑固なんだ。でも、時折くる差出人のない手紙を大事に取っていることを俺は知っていた。

 

 そして今は、俺が変化しているこの商会の主、シラカワの娘という仮の身分で、この島に落ちる全ての金と情報の流れを完全に掌握している。

 

 (……真っ当な青春を奪ってしまった代償とはいえ、随分と逞しい銭ゲバに育ってくれたものだ)

 

 俺は内心で苦笑しながら、部下の頼もしい成長に目を細めた。

 

 「相変わらずの辣腕ぶりだな、イズミ」

 

 シスイが室内の張り詰めた空気を和らげるように苦笑いしながら声をかけた。

 

 「甘い顔を見せたら、連中は骨の髄までしゃぶろうとしてきますからね。……で、景気はどうだという顔ですね、お父さん」

 

 イズミが冷めたお茶をすすり、新たな帳簿を広げながら俺に視線を向ける。

 

 「その通りだよ。あと今は三人しかいないから、別にお父さんじゃなくても良いぞ?」

 

 俺の軽口に、イズミは呆れたように小さく息を吐いた。

 

 「普段から呼んでいないと間違いそうになるから、その姿の時は大丈夫です。それで、売上ですけど、雲と木ノ葉の商人を中心に、取引量は右肩上がりです。ただ、最近は少し頭打ちの傾向があります。警戒して取引を渋る老舗の大商人が増えてきました。この島は儲かるが、法整備も不十分な無法地帯すぎてリスクが高いと」

 

 インテリジェンスが高まった彼女の報告は、要点を的確に突いていた。

 

 「なら、そろそろ次のステップに進むか」

 

 俺はシスイから受け取った周辺海域の海図を広大な机の上に広げた。

 

 「まずは成功者の投入だ。雲隠れや木ノ葉の商人に、ウチのダミー商会がワザと大負けして、莫大な利益を握らせろ」

 「ワザと負ける? 俺たちの資金をくれてやるんですか?」

 

 シスイが怪訝そうに眉をひそめる。

 

 「ああ。そして奴らを自国に帰し、嫌というほど贅沢の限りを尽くさせろ。あいつは波の国で一山当てて、豪邸を建てたらしいという噂を流布させるんだ。人間の『隣の奴だけが儲かっている』という嫉妬心は、どんな幻術よりも強烈に人を狂わせる。乗り遅れるなという焦燥感を煽れば、二の足を踏んでいた慎重な商人も欲に目が眩んで必ず動き出す」

 「なるほど、群集心理のコントロールですか。……ですが、無法地帯というリスクはどうします?」

 

 イズミがどこかワクワクした様子で前のめりになる。商人の血が騒いでいるのか、本当に金と数字のやり取りが好きになったらしい。

 

 「奴らが押し寄せて来たタイミングで、仲裁裁判所を設置する」

 「裁判所?」

 「商売には必ずトラブルが起きる。だが、それを自国の法で裁こうとすれば、自国優先の贔屓で必ず揉めるだろう? だからこの島に、各国の法に通じた学者を集め,中立的な立場から裁く機関を作るんだ。契約と金だけを絶対のルールとする中立の法廷さ」

 

 俺の言葉に、イズミの真紅の瞳に知的な光が宿り、すぐに手元の帳簿の余白へ数字と計画の青写真を猛烈な速度で書き込み始めた。

 

 「さらにだ、イズミ。それだけでは足りない。俺たちはこれから、金の力でこの国を守ることにする」

 「金の力……?」

 「まずは決済情報の管理だ。いくら共通通貨の両があるとはいえ、多額の支払いを現金の輸送で行うのは、沈没や海賊の略奪リスクが高すぎる。そこで、豪商たちにこの島で口座を持たせ、現金の移動ではなく、島内での帳簿の書き換えだけで取引を完結させる仕組みを構築する」

 

 ペンを走らせていたイズミの手が止まり、鋭い視線が俺を射抜いた。

 

 「待ってください、お父さん。商人たちは用心深いです。木ノ葉の隠れ蓑である私たちの商会に、全財産を預けるような真似はしませんよ」

 「だから、その業務を行うのは俺たちではなく、島の人間を前面に立たせて運営させる」

 

 俺は口角を上げ、ニヤリと笑った。

 

 「波の国の住人には、かつて俺が叩き込んだ絶対の守秘義務という鉄の掟がある。大国の商人は、自国の税務や他国の情報部に取引の事実が漏れるのを最も嫌う。だからこそ、大国の息がかかっていない口の堅い島民が管理する中立な金庫の方が、彼らにとっては圧倒的な安心感があるんだ」

 「なるほど……表向きは島民の独立機関としつつ、裏の帳簿は木ノ葉が全て掌握するわけですね」

 

 イズミが感心したように深く頷く。

 

 「その通りだ。ただ情報を元に儲けようとはするなよ。あくまで情報収集が目的だ。各国の主要な富が、現物ではなく島の帳簿上の数字として流れるようになる。もし他国が波の国を武力で占領し、この仕組みを壊せば、彼ら自身の富がデータごと消滅する。物理的な城壁よりも硬い、最高の盾になる」

 

 俺が熱弁を振るう横で、武闘派のシスイは少し眠そうな雰囲気を漂わせていたが、俺は構わず話を続けた。この仕組みを理解しておくことは,今後の作戦行動において生死を分けるからだ。

 

 「二つ目は保険だ」

 

 俺は懐から取り出した一枚の金貨を、机の上に高く弾き鳴らした。澄んだ金属音が執務室に響き渡る。

 

 「ホケン……? 何ですか、それは」

 

 イズミが首を傾げ、シスイも怪訝そうな顔で目を瞬かせた。忍の世界にはまだ存在しない概念だ。無理もない。

 

 「海上貿易は、天候や海賊、他国の忍に狙われるリスクが常につきまとうギャンブルだ。そこで、この島を出る商人たちから、事前に積荷に応じて掛け金として徴収する。その代わり、万が一船が沈んだり略奪されたりした場合は、俺たちがその損失を全額補填してやる……という仕組みだ。この保険会社は、木ノ葉のダミー商会として設立する」

 「なるほど……?」

 

 イズミは最初ピンと来ていないようだったが、数秒後、彼女の明晰な頭脳の中で恐るべき計算式が組み上がったのか、ハッと短く息を呑んだ。

 

 「待ってください。海は危険とはいえ、実際に沈む船は全体の一割にも満たない。商人たちは安心を買うために喜んで掛け金を払うでしょうけど、無事に港に着けば、その掛け金はすべて……!」

 「ああ。丸ごと俺たちの純利益になる」

 

 俺は笑みを深め、机に落ちた金貨を指で押さえた。

 

 「保険金という名目で、この海の富が合法的に、しかも永続的に吸い上げられるわけだ」

 

 その言葉に、黙って聞いていたシスイが、探るような鋭い視線を向けてきた。どうやら寝てはいなかったらしい。

 

 「……だが、それだけじゃないんだろ? 隊長がそんな、ただ金儲けをするだけの仕組みで満足するわけがない」

 「ご名答だ、シスイ。最大の目的は究極の盾と情報収集網を作ることにある」

 

 俺は机に両手をつき、二人の顔を見据えた。

 

 「考えてみろ。もしどこかの大国が軍事攻撃を仕掛けてきたらどうなる? その瞬間、自国の商人たちが俺たちと結んでいる保険契約は全て無効になる。船が沈めば一発で破産だ。結果、自国の経済界が大パニックを起こし、暴動が起きて為政者の首が飛ぶ。こちらを攻撃すれば自国も滅びるという道連れの仕組みだ。これで誰も島を攻撃できなくなる」

 

 さらに俺は言葉を重ねる。

 

 「そして何より、保険をかけるということは、商人は積荷の正確な内容と価値、目的地を俺たちに申告しなければならないということだ。誰が、何を、どこへ運んでいるか。物資と兵站の流れが、座っているだけで完全に把握できる。究極の諜報システムだ」

 

 沈黙が落ちた。やがて、最強の幻術使いであるシスイが、額に冷や汗をにじませながら深くため息をついた。

 

 「……隊長は、俺の別天神よりよっぽどタチが悪いですね。血を流さずに、各国の首に首輪をはめようっていうのか」

 「恐ろしいですが、理にかなっています」

 

 イズミが力強く頷き、羽ペンをインク瓶に浸した。

 

 「すぐに島のみんなやダミー商会を使って準備を進めます。……ですがお父さん、足元に大きな課題があります」

 「インフラのパンクか」

 「ええ。サクラの効果がなくても、今の時点で小さな港はキャパオーバーです。荷下ろし待ちの船が沖合で列をなしています。これでは帳簿決済どころではありません。タズナさんが本土とを繋ぐ大橋の建設と巨大な港湾拡張計画を出してくれているんですが……」

 「進んでいないのか?」

 

 シスイが静かに問う。

 

 「ガトーです」

 

 イズミの理知的な瞳に、鋭い怒りと忌々しさが混じった。

 

 「島で確実に勢力を伸ばしつつある海運王のガトーが、『美しい波の国の自然を、無機質な橋で壊してはならない』『身の丈に合わない開発で島民に莫大な借金を背負わせるべきではない』と、もっともらしい理由をつけて強硬に反対しているんです」

 「チッ……口実だけは立派だな」

 

 俺は舌打ちした。海運業で莫大な富を築いている奴にとって、陸路である橋が完成することは自らの物流独占への大打撃となるためだ。己の利益を守るために環境保護や財政不安を隠れ蓑にする手口は、前世の記憶でも見飽きた光景だった。

 

 「厄介なのは、島の住民たちからの支持が厚いことです」

 

 イズミが渋い顔をして帳簿を閉じる。

 

 「最近、島に流れ着いた無法者たちが商船や店を襲う事件が多発しているんですが、ガトーが自腹で雇った私設警備隊を出してそれを撃退し、住民から拍手喝采を浴びているんです。権力と金を手に入れて、徐々に化けの皮が剥がれ始めていますが、未だに多くの住民にとって彼は善良で頼れる大商人なんです」

 「典型的な自作自演だな」

 

 シスイが冷たい声で分析した。

 

 「無法者を裏で島に引き入れているのもガトー自身でしょう。脅威を作り出し、それを金で解決して救世主を気取る。そうやって住民を依存させ、支配を深めている」

 「ああ。もし今、俺たちが武力でガトーを暗殺すれば、俺たちは島の救世主を殺した他国の悪党になり、暴動が起きる」

 

 俺は腕を組み、静かに計算を巡らせた。ただのチンピラならいくらでも闇に葬れるが、大義名分という分厚い皮を被った政治的な病巣はタチが悪い。力押しで切除しようとすれば、必ず島全体に致命的なダメージが及ぶ。

 

 「大橋の建設に向けた根回しは少しずつ進めさせろ。俺たちが構築するこの仕組みで、いずれガトーの化けの皮を完全に引き剥がし、政治的にも経済的にも息の根を止めてやる」

 

 武力ではなく,社会的な死。それこそが、あの悪党に相応しい末路だ。

 

 「分かりました。……ではお父さん。いえ、ヨフネ隊長。本題に入りましょう。霧隠れの件です」

 

 イズミの纏う空気が、敏腕の経理から木ノ葉の忍へと切り替わった。彼女はデスクの鍵付きの引き出しから、一冊の黒いファイルを取り出した。

 

 「現在、霧隠れは四代目水影による完全な鎖国状態にあります。そのため、この港の取引も雲と木ノ葉に偏っているのが現状です。……ですが、鎖国して正規ルートがないということは、裏を返せば密輸の利益率が最も高いということでもあります」

 

 イズミがファイルを広げる。そこには、他国が喉から手が出るほど欲しい水の国の内部情報がびっしりと書き込まれていた。

 武器や食糧に飢えた霧の密輸商人や抜け忍たちが、波の国に殺到している。彼らに命綱となる物資を流す対価として、イズミは彼らから生きた情報を容赦なく吸い上げていたのだ。

 

 「現在、水の国では大きな動きが二つあります。一つは、暗部の実力者である鬼人・桃地再不斬による、四代目水影へのクーデター未遂と逃亡」

 

 イズミの報告に、シスイが「再不斬か……厄介な男が野に放たれたな」と顔をしかめる。

 

 「そしてもう一つ。再不斬とは別に、水面下で改革派が組織され、血霧の恐怖政治に反発する血継限界の持ち主や穏健派の支持を集め始めているようです」

 

 (……ビンゴだ)

 

 俺は内心でほくそ笑んだ。俺の持つ原作の知識と完全に符合している。照美メイ率いる反乱軍が本格的に動き出しているのだ。

 

 俺はすぐさま、この情報を独自の暗号に変換し、木ノ葉のヒルゼン様へ特急の書簡で送った。

 数日後。火影から俺たち猟犬部隊に下された極秘指令は、シンプルかつ過酷なものだった。

 

 『もたらされた情報は里にとって極めて重要である。ヨフネ、およびシスイはそのまま水の国へ潜入し,改革派の戦力と思想、そして内戦の真偽を見極めよ』

 

 

 *

 

 

 深夜の波の国、人気のない裏の波止場。

 肌にまとわりつくような濃い夜霧が立ち込める中、潮風に軋む一隻のボロボロの密輸船が静かに停泊していた。

 

 「……話は通ってるな?」

 

 俺が声をかけると、甲板から薄汚れた衣服をまとった胡散臭い顔の密輸商人が顔を出した。

 俺は無言で、ずっしりと重い皮袋――波の国の裏金で作った莫大な札束の束――を商人の足元に放り投げた。

 

 「ひひっ、確かに。木ノ葉の旦那方は気前が良くて助かりまさぁ」

 

 商人は下品に笑い、紙幣の分厚さを指先で確かめると、俺たちを船底の暗い貨物室へと案内した。

 鎖国状態の水の国へ、正規のルートで潜入することは不可能だ。だからこそ、俺たちは莫大な金で密輸商人を買い叩き、積荷の護衛に偽装して直接血霧へと向かう。

 

 「俺たちが戻るまで、島の運営とガトーへの牽制は任せたぞ、イズミ。絶対に無理はするな」

 

 見送りに来たイズミに指示を出すと、彼女は夜霧の中で静かに微笑み、「お気をつけて、隊長。シスイさんも」と深く頭を下げた。

 

 「さて、シスイ。行くぞ」

 「ええ。久しぶりの大仕事ですね、隊長」

 

 俺とシスイを乗せた密輸船は、波の国を離れ、深い霧に包まれた絶対の死地――血霧の里へと向けて、波音を立てながら暗い海を滑るように進んでいった。

 

 次は、血塗られた歴史を直接書き換える番だ。

 

 





 
棘糸テッセン
ヨフネの五歳下でクマドリの同期。
(原)特殊な忍具の扱いを得意とする忍。一度に複数の手裏剣を投擲出来る特注忍具でペインに挑んだ。
 
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