同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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035.夕日

 

 

 守護忍十二士のクーデターに伴う大名府の警護と制圧任務において、俺たちは木ノ葉の財政を担当しているダンゴウを救出することに成功した。

 結果として、俺たちの大きな問題を二つ片付けることができた。

 

 そもそも木ノ葉の里の収入は、大きく分けると「任務料」「火の国からの予算」「里内からの税収」の三つである。任務料の多くは忍たちの給料となり、一部が里に納められて運営資金や退役忍の年金に充てられる。

 

 だが、当然それだけでは木ノ葉という巨大な軍事組織は回らない。不足分は、火の国の大名府から下りる国家予算に頼っているのだ。暗部の活動資金も、主にこの予算から賄われている。

 

 そして今回、『猟犬部隊』として正式名称が認められた俺たちは、給与こそ従来の任務料ベースのままだが、装備品などの莫大な活動経費について、国から「特別予算」として計上される事となった。ダンゴウ様々である。

 

 俺が愛用している音響閃光弾や特製のゴーグル、レールガンの弾薬補充についても、この表の予算から堂々と捻出する事が可能になった。

 

 さらに、国から認められた正式な部隊となった事で、独自の制服を揃える事も許可された。

 本当はそれぞれの戦場に適応した迷彩服が欲しかったのだが、流石にそこまでの予算は下りなかった。なので、基本は木ノ葉の従来の真っ黒な任務服のまま、ベストの色を『濃いグレー』に統一する事にした。また、隠密行動の邪魔になるため、目立つ赤い渦巻きマークについては内側に刺繍する事にした。

 

 このグレーのベストの肩には、所属を示す白いラインが入っている。『頭』はライン無し。『眼』が一本、『牙』は二本といった具合に、傍目に分かりやすくしてみた。

 

 統一された新しい戦闘服で全員が初めて集合した時は、流石の俺も「自分たちの組織が正式に国に認められたのだ」と実感して胸が熱くなった。やはり服装というのは、人の帰属意識を高揚させる効果があるらしい。

 

 俺は少し浮かれていた。

 

 

 

 

 しかし、それは嫌なことから目を逸らしているだけにすぎなかった。

 昨日任務から戻ったという紅から連絡を受け、俺がふらっと彼女の家に向かった時のことだ。

 よりにもよって、紅のアパートの前で、今代の守護忍十二士が解散して里へ帰って来ていたアスマと鉢合わせしてしまったのだ。

 

「……よう、おかえり」

 

 仕方ないとはいえ、こいつの友人を目の前で斬り殺して気まずいというのに、最悪な場所で会ってしまった。流石にまだ「俺が紅とお泊まりした疑惑」の事は知らないだろうが……嫌だ。帰りてえ。

 

「お前、こんな所で何やってんだ?」

 

 ど直球にアスマからの質問が飛んできた。もう何でも良いから逃げ出したい。

 

「まあ、昨日紅に呼ばれてな」

 

 だが、そういうわけにもいかず、俺は過去最高の冷や汗をかきながら正直に答えた。

 

「そうか、なら今日はあいつ家にいるんだな」

「えっ? 知らなかったのか?」

「……悪いかよ」

 

 (ギャァァァ! 俺ひょっとして特大の地雷踏んだ!?)

 

 ただでさえ気まずいのに、俺が知っていてアスマが知らないというマウントを取ったような形になってしまった。

 

 しかし、この地獄のような空気をぶち壊せる人物が、偶然通りかかった。俺たちとも顔馴染みの能天気な後輩、みたらしアンコである。

 頼むアンコ、さあこの空気をぶち壊してくれ!

 

「あれ? ヨフネさんにアスマさんじゃん! 二人とも里に帰って来て早々、紅さんを巡って修羅場ですかー?」

 

 おい、待てコラ。そんなぶち壊し方は望んじゃいない。

 

「ど、どどういう事だ? アンコ」

 

 アスマの顔が引き攣る。

 

「えっ? だって隊長と紅さんって付き合ってるんじゃないの? ほら、この前は部屋から朝帰りしてたじゃないですか」

 

 え?何コイツ?死にたいの?

 

 隣を見ると、アスマが俯いて拳を握り締め、プルプルと震えている。

 

「ひょっとしてアタシ、やらかしちゃいました? ……あ! うちはちょっと用事があるんで、これで!」

 

 シュタッと敬礼をかまして、アンコは脱兎の如く逃げ去って行った。残されたのは、俺とアスマと、鉛のように重たい空気だけである。

 

「ヨフネ」

「ハイ!」

「今から俺と決闘しろ!」

「ハイ?」

 

 

 

 

 それから二時間後、俺は第三演習場にいた。

 何故かこういう時に限って、揃いも揃って暇を持て余していた同期たちまで演習場に集まっている。って、ホヘトやシスイたち猟犬の部下までいるじゃないか。

 

「なんでお前らまでいるんだよ」

「アンコから話を聞いたガイさんがゲンマさんに。ゲンマさんから僕たちに回ってきました。隊長の色恋沙汰の決闘とあらば、見逃せませんからね」

 

 シスイが良い笑顔で答える。人の口に戸は立てられぬとはよく言ったものだ。って広げ過ぎだろアンコォ! あいつ絶対あの後も覗いてたな。

 

「ヨフネ、シズネが聞いたら悲しむよ?」

「待て待てトンボ、変な情報をぶっこんでくるな!」

 

 外野が騒がしい中、俺の正面に立つアスマは、既に殺気を漲らせてチャクラ刀を構えていた。お前、マジで殺し合いでもするつもりなのか。

 

「良いけどさ、これって何の為の決闘なんだよ」

「まだしらばっくれるつもりか!」

 

 そう叫んで、アスマが猛スピードで突っ込んで来た。

 190㎝の巨体だが、かなり早い! しかし俺は身長こそ平均的だが、身体強化のパワーで負けることはない。雷刀を鞘のまま構えて鍔迫り合いに持ち込んだ後、思い切り弾きかえす。

 

「お前、決闘で紅の事を解決しようとでも思ってんのか?」

「それ以外の何がある!」

 

 アスマは再度構えて、今にも飛び掛かって来そうな勢いで吠えた。

 

「……そうか。気が変わった。本気で相手してやるよ、反抗期の糞餓鬼!」

『八門遁甲・第一 開門……開!』

 

 俺は自分の中の脳のストッパーを外す。さらに脚にチャクラを集中させ、その場に土埃を残して瞬時にアスマの後方へと移動した。

 

「早い!」

 

 観客の誰かが声をあげたが、それを無視してアスマの腰の辺りに重い回し蹴りを入れる。アスマは咄嗟に反応して前方に転がったが、威力は殺しきれなかったようだ。

 

「お前は紅の事をトロフィーか何かだとでも思ってんのか? こんな猿山のボス決めみたいな決闘であいつの心をどうにかしようなんざ、甘すぎんだよォっ!」

 

 転がったままのアスマに追撃をしようとすると、奴はいきなり起き上がり、手裏剣を連続で投げつけてきた。

 

 (四つ! こんなもんで俺がやられるとでも……いや、これは!)

 

「手裏剣影分身の術!」

 

 飛んできた手裏剣が、俺の目の前でネズミ算式に増殖していく。その数は既に数十を超えている。最初からその数なら捌けるが、空中で増殖する刃のすべてを雷刀で叩き落とすのは難しい。

 

「ヨフネ!」

 

 演習場の端から、いつの間にか駆けつけていた紅が俺の名前を呼んだ。火に油を注ぐような真似を!

 開門を開いたままだった俺は捌くのを諦め、横に大きく飛んで避ける事にした。

 

「火遁・灰積焼!」

 

 すぐにそれを追撃するように、アスマの得意な広範囲の火遁が飛って来る。俺は地面に向けて拳を叩きつけ、分厚い岩盤を捲れ上がらせて防いだ。

 

 電磁砲を使えば一瞬で決着が付くのだが、あれは威力を手加減出来るような術ではないから、同期のアスマに使うわけにはいかない。

 

 だが、俺はガイほど八門遁甲に耐性がある訳ではない為、開門を維持できる時間は約一分だけだ。その間に決着をつけなければならない。

 

 俺はもう一度脚にチャクラを集中させ、今度はアスマの正面から突っ込む。同時に腰に下げた水筒の蓋を弾き飛ばし、チャクラで少量の水を掌に吸着させた。

 

 そのままアスマの懐に潜り込み、水の塊を張り付けた右手で、アスマの口と鼻を覆うように顔面を鷲掴みにして地面に叩きつけた。

 

「ゴハッ……!?」

 

 アスマは息が出来ずにもがくが、開門状態の俺の怪力はそう簡単に振りほどけない。

 人はコップ一杯の水で溺れてしまう。チャクラの総量が少ない俺なりに考えた、超・物理特化型の『水牢の術(顔面限定)』である。

 

 最初はもがいていたアスマだったが、力を振り絞って右手のチャクラ刀で俺の腕を斬り付けようとして来た。仕方なく手を離して刀を躱し、アスマの腹を蹴り飛ばして一旦距離をとる。

 

 アスマは木に激突し、溺れそうになったせいか激しく咳き込みながら、こちらを鋭く睨みつけていた。

 

「……なんでお前は、いつも俺の前にいるんだ」

 

 息を整えたアスマが、吐き捨てるように言った。

 伸びた無精髭、土でボロボロになった服。まるで浮浪者の様だというのに、その眼光だけは未だに折れていない。

 

「チャクラも少ない落ちこぼれだったくせに、いつの間にか実力をつけて、親父や里からも信頼されて、自分の部隊まで持って……ましてや紅まで! なんで俺が欲しい物を、お前は涼しい顔して全て手に入れてるんだよォ!」

 

 アスマはそう叫ぶと、何かを引くような仕草を見せた。

 

 (ワイヤーか!)

 

 先ほど躱した手裏剣影分身が背後から迫ってくると思い、俺が咄嗟に振り返ると――そこには何もなかった。ブラフだ。

 

「ガハッ!」

 

 後ろに気を取られた隙を狙われ、アスマの重い拳が俺の顔面を真正面から殴り飛ばした。クソっ、騙された。

 

「へっ! 一発喰らわせてやったぜ」

「……ふざけんじゃねえよ」

 

 俺は地面に手をつき、口元の血を手の甲で乱暴に拭ってアスマを睨み返した。猟犬としての冷静さが、この瞬間、完全に吹き飛んだ。

 

「ふざけんじゃねえぞ、アスマァ! 話を聞いてみりゃグチグチグチグチと女々しい事ばかり言いやがって!」

「良い顔になったじゃないか。ムカついてたんだよ、お前のそのいつも余裕そうな澄ました顔が!」

 

 なんで俺がこんな面倒な事に巻き込まれなきゃいけないんだよ。余裕そうに見えるだ? 知るかそんな事! 必死な顔を見せる事が頑張っているとは限らないんだろ。こっちはお前を殺さないように手加減してやってんのに!

 

「隊長、それはいけません! アスマさんが死んでしまいます!」

 

 俺が頭に血を上らせたせいで、無意識のうちにポーチから黒い鉄球を取り出し、周囲にふらふらと浮遊させていたらしい。シスイの焦った声で我に帰り、チッと舌打ちをして鉄球をポーチに納める。

 スッと深呼吸して、俺は真っ向からアスマに怒鳴りつけた。

 

「お前、自分が今まで何やってきたか分かってんのか?」

「何のことだ」

 

 アスマが本当に分からないという風に顔を顰める。これだけ察しが悪かったら、そりゃ紅も苦労するわな。

 

「そもそもお前は、なんで里を出て行ったんだ?」

「俺は俺を認めてくれる人の所へ行っただけだ。お前には分からないだろうがな」

「ああ分からねえな。自分は他人に認めて欲しいクセに、その相手の立場や考えを少しも認めようとしないお前の子供っぽさは、心底理解できねえよ!」

 

 せっかく心を落ち着かせたというのに、またイライラしてきた。この際だから、思っていたことを全てブチまけてやる。

 

「認めてくれる大名の所へ行ってどうなった? お前は結果的に、木ノ葉を裏切る寸前のクーデターに巻き込まれたじゃないか! 三代目に認めて欲しくて、結果だけを追い求めた末路がそれだ! お前も少しは三代目の立場になって考えてみろ! いくら任務を達成したからって、味方の過半数を死傷させた小隊長を手放しで褒めてやれるはずがないだろ! あの人はお前の親父である前に、『火影』なんだぞ! 里の未来を護らなきゃいけないんだ。いい加減、親離れしやがれ!」

 

 演習場が静まり返った。野次馬の連中も、俺がここまで声を荒らげて感情を爆発させている姿を見るのは初めてだったのだろう。

 

「お前はただ逃げただけだ。いや、守護忍という箔を付ければ、親父が認めてくれるとでも思ったのか?」

「黙れ!」

 

 アスマが耳を塞ぐように叫ぶが、俺は容赦なく畳み掛ける。

 

「それに里から出て行く時、お前は紅に何て言われた?」

「それは……」

「思い出せないなら教えてやるよ。お前は、『一緒にいて』っていう紅の言葉を振り切って出て行ったんだよォ!」

 

 俺は踏み込み、今度は俺の拳がアスマの頬を全力で殴り飛ばした。アスマは殴られた勢いで地面に膝をつく。

 

「紅がどれだけ悲しんで、酒に溺れてたかお前は知ってるのか? 少なくともここにいる同期の方が、お前よりよっぽどあいつの涙を知ってるぞ!」

「…………」

 

 アスマはダメージのせいか、俺の言葉が刺さったせいか、膝をついたまま俯いて黙り込んだ。

 

「そんな不器用な紅を、俺たちが見捨てるわけないだろ! それなのに、勝手に出て行った奴が、戻って来た途端に全部掻き乱しやがって! 何でも自分の思い通りにならないと気が済まないのか!」

「全てが思い通りにいってるお前には言われたくねえよ!」

 

 アスマがヤケクソのように右足でローキックを放ってきた。俺はそれをガッチリとガードし、右足でアスマの側頭部を狙う。アスマは反応して腕を上げてガードするが、俺の蹴りはそんな事では止まらない。ガードした腕ごと吹き飛ばす勢いで足を振り抜いた。アスマが数メートル先へ転がっていく。

 

「……確かにお前から見れば、俺が涼しい顔で全部上手くやってるように見えるかもしれない。だがな、俺の思い通りに全てがなるなら、うちは一族も、オビトやリンも、四代目も死ぬ事は無かったよ!!」

 

 怒鳴り声が、森に木霊した。

 俺が前世の記憶を頼りに、どれだけ悩んで、どれだけ裏で血反吐を吐いて、今の「少しでも死者の少ない世界」を目指してきたか、こいつらは知らない。

 だからこそ、その足掻きを「余裕そうに全部手に入れてる」と勝手に否定される事だけは、絶対に許せなかった。

 

「……確かに、俺はお前を妬んでるだけだ。お前の言う通り、俺はガキだった」

 

 地面に倒れ伏したアスマが、荒い息を吐きながらぽつりと言った。

 

「変わる事も必要かもしれない……だけど、それでもこれだけは譲れないんだ!俺は紅を諦める事だけはできない! 俺は、紅が好きなんだ!」

「……だってよ、紅」

「「「「へ?」」」」

 

 俺のあっさりとした声に、演習場にいた全員が一瞬あっけにとられた。

 俺が視線を向けた先。木陰からおずおずと出てきたのは、泣き腫らした目と、頬を林檎の様に真っ赤に染めた紅だった。

 

 アスマは頭に血が上り過ぎて、観客の中に紅がいる事を完全に忘れ、みんなの前であんなこっぱずかしい告白を叫んでしまったのだ。

 

 恥ずかしがり屋の紅からすれば、公開処刑のようなものである。紅は涙を乱暴に拭い、よろよろと立ち上がるアスマの前へと歩み寄った。

 

「あ、あああんた、自分がどんだけみんなに迷惑かけたか分かってんの?」

「スマン」

「はぁ……謝るのは私に対してじゃないでしょ! ヨフネと三代目にでしょ!告白するなら、ちゃんとスジ通して来なさい!そしたら……付き合ってあげるから」

 

 紅が頬を染めながら、アスマに向き合う。

 

「え、でも、ヨフネとお前は……」

「あんたはどうしたいの!」

「俺は、俺はお前とずっと一緒にいたい!」

 

 アスマの奴が、もはやプロポーズとしか思えない言葉を吐く。それに対して、紅は俺の方に向かって顎で促した。

 アスマはギギギッと壊れた機械のような動きで、膝をついたままこちらを向いて頭を下げた。

 

「…………本当は分かってる。俺が間違っていることは。勝手にコンプレックスを感じてたんだ。カズマのことも、紅のことも本当にすまなかった」

「わかった。許す。……ただ、俺達も、もう二十五だ。ガキではいられないんだ」

「すまん」

 

 まだ外野の野次馬たちは事態についていけてない様なので、俺が代表して声を掛けてやった。

 

「これで良かったか?紅」

「ありがとう、ヨフネ」

「「「「えええ?!?!?!」」」」

 

 こいつらはまた揃いも揃って同じ反応しやがって。打ち合わせでもやってたのかよ。

 

「なるほど、そういう事か」

「おい、イビキどうなってんだ? 俺にはさっぱり青春が理解できんのだ、教えてくれ!」

 

 流石は暗部拷問部隊のエースと言うべきか、イビキは真っ先に理解したようだ。逆に珍獣はどこから理解出来ていないのかも分からん。

 

「どういう事も何も、俺は最初から紅とアスマをくっつける気でいたんだよ。ここに来る前から、こうなる様に仕組んだのさ」

「なに格好つけてるんですか隊長、途中は完全に素で頭に血が上ってたくせに」

 

 ……シスイよ、優秀な副官ならそこは空気を読んで黙っておいてくれ。

 

「ま、これだけ野次馬が集まるとは流石に予想してなかったけどな。本当は二人だけで決闘して、アスマが告白したら紅が出てくるっていう、綺麗な予定だったんだが……アンコ」

「ヤバッ!」

 

 茂みの陰に隠れて見ていたアンコが、脱兎の如く逃げ出そうとした。だが、俺がハンドシグナルで合図を出すよりも早く、ゲンマとホヘトが両脇から飛び出し、アンコを物理的に捕獲していた。

 

「すまんなアンコ。条件反射で動いちまった」

「アンコ、心配しなくても大丈夫ですよ。いくら隊長でも身内を殺しはしませんし、嫌でも特別メニューで徹底的に強くしてくれますから」

「ごめんなさあああああい!!」

 

 こういう場を弁えずに情報を漏洩させる口の軽い奴は、きっちりと躾けてやらないとな。

 

 

 

 

 その場で解散となるはずだったのだが、せっかく久しぶりに同期が全員揃ったからと、居酒屋へ飲みに行くことになった。

 ちなみにアスマはみんなにも謝った後、紅に引きずられるように火影邸に向かって行った。

 

 夜も更けてきた頃。

 隣に座っていた銀髪のむっつりスケベが、面白そうに尋ねてきた。

 

「ねね、ヨフネさんやい」

「なんだいカカシさんよ」

「結局さ……お前って、紅としたの?」

「さあね」

「おいおい、はぐらかすなよ」

「マジだよ。まるで幻術にでもかかったみたいに、そこの記憶だけすっぽり抜け落ちて、覚えてないんだよ」

 

 俺が呆れたように肩をすくめると、カカシは持っていたグラスを置き、一つだけ見えている右目を面白そうに細めた。

 

「……それって……まさか」

 

 それが先だったのか、後だったのか、真相は、闇の中だ。

 友との飲みで警戒してなかった俺が悪いが、休みの日ぐらい普通に過ごしたい。

 俺は小さく笑いながら、無警戒に酒を胃に流し込んだ。

 不器用な恋の始末は、こうして賑やかな夜の中に溶けていった。

 

 





 
地陸
元・守護忍十二士の一人で、火ノ寺の僧。暁の飛段と角都と戦うも飛段の術により絶命、その遺体は換金所に持ち込まれた。凛々しい眉毛の持ち主。
 
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