同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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041.訪問

 

 

 今日は、晴れて正式に教え子となった第八班の下忍たちの家庭訪問をすることにした。

 

 本来であれば、担当となる下忍と顔合わせをする前に保護者へ挨拶に出向くのが筋らしいのだが、猟犬連隊の引き継ぎ業務に追われていた俺にはそんな余裕はなかった。そのため、顔合わせの翌日である今日、同じ班員をぞろぞろと連れ立って各家庭を回ることにしたのだ。

 

「なあ先生! どっから行くんだ?」

 

 犬塚キバと頭に乗った赤丸が、俺の足元に纏わり付くようにウロチョロしながら尋ねてきた。初日から随分と懐いてくれるのは嬉しいのだが、これでは落ち着きのない犬が二匹いるようにしか見えない。お前の尻のあたりに幻覚の尻尾が見えるのは俺の気のせいか?

 

「お前達の家庭はそれぞれ木ノ葉を代表する名家だけど、まずは最も古い歴史を持つ日向家からだ。キバ、粗相するんじゃないぞ」

「へへっ、任せろって!」

 

 得意げに胸を張るキバを見て、どうにも不安しか湧いてこない。だが、今の内にキバやシノに『ヒナタの実状』を知っておいてもらうのは悪い事ではない。ヒナタの悩みについて、俺はナルトが中忍試験で強引に解決してくれるのをのんびり待つつもりはなかった。

 

「……凄まじい豪邸だ。自信が無くなる。何故なら、俺の実家がただの物置小屋に見えてくるからだ」

 

 木ノ葉の中心部に広大な敷地を構える日向家の大門の前に到着すると、油女シノが襟に口元を埋めたままボソリと漏らした。

 

 無口なシノが自虐を言うとは思わなかった。自分の家にそれなりに自信があったのだろう。まあ、高くそびえる漆喰の塀や、手入れの行き届いた立派な松の木、そして門の奥から漂ってくる静寂で重圧感のある空気は、思わずそう言ってしまうのも無理はないほどの圧倒的な威容を誇っている。

 

 立ち止まって見上げているわけにもいかないので、宗家側の門番に日向ヒアシ氏へ挨拶しに来た事を告げる。すると、しばし待つようにと屋敷の中へ案内された。

 

「あれ、連隊長じゃないですか! どうされたのですか?」

 

 長い廊下を歩いていると、パタパタと足音を立てて走って来た青年が、俺の顔を見るなり驚いた声を上げた。出迎えてくれたのは、日向コウだった。猟犬が連隊規模に拡大してから入隊してきた男だが、今では中隊長を任せている期待の有望株だ。実直な性格と確かな実力を買われており、猟犬に入隊する前はヒナタの付き人をやっていたらしい。

 

「あ、コウさんは猟犬連隊にいるから先生の事知ってるんですよね」

 

 ヒナタが少しホッとしたような顔で言う。

 

「先生……? 連隊長が新米の担当上忍になるとは聞いていましたが、まさかヒナタ様を担当されるのですか?」

「俺もいきなり三代目に言われて驚いてるんだけど、そのまさかなんだよ。ちなみにこの二人は、同じ班員の油女シノと犬塚キバだ」

 

 俺が二人の背中を押しつつ紹介すると、キバは「猟犬の中隊長」という肩書きに気圧されたのか、少しだけ緊張した面持ちで頭を下げた。俺というトップに会っているのだから今更緊張することもないと思うのだが。

 

「あの、連隊長……」

 

 コウが周囲を気にしながら、俺に顔を寄せて小声で囁いてきた。

 

「くれぐれも、ヒナタ様を潰してしまわないよう頼みますよ!」

「おい、俺がいつそんなに部下に厳しくしたよ?」

「なんでもありません! とにかく、ヒナタ様を宜しくお願い致します!」

 

 猟犬の隊員達には、彼らの実力で出来ると思った事しかさせていないつもりなんだが。どうやら俺の要求水準が高過ぎるのか、部隊の軍隊色が年々強くなっている気がする。そう考えると、なんだかんだ言って自分が一番多くを学んだ『婆様』の教育方針を無意識に模倣しているのかもしれない。……やっぱり俺、異常だったかな?

 

「それよりもコウさん……あの、早く案内しないとお父様が……」

「おっと、そうでした。ささっ、どうぞ道場の方へ!」

 

 ヒナタが遠慮がちにコウを促してくれた事で、俺たちはさらに屋敷の奥へと進んだ。

 屋敷は昔ながらの重厚な造りをしており、歩くたびに磨き抜かれた鶯張りの床がキュッキュッと鳴る。柔拳の総本山ということもあり、巨大な道場が併設されているとの事だ。今まさに当主の稽古中だという事で、俺達はその道場へと案内された。

 

「立て、ハナビ」

 

 道場に足を踏み入れた瞬間、鋭く冷たい声が空気を震わせた。

 

「まだあんな小さいというのに、随分激しい訓練をなさっているようですね」

 

 俺が目を細めると、道場の中央で少しだらしない感じで髪を伸ばしている小さな女の子が、クナイを片手に全身に痣を作って床に這いつくばっていた。この子がヒナタの妹である日向ハナビらしい。

 

 確かまだ七歳程度だったはずなのに、宗家の跡取りとして凄まじい訓練を積まされているのだろう。息も絶え絶えになりながら、それでもハナビは強い瞳で立ち上がろうとしていた。

 

「そなたもこの年の頃は、似たような訓練をしておったではないか?」

 

 俺達が入って来てから一度たりともハナビから目を離さなかったヒアシさんが、ここで初めて此方を向いた。白眼特有の、感情の読めない瞳だ。

 言われてみれば、俺も幼い頃から基礎訓練で血反吐を吐いてきた。だが、あんな小さな女の子が泥だらけになっている姿を見ると、やはり転生者としての倫理観が微かに疼き、少し可哀想な気がしてしまう。

 

「して、今日は何やら挨拶があるとか」

「はい。ヒナタの担当上忍を私がやる事になったので、ご挨拶にと。あと、この二人は同じ班員の油女シノと犬塚キバです」

 

 今度は俺が促さなくても、シノとキバは自然に頭を下げた。ヒアシさんの纏う、一族の長としての圧倒的な重圧を本能で感じ取ったのだろう。

 

「それだけか?」

「そうですね……。あと、ヒナタは宗家のご令嬢ですが、下忍とはいえ忍となる以上、任務には常に死が付きまといます。私の命に代えても守り抜くつもりですが、生き残る為には限界を超える訓練を積まなくてはいけません。どうやら私はその辺の手心を加える配慮ができる性格ではないそうなので、予め断っておこうかと思いまして」

 

 俺の言葉に、ヒアシさんは表情一つ変えることなく、静かに口を開いた。

 

「……ヒナタの優しさは、日向の伝統である『柔拳』には向かん。五歳も年下のハナビに劣るのが現状だ」

 

 その声には、厳格な当主としての冷たさと、親としての不器用な葛藤が微かに滲んでいた。

 

「だが……お前はホヘトと共に、あの『鳥籠』の呪縛を解き放ってくれた。古き慣習に囚われないお前のやり方ならば、あの子もまた、己の道を見つけられるやもしれん。……好きに鍛えるが良い」

 

 妹に劣ると言い切られたことに、仲間意識の強いキバが顔を真っ赤にして前に出ようとした。俺はそれを鋭い目線で制した。

 

 俺はこれまでの付き合いで、ヒアシさんがどういう人物か分かっている。この人は名門一族の当主として生きてきたせいで、かなり不器用なのだ。

 

 彼は、言葉では突き放しているものの、実際には優しすぎるヒナタに日向一族の当主は向いていないと思い、宗家としての重圧から解き放ってあげようと考えているのだ。

 

「わざわざ、来てもらってすまなかったな。……娘を頼む」

 

 最後には、ちゃんと軽く頭を下げてお願いされた。少しは俺が日向一族に関与したことで、ヒアシさんにも良い影響があったような気がして嬉しかった。

 

 敷地から出るとすぐに、ヒナタが俯きがちに口を開いた。

 

「……お父様が言う通り、私よりハナビの方が才能があるのは、事実だから……」

 

 やはりまだまだ気弱な性格をしているが、そこは俺が少しずつ導いてやれば良いだけだ。ネジに比べれば才能の開花は遅いかもしれないが、彼女自身の素質は決して悪くないと俺は思っている。

 

「ヒナタ、自分で自分の限界を作るな。お前の限界は俺が測ってやる。とりあえずは、四の五の言わずに俺を信じてついて来い」

「……はい。ありがとうございます、ヨフネ先生」

 

 死ぬ気で努力すれば、あの珍獣のような化け物も生まれる世界だ。それでもダメなら、俺たち猟犬のように『戦術と道具』を使って戦えるようになれば良い。

 

 

 

 

「さて、次に行くのはシノの家だ」

 

 日向家から少し離れた、木々が茂り静寂に包まれた森の一角。油女家は、シノが密かに自信を持つだけあって、裏手に広大な森の演習場を持つ立派な家だった。

 

 何度か来た事があるが、いつ来ても木漏れ日と静けさが心地よく、不思議と心が落ち着く場所だ。

 

「なんだ、俺の家が最後かよ」

 

 キバが不満そうに言う。

 

「まあ、そういうな。今から会うシノの親父さん、油女シビさんは、昔俺の担当上忍だったんだ」

「……親父から、そんな話聞いた事がなかった」

 

 シノがサングラスの奥で少し驚いたように呟く。まあ、元々話すのが得意な人ではなかったからしょうがないだろう。むしろ、家で俺の事を嬉々として話しているシビさんの方が怖い。

 

 チャイムを鳴らすと、出迎えてくれたのはシノのお母さんだった。この人は油女一族の外から嫁いできた人なので、特にサングラスもしていない至って普通で優しそうな女性だ。いや、あの無口なシビさんと結婚し、シノを立派に育て上げているのだから、相当気が配れるという意味で『普通』ではないのかもしれない。

 

「あら、ヨフネくん。お久しぶりです。今度は、息子の担当となってくれたのね」

「ご無沙汰しております。今回は俺が先生としてお世話することになりました」

「この子もあの人に似てあまり喋らないから心配してたんだけど、貴方なら上手く扱ってくれそうだわ。手の掛かる息子だけどよろしくね」

 

 まさに絵に描いたような良妻ともいうべき人を、シビさんはどうやって捕まえたのだろう。今度、そこら辺の恋愛事情についても教えてもらいたいものだ。

 

 奥にある静かな居間に通されると、既にシビさんが正座して待っていた。言葉はないが、何となく座るように勧められた気がしたので、俺も座布団に座ってから挨拶をする。

 

「どうも。今度は俺が、シノの先生をやることになりました」

「……そうか。俺“は”何も言わん」

 

 その僅かな言葉の強調からすると、どうやら俺の担当上忍だった時は、色々と『婆様』から口出しされていたのだろう。薄々そうなんじゃないかとは思っていたけど。

 

「だが、お前を思っての行動だ」

「……はい」

 

 どうもシビさんは、俺と婆様が事あるごとに意見が対立していたことから、未だに不仲が続いていると勘違いしているらしい。婆様が相談役を降りてからは、互いに肩の荷が下りて憎まれ口を叩き合えるくらいには関係が改善しているのだが、他所からはまだそう見えていないのだろう。

 シビさんなりの不器用な気遣いが身に沁みる。

 

「はい、今は仲良くやってます。とりあえずシノには期待してます。猟犬にいるムタも、あいかわらず感知部隊として良くやってくれていますしね」

 

 シビさんは俺の言葉に、満足そうに黙って頷いた。シノの担当となるのが俺で良かったかもしれない。俺ならシビさんのように、無口な一族特有の少ない言動を誤解せずに受け取ってやることができる。

 

「俺の方で教えられる事は全てやりますけど、シビさん。『蟲邪民具の術』だけは、先にシノに教えてあげて下さい。索敵を妨害するあれ、すっごい実戦で便利なんで」

 

 またもやシビさんは黙って頷いた。その後、出されたお茶の方を見るような気配を感じたので、一言断ってから飲んだ。お母さんが出してくれたお茶請けにも手を出して、一息ついた所で油女家をあとにした。

 

「シビ先生、今日は機嫌良かったな」

「確かに、かなり話していた。何故なら、家族でもあそこまで会話しない」

「テメェん所はどんな家族だよ!」

 

 キバの鋭いツッコミが木霊した。

 

 

 

 

「最後はキバの家だな」

「おっしゃー! 待ってました。ほら、こっちだぜ!」

 

 犬塚家は、木ノ葉にある数少ない動物病院のそばに建っている。静寂に包まれた日向家や油女家とは打って変わり、周囲には常に犬たちの鳴き声と獣の匂い、そして活気があふれていた。

 

 元は旦那さんがやっていた病院なのだが、奥さんであるツメさんの尻に敷かれすぎて耐えきれなくなって出て行ったとか。今はしっかり者の娘、ハナちゃんが代わりに獣医をやっているようだ。

 

 その病院の前に、家に近づいた頃から見えていたが、巨大な眼帯をした忍犬――黒丸がこちらを向いて待っていた。

 

「黒丸、久しぶり。元気だったか?」

「……お前に潰された、右目以外はな」

「えっ? 黒丸の右眼って、ヨフネ先生がやったのか!?」

 

 キバが素っ頓狂な声を上げる。

 悪かったとは思っているが、いきなりその切り出し方はないんじゃないかな黒丸君。ただこんな態度だが決して嫌われているわけではないんだよな。

 

「あの時は本当に悪かった。ほら、特製の薫製肉持ってきたから、そう言うなよ」

「ふん。今回も大目にみてやるか」

 

 そうは言いつつ、黒丸の尻尾が千切れんばかりに振られて、足元に土埃が立っている。ツンデレめ。俺が燻製を渡すと、ひったくるように咥えて家の中に消えていった。……決して餌で手懐けているわけではないぞ。

 

「なんだよ先生、俺の家の事も知ってんのかよ」

「お前の母ちゃんのツメさんとは、昔一緒に過酷な任務を乗り越えた戦友だからな。それにお前の姉さんが赤ん坊の頃、一回抱っこしたぞ」

「マジかよ!?」

 

 これまで意識した事はなかったが、ここまでこいつらの家族と深い関係があるとなると、何か運命的なものを感じざるを得ない。そう思っていると、黒丸が知らせてくれたのだろう、ツメさんが玄関を勢いよく開けて出迎えてくれた。

 

「まさか、あの猟犬の隊長が、うちの子の先生をやってくれるとはね」

「なぜか自分と関わりのある家の子達ばかりで、やりにくさを無くす為にも、こうして班員を連れて家庭訪問してます」

 

 そういう意味では、カカシは楽だろうな。訪問する家庭はサクラの家ぐらいだ。ちなみに、シスイとタシは、それぞれナルトやサスケと同じアパートに住んでおり、里にいる時は保護者として面倒を見ている関係のため、カカシとは一応火影室で顔合わせがあったようだ。

 

「あ、そう言えばまた薫製肉を持ってきてくれたみたいだね。黒丸がご機嫌だったよ」

「基本、忍具ポーチに常備してあるんで大丈夫ですよ。黒丸も可愛いですしね」

 

 黒丸と会うと分かっている時は、持っておくようにしている。一回忘れた時の黒丸の落ち込みようも面白かったが。

 

「黒丸の事を可愛いって言えるのは、先生ぐらいだよ! そう言えば、母ちゃん。さっきの黒丸の右目の話だけど……」

「コラ! キバ、あんた先生になんて口きいてんだい!」

 

 ツメさんがキバの頭をゴツンと小突いた。目の前で繰り広げられる野生味あふれる親子のふれあいに、俺はただ引き攣った笑いを浮かべるしかなかった。それに、キバの生意気な態度は訓練していく内に自然に改善されていくはずなので、そこまで心配はしていない。

 

「ヨフネ先生。こいつが何かやらかしたら、遠慮なくぶっ飛ばしておくれ! この馬鹿息子は犬と同じで、体に叩き込まないと覚えないからね!」

 

 わかりやすい教育方針だ。この忍の世界にモンスターペアレントがいるとは思えないが、予めそう言ってもらえると安心できる。

 

「キバ! せっかく憧れの猟犬のトップが先生になったんだ、死ぬ気で教えてもらいな。あんたが想像するより、この人はずっと苦労してるんだから。……ねえ、不遇の天才さん?」

「ん?なんだ、それ?」

 

 キバが目を輝かせて聞いてくる。やはり気になるよな。でも、今から教え子になるって子に、自分の最大の弱点をあまり教えて欲しくはないんですけど……。

 

「ヨフネはね、忍術、幻術、体術はもちろん、医療忍術や結界術、封印術まで、何をやらせてもトップクラスの才能があると言われているんだよ」

「凄えな! 流石はエリート部隊の隊長!」

 

 キバの尊敬の視線が凄くて、逆に居た堪れなくなる。こうなったら自分で言うか。

 

「だけど俺は、その多くを実戦で使用出来ないんだ」

「どういう事だよ? 才能があるなら、努力すれば使えるだろ? 」

「だが、俺は致命的に、『チャクラ』の総量が少ないんだよ」

「なるほど……。すべてを持っているのに、一番肝心なものが足りない。だから、不遇の天才なのか」

 

 シノが思わず呟く。普段無口な癖に、こういう時だけ素早く的確に反応しやがって。

 

「だから、俺が普段使う術は、消費が少ない術ばかりだ。だが、工夫次第でどうにでもなる。ちなみに俺も『獣人分身』は使えるぞ」

「先生、マジかよ!?」

 

 ツメさんから教えてもらった獣人分身は、忍犬(あるいはコン平のようにチャクラを持っている生き物)が自らのチャクラを練って、術者が代わりに印を結びコントロールしてやれば、術者自身のチャクラを消費する事がない。チャクラの少ない俺との相性はもちろん、コン平との相性も抜群だ。

 

 コン平もチャクラ量が特別多いというわけではないし、話すことはできないから使う機会はあまりないが。

 

「お前達それぞれの課題も、ある程度見当がついている。教えてやらないといけない事は山ほどあるぞ。今から半年間は、任務はそこそこに地獄を見るまでシゴいてやるから頑張れよ」

「半年……って、隊長。この子らがルーキーのタイミングで、いきなり『中忍試験』を受けさせるつもりかい?」

 

 ツメさんは驚いたように懐疑的な目でこちらを見ているが、俺はこいつらが中忍試験を受けられるだけの実力がある事は、原作の知識で知っている。逆に、俺の準備不足のせいで受けさせてやれないという事態は避けたい。

 

「まあ、最近はルーキーで受験する班はいなかったみたいですが。今年は俺にカカシ、アスマが担当上忍です。それくらいの要求水準でやらないと、こいつらもあっという間にライバルに置いていかれてしまうんでね」

「なるほどね。そういう事かい。こりゃ、とんでもなく優秀な年代になりそうだね」

 

 三人は何の事か理解できていないようだが、まだ知る必要はない。浮かれても焦っても良い事はないのだ。

 その後も少しツメさんと話してから、俺は犬塚家の前で三人に向き直った。

 

 半年後は中忍試験……つまり、大蛇丸による『木ノ葉崩し』が起こるという事でもある。

 波の国の裏工作、下忍の育成、そして里の防衛。どうやら、俺に安息の時間はないようだ。

 

「よし、今日の家庭訪問はここまでだ。解散!」

「なあ先生、先生の家にも行ってみたいんだけど!」

 

 帰り道に就こうとした矢先、キバが無邪気に提案してきた。

 

「確かに……興味がある。何故なら、俺達は先生の事をあまりに知らなすぎるからだ」

「お、シノと珍しく意見があうとはな。ヒナタも行ってみたいだろ?」

「い、行ってみたいけど……でも駄目だよ。いきなりじゃ迷惑だよ」

「えー、先生良いだろー? 猟犬のトップがどんな豪邸に住んでるのか見てみてぇ!」

 

 目を輝かせる三人を見て、俺は少しだけ意地悪く笑った。

 

「俺の両親は既に死んでるし、俺は実家から通ってるんだが……今家にいるのは、木ノ葉の里のご意見番をしていた、『コハル婆様』だけだぞ。行くか?」

 

 俺の言葉を聞いた瞬間、三人の顔からスッと血の気が引いた。

 

「「「……遠慮させて頂きます」」」

 

 息の合った三人の声が、夕暮れの木ノ葉の里に虚しく響き渡った。

 

 

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