無限ガチャ×東島ライダー クロスオーバー短編集   作:素面ライダー

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 今回は、スズを主人公に据えた本日の投稿エピソードの番外編にあたります! 
 
 それでは、番外編スタート!
 
 


第2.5話

 

 

 利用者の少なくなった時間帯の食堂近くの廊下。そこでは1人の少女が歩いていた。 

 

 頭にハンティング帽を被り、上着と腰を引き締めるコルセットを身につけ、丈の短いスカート、黒タイツ、脛まで覆ったブーツを履いた服装、菫色の瞳に艶のある黒髪を短めに切り揃えた幼げな顔立ちをした美少女だ。 

 

 彼女の名前はスズ、「UR 両性具有(ダブル)ガンナー スズ レベル7777」だ。 

 

 彼女は「とある目的」のため(その一部は既に達成済みだが……)に料理を練習しており、食堂の調理室の一部を使わせてもらっていた。今は、その帰りである。 

 

 そこを職場としている料理人たちにとって、自分たちの聖域であるそこを使われるのは、本来ならば好ましくない事だ。 

 

 だがスズが料理を練習する理由を知っている彼らは、むしろ快く職場を提供していた。 

 加えて比較的利用者が少なく、余裕のある時間帯であることも大きい。 

 

 そして練習の甲斐あって、スズの料理の腕は相当なものとなっている。 

 少なくとも、家庭で出す代物としては十分「料理上手」と言っても差し支えないレベルだ。 

 

 だが── 

 

(あの時、ライト様は私の手料理を「美味しい」と言って食べてくれた。 

 だけど、これからもずっと言ってくれる保証は無い。何より、同じ料理ばかりだと飽きられる。 

 レパートリーを増やしてるけど、それを「美味しい」と言ってもらえるか……) 

 

 ──この通り、未だスズは自分の料理に自信を持てずにいた。 

 

 先ほどのモノローグでスズが語った通り、料理を練習する目的は「ライトへ食べてもらうため」だ。 

 彼女のその目的は、成り行きだったとはいえ一度達成している。 

 

 だが先ほどの説明にもあった通り、それは目的の一部に過ぎず、最終的には「できれば毎日ライトへ料理を作り、それを食べてほしい」と考えていた。 

 

 そのため、現在も引き続き料理の練習を続けている。 

 しかし先ほど述べた通り、その点に関してスズは未だ自信を持てないのだ。 

 

 ハアァァァ〜〜…… 

 

 廊下で1人ため息を吐いていると、最近まで耳馴染みの無かった音楽が僅かに聞こえ始めた。 

 

 ガンナーとしての能力故に、スズは斥候役としても優れており、「UR アサシンブレイド ネムム レベル5000」ほどではないが聴覚も鋭い。 

 それ故、常人には聞こえない音に反応したのだ。 

 

「…………?」 

 

 疑問に思ったスズが、音の聞こえた方向へ足を向ける。近づくにつれ、徐々にその音が大きくなっていく。 

 

 スズが音源までたどり着くと──

 

「ここは……」

 

 ──そこは防音処理を施した壁に、分厚い扉が並ぶ一角。 

 

 彼女もその存在は聞いていた、『カラオケボックス』と呼ばれる場所だった。 

 

『すたんだっぷ♪すたんだっぷ♪すたんだっぷ♪打ち込〜むのは〜♪お〜らいなう♪お〜らいなう♪お〜らいなう♪誇り〜のばれ〜っと♪』 

 

 その一室から、ナズナの少し音程の外れた歌声が聞こえてきた。 

 最近ユメと一緒にカラオケに行くことが増えたという話を聞いてるので、恐らく彼女も中にいるのだろうとスズは当たりをつける。 

 

「………………」 

 

 スズはその一角から、思わず2〜3歩後ずさる。 

 ナズナがどうこうではなく、その施設の発案者である中年男に苦手意識があるためだ。 

 

 件の中年男──東島(とうじま)丹三郎(たんざぶろう)は、最初に顕現された時にスズの魔力で放った数百発もの魔弾──それも普通のダメージだけではなく、種々様々なバッドステータスを与えるという凶悪極まる代物だ──を喰らい続けていたにも関わらず、意に介さずそのままナズナと互角に戦い続けていた。 

 そのため、スズは丹三郎に会う度に内心ビビりまくっている。 

 

 スズ自身、丹三郎に対して何ら思う所は無いし、彼自身もスズに対して気さくに接している。 

 しかし最初の模擬戦では、カオスに対しオーバーキルとも言えるパンチ一撃で吹っ飛ばし、続けてナズナとの模擬戦では、スズの魔弾を喰らい続けながら訓練場を派手に破壊していた。 

 

 その事もあって、どうしても腰が引けてしまうのだ。 

 

『ぶれいきゅぅだうん♪ぶれいきゅぅだうん♪ぶれいきゅぅだうん♪拳〜放つ〜♪聖〜なる♪び〜じょん♪すた〜んぷら〜う♪』 

 

 だが純粋に楽しそうに歌うナズナの声に、スズは好奇心を抑えきれず受付カウンターの方へフラフラと歩いていくのであった。 

 

 


 

 

「…………ふぅ」 

 

 ドサッという音と共に、ソファーが軋む。とりあえず1時間のコースを選択し、最近設置されたドリンクバーで入れてきたアイスティーを片手に、スズはソファーへ腰を下ろした。 

 

「……ナズナ様の楽しそうな歌声に釣られて、思わず入っちゃったけど……私、そんなに歌知らないし……どうしよう?」 

 

 部屋の中に人がおらず声を聞かれる心配も無いため、スズは思わずそうこぼしていた。 

 

 ただ、この『カラオケ』からは放っておいても自動で曲が流れる仕組みらしく、退屈はしなさそうだ。 

 なので「このまま時間まで、ここでお茶をしておこうかな?」と考えていると── 

 

 ♬ ♪♪♪ ♪♪ ♪♪♪♪ ♬ ♪♪ ♬ ♪♪ ♬ ♪♪♪♪ 

 

 ──ちょうどスピーカーから、どこか切なくも心に染み入るような、特徴的なピアノの旋律が聞こえ始めた。 

 

 スズは思わずカラオケの液晶モニターに目を向けると、その曲名とイメージ映像が流れ始める。 

 

 モニターに表示された曲名はこれである。 

 

 いとしき日々よ 

 

 その曲名とピアノの旋律に、スズは思わず食い入るようにモニターを眺めた。 

 

 た〜と〜え〜♪時がうつろ〜うとも〜♪ 

 縫い合わせた絆は決して〜♪ 

 ほど〜け〜な〜い〜♪ 

 

 ああ〜♪あなたの声〜は〜♪ 

 忘れれば忘れゆくほどに〜♪ 

 焼き〜つ〜い〜てた〜♪ 

 

(この歌詞……まるで、私のライト様への……)

 

 その声はどうやら男性のものらしいが、その繊細な歌声とそれに合わせたピアノの旋律、そしてモニターに映された歌詞にスズは心を奪われていた。 

 

 あなたの手を〜♪強く握ることも〜♪ 

 あなたを〜♪抱きしめることも〜♪ 

 

 許されない〜♪運命(さだめ)だと知〜ってても〜♪ 

 

 その笑〜顔に〜♪その涙〜に〜♪ 

 そのひ〜たむきな〜想いに〜♪ 

 触れたか〜った〜♪ 

 

 ここ〜ろ〜か〜ら〜♪ 

 

「ッ!?」

 

 その歌詞が流れた瞬間、スズは心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。まるで彼女の心情を、そのまま歌にしたかのような歌詞だったからだ。 

 

 い〜とし〜き〜日々よ〜♪ 

 サヨナラ〜は〜言わない〜で〜♪ 

 

 あなた〜に〜会〜い〜た〜くて♪ 

 もう一〜度〜会〜い〜た〜くて♪ 

 届く〜ま〜で〜叫び続け〜る〜♪ 

 

 わ〜すれ〜はし〜ない〜♪ 

 この体が〜消えて〜も〜♪ 

 

 あなた〜に〜吹く風よ♪ 

 あなた〜に〜咲く花よ♪ 

 あなた〜と〜追いかけた明日〜よ〜♪ 

 また会〜い〜た〜くて〜♪ 

 

 スズは思わず、その曲のサビまで全て聞き入っていた。 

 

 そして、そのまま間奏を挟み曲が続く。 

 

 い〜ま〜も〜♪胸に残る〜よ〜♪ 

 世界で一番美しい〜♪夕〜日〜が〜♪ 

 

 ああ〜♪その瞳に〜は〜♪ 

 不安より大きな希望が〜♪ 

 かが〜や〜い〜てた〜♪ 

 

「………………」

 

 今度の歌詞は、「スズの不安など、ライトの笑顔や彼の自身への感謝の言葉に比べればちっぽけなものだ」と言っているように、スズの心へ響いていた。 

 

 ただ近くで〜♪見つめ合えるだけで〜♪ 

 幸せ〜のす〜べ〜て〜を知〜った〜♪ 

 

 道の先に〜悲しみが待〜ってても〜♪ 

 

 そのね〜がいを〜♪そのこ〜とばを〜♪ 

 そのひ〜とすじ〜の光を〜♪ 

 守りたか〜った〜♪ 

 

 いつ〜ま〜で〜も〜〜〜おぉぉ〜〜〜♪ 

 

「………………ッ?」

 

 そこまで聞き入ったその時、スズの頬に一筋の光が流れていた。 

 

「これは……涙?私、泣いているの?」 

 

 スズは自身の頬に触れ、その冷たく濡れた感触に驚き、そう呟いた。 

 

 そして彼女は気が付けばデンモクを操作し、終了と同時に同じ曲をリピート再生するよう予約していた。 

 

 い〜とし〜き〜日々よ〜♪ 

 サヨナラ〜は〜言わない〜で〜♪ 

 

 あなた〜に〜会〜い〜た〜くて♪ 

 もう一〜度〜会〜い〜た〜くて♪ 

 届く〜ま〜で〜叫び続け〜る〜♪ 

 

 わ〜すれ〜はし〜ない〜♪ 

 この体が〜消えて〜も〜♪ 

 

 あなた〜に〜吹く風よ♪ 

 あなた〜に〜咲く花よ♪ 

 あなた〜と〜追いかけた明日〜よ〜♪ 

 また会〜い〜た〜くて〜♪ 

 

 いとし〜き〜日〜々よ〜〜〜♪ 

 いまあ〜る〜き〜出そう〜〜〜♪ 

 

 Woo〜〜〜♪Hoo〜〜〜♪Woo〜〜〜♪ 

 

 そして3度目のリピート再生が終了する直前、スズは思わずデンモクを操作していた。 

 だが、それは歌唱映像のリピート予約ではない。 

 

「………………」 

 

 スズは恐る恐る、マイクへ手を伸ばす。 

 そのまま指先で、その冷たい感触をゆっくりと確かめる。 

 

 そして、意を決してマイクを握りしめた。 

 

 スウゥゥゥ……ハアァァァ…… 

 

 それからスズは、マイクスタンドの前でゆっくりと深呼吸。 

 

 その後ほどなく曲のイントロが流れ始めた。 

 

 


 

 

 後日── 

 

『オイオイ相棒、一体ドウイウ風ノ吹キ回シダ?』 

 

 出前システムが導入され始め、活気に満ちあふれるカラオケボックス。 

 そこに3時間コースで部屋を取ったスズと、その相方であるマスケット銃型インテリジェンスウェポンのロックの姿があった。 

 

『チョット前マデ、歌ナンカニ興味ハ無カッタダロ?シカモココハ、アノおっさんガ発案シタ施設ジャナイカ?』

 

「………………」

 

 スズはロックの質問に答える事なく、手配した部屋へ入って行く。 

 

『オ前サンモ、アノおっさんハ苦手ダッタハズダロ?何ダッテ、ココニ足ヲ運ブ気二ナッタンダ?』

 

 そしてロックをソファーへ立てかけ、自らも腰を下ろしてデンモクを操作し始める。 

 

「………………」 

 

 デンモクの操作を終えたスズが、マイクを手に歌詞表示モニターの前に立った。その表情は、まるでこれから真剣勝負に挑もうとするかのようであった。 

 

(…………一体、相棒にドウイウ心境ノ変化ガアッタンダ?アンナ顔ハ、初メテ見ルゾ?) 

 

 ロックの疑問を他所にイントロが流れ、スズは歌い始めた。

 

 た〜と〜え〜♪時がうつろ〜うとも〜♪ 

 縫い合わせた絆は決して〜♪ 

 ほど〜け〜な〜い〜♪ 

 

 ああ〜♪あなたの声〜は〜♪ 

 忘れれば忘れゆくほどに〜♪ 

 焼き〜つ〜い〜てた〜♪ 

 

 




 
 
 以上、短編2.5話のスズと『いとしき日々よ』の出会いのエピソードでした! 
 
 読者の皆様方、お楽しみいただけましたでしょうか? 
 
 このエピソードで、スズの可愛らしさや魅力が伝わったのならば作者(わたし)としても嬉しい限りです! 
 何せ、原作での彼女はライトに一途なのに、ヘンタイに絡まれる事がやたらと多い不憫な娘ですので(笑)。 
 
 それでは最後にオマケエピソードを一つお届けします。 
 4コマ漫画的なノリでお楽しみください。 
 
 


 
 
 オマケ 
 
 
 ダララララ……
 
 
 カラオケを採点モードにして『いとしき日々よ』を歌い終えたスズ。 
 ドラムロールが響く中、彼女は歌い終えた余韻と共に画面を注視していた。 
 
 
 ジャーン♪ 
 
 
 
 0点 
 
 
 
「ッ!?」 
 
 スズは「そんなに、自分は音痴だったのか?」と肩を落とす。 
 
 自分としては会心の歌声のつもりだったので、余計に彼女は落ち込んでいた。 
 
 だが、何気なしにモニターを見てみると── 
 
 
『歌が全く聞こえません。マイクのスイッチぐらい入れましょう』 
 
 
 そのメッセージを見たスズは顔を青ざめさせ、恐る恐る手元のマイクを見てみると── 
 
「ッ!?」 
 
 指摘された通り、マイクのスイッチが『OFF』のままだった。 
 
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」 
 
 その事に気付いたスズは耳まで真っ赤になり、両手で顔を覆ってその場で蹲るのであった。 
 
 


 
 
 以上です。 
 お楽しみいただけましたか? 
 
 
 ご意見、ご感想をお待ちしております。 
 
 
 
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