夜が明けると意識が目覚める。コアの機能で正確に時間経過がわかるので便利だ。水晶発振器のような機能まであるのかね、俺のコアには…。
土からでて新しく製造した身体に乗り込む。動きを確かめると設計通り以前よりもなめらかに動かせた。いい感じだ。これならあの鹿とも余裕で渡り合えるだろう。
俺は目の前にそびえる山に向かって歩み出した。
山を登っている途中でコアを
1匹ずつ戦おうとしても途中でもう1匹が駆けつけてくる未来しか見えない。それならば最初から二匹同時に相手取った方が不測の事態は起きにくいと考える。前回の戦いで向こうもこちらを警戒しているだろう。二匹を引き離す術は思いつかないしな。
しばらく山を登るとまた波動を発信をする。
これを定期的に繰り返す。やがて前回戦った草地にたどり着いた。思った通り
さて、戦闘開始だ…
何をする気だ…?
おそらく連携攻撃をしてくる気だろう。警戒を強めいつでも動けるように構えを取る。すると鹿たちに動きがあった。
あぶな!
あわてて身体をひねって交わす。有効射程距離外にいたはずだが十分な威力を持って通り過ぎ後ろの岩にひびを入れる。着弾地点の周辺に電撃がまき散らされる。
射程も威力も前回見たときより上がっている。発射までのスピードも速い。おまけに着弾箇所から離れなければ追撃の放電を喰らう。
次弾がすぐに飛んでくる。だが、直線的な攻撃だ。来るとわかっていれば
しかし、次々と絶え間なく雷弾が飛んでくる。身をかがめ、
近づけない…あれを使うか…
俺は
タイミングをはかり発射後の硬直を狙って手のひらから触手を伸ばした。可能な限り細く、速く伸ばすことに集中する。視認しがたい速度で一直線に伸びていき、触手の先端にある牙ナイフが
照準を失い、雷弾は止む。そして、牝鹿は目の再生を始める。
ウサギに
この隙にたたみかけたいところだが
判断が速い…
追撃をする間もなく
何だ?と思う間もなく角から稲妻を光らせて首を
その距離からか⁉
届くはずがないと思いつつも俺の勘は警鐘を鳴らしていた。
予想以上の射程距離と威力だ。見れば
雷に含まれる
しかし、この体は主に土でできているから焼けて固まったとしても交換すれば簡単に
亜空間から“銀翅”を取りだし、前回の
十分に魔力を込めた一撃…
首を切り落とせるかと思った。
だがコイツ、角を腕に押し当てて勢いを殺してきた。逆に迎え撃つように首を
仕切り直しと出血を狙い亜空間に刀を仕舞う。
させるかっ!
とどめを刺そうと突きを放とうとする。だが、殺気を感じて動きを止めると体を捻った。
直後に雷弾が鎧をかすめていく。
チッ!
俺は心の中で舌打ちして
その間に
雷弾を
牝鹿は魔力を集中させ即座に雷弾を放ってきた。
俺は軌道を読み射線から身体をずらしてそのまま接近…しかし、雷弾は来なかった。
雷弾は角にとどまったまま槍のように伸び、ブレードを形成する。
そんなことがっ!?
高エネルギーが集束したそれは鎧も骨も丸ごと切り裂けるポテンシャルを持っているだろう。
距離をとって躱すか? いや、そうすれば
俺はさらに勢いを増して
俺は左手に込める魔力を増大させ、自身に迫るブレードに向かって手のひらを突き出す。ブレードに
その瞬間、右手に出した“銀翅”を
その
刃に心臓の
たしかな手応えを感じ刀を亜空間にしまうと胸に開いた穴から血液が噴き出す。牝鹿は力を失い地面に倒れ伏した。あと数分もたたないうちに絶命するだろう。
強烈な殺気を感じて後ろに跳び
吹き飛んだ左腕を中心に土で修復して心を落ち着ける。次で終わりにするつもりだ。
牡鹿はありったけの雷撃を放出しながらこちらに迫る。
大きく横によける方が無難…そう考えるが正面からいく。こちらも接近しながら全身の魔力を極限まで高めていく。
雷撃が身体に打ち付けられるが当たる瞬間にその部分を魔力で固め
間合いに入った瞬間、呼び出した“大白鬼”を上段の構えから真っ直ぐに振り下ろす。
切っ先は牡鹿の眉間に吸い込まれ頭部を両断、勢いそのままに地面にめり込む。
力を失った牡鹿の身体は勢いを弱めつつも前進してきて俺と正面から衝突した。
俺は振り抜いた姿勢のまま一緒に後退していく。
俺の体にもたれかかった牡鹿から完全に力が失われると刀をしまい
戦闘が終わると俺は二匹の
とくに人間…
あの人達絶対にまだ探しているだろうな…
見つかったらまた集団で囲まれてボコられるだろう。そんなことはさせない。とりあえず海や平原とは反対側へ向かう。
向かう方角はなにやら
山を下りた
魔力回復をしつつ戦力を整えることにしよう…
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(別視点)
(これは誰かが戦っている? 中層方面だな )
戦いの魔力反応を感じたケイルはリッカに声をかける。
「リッカ。今の魔力波を感じたか? 」
「いいや~、私は感じなかったよ 」
リッカの答えを聞いて判断に迷う。しかし、再び魔力反応を感じる。今度のは先ほどより大きい。戦闘が過熱しているのか徐々に反応が大きくなってくる。
「リッカ、セッカ。間違いない…信号笛を吹くぞ 」
リッカとセッカにはあまりはっきりとは感じられなかったがケイルには確信があるようなので二人とも
ケイルが魔力を息に込めて信号笛を吹くと音が鳴る代わりに人間の魔力波動を増幅させて発信した。距離があるとどこで発信されたかわからなくなるので一度拠点に戻り他の班との合流を考える。
吹き方によっては危険を知らせたり救難信号を送ることも可能だ。魔導具に分類されるが構造が単純で誰にでも
ケイルが発した信号により全員が拠点に戻ってきた。話し合いにより中層の近くに行くならば余裕を持っていきたいということで次の日の夜明けを待って出発することに決める。大人数で移動すれば他の魔物に襲われにくくなるだろう。
ケイルが戦闘の魔力波動を感じた場所からしばらく中層に向かって進んだ後、簡易拠点を設営する。その後、分散して捜索しているとケイルの班が山の
一見、人間の足跡に見えるそれは間違いなく対象のものだとわかる。それは確実に魔境の奥に向かって移動していた。
しかし、これ以上の深入りは危険を伴う。敵はあれだけではない。中層の魔物を避けながら追うのは危険が大きかった。そして、戦闘の素人であるテセムルは連れて行けない。ここが
ただ、ギルドへの報告書にはもう少し情報が欲しい。そこでケイルが単独でもう少し追跡することとなった。ケイルひとりなら魔物を避けながら追跡するのも容易だ。ケイルは山を登っていく。
足跡を追跡しながら山を登っていくと途中で、岩に囲まれた広い草地にでた。一目で戦闘はここで行われたということがわかる。草が千切れ地面が
(あの個体が戦闘を行ったのは間違いない。相手はトーラ・セルブの雌雄二体 )
ケイルは再び血痕を調べる。
(これだけの量の出血ならば勝ったのはあの純魔のほうか。しかしあの個体の強さでは二匹相手に勝てるとは思えん )
辺りを見回して考え込む。
(それに死体はどこに行った? まさか純魔が死体を食ったのか? ありえんない…だが他の魔物がトーラ・セルブの縄張りにそうそう入ってくるとも思えない )
考えてもわからないことが増えるばかり。いったんこの場は置いといて追跡を再開する。足跡を追っていくと山の反対側にでて斜面を下っていったようだ。苦戦しつつも反対側の
周囲を探索すると対象の足跡は魔境深部の方に向かっている。これ以上の追跡は無理だと諦めて来た道を引き返す。
仲間と合流するとケイルは拠点に引き返しながらことの子細を話すと五人全員が追跡の打ち切りに同意した。
この後はテムシンを村に返し町まで戻ってギルドに報告する。そうして依頼は完了する運びとなった。