機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第120話 ソース x 訪問

人が家に来るのか…

 

タイミング的には悪くなかったな。これからしばらくは家での作業が続く。セリアの使いがいつ来るかわからないが何とか接触出来るだろう。外出するときはドアに張り紙かなんかしておけばいい。

 

まずはガススプレッダーを改良しようか。これはこれで取っておいて新たに開発することにする。

 

細長いガスボンベを魔鉄で作成する。それに魔力操作によって開閉する栓を取り付ける。

 

シグンはこんな感じで制御していたな…

 

背負い水槽の左側面の形状を変化させてそれに合わせたアタッチメントを作り出してボンベに装着して固定する。とりあえずはこれでいいか。問題があればその都度改善していこう。

 

次はギルドに提出する報告書を書くとしようか。

 

極彩鳥の情報はそれなりに価値があるんじゃないだろうか? 色が変化する情報は俺が調べた限りでは無かった。個体数的にも難易度的にも目撃情報が少ないこともあるだろうが狩人がその情報を秘匿している可能性もある。

 

ギルドに卸すより専門の商人に直接卸すだろうしな。そうなれば報告書とかは書かないだろう。

 

羽根の色が変化する現象に対して俺なりの考察も書いておこう。

 

今回のことだけでは変化した色が元に戻るのかわからないが戻る可能性もある。強敵に遭遇したときにだけ変化するのか? そうであるならば繁殖期だけ色が変化する場合もあるな。

 

たまたまそうなっていた姿を見かけたのが目撃情報として上がっているのかも知れない。

 

変化後と変化前で同一個体だと認識されていないということもあるか? それならば案外個体数はいるんだろうか?

 

魔力変異がある以上極彩鳥と見做(みな)されるものが同一生物種であるとも限らないし、同一であってもそれぞれがまったく異なる形をしている事もあるかもしれない。

 

羽根の色が色とりどりで美しいと言うことしか共通点はないのか?

 

元に戻らないのであればあれ自体が不可逆な魔力変異と言うことで個体数は少ないということだろう。強者との戦いが切っ掛けになるならば似たような強さの鳥系の魔物に挑めば極彩鳥に変化するかも知れない。

 

結局、鳥系の魔物はそこまでいないしあそこまで強力だと気軽に挑戦するのも無理だから数を狩ってくるのは無理だな。希少価値が無くなることはないか。

 

報告書を書き終わる。

 

さて、たこ焼き作りの続きでもやるか…

 

前回のはたこ焼き本体を作っただけだ。たこ焼きというか粉物と言えばソース。ソースがなければ画竜点睛を欠く。

 

ソースを作ることにしよう…

 

…とは言えソースを作ったことはない。作り方は知らない。

 

頼みになるのは舌が覚えている味となんとなしに見た成分表示、その断片しかない。

 

たしかいろんな野菜とか果物が入っていたはず。すりつぶして加熱すればいいんだろうか? 黒っぽい色は焦がしていけば付くのか? カラメル色素とか書いてあったような気もする。

 

とりあえず材料を買いに行くか…

 

そのためにある食材を買うために絵を描いておこう。

 

確かデーツと言ったな。ナツメヤシの実を乾燥させたものだったか…

 

ナツメヤシがどういう植物か詳しくは知らないがヤシと付くならば椰子っぽい絵を描いて店員に見せればそれっぽい実を紹介してくれるかも知れない。

 

いくつか絵を描く。ついでにいつ頃までに戻るか書いた手紙を書いて封筒に入れる。封筒にはセリア当てであると書いた。

 

これで留守中にセリアの使いが来ても出直すかどこかで時間を潰してまた来るだろう。ドアの隙間に挟んで買い物に行く。

 

八百屋でにんじんやタマネギ、セロリなどの香味野菜を購入すると次は果物屋にいく。

 

「すみません。ちょっといいですか? 」

「はい? なんでしょうか? 」

「これに似た植物の実を探しているんですが… 」

 

店員に書いてきた絵を見せて聞いてみる。

 

「こんな感じの丸っこくて甘い実を付ける植物なんです。似たようなものが有れば試してみたいんですがありますか? 」

 

店員は俺の示す絵を見ながら考えるそぶりを見せる。

 

「そうですねぇ…… 探しているものかどうかわかりませんがラカンが近いかも知れないですね 」

 

脳裏に引っかかるものが有ったようだ。対象のものを持ってきてくれる。

 

それは毒々しいまでに赤色が鮮やかな実だった。大きさはピンポン球ぐらいでなおかつそのぐらい丸い。色味も相まって作り物のように見える。

 

食べて大丈夫なのか、これ?

 

了承を得て、手に取って香りを嗅いでみると甘くて濃厚な香りがする。なるほど期待が持てる。毒があったとしてもこの身体は平気だし子供に食べさせるなとか言ってこないあたり毒は無いのだろう。

 

「これを乾燥させて食べることはありますか? 」

「乾燥させて食べるのは聞いたことがないですけど乾燥させてもいけると思いますよ。多分、生の方が香りがよくて柔らかいですからもったいないですけどね。けっこう値段がしますから 」

 

値段を聞いてみると一個で800エスクぐらいする。確かに高いな。

 

何でも帝国の南部あたりで栽培されているものらしい。高速道路を使って運ばれてくるが温度管理も行っていてコストもかかる。高速は無料で関税もかからないがその分の上乗せは馬鹿にならないらしい。

 

生の方が好まれるならしょうがないか。乾燥したほうが運びやすいと思うのだが…

 

あるだけ全部買う。他には桃、りんご、梨などを買って帰宅した。

 

使いが来たかどうか確認するがドアに挟んだ手紙はそのまま残っている。今日は来ないのかも知れないな。それはそれで作業に集中出来る。

 

買ってきた香味野菜と果物を皮を剥いたり種を取ってからすりおろして鍋の中に入れて加熱していく。

 

その間にラカンをどうするか考えよう。

 

試しに一つ食べてみる。皮を剥いてかぶりつく。歯を使って中心にある大きめの種から果肉をこそぎ取るように剥がして食べていく。

 

濃厚な甘さだ。これなら上手いこと焦がしていけばコクを出せる気がする。

 

乾燥させてみるか。さらに甘さを引き出せるような気がする。

 

水術を使って果肉の中の水分を魔力で支配すると徐々に発散させていく。本当は天日干しの方がいいかもしれないが上手く干す技術は無いし時間が惜しい。

 

乾燥させ終わるとしなしなになる。皮を剥いて種を取りすりつぶして鍋の中に加える。かき混ぜて鍋でさらに過熱してじっくりと水分を飛ばしていく。

 

だが少しじれったいな…

 

水術を使用して蒸発速度を上げてみる。蒸気が部屋にこもってくるので窓を開けて逃がす。かき混ぜるのも水術で行い鍋の中を満遍なく、ぐるぐる回していく。

 

熱変換も行いメイラード反応を促していこうか…

いい魔術の練習になるな…

 

それなりに粘度が上がってきたところでちょっと味見してみた。

 

濃厚な甘味とうまみとコク、ほどよい酸味と苦みを感じる。分量は適当だったが結構上手くいったな。さらにすりおろしたリンゴと梨を加えて煮込み調整を行っていく。

 

塩味が足りないな…まあ入れていなかったから当然か…

 

あと舌に植物の繊維を感じる。水術と木術を使用してパルプを取り除く。

 

出来たソースの元を小分けにして塩を加えて塩味を整えていく。塩味は何とか整ったが何か足りない感じがする。

 

パンチが足りないというか何というか…

 

スパイスかな?

 

記憶の感じだとスパイシーな後味があったような気がする。

 

持っているスパイスをいろいろ試して行く。亜空間も使用して百回は優に超えて試してみるとなんとなく記憶に近い味に仕上がった。

 

もうこれでいいだろう…

 

地球とは使用する材料が異なる。

 

完全な正解がわからない以上はどこかで妥協するしかないか…

 

完成はしたが時刻は夕食時を完全に過ぎている。だが、夜食という時間でもないな。今日の所はカレーの残りを食べることにして、ソースは明日の昼に使うとしよう。

 

遅めの夕食を済ませると日課を熟して眠りに就いた。

 

翌朝、朝食を取ってから家の中でトレーニングや読書などをしつつセリアからの使いを待つ。

 

昼食の時間が近づいてきたのでいよいよ完全なたこ焼きの再現に取りかかった。

 

前回作ったたこ焼きはまだ亜空間の中に熱い状態で眠っているがそれを使ったのでは味気ない。最初から焼いていくことにする。

 

台所にたこ焼き器を設置し、前回と同じように出汁を取ってから小麦粉を溶いて生地を作る。タコやトッピングをボウルに用意して準備が整うと火を入れて油を引いてプレートを熱していく。

 

油の焼けるいい匂いがしてきた…

 

生地を入れてある程度火が通るとタコとトッピングを加えて加熱する。ピックで反転させて反対側を加熱した後、つつきながら回していく。熱を加えながらきれいな球状に成形していった。

 

二回目ともなると慣れたものだ。一回目より速くきれいに仕上げる事が出来ている気がする。

 

頃合いを見て油を掛けて表面をカリカリに仕上げてから皿に上げていき火を止める。

 

それにソースを掛けてたこ焼きが完成する運びとなった。

 

若干の違いはあるもののビジュアルはたこ焼きそのもの。惜しむらくは鰹節と青のりが無いことか。

 

似たようなものは用意出来るかもしれない。青のりの代わりに乾燥パセリとかな。だが見た目を寄せるだけでは味はイメージから遠のいてしまう。

 

…いや、試してみて案外悪くないというパターンもあるのか?

 

難しい問題だな…

 

それは置いといて味を確かめることにしよう。金属製の串で突き刺して口に入れる。ソースの味と香り、焼けた小麦と油の香りが口の中に広がっていく。

 

咀嚼していくとすべての味と香りが口の中で一体になっていく。

 

…たこ焼きだ 俺は今たこ焼きを食べている

 

地球のものともちろん違いは多々ある。だが、たこ焼きを食べているという実感がある。いろいろ試した甲斐があった。

 

泣くほどではないが確かな感動がそこにある。

 

こちら産のマヨネーズを付けて食べてみる。味にこってり感とまったり感、そして酸味が加わりクリーミーかつさっぱりと食べられる。

 

これもいいな…

 

だが、こちらにあるのは全卵のマヨネーズのようなんだよな。今度自分で卵黄だけを使用したマヨネーズを作ってみるか。

 

今後の発展を考えているとこちらに向かってくる大きめの魔力を感じた。よく知っている魔力だ。

 

本人が直接来るとはな…

 

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