機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第122話 調査隊 x 理力石

リオンに近づいて話しかける。話の内容はもちろんリオンが賢者だということについてだ。

 

「リオンが学長だとは知らなかったな。教えてくれていても良かったと思うが 」

「言ってなかったかな? まあ、聞かれていなかったしね 」

 

リオンはこちらの気も知らずに平然という。いや、気も知らずというのはどうだろう? なんとなく表情や言い方、魔力の感じからいたずらめいたものを感じる。

 

教えない方が面白そうぐらいには考えていたんじゃないだろうか? 俺の驚きはバレているみたいだ。

 

「ああ、聞いていなかったな 」

 

正確には聞いていなかったじゃなくて聞けなかったが正しい。聞いてしまったら、「賢者? 今度会わせるね 」などと言われかねない。噂をすれば影なんて言葉がある。

 

こちらから調べることを避けていた。それが裏目に出たか…

 

まあ、ネタが割れてしまえばなんてことはないか。賢者の影におびえることはもうしなくていい。

 

「リオンとレインが知り合いだったと聞いたときは驚かされたぞ 」

 

セリアが俺とリオンの会話に入ってくる。

 

「やはりセリアは知っていたようだな。騎士だしギルドと関係があるなら当然か 」

「そうでもないさ。この任務は王家と学院の共同で行われているもので私がリオンと知り合ったのは、ほんの二年ほど前になる。騎士団の仕事もあるからそこまで頻繁に接触していたわけでもない。お前の狩人としての活躍を詳細に知ったのはレザンとの戦いが終わった後だ 」

「リオンはいつ俺が任務に参加するって知ったんだ? 」

「僕も知ったのはつい最近だよ。三日前だったかな? セリアから調査隊の人員に目処が付いたという連絡を受けたのは…

 そこで隊員の名簿の中にレインの名前を見つけたときは驚いたよ 」

 

調査隊か…またどこかを調査するのか

 

嫌いではないが長い任務になりそうだ。おまけに何人もの人間と行動を共にすることになるのか。ぼろを出さないように気をつけなければならない。

 

「調査隊の人員に目処が付いたのはレインのお陰だ。まさかこんなに早く埋まるとは思っていなかった。お前が急激に成長した事で一人埋まった。そしてお前がいることでもう一人参加してもらえることになった。この場にいるリオンを除いた五人だ 」

 

この場の五人? リオンを除いて?

 

あらためて部屋の中を見回すと扉の真横、壁にもたれかかるようにして立っている人物がいた。部屋に入ってきた時から居たようだが…

 

入るときに扉の影に位置する形となるから見えなかった。それに加えて魔力をまったく感じなかったから気付けなかった。

 

セリアは気付いていたみたいだな。人数がわかっていたなら数えるか。

 

俺が特別鈍かったとは思いたくないな…

 

小柄な女性だった。身長は150センチメートルぐらいか。一言で全容を表すならば、黒い。

 

髪の色は黒いが獣人ではないようだ。獣人特有の耳のように見える毛髪はない。長く伸ばした髪をまとめてポニーテールにしている。瞳は大きくて眼光は鋭い、色は紫色で魔力変異が見て取れる。全身を黒色の服で覆いその上から黒い甲冑を纏っている。

 

じっとこちらを観察する様に見つめている。その隙のない佇まいは忍者みたいだなと思わせる。忍者にあったことはないけれど…

 

「彼女は採取ギルド所属の上級採取士だ。参加者にレインがいるから参加したそうだ。お前もなかなか隅に置けないな 」

 

セリアは冗談めかして言うが俺の方はピンときていない。会ったこともないしな。

 

どういう理由だろうか?

 

強いて上げるとするならばギルドに上げた報告書関連かな? リーンから受けた調査依頼と言う線もある。調査に行った場所は採取ギルドも確か関係していたな。

 

まあ、どちらもあまり決め手にはならないが…

 

視線を交わしたらおもむろにこちらに寄ってくる。暗い場所から光が差すところに出てくると髪の色が良くわかった。

 

単純な黒じゃなくて濃い紫色だな…

 

瞳の色と相まって統一感がある。やはり魔力変異なんだろう。

 

挨拶をしてみると同じように返ってくる。こちらに興味がある、ともすれば好意があるというのはあながち間違いではないのかも知れない。

 

あと三歩、と言った距離で向かい合うとお互い見つめ合ったまま動かない。

 

…なんか気まずい

 

なにか話題はないかなと思い、探してみるが見つからない。そもそもまだ自己紹介もしていない。こういう場合どちらからするんだろうか?

 

どうでもいい様なことを考えながら見下ろす視線を上下にさまよわせると何か引っかかるものが有った。

 

「? その鎧…」

 

「気がついた? これはあなたが倒した熊の素材から作っている 」

 

よくよく見ると加工はされているが俺が狩った熊のもので間違いない様だ。なんとなく覚えがある。

 

服もあの熊の毛が使われているのだろう。あの熊の毛は全体的に長めで細くてしなやかだった。丈夫ないい服になるはず。

 

「あれはなかなか厄介な魔物だった。苦労したな 」

 

あの後も苦労した…

 

「加工前の毛皮を見る機会があった。あれだけの魔物をあんなにきれいな状態で仕留めるのは難しい。あなたに興味が出てきた 」

 

表情も口調もあまり感情を示していないが、俺を見る目が心なしか輝いている様に思える。魔力波も感情の波をおぼろげだが伝えてくる。

 

「………そう……だな 」

 

俺の方はそんな言葉と態度に嫌な汗が噴き出そうになる。

 

申し訳ねぇなぁ…ずるをしちまったんだよ

 

亜空間で修復をしてしまったことが今更の様に重くのしかかってきた。

 

自分の中では決着を付けたはずなんだが…

 

あれは不幸な事故だった。まさかの事態だった。それに修繕したおかげでセリアは人材を確保出来たんだから誰も損はしていない。いいじゃないか。

 

…言い訳じみてるな、俺

 

我ながらダサい感じがする。終わったことなんだがなぁ。

 

「どうかした? 」

 

そんな俺の内心が現れていたのだろう。不審の問いかけがくる。

 

「戦いの軌跡を思い出していた 」

 

それっぽいことを言ってお茶を濁しておこう。真実はいつも言えない。

 

「それでは時間になった様なので自己紹介からやっていくか 」

 

いいタイミングでセリアが割って入ってくれる。

 

リオンから自己紹介が始まると騎士団関係者のセリア、レグルスと続き見知らぬ女性の自己紹介が始まる。入って来る前に感じた見知らぬ魔力の持ち主だ。騎士団の関係者らしく騎士の制服を着ている。

 

「私はユミリス・シス・イルドゼフレクスです。王都第一騎士団で衛生隊長を務めています。治癒術は任せてください。気軽にミリスと呼んでくださいね 」

 

優しそうな女性だ。身長は165センチメートルぐらいか。俺よりちょっと低いぐらい。茶色の髪を三つ編みにして頭に巻いている様な髪型をしている。レグルスと同じぐらいの魔力かな?

 

第一騎士団は精鋭揃いと聞く。おっとりしている感じだがかなり強いのかも知れない。

 

「次はレインの番だな 」

 

俺の紹介が終わると採取師の彼女の紹介となる。

 

「わたしは採取師のシア。よろしく 」

 

シアというのか…ずいぶんあっさりとした自己紹介だ。あまり自分のことは語らないタイプなのかも知れない。

 

そういえばさっきセリアは上級採取士と言っていたな。採取士の時点で凄腕のはずだが更に上級となるとどれほどのものなのか? 俺が気配を感じ取れなかったぐらいだしな。見た目通りの年齢ではないのかも知れない。

 

「では自己紹介も終わったところで、今回の任務についてリオンから説明をしてもらおうか 」

「それじゃあ説明させてもらうね 」

 

そう言うとリオンはポケットから金色の様な黄色の様な明るい光沢のある物体を取り出して皆から見える様に掲げる。

 

それは掌に収まるぐらいのサイズの菱形の結晶体だった。四角錐を二つ底面で会わせた様な形状だ。色の違いと角が立っている事を除けば俺《コア》に似ている。

 

…何か関係あるのか?

 

「これは帝国から貸与されているもので理力石というものなんだ。魔導具を作るとき、魔石に魔力回路を書き加えたり書き換えたりすることに使用される 」

 

魔力回路…

 

亜空間で分析が出来る俺しか気づいていないものと思っていたが、まさかその存在を知っていたとはな。

 

「僕はこれからの魔術研究に理力石は欠かせないものになると考えている。だけど理力石は帝国がすべてを管理していて帝国系諸国に貸与される数はそう多くはない

 研究を進めていくためにも出来るだけ数を用意したいけれど理力石をどのように作り出せるのか見当も付かない 」

 

俺も気になる。貸してくれないかな。亜空間で分析すれば複製も可能になるかも知れない。

 

「そんなものを帝国はどのようにして手に入れているのか? 独自の技術によって製造しているという可能性もあるしどこからか入手しているのかも知れない…

 いずれにしても帝国の成り立ちから考るならば旧文明の遺跡から製造法なり現物なりを得ている可能性が高い 」

 

…なんかきな臭い話になってきてないか? 聞いて大丈夫な話なんかね、これ?

 

「そこで我が国にある旧文明の遺跡を調査してみるという事になったんだ。遺跡の場所はほとんど知られていないんだけど一つだけ昔から知られているものがあった

 それがリューミオン渓谷にある遺跡…レインとリーンに調査してもらった場所だよ 」

 

リオンが俺の方を見るとみんなの注目が集まってくるのを気配で感じる。これはなにか言わないといけない雰囲気だな。

 

「調査したときは渓谷の内部までは調査出来なかった。入る前、渓谷の入り口手前で竜種に襲われたからだ 」

 

俺の言葉に場の緊張が高まるのを感じる。やはり魔境に関わるものにとって竜種は特別な感情を引き起こすものらしい。

 

「リオンの妹、シャーリーンの協力もあってなんとか逃げることが出来たが俺一人ではどうにもならなかっただろう 」

「ほう、賢者シャーリーンの魔術か。見てみたいものだな… 」

 

え!? リーンも賢者だったの? 賢者って一人だけじゃなかったのか…意外に賢者と呼ばれるような人物は多いのかもしれない。

 

そして、セリアは竜種よりリーンの魔術に興味があるみたいだな。竜種と戦って勝ったことがあるのか? 気負いの様なものは感じられない。むしろ余裕があるように感じられる。

 

勝算は十分にあるって事か…

 

このメンバーの戦力なら確かに十分通用するんだろうな。

 

この中でセリアとシアの実力は未知数ではある。セリアは魔力の感じから言って頭一つ二つ抜け出ている気がする。俺よりも強いとは思うけどどんなもんだろうな?          

 

シアは今ですらほとんど魔力を感じさせない。強さはまったくわからないが採取士と言うぐらいだから戦闘には直接関与しないかも知れない。サポート役と言った具合かな?

 

アタッカーは四人。囲むには人数が若干心許ないが一人一人の力はこの世界でも指折りだろう。なんとかなるか。

 

「遺跡までの道中も魔境の深化が進んでいて上級の魔物に出くわす可能性がある。確か上級上位と思われる存在に出くわしたそうだな? 」

「ああ、大きな緑色の熊の魔物だった。なんとか引きつけて撒くことが出来たが正面切って戦っていたら例え万全の状態でも危なかっただろう 」

 

勝てないとは言わない。実際に狩ったし。

 

俺の言葉に次いでセリアが後を拾う。

 

「そこでシアの力が重要になってくる。探索者の技術で魔物を寄せつけない様にして渓谷まで進んで行くことになる。シア、頼んだぞ 」

「それは任せていい。でも竜種には効かない。おそらく縄張りである渓谷を死守しようとするはず。戦いは避けられない 」

「聞いてのとおり、竜種との戦闘は避けられそうにない。各自そのつもりで任務に当たって欲しい 」

 

次いでリオンが話を始めた。

 

「危険なのは竜種だけじゃないよ。遺跡の中がどうなっているのか資料は存在しない。だけど間違いなくそれ以上の危険が待ち受けているはずだ。何か怪しいと感じたらすぐに引き返してくれてかまわない

 くれぐれも命を粗末にするような真似は控えて欲しい。国としては発展の可能性を模索したいと言う程度の試みなんだ。任務が失敗しても何がどうなると言うわけじゃない 」

 

リオンはセリアを真剣な眼差しで見つめながら言う。

 

何か引っかかるな…

 

「遺跡の中が危険というのはどういった根拠に基づいているんだ? 入ったことがないのに確信めいた物言いだったな。何か知っているのか? 」

「帝国が遺跡の調査を禁止にしているからだよ 」

 

……いいのか、それ……

 

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