機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第123話 訓練

「この国と帝国とは仲がいいんだろ? それで大丈夫なのか? 」

「禁止の理由は危険があるからと言うものだけなんだ。逆を言えば危険を受け入れれば調査してかまわないと言うことさ。この件で帝国との関係が拗《こじ》れることはないと思うよ 」

「そこまで仲がいいんだったか… 都合が良すぎるようにも思えるがリオンが言うならそうなんだろう 」

 

新参者の俺が心配することではないんだろうな。こちらに来て一年もたっていない。まだまだこの世界の歴史も世界情勢も十分につかめていないしな。

 

「帝国が危険を理由に禁止していると言うことは確実に遺跡がどういうものか知っていて警告を発しているんだと思う。それが根拠だよ 」

「しかし、それは表向きの理由で本当の理由は別にあるのではないだろうか? 」

 

正直に伝える理由はないんじゃないかな? 帝国のことは知らないが国家同士の遣り取りなんてうさんくさいものの様に思える。地球基準は良くないかも知れないが…

 

「理由を言いたくないのであれば兎に角禁止にすればいいからね。帝国が本気で強制すれば帝国系の国なら拒否するのは無理だよ 」

 

なるほど。そう言う関係性らしい。信頼があるのはけっこうなことだ。戦争になるようなことにならないのは何より…。

 

「危険の根拠については納得した。最善は尽くすが命までは賭けない。そのようにすればいいと言うことだな 」

「…そうだね…一番心配なのはレインだけど…」

 

あれ? 信頼されてない? …まあ、それはしょうがないか

 

「任務の目的や大まかな流れ、注意点は理解してもらったようだな。これから計画について詳しい説明をしていく 」

 

セリアが机の上に渓谷周辺の地図を広げると説明が始まる。

 

「こちらに来てこの地図を見てくれ。まずは…」

 

こうして遺跡の調査任務は一週間後に開始されることになった。

 

あと一週間か…

 

またアイツとやり合うことになると思うともっと強くなっておきたい。しかし、魔境で狩りをして実戦で鍛えていくには時間が足りないな…

 

日々のトレーニングを強化するか…さらにアイツとの戦いで使う魔術を集団戦を想定して開発する。

 

この二つは当然のものとしてもう一つぐらいは何かやっておきたい。

 

どこか近くの魔境の中で魔力訓練を行うことにしようか。家の中で本気でやってしまうとご近所の人たちが何かあったのかと騒ぎ立てかねない。

 

だが、近くの魔境と言っても他の狩人がいる場所でやると同じ事になりそうだ。表層の魔物では俺の魔力に驚いてパニックを起こすかも知れないな。そうなればギルドからも苦情が来てしまう。

 

やはり、いつもの拠点まで行くしかないか…

 

移動時間がもったいないがあそこ以上に勝手のわかるところはない。

 

~~~~~~~~~~~~~

 

翌日、夜明け前に出発し昼頃に拠点に到着した。

 

移動速度が上がっているな。急げばもっと短縮出来るか…

 

だが、気を遣わないと魔物の移動を招きかねない。強くなるのも考え物だ。

 

さっさと昼食を済ませると森の奥に向けて走って行き一時間ほどのところで止まる。狩りをしない以上は魔物に気配を悟られて逃げられても痛くもかゆくもない。

 

俺以上に強い魔物なら襲いかかって来るかも知れないがその時は狩れそうなら狩るし狩れなそうなら逃げればいい。

 

さて、始めるか…

 

亜空間から今持っている最高等級、等級9の魔鉄の巨大な塊を取り出して地面に置くと、それにありったけの魔力を込めていく。

 

破壊するつもりで結合力を強めて圧縮した後、最大限の力で反発させる。思いきり反発させればバラバラになるかと思いきやビクともしなかった。

 

流石は高品質の魔鉄と言ったところか…

 

周辺からは完全に魔物の気配が遠ざかっている。トレーニング中に襲われる心配は減ったかな? まだ油断は出来ないが…

 

何度も繰り返すと玉の様な汗が噴き出してくる。疲労感もある。

 

このまま続けるか?

 

更に疲労していけば襲われる可能性が高くなりそうだが…

 

まあ、そのときはコアブーストを使うか戦闘体に換装して対処だ。今は鍛えるのが先決。

 

アイツのことを思い浮かべて集中しよう。すべてを賭けるつもりでなければ死ぬと思った方がいい。一人で戦ったとしても勝つぐらいの気迫が必要だ。

 

一度戦って負けている相手だと言うことを思い出せ。相手が強大すぎて負けた自覚が薄い。逃げることが出来ただけで御の字。どこかに勝てなくて当然だという気持ちがあるのかも知れない。

 

それじゃあダメだ…

 

こういったとき、次は絶対に何が何でも勝つという気概を持たなければ危うい。リスクは必要だ。甘えた気持ちに活を入れよう。

 

そのまま続けていきヘロヘロになったところで終了して拠点へと引き返す。

 

疲労した身体を引きずる様に歩き一時間かけて来た道を三倍の時間を掛けて戻った。途中で襲われるかと思ったがそんなこともなく拠点に到着する。

 

気配はあったんだけどな…

 

疲労して魔力が練れなくなってきたときから妙な気配を感じてはいた。拠点に戻っているときも俺の後を付いてきていたが、途中で諦めたのかいつの間にその気配は消えてしまった。

 

俺が何をやっていたのか理解出来なかったのかも知れない。好奇心から観察をしていただけなのか? 襲ってこなかったのは警戒をしていたからなのか?

 

いずれにしても頭が良くて慎重な個体だな。確実に仕留められると判断されたら襲いかかってくると考えられる。それなりに厄介な相手になるだろう。

 

毎回トレーニングの場所は大きく変えるとしよう。それで回避出来るかわからないが同じ場所で続けるよりマシだろう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

次の日から場所を変えて訓練をしていく。だが、気配はなくならなかった。

 

トレーニング中は俺が気配をダダ漏れにさせているから仕方がないとは言えちょっと気味が悪い。なんとなく同一個体な気がしている。

 

五日目の朝にトレーニングを行っていると、この日は早い段階から気配を感じる様になった。

 

俺の行動パターンを読まれているのか?

 

ただの偶然の可能性もあるがきな臭いものを感じる。とはいえトレーニングは続けていく。ここで立ち止まるわけにはいかない。

 

上手く魔力が練れなくなるぐらいまで続けてからこの日の訓練は終わりにした。

 

しかし、トレーニング中は襲われることはなかったが、どうにも今までと雰囲気が違うように思える。

 

これは仕掛けてくるな…

 

相手の挙動に注意を払いつつ拠点に戻るために足を進めていく。

 

回復する時間を与えないために早めに来るのか? それとも一番油断する瞬間を狙って拠点付近で来るのか?

 

警戒しながら歩いて行くと今までと同じように途中で気配が消える。

 

…外れたか?

 

今日は諦めたのだろうか? しかし、違和感がある。

 

気配の消え方がいつも通りに遠ざかったようでいて、意図的に消したようなわざとらしさがあったように思えた。

 

立ち止まって気配を探っていく。

 

だが、気配は感じられない。しかし、どうにも狙われている感じがする。

 

空気に含まれる魔力のせいなのかあたりには妙な緊迫感が漂っていた。

 

気配を消すのは上手いな。未だに感じ取れない。

 

だが、戦闘にはなるだろう。まだ魔力は十分に回復していないがこの状況は逆にチャンスになり得る。

 

魔力が少ない状態、魔力圧を高められない状態でうまく魔力を使うことが出来れば技術の向上に繋がるはず。

 

俺は気を落ち着けると空気中に魔力域を広げていく。細かな制御を行い出来るだけ薄く広く伸ばす。

 

圧を上げることが出来ないからゆっくりとした速度だ。

 

目を閉じて情報を遮断し、制御に集中していく。

 

亀の様な速度、わずかな魔力濃度、だが、それ故に相手にとっては察知することが難しくなる。

 

…………むっ

 

魔力域に敵が飛び込んできた。域内に別の魔力が入り込めば手に取る様にわかる。

 

俺に向かって一直線に接近してくる。細長い形状をした魔物のようだ。身体をくねらせる様に空中を飛びかかってきている。

 

それに向かって“守継”を抜き放つ。

 

―ガキィッ!

 

身体をひねりながら刀で打ち付け、相手の軌道を反らして躱す。切るつもりだったが刃は弾かれそういう形になった。

 

敵はステルスバイパーのようだ。前の個体よりも幾分か小さい。反対側に抜けてこちらの領域外で息を潜めている。

 

出鼻をくじかれて警戒を強めたようだが逃げることはしない様だ。こちらの今の状態では有効な攻撃は出来ないと踏んでいるのかも知れない。

 

初撃は向こうも察知されないため魔力を込めていなかった。毒の牙だけで倒せると考えていたのだろう。それはおそらく正しい。

 

さて、初撃は躱すことが出来たが消耗した今の俺に有効な攻撃は難しい。

 

今の魔力では“守継”に魔力を通すことも出来なかった。魔力無しでは両断はおろか鱗一枚切ることも無理だろう。

 

どうするか?

 

少ない魔力でも一瞬だけ魔力圧を高めることができれば刀に魔力を通すことができるかもしれない。

 

その一撃にかけてみるか…

 

腹を決めると刀を鞘に仕舞って拠点に向けて再び歩き出す。敵は去ったと思い込んだと相手に思わせたい。

 

歩きながらそれに会わせて魔力域を動かしていくのが難しい。

 

だが前より楽になっているな。制御が上手くなったのか薄い魔力域の方が動かしやすいのか?

 

平然を装って数分歩く。

 

内心では焦れている。

 

早く来い…

 

それでも目を閉じて領域を維持し相手の動きに注意を払う。

 

…むっ、…来るか?

 

なんとなくそう感じた瞬間、背後から高速で飛来してくる姿を捉える。

 

察知されたとしても躱されない様に空術で速度を上げてきたか。

 

魔力の動きで詳細を理解出来る。

 

真後ろから首に噛みつく軌道…

 

“守継”を鞘から抜きざまに振るう。

 

刃が当たる瞬間に魔力をその先端に集中させて切り裂く。

 

首と胴が分かれて前方に飛んでいくと地面を転がった。

 

噛みつかれる直前に身体を左横に倒す形で躱し、通り抜けざまに輪切りにしてやった。

 

何か掴めた気がするな…

 

少ない魔力でも使い方次第で威力を発揮させることができる。それがわかった瞬間だった。

 

魔力が十全に使える状態だと難しいかも知れないが、練習していけばより効果的に魔力を使うことが出来る様になるかも知れない。

 

納刀して相手の亡骸を亜空間に仕舞うと拠点に向かって再び歩き出す。

 

拠点に着いたときだいぶ昼を過ぎていたので昼食は軽く済ませて王都への帰還を目指す予定にする。

 

ステルスバイパーを梱包すると、コアの魔力を使用して魔石を回復させつつまずは村を目指していく。

 

ギルドの解体場について白蛇を渡すと極彩鳥に続きまた困った顔をされた。

 

どうやらこれは学会の方に回されるらしい。調べてみないと価値がわからない部分が多すぎると言うことだ。

 

まあ、金に困っている訳じゃないから問題はないけれど上級上位とかそれ以上を狩ることがメインになったら金が入ってこない期間が延々と続きそうな気がするな。

 

魔石代は催促すればすぐに入るそうだが気分的には全部ひっくるめて一括できた方がいい。待つことにしよう。

 

自宅に帰ってくると日はすっかり落ちてしまった。

 

適当に夕食を済ませると肉体を休ませるために早めに床についた。

 

 

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