何からすべきかと考えるがやはりイノシシの魔石が気になる。土に魔力を浸透させ扱う技術は俺よりも上だった。この魔石を解析すれば土の扱いが上達するかもしれない。
魔石の解析、情報の複製、取り込みが完了した。
魔力を吸収して自身の魔力量をチェック。
現在魔力/最大魔力 2142/4031
結構上がってきたな。ついでにイノシシの魔石もチェック。
現在魔力/最大魔力 0/2244
牡鹿より上か。魔力量がそのまま強さになるというわけではないだろうが一対一ならイノシシの方が上かな。二対一なら鹿が圧勝するだろうが。
今回、イノシシ相手に手こずったのは雷魔法が想定よりうまく使えていないことが一つの原因だったと思う。魔力効率が悪くて消耗が激しい。威力も思ったより出てない。二体分の情報量で魔力を制御しているはずなんだが…。
魔石による魔力制御だけではなく脳でも何らかの処理をしていると言うことか?
あの
考えてもしょうがないので次にいくとする。
今回は“大白鬼”は使用しなかった。イノシシの頭蓋骨をぶった切れるとは思えなかったからだ。今後、イノシシよりも堅いような相手と戦うときはこのままの性能では無用の長物になってしまう。
一度に
ある程度まで入るとそれ以上は
コアの機能を使用して構造計算してみる。全体的なシルエットは円錐形をゆがめたような、途中で根元に行くほどに太くなるような構造にする。かなり肉厚な刀身になった。
堅い部分と柔らかい部分を
戦闘のたびに思っていたが亜空間殺法は使い方によっては反則的な効果を発揮するだろう。
ああ、そうだ、新たな銘をつけることにしよう…
コンセプトは変更していないので一字変えの
後はボディの修復ぐらいか…
今回は損傷が少ない。あまり手間をかけずに修復は完了。やることもなくなったので意識を閉じて魔力の回復と次の日の夜明けを待つ。
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あれから数日、森の中をさまよっているが
向こうから襲ってくるとはいえ、あんまり生き物を殺しまくるのも気が引けるようになった。多少余裕が出てきたからか? コアの性能を上げる条件に必ずしも戦闘がかかわるわけでもないらしいし…
今は時間を潰すのが今の第一目標だ。戦闘は必要以上にはやらないようにしよう。
あれこれ考えながら進んでいくと川を発見する。川と言っても小川と言うような川よりもなお小さい弱々しい流れだ。地面が裂けたような場所にちょろちょろと流れている。
流れは途中から始まり途中で終わっている。ここらには地下水が流れているのだろうか。
流れの上流に向かって歩いて行ってみるか…
しばらく進んでいくと前方から変わった魔力波を感じた。慎重に進んでいくとなにやら妙なものが見える。
スライムというヤツだろうか。
粘性があるような水の固まりがふわふわぬたぬたと
この世界の生き物は今のところ前世の生き物とそこまで変わらない姿形をしている。ならば目の前の生き物はアメーバが魔石によって巨大化したものだろうか? それにしては大き過ぎるような気がしないでもないが…。
平べったい楕円形で中央に行くにつれ厚く盛り上がっているような形をしている。楕円の
距離を取って後に続く。
最初は動く様が面白かったり可愛かったりいつまでも見ていられると思っていた。しかし遅い。動きが遅いのだ。おまけに途中で何かを食べるとか行った行動をするわけでもなくひたすらにゆっくり移動するだけ。
このままついていくのも飽きたな。もう少し近づいて観察しよう…。
今の距離は20メートルぐらい。15メートル、10メートルと徐々に近づいていく。
近づけばその分、細かいところまではっきりと見える。中央の厚くなっているところの内部にうっすらと丸い結晶のようなものが見える。色は透明に近いのか周囲の体に溶け込んで結構見づらい。
ようく目を凝らすと結晶の中にキラキラと光のようなものが動きながら瞬いている。
きれいだな…
もう少し近づいてみるかと足を踏み出した時だ。ぐにっと柔らかいものを踏んだような感触があった。よく見ると透明なシート状のものが地面を覆うようにスライムから伸びている。
これがスライムの索敵方法なのだろうか? 透明シートはスライム本体に吸い込まれるように戻っていき威圧的な魔力が周囲に放出される。うかつだったか。戦闘は避けられそうにない。
スライムは球状に丸まった後、ホースぐらいの太さの触手を十本以上生やす。そのうち数本で体を支えて、こちらに向かって威嚇するように触手を放射状に広げた。
……なんかグロいな
先手は向こうからだった。十本以上ある触手を鞭のようにしならせてないでくる。
一発や二発ならたいしたことはないが何度も食らうとまずいか。それよりもやっかいなのは…
よけた触手が木の幹に当たるとそのまま巻き付いて締め上げた。めきめきばきばきと音を立てて幹は破片をまき散らしながら割れていき、やがて折れて倒れる。
巻き付かれたらただでは済まなそう。触手が木を締め上げている間は攻撃の手数が減るがほかにも触手はたくさんある。絶え間なく
ん? …触手……増えてる?
本体の方を確認すると何本かの触手が地面に刺さっている。徐々にその体は大きくなっているようだ。
地下水をくみ上げているのか?
このスライム、完全に水でできているらしい。水を魔力でまとめ上げて動かす。これだけの量の水となると魔力消費も多くなるはずだが大丈夫なのか?
なんて考えていると後ろから触手が迫ってくる気配を感じる。
回り込ませていた?
どうやらそれなりに知能があるようだ。前から来る触手を
俺を中心に囲むように4本。避けきれずに巻き付かれてしまう。他の触手も次々に巻き付こうと迫ってくる。
まずい…アレを使うか
俺は全身に雷の魔力をみなぎらせる。
―
鎧の至る所から雷撃が飛び周辺にある触手を分解し吹き飛ばす。威力は高いが燃費が悪い。かなりの魔力と引き換えにあたりを一掃し本体への射線が通る。
触手には触手とばかりに一直線に魔石に向かって手のひらから牙触手を伸ばす。予想より抵抗がなく水で構成された体を貫いていった。
先端のナイフが相手の魔石に当たる。
カシャンッ。そんな乾いた音を立てて魔石が砕け散った。
なにっ⁉
砕けるとは思わなかった。魔石はかなり堅い。“白剛鬼”で全力でたたいても砕ける自信はない。スライムの魔石は特殊なのか? と思っていたら砕けた魔石の破片は溶けてなくなった。
スライムの体はまだ維持されている。その透明な体の中に球状の魔石がいくつも浮き出てくる。
…ダミーってことね。面倒な相手だな
だがダミーを用意するってことは魔石を攻撃されるのが嫌だってことだ。普通の生き物とあまりにも違うのでどう倒せばいいのかわからなかったがどうやら魔石を攻撃するでいいらしい。それがわかっただけでも良しとしよう。
スライムは纏雷を警戒しているのか今は触手で攻撃をしてこない。あれは何回も使える魔法じゃないのでそれはそれで好都合だ。
しかしながら、スライムはこの見た目で結構な知能があり慎重さも持ち合わせているのではないだろうか。現にこちらの出方をうかがいながら戦術をねっているような気配がする。
にらみ合っているとまたスライムから動き出した。
また触手での攻撃…今度は一本だけ。しかし太さが段違いだ。直径50センチメートルぐらいか。ずっと地下水からくみ上げて溜めていたようだ。大質量で攻めるという魂胆らしい。
上段からの振り下ろしが迫ってくる。
ズズンッ!と地響きのような音を立てて地面が爆発する。食らえばかなりのダメージを受けるだろう。スピードもかなりのもの。だが単調な攻撃だ。横薙ぎにはらってくるが飛んで躱す。
躱しながらこちらも触手で魔石を狙うが魔石に当ててもパリンと砕け、また新しいダミーが生まれる。
これもなんとかしないとな…などと考えていると触手の動きが変化する。これまでの単調な動きから蛇がのたうつような変則的な動きに変わってきた。
こちらの動きを学習しているのか?
戦い方を試しているのか?
格段に
びたんびたんと地面や木に当たりながらそれでいて勢いを殺さずにこちらを捕えようとする。俺は木の間を
どこまで伸びるかわからないが魔力で制御している以上は連続性がなければならない。木を透過して追いかけてくるなんて細かな制御ができるとも思えない。
俺は追いつかれないことだけ気にしながら迂回するように移動して触手を生み出している根元に近づいていく。相変わらず地下水をくみ上げている様子が見える。
せっかくだ。土魔法を試してみるとしよう。イノシシの魔石から情報を吸い上げていろいろ出来るようになった。
今こそその時…
後ろを追いかける水の大触手を引き離すため急加速してぶっちぎる。スライムの根元部分に接近しつつ間合いを測る。十分に接近してから魔力を足の裏に込めて地面をどんと踏みしめた。
―
地中を土の魔力が走りスライムの本体に向かっていく。スライムの直下に到達すると周囲の地面が勢いよく盛り上がり爆発した。魔力を帯びた土はスライムの体と交わり水に込められた魔力構成を分解していく。
威力はそこまで高くないが水を魔力でまとめ上げて体を作っているなら効果は高いはず。俺の土の魔力が水に含まれる魔力構成を乱してただの水に戻す。スライムの体は水しぶきを上げて崩れ、ダミー魔石も溶けて消えていく。
本物の魔石はどこだと探す。
ないな…
巨大な水の触手が形を保ち未だにこちらを追いかけているのが背中越しに感じられた。どうやら魔石は触手内に移していたらしい。
このまま追いかけっこを続けるのも時間の無駄なので相手と正対する。再び足の裏に土の魔力を込めて踏みしめる。
―土隆壁!
水の蛇と化したスライムの正面に土の壁を出現させた。水蛇は土壁にぶち当たり壁は砕けるが蛇の頭の部分は魔力を帯びた土と交わりドロドロと崩れていく。
進行は止まり、水蛇はその場で鎌首を持ち上げて天をつくような体勢を取った。そして、頭の先端から巨大な水弾を放つ。
それを横に飛んで避ける。元いた場所に正確に当たった水弾は勢いよくはじけると地面をはじけさせ周囲に高圧の
その余波をくらい数メートル吹き飛ばされる。空中で回転して姿勢を整え、足から着地…着地の瞬間に地面に魔力を流して衝撃を吸収し次弾に備えた体勢をつくる。
くそっ!
想像以上の威力だ。大量の水にかなりの魔力を込めている。距離があっても威力を保てるようにしていた。おまけに高い位置から放たれる位置エネルギーも利用しているな。これは余裕を持って避けなければ体勢を崩されて一気に詰められる。
俺は間髪入れずに飛んでくる次弾を足に結構な魔力を込めて避けた。次々と放たれる水弾を土魔法を使い摩擦や足場の形状までいじって躱していく。
躱しながら相手へと接近を試みる。だが、近づくと地面に近い胴体部分から細い触手を伸ばして牽制してきた。容易に接近させてくれない。
躱し続けてはいるが水蛇は水弾をかなりの速さで繰り出している。このままでは一面がぬかるんで戦闘に支障が出てくるだろう。
水は地下からくみ出しているようでさっきから大量の水を消費しているはずなのに一向に大きさが変わらない。膨大な魔力を消費しているはずだが節約に走ったりもしないようだ。
その膨大な魔力の根源である魔石の場所を把握しなければ有効な攻撃はできない。
魔力視で探しているが水全体から高濃度の魔力が見えて判別は困難だった。
こいつの核はどこだ?