機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第133話 遺跡最奥部へ

一瞬のうちに体の交換が完了する。

 

機鋼式戦闘体レインメーカーがその姿を現した。

 

白銀の体は所々、血管のように銅線が走る。筋肉に当たる部分が剥き出しの人体模型のような姿だった。

 

頭だけが真っ白な(かぶと)を被っている。それは武士のような騎士のような、未来的な雰囲気も併せ持つなんとも言えない形状をしていた。

 

シュッ…

 

その奥で瞳孔や水晶体が調整され相手の姿を正確に捉える。

 

胸の中心には光を反射して深紅に輝くコアが収まっていた。

 

理力の動きを観測するために魔鉄製の(おお)いを外して剥き出しの状態にしている。

 

それはセリア達がコアの波動をはっきりと感じ取れることを意味する。後戻りをしないという覚悟の表れでもあったのかも知れない。

 

異様な気配を感じてシアとミリスは入り口に戻ってきていた。

 

その姿を見てすぐにはそれがレインだったものだと理解出来なかった。魔力波を感じ取れなくなったこともある。

 

それは目の前で見ていたセリアもレグルスも同じ事であった。

 

だが、現実としてレインが変化する瞬間を目撃し、レインの姿が他に存在しない事実からそう判断せざるを得なかった。

 

そして魔力波は感じ取れないものの感じられる力にはどことなく見知ったものがあるような気がしている。

 

姿形《すがたかたち》、そして、その力には異常なものが感じられる。しかし、何故か脅威を感じることはなかった。

 

レインであったものは人型とセリアの間に立ち塞がるように直立する。それ故に事の成り行きを冷静に見つめられているのかもしれない。

 

さらには、消えかかったセリアの命運が救われるのではないかという期待を抱いた。そうさせる何かが()()にはあった。

 

一方で、レインは人型を見つめながら冷静に分析をしていた。戦って勝利するために。

 

(修復はもうじき終わる…攻撃してこないのは修繕中は攻撃出来ないのではないな。俺という存在をどう判断すべきかわからないと言ったところ…ならば… )

 

「レグルス! セリアを退避させろ! 」

 

レインが叫ぶとセリアは状況を飲み込んだのか片足をついて入り口へ引き返そうとする。

 

レグルスは風のように全力で駆け寄るとひったくるようにセリアを背負ってミリスの元に連れて行き治療を受けさせた。

 

治療をしながらも全員が戦いの行く末を見つめ続ける。

 

レインの声を聞いたことで、その胸の内にはあれは間違いなくレインであるという確信が芽生えていた。

 

さて、セリアも避難したしコイツも修復が終わった。

 

そろそろやろうか?

 

“絶雷”を取り出して構える。

 

それでどうやら俺を敵と認識したらしい。敵意のようなものが感じられるようになった。

 

理力が高まりこちらに向かって収束するような動きを見せる。どうやらセリアにした攻撃と同種のものらしい。

 

知覚出来なかったわけだ…

 

だが今の俺にははっきりと見えている。

 

おせえよ!

 

雷閃刃(らいせんじん)

 

一瞬のうちに振り抜かれた刀身から太い雷撃が(ほとばし)り人型の胸部を打ち据える。衝撃で体勢を崩し後ろに下がった。

 

―連撃

 

瞬間的に斬撃を数十回ほど放ち、雷撃で全身を打ち据えていく。

 

衝撃が装甲の表面を砕いた。破片が宙に舞い散る。

 

唐突に霧散していた理力が人型を包んだ。修繕をするつもりなのだろう。だが、その隙は与えない。

 

…カシャ…

 

兜の口元を開くと衝撃波を放つ。

 

衝波砲射撃(ソニックブラスト)

 

魔力を収束させた震動波が相手の全身に叩きつけられる。媒質を伝わり内部まで通ると芯まで揺さぶっていく。

 

雷撃で作り出したひび割れがさらに広がる。衝撃で弾き飛ばして後ろの壁に背中から叩きつけた。

 

相手は理力で損壊をとどめようと機体を満たしていた。

 

修繕がなされるまで動くことは出来ないだろう。

 

十秒か、五秒か、あるいはほんの数秒か…

 

それで十分…

 

俺はとどめの一撃を放つ。

 

床を蹴り、大きく跳躍すると天井に足を付けバネを溜める。

 

雷凄一文字(らいせいいちもんじ)

 

亜空間から戦闘体のために作っておいた専用武器を取り出して握りしめた。刃渡り2メートルにも及ぶ総魔鉄作りの大刀(おおがたな)…そこに魔術を流し込んでいく。

 

白輝焦煌閃(はっきしょうこうせん)

 

―キィンッ…キンッ…

 

高温に熱せられた刀身が白く輝き甲高い音を立てていく。焼けた空気が揺らめいて空間を歪ませる。

 

これで終わりだ…

 

天井を蹴り重力加速度を共にしながら彗星のように落下する。白熱する刃を垂直に振り下ろした。

 

さしたる抵抗もなく頭から一直線に切断していく。刃は股間部から抜けていき床を切り裂いて止まる。

 

熱したナイフでバターを切るように縦に両断された人型はゆっくりと開いていくかのように左右に分かれて倒れていった。

 

硬質な音を大音響で奏でながら地に落ちる。粉々に砕け散ってそのまま動かなくなった。

 

しばらく再び動き出さないか待ってみる。同時に理力の動きをコアで観測してみるが反応はとくに見られなかった。

 

完全に機能停止したようだな…

 

勝利を確信して人間体に戻ると決める。

 

換装(チェンジ)

 

ふぅ…

 

人の肉体に戻ると一息つく。そこで背中に刺さる視線が気になってきた。

 

どうしたものか…?

何から話せば良いんだろうな?

そもそも今の俺をどんな風に見ているんだろうか?

まだ人類の範疇(はんちゅう)だといいな…

 

得体の知れない怪物って事は流石にないと思いたい。

 

獣人とか緑小人とかいるんだしそういう人もいるよねっていう風に考えてくれないかな。魔力変異なんて現象もあるし。

 

ギルゼルンが変化したみたいに人間も変化するとか…

 

…ないな

 

変異なんてレベルじゃないよな…

 

少なくともそういう風に見えていたはずだ。

 

いろいろ考えるが結局、他人が考えていることなんてわからない。どんな風に俺から話しかければ良いかまったく思いつかなかった。

 

迷ったあげく…

 

俺は…

 

 

 

 

 

 

先に進むことにした。

 

閉ざされている扉に近づいてみる。

 

鍵穴らしきものは見当たらない、暗証番号を入れるキーボードのような物も。電波キーのように信号を受け取って起動するタイプかも知れない。

 

そうであるならば理力によるものなんだろう。今の俺ならコアの能力で何とかなりそうな気がする。魔力は扱うことが出来た。理力もいけるだろう。

 

扉に手を当ててコアから力を流し込んでみる。なんらかの手応えのようなものを感じる。

 

おっ…これはいけるか…

 

反応があるならそれを解析して構造が理解出来る。

 

仕組みが把握出来てくると理力の再現を試す…出来たようだ。扉の中に仕込まれている経路に沿って流してみる。

 

カチッと言う手応えのような物をコアで感じると扉の素材全体に理力がどこからか供給されていることがわかった。

 

少し待っていると扉が理力で満たされて、中心からゆっくりと左右にスライドしていく。

 

果たして中に何があるんだろうか? 驚くべきものが有るならいいんだが…

 

それをセリア達に見て欲しい。

 

驚愕のあまり俺のことがうやむやにならないかな?

 

 

 

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