機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第134話 聖域 x 追及

扉が開いていくと中が暗闇で包まれているのがわかる。

 

とりあえず魔力域を空中に広げて危険がないか確認してみると危険はないように感じた。

 

感じられた空間内の様子は家具などの配置から生活スペースのように思える。えげつない罠を設置しているような雰囲気ではない。

 

完全に扉が開いて停止すると中に足を踏み出す。

 

それと同時に室内を明かりが照らし、内部の様子が浮かびあがった。

 

可視光で確認した光景はまさに談話室といった感じだ。四人がけのテーブルと椅子がけっこうな数並べられている。

 

入っていきなりこうなるのは少々不自然な感じがする。最初はエントランスというか受付というか…何もないような空間にするんじゃなかろうか?

 

まあ、旧文明に俺の常識が通用するのかわからんけど…

 

談話スペース?の奥にある扉を開けて次の部屋にいくと広くて長い廊下のような空間になっていた。壁にはいくつもの扉が奥まで整然と並んでいる。

 

一番手前の扉を開けて入ってみると奥に向かって通路が延びていた。その壁に普通サイズのドアがいくつも付いてる。通路の天井は二階建ての家より高い。

 

大きな空間を細かく仕切って部屋にしているみたいだ。

 

一番手前のドアを開けて中に入ってみるとそこは何とも生活感のある造りになっていた。リビングとダイニングとキッチンを一緒にしたような感じだ。既視感がある。地球でもよく見たような気がする。

 

ここで生活をしていたのか?

 

階段があったので上に行ってみるとベッドと思われる家具が置いてあった。枕に掛け布団も付いていてどう見てもベッドだ。

 

下のLDKもそうだが埃などは溜まっていなくて今も誰かが住んでいるように感じる。

 

古代人は進んだ文明を持ってはいても生活様式は今とあまり変わらないものを選択していたらしい。

 

ベッドの布団をめくってみる。

 

そこには死体…などは無く何もない。

 

めくった布団を元に戻して考える。

 

ここに住んでいた者達は何処に消えた?

 

施設はまだ生きている。だが、生きている人の気配は無い。ここを捨ててどこかへ行く理由はないようにも思える。

 

何かに追われてここを捨てることになったのか?

 

いや、あの人型、仮にゴーレムと呼ぼう。ゴーレムがあれば竜種にだって対抗することが可能だ。外に魔物がいたとしても土地の開拓すら出来そうな気がする。

 

水も食料もエネルギーも十分に確保できそうなんだがな…

 

まあ、考えたところで結論はでない。

 

探索していない場所もまだまだある…というかほとんど探索していないに等しい。

 

まずは考えるより先に情報を集める段階だ。

 

部屋の中には不自然なほど本などの文字が書かれたものが見当たらなかった。

 

電子機器のような情報デバイスを使っていたのか?

 

そのような物も見つからないが…

 

とりあえず一旦、住居から出る。

 

他の住居を探ろうかどうか考えながら通路のドアを見渡していくが、なんとなく似たような部屋が続いていくのだろうと思えた。

 

この区画をこのまま探っても目新しい物は出てこない気がする。

 

それよりも他の区画を大まかに見て回ってから探索に当たっての方針を決めていくことにしよう。

 

中央通路に戻ってきて次はどの区画にするか見回していくとやはり一番奥にある真正面の区画が気になった。

 

あの区画だけ正面にあるしな。なんだか特別感がある…

 

あそこにしようと決めて歩いて行くと途中で後ろから声をかけられる。

 

「レイン… 」

 

セリアだ。どことなく遠慮がちなその声に物理的なもの以上の距離を感じる。

 

足を止めて聞こえていることを示しつつも振り返ることはしない。

 

…マズいな。ちょっとだけ忘れてた

 

セリア達が遺跡に気を取られることを期待して先に進んだのに、実際、遺跡に気を取られていたのは俺の方で頼みのセリアは遺跡など眼中にない模様。

 

俺のことより先にそこの区画とか見ませんか? 結構面白いですよ?

 

なんて軽口が言えたら良いんだけどな…

 

足を止めて黙ったままの俺に業を煮やしたのかセリアが俺の背中に向かって続ける。

 

「レイン…お前は何者なんだ…? 」

 

何者…か…

 

自分でも良くわかっていないのになんて答えたら良いんだろうな?

 

かつて人であったもの…

人格を持った石…

ただの魔物…

 

ないな…今はまだ答えるべきじゃない気がする。

 

答えに迷っているとセリアから更に問いが投げられた。

 

「ここの扉を開けることが出来たのは何故だ? この遺跡の事を知っているのか? 」

 

…マズったな。そりゃ当然、疑問に思うよな

 

あり得ないような変身をしてゴーレムを圧倒したヤツが、さも当然のように理力で動く扉を開けて中に入っていった。

 

不審に思うのは当たり前か…

やっちまってるな…

 

当初期待していたのとはまったく逆の結果になっている。

 

選択を誤ったか…

いろいろいじったら偶然開きましたで通じないかな?

 

まあ無理だ…

 

これまた答えに窮するな…

 

俺が悪いんだけど

 

「まさかとは思うが古代人と言うわけではないだろうな? ここに来たのは偶然ではなかったという事か? 」

 

このまま黙っていると変な方向に行きそうだ。

 

軌道修正しなければ…

 

意を決して振り返りセリアと正面から向き合う。

 

目線をしっかりと合わせてこちらの誠意が伝わるようにしなければ。

 

…ああ、きついな

 

ともすれば目を逸らしてしまいそうになる自分を叱咤(しった)しつつなんとか答えていく。

 

「一つ目の質問についてだが… 」

 

セリアは俺が答えようとしているのを黙って聴いてくれるようだ。その程度の信頼関係は一応残っているらしい。

 

「俺が何者であるのかは俺にも良くわかっていない。古代人でないのは確かだ…信じられないかもしれないが

 詳しく話すことは可能なんだが…今は…心の準備が出来ていない…というか、何というか… 」

 

いかんな。なんだか弱気になってきてないか、俺?

 

相手の顔色をうかがってみるが表情に変化はない。

 

どう思っているんだろうな?

 

「…いずれ整理が付いたらしっかりと話すつもりだ。それまでは待っていて欲しい 」

 

ずいぶんと都合の良いことを言っているなと言う自覚はあるんだが今は時間が欲しい。俺の言葉に相変わらず反応を見せないのでそのまま続けていこう。

 

「二つ目の質問に対してだが…

 ここの扉を開けることが出来たのは俺の能力によるものだ。あいつを倒したときに見せたものと同じと思ってくれていい 」

 

能力と言ったときセリアの魔力にちょっとゆらぎがあった。警戒されているんだろうか?

 

それはしかたのないことだが危険視されるのは勘弁して欲しいな。

 

しかし、自分で言っておいてなんだが能力という表現はどうなんだろうな? (コア)の力についてもわからないことが未だに多い。

 

あの男のこともあるし果たして何処までが自分と言って良いのか?

 

「ここに来た大本(おおもと)はセリアに誘われたことが大きい。そこからここまでの戦いは俺の意思によるものだが、ここにいることは単なる偶然だ 」

 

ここに至るまでの軌跡を思い出してくれないだろうか? 偶然と必然が入り交じる奇縁とも言える関係性だ。

 

「…ああ、そうだった。お前を誘ったのは私だったな 」

「できれば知られたくなかったんだが、こうなったのも運命か…いや、単に俺が未熟だっただけだな 」

 

自嘲気味な笑みが自然と出てしまう。カッコつかねぇなぁ…

 

「まあ、俺に敵対の意思はない。今はそれで納めてくれると助かる。それと、このことは人に言わないでいてもらえるか? 言ったところで信じるやつはいないと思うがあまり騒ぎになるようなことは望んじゃいない 」

 

念を押すようにじっとセリアの目を見つめる。こちらを見つめ返すその表情は硬い。

 

ダメだったか? ダメだったとしてもこちらはそれで押し通すしかないんだが…

 

「……すまないな。私の方も…気持ちの整理が…付いていなくて、な… 時間…が必要なのは…、私も…同じのようだ 」

 

絞り出すように訥々(とつとつ)と話す様子からセリアもまたどうして良いかわかっていないようだ。それでも本音で向き合ってくれている。

 

そう思ったら少し気が軽くなった。

 

「このことについては他人に話すつもりはない。お前の言うとおり誰も信じないだろうしな…

 あの三人についても口止めをしておこう。レグルスとミリスについては騎士団員だし問題はないはずだ

 シアについてはわからない部分もあるが任務中に知り得たことを吹聴するような人物ではない 」

 

そこで一呼吸置いて言葉を続ける。

 

「待つことにするよ。お前から話してくれるのを 」

 

その言葉を聞いてほっと胸をなで下ろす。

 

どうやらこの場は一区切り付いたようだな。今後の対応次第で事態がどうとでもなりそうな気がするが…

 

まあ、今はこれでいいだろう

 

「それじゃあ俺は遺跡の探索を再開することにする。セリア達も見て回るといい。面白いものが見れるかもな。何か発見したら俺にも知らせてくれ…

 ああ、開かない扉とかあったら俺に知らせてくれればなんとかできるかも知れない。よろしくな 」

 

そう言ってきびすを返し目星を付けていた最奥の扉に向かって早歩きで接近していく。

 

「…は? ちょ、ちょっと待て! レイン! 」

 

後ろからセリアの止める声が聞こえるがとりあえず聞かないことにする。

 

よくよく考えたら俺がここを自由に調べられるのは今、このタイミングしかない。

 

学術隊が調査を開始すれば関係者以外は入ることが出来なくなるだろう。

 

リオンに言えば入ることは出来るのかもしれないが立入禁止とされる場所もできるだろうし何かしらの制限がかかることは明白。

 

魔石代のことがあるとは言えここはリオン以外も絡んでくる案件だ。無理を言うのも悪い。あまり強引には出られない。

 

今しかないんだよ、今…

 

閉ざされた扉の前に来る。その扉は入り口と同じように鍵とかは何もない平らな板のような構造をしている。

 

どうやら当たりのようだな…

 

手を当てて構造を解析していく。入り口と同じように理力による鍵になっているらしい。前より楽に空けることが出来た。

 

扉が開いて行くと中は暗闇が広がっている。

 

足を一歩踏み出すと明かりが灯り室内を薄暗く照らしていった。

 

光量はずいぶんと控えめだな…

これはいよいよ当たりを引いた感じ…

 

室内は1メートル四方ぐらいの扉がロッカールームのように並んでいる。ロッカールームと違うのは天井まで積み上げられているようになっているって所だろうか。

 

保管庫のような感じかな…

お宝がありそうな予感がする

 

少々わくわくが抑えられないまま室内を見回していくと全体の構造がわかってくる。

 

ロッカーが積み上げられている島はいくつもあり、一つの島の幅は4メートルぐらい。島と島の間は2メートルぐらいだ。

 

一つ当たりのロッカーがデカいな…

 

お宝を入れるとしてこんなに大きくする必要があるんだろうか?

 

嫌な予感がしてきた。

 

大きさ、形状から言って、まるで…

 

霊安室…

 

まあ、ドラマぐらいでしか見たことないんだけれど…

 

実際はどうかわからんね。空けて確認してみよう。

 

手近にあったロッカーの一つに手を当てて開くように作動させてみる。

 

ゆっくりと前方にせり出してくるので横に避けて完全に開くのを待った。

 

ロッカーは引き出しのような構造になっていて音もなくスライドしていく。機械的な構造はなく理力で支えられ稼働しているらしかった。

 

開ききって止まると全容があらわになる。石で出来たような平坦で厚い台の上に黒くて光沢のある立方体が横たわっている。

 

それをコンコンと叩いてみる。金属のような石のような感触だな。フロアを作っている素材と一緒のようだ。

 

この形は…まるで…

 

カツッ……カツッ……

 

その時、硬い足音が近づいてきた。

 

セリアだな…魔力でわかる。

 

足音も失った左足に義足のようなものを付けているからだろう。まだ馴れていないからか、どこかしらぎこちない。

 

即席の義足だろうからしょうがないか…床も整地術が効かないしな

 

「レイン… 置いていくのはひどいんじゃないか…? 」

 

ちょっと不機嫌そうに言う。気持ちはわかるんだが後にして欲しいな。今は取り込み中でね…

 

そう言ったらもっと怒るだろうけれど…

 

「すまないな。ここに興味がかき立てられてどうしようもないんだ 」

「? それはなんだ? 」

 

セリアも黒い箱に目が移ったようだ。まじまじと見つめる。

 

「まるで…棺だな… 」

 

俺と同じ感想に至ったようだ。

 

まあ、普通そう思うよな

 

棺なら中に入っているのは人間の亡骸だろう。願わくばお宝がぎっしりと詰まっていることを期待したいが無理だな。

 

とりあえず空けることにしよう

 

箱に触れて解析してみる。これも扉と同じか。起動させることは難しくない。

 

起動に成功すると蓋の部分が理力によってゆっくりと宙に浮いていく。

 

箱本体から1.5メートルほどのところで停止するとそのままの状態を維持する。

 

落ちてくることはないようだな…

 

危険性がないことを確認するといよいよ箱の中を覗く。

 

そこには予想通りのものが存在していた。

 

干からびて黒ずんだ人間の遺体が横たわる。花とか装飾品は見当たらないが白くてひらひらした服を身に着けてゆったりと眠りについているようだ。

 

「こ、これは… 」

 

セリアは一点を見て驚愕する。

 

結構、驚くよな…

 

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