機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第146話 抱擁

「まあいい、後始末でもしておくとしよう 」

 

折れて転がっている守継と床に突き刺さっている絶雷の片割れを回収すると亜空間内で修復して腰の鞘に納める。

 

それを見ていたじいさんは感嘆の声を漏らした。

 

「ほう…そんなことも出来るのだな。なんでも直す事が出来るのか? 」

 

もういっそ積極的に見せておいた方がいいと思って見せた。

 

セリアもリーンもリオンもそうだがカイルゼインもそれ知ったところで無茶な要求はしてこないだろう。そのぐらいの信頼はしている。

 

秘密を共有することでより信頼を深めることも出来るだろう。秘密を背負わせることで相手に負担をかけることにもなるが、それも信頼関係があってこそだな。

 

こうやって関係性が泥沼にハマっていくのか?

 

いや、ハマらないような人間を選んでいるつもりではあるが…

 

「何でもは無理だな。俺が魔力で包めるものだけに限られる。城をまるごと取っていくなんて出来ないから安心してくれ 」

「…そうか。一つ頼みがあるんだがいいか? 」

「かまわない。なんだろうか? 」

 

和解記念に今ならワンリペア無料で引き受けております。

 

「俺の剣も直してもらえないだろうか? 」

 

そう言うと切り裂かれて床に落ちていた刀身を拾い、柄側と一緒に差し出してきた。

 

それを受け取ると魔力を流して亜空間に引き込む。

 

ずいぶんと魔力が流しやすかったな。等級の高い魔鉄で出来ていたと言うのに。

 

調べてみると魔金がふんだんに使用されていた。ずいぶんと贅沢な作りだ。通常のルートでは魔金はおろか普通の金でもなかなか買えないからな。

 

じいさんに頼んでみるか。安く買えないかな?

 

そんなことを考えつつ、構造を解析して修復を行っていく。

 

俺の刀と同じような構造をしているな。亜空間も無しによくこんな加工が出来るものだ。腕のいい魔技師が作ったのだろう。いくらしたんだろうか?

 

一分ほどで元の状態に復元が終わると取り出してじいさんに渡す。

 

「出来たぞ。確認してくれ 」

「……… 」

 

無言で魔力を流して状態を確認しているようだ。やがて納得したのか感嘆の声を上げる。

 

「まるで修復の後を感じさせないな。破損前と変わらないように思える。たいしたものだ 」

 

出来に納得してくれたようだな。そうでなければ困るが…

 

「もう一本も頼めるか? 」

 

修繕した方を鞘に収めるともう片方を引き抜いてこちらに見せる。

 

よくよく見てみると俺の刀と接触した箇所の刃が欠けている。そこからヒビが伸びている様子が確認出来る。

 

こちらにもダメージはあったんだな

あっさり折られたと思っていたんだが…

 

やってやったって気分になる。

 

この欠けた様子だと大きめの破片がどこかに転がっているハズだな。

 

探してみるか…

 

魔力の気配を探ると直ぐに発見出来た。こういった力も上がっているな。訓練の成果が出ている。

 

剣と破片を亜空間に入れて修復するとカイルゼインに渡す。

 

「感謝する。娘にいろいろと小言を言われるところだった。こんな父親でも家族の仲は気にするものでな 」

「……そうか。大変なんだな 」

 

小言を言われているところを見てみたいと思ったが他人に見せはしないだろう。

 

「セリアから相談を受けたときは半信半疑だったが…長生きはしてみるものだな

 俺に話を持ちかけたのはいろいろな所に顔が利くってのもあるが、王族としては引退していて身が軽いというところが大きいだろう

 息子だったら個人的なものごとより国を優先しなければならない。滅多なことは起きないだろうが制限が多い。あいつの判断は的確だったと思う 」

 

セリアに対するフォローか…

 

結果的に彼女にとっては俺を騙したような形になっているからな。

 

気にしてはいないが…

 

「安心していい。俺はセリアを信頼している。このことでセリアに対して思うところはない 」

「そうか… 」

 

話すこともなくなり特に言葉を交わすことなく自然にこの場を去る流れになる。

 

セリアが待つ闘技場の入り口に向かうためカイルゼインに背を向けて歩き出そうとする。

 

そんな俺の背中に声がかかる。

 

「もう一つ聞いておきたいことがあった…いいか? 」

 

足を止め首を回して見る。

 

「なんだ? 」

 

たいした質問ではないだろう。背中越しに聞いておく。

 

「最初にここでやりたいことがあると言っていたな……ここ、というのは何処のことだ? 」

「……さあな。何処(どこ)になるのかは俺にもわからん 」

 

じいさんはどう思っているんだろうな? その質問の真意はわからないがはっきり伝える必要はない。

 

そう伝えるとそれ以上は振り返らずに歩いて行く。

 

落ち着くとこに落ち着いたな…

 

足取りは軽い。

 

しかし、セリアの元にかえるとどうにも不機嫌な様子。俺に対する感じだな。表情には現れていないが魔力に乗っかってる。

 

? ……俺が何かしたのか?

 

「レイン… さっきの姿は何だ? 」

 

何だと言われてもな…

 

レインメーカーだとしか言い様がない

 

「私に見せた姿と異なるな。まさかとは思うが隠していたんじゃないだろうな? 」

「あの時はまだあれを作っていなかったから見せることは出来なかったな。今回が初めてだ、あれを見せるのは 」

 

どうして言い訳じみたことを言っているんだろうな、俺は…

これで納得してくれるといいんだが…

 

「そうか。あれが初めてなのか…それなら仕方がないな 」

 

良かった。一応正解を踏めたようだ。

 

「破損した剣を直していたようだな。私は教えてもらっていないんだがな 」

 

…それもか

 

「あの時は直すものがなかったしな…隠していたわけじゃないんだ。何か直したいものが有るのか? 可能なものならやるぞ… 」

 

弁明のようなものを行う俺をセリアは無言でじっと見つめてくる。

 

何かマズったか?

 

良くわからないがこういうときは目を逸らしたら駄目だ。怖くてもな。それだけはわかる。

 

「そうかそうか。気を遣ってくれるのか。悪いな、気を遣わせて… 」

 

突如としてニコッと笑うと態度を軟化させる。

 

なんだ、不機嫌そうなのはブラフか…

俺に落ち度はなかったんだ

 

―ガッッッ!!

 

不意にセリアの右手が俺の顔をわしづかみにする。

 

こっ、これは、アイアンクロー!

 

こっちにもあるんだな…

 

なんだか懐かしく感じてしまう。別に知っているだけで思い入れのある技ではないんだけどな…。

 

指先が食い込んでくるがそれほど痛くはない。まったく本気では無いな。じゃれついているような感じか?

 

セリアは穏やかな口調で続ける。

 

「今後、隠し事はしないでもらえるか? 私に最初に見せるようにしてくれ、何でもな… 」

 

隠してたわけじゃないって言ったのに…

 

納得してなかった。

 

「なんでもは無理… 」

 

イテテテテテ…

 

力を込めないでよ…まさか本気?

 

「私が聞きたいのはそんな言葉じゃないな 」

「……善処します 」

 

オオオオオッ… 今ミシッていったよ?

 

何を間違えた? 正解は何だ?

 

「セリアとは何でも話し合える関係でありたいな… 」

「………… 」

 

無言のまましばし時が流れる。アイアンクローは維持されたままだ。

 

「まあ、いいだろう 」

 

そう言って技を解除する。

 

どうやら及第点はもらえたようだ。もう少し高い点数を取りたかったものだが、採点基準はおろかどんな設問だったのかも不明だ。

 

理不尽ではあるが人生はそういうものなのかも知れない。

 

セリアはフフッと軽く吹き出すように笑うと上機嫌になってしゃべり出す。

 

「半分は冗談だ、冗談。本気で怒っていたわけじゃない 」

 

それは良かった……ん? 半分?

 

「こういった他愛ない遣り取りをお前としてみたかった。お互いにやるべき事も立場もある。いつでも会えるというわけではないからな 」

 

アイアンクローはやりすぎかな?

 

気持ちは伝わったけど…

 

「そう怒るな、悪かった… 」

 

なにっ! 顔に出ていた?

 

「少しな 」

 

読まれたっ!?

 

「そう言うときはこうすればいい 」

 

そう言や否や、セリアは正面から軽くステップを踏んで俺に接近する。

 

不意に俺は抱きしめられていた。お互いの顔がお互いの背中側に回される。

 

なるほど、こうすれば顔が見えない…

 

納得しかけるがこの状況はどうなんだろう?

 

表情以上に伝わってくるものが有る。

 

体温、鼓動、息づかい…そして…

 

やわらかいな、それにあったかい…なんだか落ち着く感じだ

 

意表を突かれて俺は混乱しているらしい。何も考えられなっかった。

 

しばらくそのままでいると平静が戻ってきたのか急に恥ずかしくなってくる。

 

「あのう…セリアさん? そろそろ離れませんかね? 」

「ダメだ。もう少しこのままでいろ… 」

 

どうしたものか? このままでは大変なことになる…

 

そうだ…素数…素数を数えよう

 

2,3,5,7、11・・・

 

おい、じいさん…

 

笑うんじゃない

 

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