機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第16話 竜との出会い

なんなんだ、これは…

 

視界を埋め尽くすような巨大な陰が目の前にある。最初はそうとわからなかったが目?が慣れてくると生き物であると言うことがわかってきた。

 

驚くべきことに翼のようなものが生えているが一切羽ばたいていない。音も風もなくただ宙に浮いている。

 

もしかして反重力か? 魔力でそんなことができるのか? いや、しかし魔力の反応を感じられない…どういうことだ?

 

いろいろ考えていると頭の中にかすかに音のようなものが響いた。

 

《、、、、、、、、、、、》

 

良く聞き取れないが何かを話しかけているようにも感じる。

 

改めてこの生き物の姿形(すがたかたち)を見てみる。長い尻尾があり四つ足で、それとは別に一対の羽が生えていた。長い首を折り曲げるようにしてこちらに顔を向けている。顔は爬虫類を思わせる形だ。全体的にゴツゴツとした鱗がありアニメや漫画にでてくるドラゴンのよう。

 

《#$”&%’?+*ODYFU》

 

頭に響く音は依然として何を伝えたいのかわからないが、だんだんとはっきりとした音に聞こえてきた。

 

ひょっとすると声か? 徐々にチューニングが出来てきているのか?

 

何かを伝えようとしているのかもしれないがこの存在の目的がわからない。

 

意図を読み取ろうと目を見てみる。爬虫類のような縦長の瞳孔をしているな…。

 

…良くわからないが敵意のようなものは感じられない。眼差しからなんとなく知性の光のようなものを感じる。

 

それは気のせいなんだろうか? そう思うのはさっきから頭に響いている音が原因なんだろうか?

 

ややもあってだんだんと言語として聞こえるようになってきた。

 

《………オマエハ、ナニモノダ? 》

 

……えっ⁉ 日本語! なぜドラゴンが日本語を?

 

と思ったが冷静に考えるとテレパシーのようなものか…日本語に聞こえるのはこちらの意識の問題なんだろう。このドラゴンが日本から来たなんてことはなさそうだ。

 

《おまえは何者だ? 》

 

余計なことをあれこれ考えているとまた質問が飛んできた。

 

今度はさっきよりも流暢な日本語に聞こえる。お互いにテレパシーに慣れて波長が合ってきたと言うことなのかも知れない。

 

それはさておき、なんて答えよう…そもそもどうすれば相手に意思を伝えることができるのか?

 

コアによる演算の力を信じてみるか…

 

俺は意識を集中して言葉を紡ぎ、発する。

 

《俺が何者か、俺にもわからない 》

 

ドラゴンは俺の言葉をどのように受け取るだろうか。表情をうかがうがとくに変化はない。だがなんとなくこちらへの興味が高まったように感じる。

 

《お前は人間なのか? 肉体は人間のそれではないが精神構造は人間に近い 》

 

伝えた言葉よりもより多くの情報が伝わっているらしい。どう伝えればいいのかさじ加減が難しいな。というか今、人間って言ったのか? 人間を知っている? 敵対関係とかじゃないよな?

 

《人間を知っているのか? あったことはあるのか? 》

《……人間か……ずいぶんと前になる 》

 

ずいぶん前なら大丈夫か? とくに悪感情はないみたいだが。

 

《その人間とはどういう関係だったんだ? 》

 

念のため深掘りして聞いてみる。ドラゴンは少し考えた後答えた。

 

《…友人とも呼べるな。悪い関係性ではなかった 》

 

こちらの心配が伝わっているのか答えには配慮があるように思える。かなり理知的な印象だ。ここでふと自己紹介をしていないということに気づいた。

 

挨拶は人間関係の基本だよな。俺も相手も人間ではないけれど…

 

俺はコミュニケーションに飢えているのか? 久しぶりの会話になんとなく変なテンションになっている。

 

《俺の名前は新堂巧だ。名前があるならあんたの名前を聞かせてくれるか? 》

 

《シンドウタクミ……新堂巧。名前。個体を識別するためにつける名称。人間はそうやって互いを認識するのであったか。昔にであった人間がそのようなことを言っていた。私にも名前をつけていったな。確か… 》

 

ドラゴンは記憶を探っているのか黙り込んだ。黙っているドラゴンを改めて観察する。

 

でかいな。爬虫類的な姿と相まってまさしく怪獣といったよう。

 

俺はこの世界に人間がいなかったら巨大ロボットを作って魔物相手に怪獣大戦争でもしようかとも考えていた。開戦までに100年かかったかもしれないが。

 

実際には人間がいたわけでそんなことをする理由もなくなったのだが、このドラゴンを相手にして勝てるかと問われたなら迷わず勝てないと答えるだろう。魔力は感じられないがその存在感は圧倒的だ。

 

いつかはこいつを超えるようなものを造って見せてやる。そう心に決めているとドラゴンはかつて呼ばれた名を思い出したようだ。テレパシーで答えかけてくる。

 

《…思い出した。私の名前はアルグラント。かつて出会った人間は私をそう呼んでいた》

 

アルグラントか。今後そう呼ぶようにしよう。俺はこの際だからいろいろ聞くことにした。

 

《アルグラントはどこから来たんだ? 》

《この森のずっと奥。山脈まで行ったところからだ 》

 

テレパシーとは便利なものだ。こちらの聞きたいことがダイレクトに伝わり誤解なく伝わる。だがその分、心にしっかりと鍵をかけなければ余計なことを伝えてしまいそうだ。

 

だが調子に乗っていろいろ聞いてみることにした。

 

この世界のこと、魔物のこと、人間のこと、魔法のこと…

 

しかし、人間のように学問的に考えると言うことはあまりしないらしい。明確な答えは返ってこなかった。

 

俺は一番重要な質問をしていなかったなと思い質問する。

 

《アルグラントはなぜ俺のところに来たんだ? 》

 

会話をしているとなんとなく俺に目的があって来たのではないかと思った。偶然の通りがかったような印象は受けない。熊との戦闘も眺めていた節がある。

 

《以前に感じたことのない奇妙な力を感じた。巧、お前からそれに近いものを感じる。お前という存在を見極めるためにここに来た 》

 

以前とは俺がこの世界に来た時を指すのかもしれない。次元のようなものを超えなければ地球からこの世界にはこれないはず。その時に何かしらの力が働いたのだろう。あの白い男がやったことだが。

 

そういえばあの男の名前を聞いていなかった。まあ、いい。次の機会があったら聞いておこう。それより見極めると言うことは見極めてからどうするか決めるってことだよな…どうする?

 

《見極めたあとどうするんだ? 》

 

聞きにくい感じもあったが気になったので聞いてみた。多分大丈夫だ。

 

《どうもしない 》

 

どうもしないのか… 身構えていた分肩透かしを食らったような気分だ。それにしても、どっかで聞いたようなことを言う。最近似たようなことあった。

 

流行ってんのかな? そういう物言い…

 

《私はただ見極めるだけだ。どうするかは星の意思次第… 》

《星の意思とはなんだ? 》

《それを説明する手立てを私は持たない。ただ私は自らの意思より星の意思を尊重する 》

 

よくわからないがそれ以上踏み込んではいけないような雰囲気だ。スピリチュアルなものだろうか。信仰と言っていいかもしれない。とにかく何も起きないようなので一安心だ。主に戦闘面で。

 

《巧よ…お前は不思議な存在だ。この世界のものとは根本から異なる。お前が何者か計り知れない。行く末を確かめる必要がある 》

 

ひょっとしてついてくる流れだろうか。この巨大なドラゴンを連れていたら人間と戦争になりそうだ。それは勘弁してくれと思う。

 

《お前が何を目的にこの先を歩むのかは私のあずかり知らぬところ。この先好きなように生きるといい…

 だが、今のお前の力ではここから先に進むべきではない。今のお前では歯が立たぬ。力をつけるといい。力をつけたらここの最奥を目指し、私に会いに来い 》

 

どうやらそろそろ帰るようだ。用が済めばさっさと帰りたい性分なのかも知れない。もう少し話していたい気もするが引き留めない方がよさそう。機嫌を損ねるのはまずい気がする。

 

《久しぶりに会話と呼べるものができた。楽しかったぞ。また会おう 》

《ああ。こちらも楽しかった。いつか会いに行く 》

 

アルグラントは音もなく上空に浮かんでいくと高速で飛行して去って行った。日の光に照らされた(うろこ)は白銀の光を放っている。

 

あの鱗、一枚くれないかな?

 

 

さて、これ以上奥にいくのは危険とのことなのでここで引き返すことにするか。

 

自分の弱さを認めるのは(しゃく)だが自分より遥か格上の相手からああ言われては素直に従っておいたほうがいいだろう。

 

熊との戦闘を見られていたのは確定か。客観的判断と善意からの助言といったところか。

 

今から草原近くまで引き返すとその時間を入れて、人間に襲われてから二週間ぐらいは経つことになる。そのぐらいあればほとぼりも冷めているだろう。

 

いよいよ人里を目指すか…

 

だが、その前に体を修復しなければならない。魔力の回復も必要だ。

 

俺は倒木があった地点に移動し穴を掘る。穴の中で休息しつつやるべきことをやろう。

 

まずは体の修復から。戦闘によりいろいろ破損してしまった。とくに魔力暴発で失った部分が大きい。兜をまるごとに胴鎧の上部も失ってしまった。アルミニウムに余分はない。また他の部分を削って修復する必要があった。

 

とりあえず骨格から直そう。“白剛鬼”の残骸を分解して頭蓋骨や首の骨を修復。

 

ウサギの皮を加工して鼓膜を作り設置。ウサギの魔石を視覚装置に加工して設置。頭蓋内に土を充填。表皮を土で張り基本ボディの修復は完了した。

 

鎧の修復はどうするか。手甲と脚甲、胸当てなどの重要部分を残して材料に戻して兜を再建。最初に造ったときと比べるとだいぶ小さくなってしまった。

 

まあ、どのみち人里を探すときには使えない。使用するのは森を抜ける間までだ。わざわざ採取をするまでもないだろう。

 

次は熊の魔石を分析していく。他と比べるとかなり大きめだ。最大魔力の鑑定をする。

 

現在魔力 / 最大魔力 368 / 6832

 

かなり最大魔力量が多いが残量はあまりない。致命傷の回復に魔力を使用したからだろうか? よくはわからないが。

 

まあそれよりも重要なのは火魔法だ。

 

情報を解析して複製してコアに書き込む。どうやら熊が使っていた火魔法は空気中のメタンに干渉して動かしたり発火させたりするようだ。

 

ふと気になったので熊の遺体を調べてみると肺のほかに気体をためるような袋状の器官があった。肉体も使う魔法に応じて変化するのか?

 

酸素も操れれば相当威力を高めることができそうだがこの魔石からの情報だけでは無理だろう。自分で魔法を作り出すにはどうすればいいのだろうか? 今は無理でもいずれ出来るようにしたいところだ。

 

コアの魔力は現在こんなもの。

 

現在魔力 / 最大魔力 1142 / 9475

 

結構上がったものだ…。1万の大台まであと少しか。単位もないウサギ指数ではではあるけれど。

 

あとは魔力を回復させて森をでるだけだな。

 

俺は意識を切って時間の経過を待った。

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