アレを使ってみるとしよう…
駄目だったらその時はその時…
開発中の兵装をレザニュームに合わせて形状を変更していく。微調整が終わると亜空間から取り出してお披露目としよう。
―
巨大なドリルを呼び出して天を突くように構えると大量に魔力を流して行く。
雷術で電動モータを回し水術でタービンを回すとドリル本体が音もなくゆっくりと回転を始め、すぐに目で追いきれないほどの回転数になる。
唸れッ!……回転体ッ!
ィィィィィィィィィィィィィィィィ………
シュァァァァァァァァァァァァァァ………
更に魔力を上げていくとモータの回転する音と空気が切り裂かれるような音がし始める。
ドリルは空気をかき混ぜるような形状はしていない。木に穴を開けて砕いていくための形状だ。それでもあまりの回転速度の為、周辺の空気は渦巻いていく。
亜空間で加工しているからこの速度でも振動がほとんど起きていないほどバランスが取れているな。限界まで上げてみたいところだが…
流石にレザニュームも膨大な魔力の高まりに危機感を覚えたのか攻撃を仕掛けてきた。樹上から誘導式黒葉弾がいくつも放たれ、こちらにかなりの速度で向かってくる。
少し慌てているのか? まあ、そうだろうな…
なんたって俺自身も想定される威力にビビっている。
ギリギリまで攻撃を引きつけると一旦ドリルを亜空間に仕舞う。これで威力を保存出来る。
―
:【
全身の至る所に高出力ブースターを、背中にミサイルポッドを装着するとロケット推進で真下に落下していく。
途中でレザニュームに向けた曲線軌道に入ると森の中に突っ込んでいき地面すれすれを飛ぶ。薄暗い森の中、木々の間を縫うように飛行していった。
邪魔な倒木を体当たりで粉砕し、時には木の幹を掠めて削りながら接近していくと射程圏内に相手を捉える。
―発射!
一気にミサイルをすべて打ち尽くした。誘導を行ってヤツの巨体を支えている無数の根、その隙間をこじ開けるように通していくと中心付近に到達させる。
そこで全弾一斉に仕込んでいたギミックを起動―
爆炎と爆風が周囲一帯に吹き荒れる。周辺の木々をへし折り、根ごと掘り返して吹き飛ばしていく。
レザニュームも爆発で真上に投げ飛ばされた。
移動するために根を地中から抜き出していたのが
目的が移動することにあるならば必然の結果。
爆発が収まる瞬間を見計らってヤツの真下、地中からブースターを最大出力で一気に上昇していく。
十分に加速すると亜空間からバッキバキに仕上がっているドリルを呼び出す。その底部側に設置したグリップを掴み魔力を更に込めながら押し上げていく。
咲け! 回転体浪漫!!
魔鉄ドリルと魔水に更に魔力を込める。
ドリルロケットの向かう先には重力に引かれて落下に転じたレザニュームの姿がある。その放射状に伸びる根の中心に向かって突き進む。
先端が当たる瞬間にそこから高圧の魔水ジェットカッターを放出していく。樹の表面を削るとそこにドリルの先端が入っていき、さしたる抵抗もないまま内部に侵入していった。
そこからは一息にレザニュームの魔石まで貫通していく。強力な水圧により内部から膨張させて樹体を割りバラバラに砕いた。
下半分を吹き飛ばすと魔石が剥き出しになり直接ドリルがぶち当たる。
相手の魔力をゴリゴリと削っていくが魔石は砕けることなく表面を刃が滑っていく感触がある。
そのまま魔石ごと押し上げ高度を上げていく。
ははっ、いい眺めだ
遠くまで見渡せる高度になったところで動きに変化を加える。
ぬうんっ
先に樹体を砕いてやろうとブースターを操作…ドリルに螺旋軌道を加えて残った上部を粉砕してやった。
樹体すべてを砕いてやると完全に剥き出しになった魔石が落下していく。
レザンの魔核としての性質も併せ持つのか、魔石だけになっても空気を取り込んで構体を生成し始めた。更に構体を落下していく木片に伸ばしていき樹体の再生を試みようとしている。
往生際の悪い…
俺はドリルを格納するとレザンに向かってブースターを吹かす。
高速で魔核に激突し、その衝撃で以て木片も構体も吹き飛ばして引っぺがした。そして、両手で魔核を挟み込んで固定する。
魔水を取り出して全体を覆うと浸食していくような水流を生み出して落としきれなかった構体を砕いてやる。更に俺の魔力を魔核に向かって全方位から流し込むように圧を掛ける。
押し返してくるような手応えがあったがしばらく続けていくと、突然それがフッと消えるような瞬間が訪れる。
逝ったか?
試しに亜空間に引き込もうとすると、すんなりと入った。
ふう、何とかなったな…
未知の相手ではあったがここまで苦戦するとは思っていなかった。
コアの残り魔力は一割程度って所か…
久しぶりに計測してみよう。
魔力残量/魔力最大量 57,321/530,203
数字にしてみるとどれだけ消費したか実感出来るな。あと自分の成長も。
この数字がそのまま強さってワケじゃないから数字の大きさに囚われるのも危険ではあるが、これが生命線でもある。今後も伸ばしていこう。
そう実感を新たにしつつ地表に降りていく。場所は俺がレザニュームを爆発で打ち上げた所だ。
レザニュームの進行と爆風で少し開けた様になっている。地面は緩やかなクレーターが形成されそこに大きな木の破片が乱雑に積もっている。
何かに使えそうだな…ん? ばら撒いた魔水で結構濡れている…これは回収しておかなければ…
ああ、そうだ、消費した分の魔鉄もだな…多少は仕方がないが出来るだけ回収したい
ガス類も盛大に消費した…それも補給しておかなければな…
!ッ …んんっ?
[・・・・・・・・・・・・]
周囲を確認しながらそんなことを考えていると不意に何かが聞こえたような気がした。
なんだ?
声のような気がしたが音ではないようだ。直接コアで観測されたのか?
分析しても特に何もでない。
俺の記憶の残響のようなものだろうか? まさか幻聴ってワケでもないだろうな…
まあ、多少引っかかるが分析で何もない以上は考えてもしかたない。
「 帰還《リターン》 」
人間に戻ると空術と土術で領域を広げていき移動しながら素材を回収して回る。
あらかた回収し終わると俺とレザニュームで作り出したクレーターと俺が移動の際に開けた穴を土術で埋めていく。
これで十分に原状回復が出来たか…後は魔境の回復力が何とかしてくれるはず…
レザニュームが移動してきた先を見ると直線的に森が禿げている道が続いている。
これはもうどうしようもないな…
これらがきちっと森に戻っていくまでは多かれ少なかれ魔境の勢力図に影響を与え続けることになるんだろう。
しばらくはラディフマタル森林も荒れるかもな…
レドに伝えておかないといけない。しかし、なんて伝えようか?
レザニュームのことは言えない。俺が倒したって言わないといけなくなる。
セリアやリーンに相談するか…カイルゼインでもいいな
…んっ? なんだ?
丸投げすることを考えていたら何か聞こえたような気がした。さっき感じたものとはだいぶ感じが異なる。
出所を探るために集中すると再び聞こえてくる。
声…というより思念か?
感じる方向に向かって森の中に入っていく。発生源と距離が近くなったのかよりはっきりと聞こえるようになる。
《・・・・・・・・・ 》
向こうもこちらの接近に気がついたのか呼びかけてくる頻度が増してくる。
はやくはやくって、せかしてる感じがあるな…
発生源の近くまでやってきた。
ここらへんだな…
気配を探ろうとする前に茂みからこちらに向かって影が飛び出してくる。
な…に…
それはまさしく子猫だった。
大きさは成猫ぐらいあるが体のバランスからいって子猫で間違いないようだ。頭と目が大きめで歩き方は少し頼りない。生後一月も経っていないように思える。
親とはぐれたんだろうか? それとも…
レザニュームの影響の大きさを考えてしまう。
それと同時に俺の取りえた可能性についても…。
もっと早くヤツを倒していればこの仔は今も親と一緒にいたんだろうか?
それとも、俺が親だったかも知れないあの山猫を追い回さなければ、事前に
自分が取れたかもしれない選択肢を後になって検討するのは傲慢なのかも知れない。
起こったことの結果を受け止めてこその運命だろう。後になってうだうだと考えるのは運命すら何とでも出来ると考えているような態度に見えなくもない。
知るよしもなかったことは気にしたところで、もうどうしようもない。
神様じゃないんだよ、俺は…
足元にスリスリしているこの仔に対して罪悪感を抱くのはやめよう。
そう決めてひょいと抱き上げると全身に軽く電流が流れたような感覚を覚える。
なんだ?
先ほどまでより子猫から伝わってくる情報量が増えている。感情がよりダイレクトに伝わってくるような感じ。
パスが繋がったということか…
魔物使いになったということなんだろうな。魔物と意思を交わすというのはこういうものか…
いや、まてよ…、この感覚は…どこかで経験したことがある。
どこだっただろう?
ああ、あれか、アルグラントだ…
銀色の竜と交流したときと同じような感覚だった。あの経験があったから今こうしてこの仔と繋がったのかも知れない。
あいつに感謝しておこう。あれがなければ気がつかなかった。こうして出会うこともなく小さな命は消えていただろう。
頭を撫でてやると安心したようにゴロゴロと喉を鳴らす。
それを見てしっかり育てようと決意を新たにする。
魔物使いギルドがあるぐらいだから魔物を飼うことは大丈夫だろう。ギルドにいって聞いてみればいい。
住む家に関してはキリアムに聞いてみるか。一軒家だし大丈夫だと思うが駄目だったら引っ越すとしよう。幸い収入も蓄えもある。
ん? 魔物使いギルド…? 何か引っかかる…
あ、ああ~、あのやたらセクシーな銀髪褐色のお姉さん…イーディスだ
ギルド長なんだよ、あれで…
会うことはないと思うが、なんとなく行きづらい。
まあ、いいか。その時はその時…
子猫を抱えながら拠点に向けて走って行く。
なるべく速く、なるべく揺らさないように…加減をしても森の中を風のように駆ける。
なんだか調子がいいな。思いっきりレインメーカーで戦えてすっきりしたのか…心境の変化というものだろうか?
こうなったのも、なんだかんだでリスティとカイルゼインのお陰なのかも知れない。
なんとなく、じいさんの
そんなことを考えていると前方からリスティの気配を感じた。こちらに向かってきているな。タイミング的に拠点から移動して観戦していたようだ。
合流すると拠点に向かって走りながら今後どうするかを話していく。
「すぐに王都に戻ることにしよう。セリアと相談して後処理を頼もうと思う 」
「そのことなんですが私に一任していただけませんか? これ以上、先生にばかり頼るわけにも参りません 」
「頼めるか? 」
「はい、お任せください。父や祖父に動いてもらうことにします。騎士団を派遣することになると思います。レアンドル支部長にも連絡が行くことになるでしょう 」
「そうか…それなら安心だな 」
カイルゼインには動いてもらわないとな。恨みや怒りはないが落とし前はつけてもらわなければいけない。けじめは大事だ。
「ところで先生…それは… 」
リスティが子猫について聞いてくる。そりゃ気になるよな。さっきからチラッチラッと視線を向けてきていた。
「森で見つけた。どうやら繋がったらしい。後で従魔登録をする 」
今は重要なことではないので手短に伝える。こんな時に何をやっているんだと思われなくもないからあまり聞いてくれるなという感情もあるかもしれない。
「そうですか…流石です 」
なにが流石なのかはわからないが、どうやら今はこれ以上触れないようにしてくれるらしい。察してくれて助かる。