機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第165話 魔物使いギルド x 名付け

つい相手が人間のように話しかけてしまった。言葉がわからないのは承知しているがそれでも話しかけてしまう。

 

外ではやらないように注意しよう…

 

魔術を使わなくてもなんとなく伝わったのか座席からぴょんと降りると、ガレージ内を慎重に歩き回り、においを嗅ぎ回っていく。

 

その足取りから階段を上れると判断した。階段を途中まで上がるとこちらについてくるように呼びかける。

 

すると結構しっかりした足取りで上がってきた。家の中を動き回るのは大丈夫そうだ。

 

二階に来ると、とりあえずは好きに回らせておく。

 

馴れてきたら最初にきちんとトイレを教えるか…

 

いずれひとりでも人間用のトイレを使えるようになると思うが、最初は俺が付き添ってやらなければならないだろうな。

 

《おしっことうんちがしたくなったら教えて 》

《・・・・・・・・ 》

 

なんとなく伝わった気はする。だが、今のはちょっと正確に理解できたか怪しかった。俺が注意深く見守っておかないとな…。

 

ひとしきりにおいを嗅いで安心したのか、やがて俺のベッドの上で寝息をたて始めた。

 

この家は土足で歩き回るようになっているから、そのまま上がられると衛生的によろしくないな…

 

足の裏を綺麗に拭いた後、肉球の感触を楽しみながらどうするかを考える。

 

寝室は土足禁止にするか…靴を脱いで入るようにしよう。猫が入るときは足拭きマットで拭いてから入るように教えておこうか。パスを通じて教えればわかってくれるだろう。

 

ベッドに清発を掛けて汚れを払うとダイニングに移動して外から空術で床を清掃する。

 

靴を脱いで入るとベッドに腰掛けて猫の隣に座り、なでなでしながら今後の予定について考えていく。

 

明日は魔物使いギルドに行って従魔登録を行わないとな…

 

連れて行くためのキャリーバッグとかあった方がいい。麻袋を加工して背負い袋でも作っておこう。

 

亜空間の中で加工して作っておく。ちょっと大きめに作ってこの仔が成長しても使えるようにした。麻と革素材を組み合わせて底面と背中側を補強し、肩ベルトを付けて完成とする。

 

隙間が空くところには布を詰めてフィット感とクッション性を上げて使おう。

 

ギルドまでの道も王都ガイドブックで調べておく。

 

これで明日は大丈夫だな…

 

他にはこの仔がここで生活していけるように躾をしたり、猫用アイテムを揃えておかなければならない。

 

爪とぎ用の木板も必要か…カンヴァル湿原産の木を使おう。

 

硬さ的にいって手持ちでは一番良さそうだ。板状に切っていくつか家の中に分散して配置する。壁に立てかけたり部屋の角を覆うように取り付けた。

 

キャットタワーも欲しいな…

 

家の中にいると運動不足になるような気がする。いくら魔石があると言っても子供の時はまだ未発達のはずだし、近いうちに俺について魔境深層に行かなければならない。

 

いきなり戦わせることはないが早めに強くなってもらいたいところだ。

 

猫じゃらしとかも用意して遊びながら鍛えることもしていかなければならないかな? それは成長の具合を見ながらか…

 

どのみちしばらくはこの仔を背負いながらの狩りになりそうだ。

 

まあ、焦ってはいけないな…

 

魔鉄で心棒を作ってそこから枝のように伸ばしていき、そこにレザニュームから切り出した足場となる板を固定する。板は表面を少しざらつくように加工してある。これで足が滑ることはないはずだ。

 

完成したキャットタワーは寝室に設置しておく。

 

これで今日出来る作業は終わったか…

 

後、やらなければならないことは俺の能力、つまりコアの波動に慣れさせることだ。

 

亜空間の使用を積極的に見せて少しずつ馴らしていく。換装を見せて姿とにおい、波動が変化しても俺であると認識出来るようにする。そうしなければ深層の奥には進めないだろう。

 

その前にこの仔がどのぐらい強くなれるのかが問題か…親の感じからすると上級下位ぐらいだろうか? そこまでだと途中で連れて行けなくなるだろうな。

 

てっきり俺と同じように成長していけると思い込んでいたがよくよく考えるとそういった制限もあるのか…?

 

活動休止したり引退する狩人にもそういった事情があるっぽいな。無限に成長すると思っていたのは親馬鹿か?

 

それより、限界うんぬんの前にまずちゃんとしつけて一人前の成猫に育てなければならない…

 

ひとつひとつ段階を踏んでいく必要があるな。焦ってはいけない。しっかりとこの仔に向き合って行かないと…俺の願望を押しつけてはいけない。

 

とりあえず起きているときに猫じゃらしとかで遊んでみる事にした。遊びながら鍛えていくのが一番だ。

 

遊び終わると床に結構傷が入ってしまったので木術で修繕する。そしておしっこをしたいような思念を感じたのでトイレに連れて行きやり方を教える。

 

ついでに湿らせた布でおしりをちょんちょんと叩いて排便を促してみるとしてくれた。まだ、清発は使えないようだった。いつ覚えるんだろうな? 勝手に覚えるのか、それとも俺が教えないといけないのか?

 

こちらの人間の成長過程すら良く知らない俺にはなかなかに難しいことだ。ギルドでそれとなく聞けないだろうか?

 

まあ、最悪、治癒術の応用で教え込むことは出来そうではあるが…

 

夕食を食べるとき、この仔にはとりあえず魔物の肉と牛乳を与えてみることにした。肉は俺が解体したウサギ肉の残りだ。あの後、リスティの前で亜空間を使って見せた。その時に仕舞ったものだ。

 

結果として肉の方は食べることはなかったが牛乳は飲んでくれた。魔石の成長具合からいってお腹を壊すことはないと思う。人間よりもそこら辺の成長は早いのかも知れない。

 

いい飲みっぷりでおかわりまでした。

 

飲み終わると顔の周りに飛び散ったミルクを拭く。その後、背中を叩いてげっぷをさせてから寝かしつけた。

 

 

朝食を取った後に魔物使いギルドに出かける。

 

作成した背負い袋の中に子猫をいれて大人しくするように思念を送ると、家を出て小走りで向かう。

 

軌道列車を使おうかと思ったがこの仔が顔を出しかねないので諦めた。外のただならない気配、軌道列車の動作や周囲の人たちに好奇心を刺激されてしまうだろう。

 

まだ子供だし大丈夫かと思うのだがこれでも魔物だしな。まだ、従魔登録をしていないから扱いがわからん。

 

一時間ほど走って行くと郊外にそれらしい大きな建物が見えてきた。

 

駐車場はあるようだな。車で来れば良かったか…

 

敷地は広いようで建物周辺には原っぱがあり、馬の魔物とかが自由に駆け回っている。そりゃ駐車場も作れるはずだ。来てみなければわからん部分もあるが…

 

中に入ると静かな空間が広がっていた。それなりに広いロビーだったが人はあまりいない。魔物使いの才能はそれなりに稀少なものだから、ここを訪ねてくる者も少ないのだろうか?

 

受付らしき人に背負い袋の中身を見せる。この仔と絡帯が繋がったことを説明して魔物使いとして登録しに来たことを伝えた。

 

すぐにカウンターに通されるとまず身分証の確認から始まる。

 

「! 八ツ星狩人の方でしたか! いい魔物と繋がりをもたれたようですね。これは成長がたのしみだ 」

 

狩猟ギルドの会員証を提示すると結構驚かれた。

 

ちょっと悪くない気分だ。この仔を見て将来性に期待しているところもポイントが高い。

 

「ではまずこの冊子に目を通しておいてください。会員規約や魔物使いとして注意するべき点が書かれています。その間に会員登録手続きをしておきます 」

「よろしく頼む 」

 

しばらく渡された冊子に目を通していると登録が完了したようで職員から声がかかる。

 

「お待たせいたしました。登録が完了しました。こちらが魔物使いギルド会員証です 」

「ありがとう。狩猟ギルドの会員証とは別なんだな… 」

 

いろいろと文字が書かれた樹脂製の小さなプレートが渡される。俺の名前や会員番号、発行日なんかが書かれていた。

 

「その会員証はなくされますと再発行に手数料がかかりますのでなくさないようにお願いします 」

「わかった 」

「年会費は36,000エスクかかります。狩猟ギルドと同じ口座からの引き落としでかまいませんか? 」

「それで頼む 」

 

引き落としの手続きが終わると、年会費についての説明をする。

 

「年会費がかかるのは当ギルドから会員の皆様へ様々な補助を行っていくためのものでもあります。魔物を育てるに当たっての助言や情報提供、従魔候補の紹介、魔物と一緒に生活出来る住居や宿泊施設の紹介などですね 」

「とりあえず助言はありがたいな。魔物を子供から育てるのは初めてなものでね 」

 

俺の言葉に職員は少し助言をする気になったのだろう。この仔を見つつ、ちょっとしたお役立ち情報を話してくれた。

 

「山猫系の魔物は珍しいですが当ギルドに専門家が在籍していますので都合がつけば直接教わることも可能です。書籍などもありますので書庫を見てみるのもいいかもしれません

 ですが、基本は絡帯を通して従魔が何を思っているのか感じ取ることと行動を観察して生物としての習性を知っていくことです。それを通して性格と個性を理解して繋がりを深めてあげてください

 一番重要なのは専門家や本から得られる知識ではなく実際に触れあって得られるものです。知識は大切ですがそれは物事を考える切っ掛け程度に考えておいてください 」

 

なんか物言いにけっこうな熱量を感じる。この人も魔物使いなのかも知れない。

 

「他にも年会費には従魔によって損害が生じた場合の保険料も含まれています。それなりの値段になるのはおわかりになられるでしょう? 」

「ああ、そうだな。保険料と言うことはやはり従魔を御しきれなくて被害が出ることはあるのか? 」

「滅多に起こることではないんですが魔物使いも従魔も生き物ですから事故はどうしても起こり得ます。そのための保険ですね。ただ既に人に慣れた従魔が人を襲うことはまずありません

 魔物使いと絡帯を繋いだ魔物は人と共に生きることを選んだ特異な個体と言えます。我々の行動をよく観察して規則に従って行動するようになります

 あまり従魔の前で常識を逸脱した行動は取らないようにお願いしますよ 」

 

良くも悪くも従魔は魔物使いの行動を真似ると言うことか。

 

従魔をしつける前に俺自身がしっかりしないとな…

 

「心得た 」

「それでは次にその仔の従魔登録を行いますので名前を教えて頂けますか? 」

「それなんだがまだ名付けを行っていなくてな。どういう名前を付けるのがいいのか相談に乗ってもらっていいか? 」

「そうですね、従魔は人間のように正式な名前と愛称を区別して理解出来ますので長い名前を付けても問題はありません。馬系の魔物ですと比較的長めの名前が付けられることが多いです

 ですが猫系ですとなるべく短めの呼びやすい名前を付けてあげる方がいいですね。三、四音ぐらいの長さに留めるのがいいでしょう。その系統の魔物だと濁音を入れると聞き取りやすいと聞いたことがあります 」

「そうか… 」

 

どうしようか? 愛称で呼ぶと結局それでしか呼ばなくなりそうだな…

 

注意点は地球での猫の名付けとそう変わらないようだ。

 

女の仔だしその点も考慮して…

 

「ジュジュという名前はどうだろうか? 変ではないかな? 」

 

ちょっと不安がある…どうよ?

 

「ジュジュですか。いい名前だと思います 」

 

良かった。大丈夫だったようだ

 

 

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