機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第169話 狩りの再開 x 子育て

レザニューム撃退から一週間が経ち、再びラディフマタル森林に向かっている。

 

途中で街のギルド支部に寄りレドを訪ねるとやはり在室しているようで部屋に通された。

 

もしかしたら心労で弱っているかと思っていたが、そんなことはないようだ。いつもと同じく覇気のある佇まいを崩していない。パワフルなじいさんだ。

 

「レド…あれからどうなった? 」

「ああ、二日後ぐらいから騎士団の人間が二十人ぐらい来て間引きを行っている。今のところこれと言った問題は起きていないとの報告だ 」

「そうか、それはよかった。今から森に入るんだが大丈夫そうだな 」

 

俺の言葉に変なことを聞いたという顔になる。

 

何か変なことを言ったか?

 

「…お前なら問題があっても大丈夫だと思うけどな。しかし、本当にこんなに早く騎士団が来るなんてな…王族に伝手があるってのは本当だったか 」

「まあな、おおっぴらにしたいことじゃないが 」

「そうだろうな。俺も言うつもりはねぇよ 」

「そうしてくれ… 異変はどれぐらいの規模で起こっているかわかるか? 」

 

レザニュームと戦った身としては結構心配なところだ。だが、レドは楽観的なようであくまで淡々と説明を行っていく。

 

「規模は大きくないようだな。村まで魔物が来ることもそうそうないと聞いている。来ても下級程度らしい。表層に中級が現れることはあるそうだが、頻度はそれほどじゃないな。あと一月(ひとつき)ぐらいあれば収まってくれるだろう 」

「それは良かったな 」

「さっきからなに他人事みたいに言っているんだ? お前が倒してくれたんだろ? その元凶になった魔物をな 」

「ん? そう言えばそうだったな… 」

「どんなやつだったか知らないが、大事にならなかったのはお前のお陰だ。もっと偉そうにしてもいいんだぜ? 」

 

と、言われてもな…

 

おおっぴらにしたくない以上手柄の主張なんて出来やしない。

 

「別にいいさ、狩人は狩るだけだ 」

「…まあ、そうだな。流石レインだ 」

 

レドはなんだか暖かい目で見てくる。

 

何か勘違いをしているな…

まあ、いいけど

 

「ところで、その背中の袋なんだが中身はなんなんだ? 妙な気配を感じるんだが 」

「これか? ジュジュ、顔を出してくれ 」

 

流石は元八ツ星、そこまで気配は強くないはずだが気付いたか…

 

呼びかけると中でごそごそ動いて袋の口から指示通りに顔だけ出す。そして、レドを正面から見つめた。

 

驚いたようだな、ちょっと固まっている…

 

「魔物使いの才能があったようでな、従魔として迎え入れることにした 」

「そ、そうか。連れたまま狩りをするのか? まだ小さいみたいだが大丈夫か? 」

「中層辺りで中級を中心に狩るつもりだから大丈夫だ。上級に遭遇したとしても下位ぐらいまでなら策は考えてある 」

「まあ、それなら何とかなりそうだな。でも気をつけてくれよ。余計なことかも知れないが普段と違うことをするときに限って思いがけないことが起きるものだ 」

 

今度は心配をしてくる。忙しいな…いや、俺のせいか

 

「そうだな。確かにそういう経験はある。気に留めておこう 」

「それがいい。しかし、お前に魔物使いの才能があったなんてなぁ…ジュジュという名前だったか、強くなりそうだな。目に力がある 」

 

流石レドだな…ジュジュの才能を見抜くとは

 

レドの言葉を理解はしていないだろうが雰囲気は伝わったんだろうか? ジュジュはキリッとした表情を作っている。ふんすって擬音が聞こえてきそう。

 

気のせいかも知れないが…

 

「それじゃあ、俺は行くとしよう。忙しいところすまなかったな 」

「おう、それじゃあな 」

 

 

いつものように村の出張所に車を止めるが、見慣れない野営所が建設されていた。

 

騎士団の留まる施設だろう。村を見回っている騎士も何人かいる。結構強そうな人もいるが実力はまちまちだな。訓練も兼ねていると言うことだろう。実戦でしか得られないものが有る。

 

騎士達と絡む必要もないので出張所のギルド職員に声だけ掛けてさっさと拠点に向かうとする。

 

背負い袋の中のジュジュでも大丈夫そうなペースで進んだ。時折、魔力交信で確認しつつペースを上げていく。想像よりも丈夫だったので予定よりも早く拠点にたどり着けた。

 

昼食を食べた後は拠点の周りに鳴子がついたロープを張っていく。魔物除けと言うより騎士達がここに近寄らないようにするためだ。

 

深層までは来ないと思うがジュジュに馴れさせるために亜空間とかいろいろ見せるので騎士達が確認出来る範囲に接近してきては困る。なので広く張っていく。

 

入ってくるなと言外に圧を感じることだろう。見かけても空気を読んで立ち去ってくれるはず。魔境に入る以上は騎士でも狩人のマナーとか自然にわかってくるものだ。

 

張り終わったらジュジュを袋から出して拠点を中心として運動させる。巨大な猫じゃらしとかを駆使して走らせたり飛んだり跳ねたりさせていく。

 

この一週間でジュジュも結構大きくなったものだ。体重は二割ぐらい増えた。ミルクもまだ飲んでいるが細かく刻んで柔らかくしたウサギ肉も食べるようになった。

 

骨格はまだまだ子猫のようで未熟さも感じるが、外見からは想像がつかない程運動性能が高い。だんだんと体術を身につけてきているし、簡単で弱いものだが魔術も使うようになった。

 

空術を使えるようで大きく飛んだ後の着地の時にエアクッションを生み出している。衝撃を受け止めきれずに途中で破裂して霧散しているが子供には十分なものだろう。

 

魔物の成長はみんなこんな感じなんだろうか?

いや、ひょっとすると天才なのかも知れない

 

「ジュジュ! 凄いな~、えらいぞ~ 」

 

わしゃわしゃしてやると目を細めて喜ぶ。どうして褒められているのか理解していないかも知れないが、良し。

 

魔境の主になれるぐらい強く育ってくれよ~

でも、本当にそうなったら困ったことになりそうだな…

だがそれも良し。

 

 

次の日は埋めてあるラプトルの処理から始めていこうかと思う。

 

まず、遺体を掘り起こしていく。

 

ジュジュも短いお手々で一生懸命掘り起こしてくれる。途中から掘ること自体が楽しくなったようで、なんのために掘っているのか忘れて関係ない場所を掘り始めてしまう。

 

見ていてほっこりする…

 

止めることなくそれを見守りながらスコップで掘っていった。

 

ラプトルを掘り出し終えると穴を埋めてから丈夫な木の棒にくくりつける。これを担いで運ぶ算段だ。

 

一緒にジュジュも連れていくのだが泥まみれになっていた。付いている土を魔術で落としてキレイにしてやる。

 

それから背負い袋に入れて背負うと、棒を肩に担いで村まで走って行く。

 

解体所に到着すると職員に声を掛けて獲物をお披露目する。見慣れない魔物を目にするのは毎度のことのはずだが、それでもここの職員はいちいち新鮮な反応を示してくれる。

 

なんだかんだで魔物のことが好きなんだろうな。生き生きと魔物を捌いていく所を想像する。そういう職人には好感が持てる。

 

「今回から俺の分の肉を売らずにとっておいてくれ。1メルでいい 」

「わかりました。やっぱり自分で食べてみたくなったんですかね? 」

「それもあるが、こいつに与える分も必要だからな 」

「うわっ! 」

 

呼ばれたのがわかったのかジュジュが袋から顔を出しそれを見た職員は驚愕の声を上げる。いると思わなかったんだろう。不意を打たれた形になったようだ。

 

「びっくりした… 」

「俺の従魔だ。ジュジュという名だ 」

「珍しい魔物ですね。かわいいなぁ 」

 

キラキラとした目でジュジュを見つめている。屈託のない笑顔だ。

 

いや、まてよ…

 

解体所の職員だと思うと急に目の光りに不穏なものが混じっているように感じ始めた。

 

…俺の気のせいだとは思うが

 

そんな俺の思いを知ってか知らずかジュジュは袋の中に顔を戻す。

 

多分、眠くなったんだろうけど…

 

「それじゃあ、肉を一部残しておきますね 」

「よろしく頼む 」

 

梱包材と木の棒をまとめて肩に担ぐと拠点に引き返していく。

 

昼までの時間はジュジュと目一杯遊ぶ。地面を掘るのが気に入ったのか途中、ラプトルが埋まっていた場所を掘り返して遊び土まみれになる。

 

なんか犬みたいだな…

 

爪とぎの延長でやっているのかな? 気の済むまでやらせておいた。土魔術を覚えるかも知れない。

 

昼食を取った後はいよいよジュジュを連れての狩りに出かける。

 

ジュジュを入れた背負い袋を身につけて腰に大小を差すと水槽から魔水を取り出して服の間に滑り込ませて全身に纏っていく。熟練の水使いは普段からこうやって水量を増やしているらしい。

 

《ちょっと冷たいかも 》

 

ジュジュに注意を促して背負い袋の中にも魔水を入れていく。魔力で固めてあるから濡れる感じはないと思うが怖がるかも知れない。猫だし。

 

そう思ったが水のぷにぷにした感触を楽しんでいるようだ。体をふりふりして遊んでいる。良かった。

 

今回は水魔術のみを使用して狩りを行っていこうと思う。

 

カイルゼインとの戦いやリスティの戦いを見て一つの属性を磨いて行くことも重要だと考えるようになった。オードも確かそんなことを言っていたな。

 

もちろん多彩な魔術を使うことは大きなアドバンテージがある。相手に知覚されにくい魔術を不意打ちで使用して対処させない戦術は有効だ。複数属性を組み合わせた魔術も強力であり、逆転の一手になり得る。実際、そうやって勝利を掴んできた。

 

だが、思い返してみればその分、魔力効率がよろしくなかったような気もする。攻撃と防御、防御から攻撃の流れも綺麗に繋がっていないようにも思う。

 

カイルゼイン戦では雷魔術のみを使用していたが使いながら改良することも出来ていたし派生魔術へ繋げる流れも普段よりスムーズにいっていた。

 

リスティの魔術を見て時間を掛けて基礎を磨いてきた者が持つ所作の美しさに魅せられたところがある。

 

性格的なものも有るのかも知れないが、比べてしまうと俺の魔術は鋭さと苛烈さに偏っているような気がしてしまう。戦闘魔術だからそれが悪いとは思わないがどうにも粗が気になった。

 

別のアプローチで頂きを目指すのも面白いかも知れないと思ってしまったと言うことだろう。

 

他の魔術士がすなる魔術というものを石の私も云々かんぬん…

 

新たな可能性にちょっとわくわくしている。

 

中層に向かい獲物を探して気配を消しながら歩いて行く。数時間掛けていくつか痕跡を見つけ相手の気配を確かに捉えることが出来た。

 

幸先がいいな、この分ならそう遠くないうちに接触出来そうだ…

 

そう思いつつ相手に接近していく。

 

しかし、どうだろう。相手もこちらに気付いたようでこちらが近づいた分、相手も遠ざかっていく。

 

しばらく静かな追いかけっこをした後、相手はこの状況に耐えられなくなったように駆け出してどこかに行ってしまった。

 

水術を維持したままでは気配を抑えるのが難しいな。隠密歩行なんかの体術系が疎かになっている。

 

予想はしていたが一朝一夕でモノに出来るほど甘くはなかったようだ。

 

 

朝から昼までジュジュの運動やしつけを行い、昼から夕方まで探索を行う事を繰り返して訓練を重ねていく。

 

五日ほど経ったときようやく獲物を視界に捕らえることが出来た。

 

イノシシ系の魔物だ。突き出た牙と赤い(たてがみ)が特徴の魔物、バルテス・ウゼラムだ。以前に一度、狩ったことがある。

 

車より大きい。前の個体よりも大きかった。上級まではいかないだろうけれど届きそうなレベルにまで育っている。

 

今いる場所は中層でもやや表層寄りの場所だ。ここで遭遇するのは異変の影響を感じさせる。

 

狩った方がいいな…

 

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