機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第214話 祭り② x ルシウス邸の茶会

心拍数上昇、体温上昇… 異常事態だ… いや、それが正常なのか?

コアのモニタリングだけで判断すると異常と正常がわからなくなるな…

 

興奮を抑えつつ、アニスと会話をしながら会場を回り、食べ物や飲み物を確保していく。ある程度の量を確保すると席について二人で食べ始めた。

 

まずブイヤベースのような汁物からいただく。スープを一口飲むと口の中いっぱいにイルガムロの旨味が広がっていく。多少魚介特有の臭みのようなものはあるがそれが不快じゃない。後味にスパイスとか香草の香りが感じられていい塩梅になっていた。

 

この味付けは…

 

「あの店の味付けに似ているな… 」

「わかるか? 今日はおやじさんも店を閉めて(うたげ)を手伝ってくれてるからな…うまいだろ? 」

「ああ… うまい 」

 

イルガムロだけでなく他の魚介も野菜とかも入っている。多くの人がいろいろな食材を持ち寄ってくれているらしい。

 

昨日も食べたような串焼きとか野菜とモツを一緒に炒めたものとかを食していく。昨日と違っていろいろな部位を使用しているようで味や食感にバラエティーがあった。

 

アニスにいろいろ聞いて説明を受けながら食べていくのがなんか面白い。シチュエーションや情報も味として感じられるのかも知れない。俺が一人で食べているだけだったらなんか違うなーぐらいの感想で終わっていただろう。

 

「レインなら食べても平気だな…ちょっとこれを食べてみてくれるか? 」

 

ある程度食が進んでいくとアニスが肉片のようなものを差し出してきた。ちょっと白っぽい色をしていて今まで食べたものと毛色が違う感じがする。

 

食べても平気… 言い回しに何となく不穏なものを感じるな…

 

まあ、この体なら大抵のものは食べても平気なんだろう。だからと言って変なものを食べたいとは思わないが…。

 

アニスを信用して食べることにする。

 

噛むととろけるような食感がある。味はこってりしている感じで独特の旨味と臭みがある。後味にひりつくような熱くなるような感覚があり、酒を飲んだらこんな感じを受けるんじゃないかなという感想が浮かんできた。

 

俺は酒を飲まないが酒飲みは好きな味なんじゃないかと思う。

 

「そこまで好きじゃないみたいだな。レインは酒を飲まないしそんなものかもな… 」

「これはどういったものなんだ? 」

「イルガムロの肝臓だ。ここではロテルって言うんだけどな…酒飲みはだいたい好きだ。ガムロのやつより味が濃くて上等だからみんな喜んでいるよ 」

「アニスは好きなのか? 」

「ああ、あたしも好きだ。これを食べると仕留めたって気分になる。クセになる味だ。子供とか体が弱いやつが食うと腹を下すんだけどな 」

 

腹を下すのか…こちらの世界で腹を下すのはよっぽどのように聞こえる。魔毒の類いではなさそうなんだがな…。

 

地球で言うとマグロの肝臓みたいなものか? マグロのような大型の魚類の肝臓はビタミンEが多すぎて食べるとビタミンE中毒になるらしい。詳細はわからないがたぶんそんな感じだろう。

 

もう一切れぐらい食べておくか…

 

やはり特異な味だ…食べ慣れれば好きになるかも知れないが今はそこまででもない。いつかハマる日が来るんだろうか? ジュジュは好きみたいだな、結構がっついて食べている。

 

俺より先に行ってしまうのか…

 

その後も飲み食いしながらアニスと雑談に興じていった。

 

腹もいっぱいになったところで席を立ってイルガムロの骨格標本を見にいく。アニスも俺の隣に並んで見ていた。この後、狩猟ギルドに売却するという。アニスにとってもこれで見納めとなるようだ。

 

酔っているせいか顔に朱が差しているがその眼差しはしっかりしていた。真剣に骨を見ているその横顔に何を思っているのか興味を引かれる。しかし、アニスを見てばかりもいられない。

 

標本に視線を移して詳細を見ていく。骨格は大きさもさることながら、魔力変異によってダイナミックなラインを描き、魔力の高さも相まって、見るものに畏怖の念を抱かせる。

 

良く仕留めたな、俺…

 

俺一人なら難しかっただろう。船団の強力無しには無理だった。そもそも船もないし戦うことすら出来ない。

 

一歩間違えれば換装させられていたかもな…

 

飛び上がって頭の上に登る。綺麗に肉が剥がされていて本当に骨だけになっていた。骨の感触はとても硬質で安定感がある。

 

俺は戦いの最後に自分で付けた刀傷を確認してみる。額の所に刀身の形に綺麗な穴が空いていた。穴の方が刀身の大きさより一回り大きい。電子で削り取ったからだな。

 

こんな風に仕留めた獲物を見るのははじめてだ。感慨深いものがあるな…

 

戦いの余韻に浸っていると人が集まって来る気配を感じる。周囲が少々騒がしい。いつの間にか周辺に子供が集まってきていた。

 

俺に触発されたのか台の上に上がって骨にしがみついたり叩いていたりしている。そうしているのは男の子が多いな。勢いよくパンチをかましては痛がっている。全力ではないようだが本気でやってもビクともしないだろう。

 

骨の上から降りるとアニスがこちらに近づいてくる。再び骨を見ながらの会話が始まった。

 

「こうして見るとホントにえらい迫力だよな…あたし達が仕留めたんだぜ、これを… 」

「ああ、俺も正直驚いている。海狩りがこんなにもやりにくいものだったとはな…予想はしていたが実際の方がずっと大変だった 」

「レインは凄いよ……本当は普通のガムロ狩りにも参加してもらいたいんだけどな…しばらくは休漁だ。漁の間隔は開ける決まりになってるんだ 」

「まあ、船も破損したしな。修理も休息も必要だ 」

「普通のガムロもレインに食わせてやりたかったんだけどな…こいつも美味かったが味はガムロの方が美味い 」

 

………なに!?

 

「そうなのか? 」

「ああ、魔力の詰まってる感じはこいつの方があるけど、脂の乗りとか旨味はガムロの身の方が上だな…ロテルはこいつの方がうまかったけどよ

 あたし達で食べる分と売る分で直ぐになくなっちまうから獲りに行かないとないんだ。悪いな… 」

「売った分とかは街で買えないのか? 」

「出せば直ぐに売れちまうからな…運が良くなきゃ買えないな 」

 

…そこまで言われるとちょっと興味が出てきてしまったが、今回は望み薄だな。そこまで直ぐに漁が始まると思えない。

 

しかし、普通のガムロの方が美味いのか…

 

マグロも確か三百キロ超とかデカいヤツよりも百キロぐらいのヤツの方が美味いとか言う話もあったな…そんな感じなんだろうか?

 

だが、イルガムロはこれしかサンプルがないから統計的にどうだとか言えないな。昔に仕留めたというヤツはどうだったんだろう?

 

こいつは魔力変異をさせてしまったからな…その分、いろいろな物質を消費した可能性がある。それ以前にもダメージを与えてしまったから身が痩せてしまったのかも知れない。

 

サクッと狩れていたらまた違った味になっていたんだろうか? まあ、今更考えても仕方がないな…

 

しばらく雑談を続けているとこちらに近づいてくる人達がいる。みんな女性だった。年齢はアニスと同じぐらいには見える。

 

「あなたがレイン君かしら? 」

「ああ、そうだが…」

「アニスとはどんな関係なの? 恋人? もうシた? 」

 

ぶっ… あけすけだな。ここらへんはそう言う文化なのか?

 

「ちっ、ちげーよっ。まだそんなんじゃねえ 」

 

アニスはこの手の話に慣れていないようだ。地域性でもないのか?

 

「まだ? じゃあこれからスるの? 今夜? 」

 

ナニをスるんですかね?

 

まわりの女性はワーキャー騒いでいる。なんか解ってきたな。こういう話が盛り上がるのは世界を超えて共通なのかも知れない。女性同士の話に男が入るのはハードだが。

 

「レイン君はどうなのかしら? アニスを誘うの? 」

「えーっ、私も誘って欲しいな? 」

「お姉さんも一緒にどうかしら…? 」

 

俺の方にも来てしまった…当然か、格好のネタを提供している。

 

何か言うべきか?

いやいやいや、無理っすよ…

 

女性のおふざけに巻き込まれては生き残れる気がしない。こういう状況に対処出来る魔術があれば……いや、そんな万能なものじゃない。

 

ひたすらに曖昧な返事だけを返してその場をやり過ごしていった。

 

 

ホテルのベッドの上で目を覚ました。窓から入ってくる日差しで意識が覚醒していく。外では雀のような小鳥がちゅんちゅんと鳴いている。爽やかな目覚めだ。

 

ベッドの上には他に四人の女性が俺に絡みつくように寝ている。みんな全裸のようだ。時折、身をよじって艶めかしい寝息をあげる…

 

 

 

 

 

…え?

 

 

 

 

 

……なわけない、夢だ

 

夢の中から目を覚ますとベッドの中にはジュジュがいた。別々で寝ていたと思うのだが途中で入ってきたらしい。それが影響してあんな夢を見たんだろうか?

 

それにしてもリアルな夢だった。脳で見ていたんだろうけど、魔石やコアの影響があるのか…わからんがまあ、いい…

 

それよりも俺は溜まっているんだろうか? コアで抑えは出来るんだけど、ふとした瞬間に暴発するなんてことがあればことだ。こちらの性事情が気になるが話題が話題だけに人に聞けない。

 

それ系の本なんてあるんだろうか? あったとしても本屋では買いづらい。Amazunといったネット通販があったらな…それ以前にネットがあるなら本じゃなくても情報は手に入るか…。

 

地球と比べてもしょうがない。とりあえず起きよう

 

ジュジュを起こして身支度を整える。そういえばファムは魔術実験はしていないみたいだな。魔術の気配はしない。

 

そんな日もあるか…

 

とりあえずいつものオープンカフェに行き朝食を取ると海岸でジュジュと遊びながら魔術訓練をして、そのあと漁港にいき魚を食べる。そんな感じに過ごしてとにかくここに来た目的である魚食を満喫する。会えばファムやグラスやアニスと交流を持った。

 

 

土曜日の早朝に海岸でファムと魔術の訓練をしながら話をしていると家に招待したいと告げられる。なんでもルシウスが俺と話がしたいとのことだった。

 

特にやることもなかったので快諾して三時頃に向かう。近くに来ると家の周辺をうろついて一応不審者がいないか確認してみた。

 

特に何もなかったので家を訪れるとルシウスが出迎えてくれた。学院は土日が休みだそうで今日は一日中家にいるのだという。

 

ガーデンテラスがある家でそこに通される。ここでお茶でも飲みながら話をしようという流れになった。

 

ファムも家にいたのでこちらに来て話に参加する運びとなる。学校は土曜日は午前中までと言う。午後から一緒に遊びに行く予定だった友達がこれなくなって暇になったらしい。

 

俺とジュジュ、ルシウスとファムでテーブルを囲む。テーブルの上にはケーキとハーブティーが並ぶ。菓子とかはあまり食べる習慣がないから久しぶりな気がする。

 

特別好きというわけでもないがこういう席だとなんとなくテンションが上がるものだ。この雰囲気は悪くない。

 

しかし、ジュジュはお菓子を食べないしハーブティーも飲まない。

 

前にもあげたことはあるが食べなかった。ネコ科の動物だから甘味を感じられないようでどうにも味がしないらしい。苦みや渋みは苦手なようでお茶は飲まない。まあ、無理に摂取する必要のないものだ。こちらに合わせる必要はない。

 

ひとりだけジャーキーとミルクで参加してもらう。

 

そう言えば足りないな…

 

ルシウスの奥さんがいないことに少々引っかかりを覚えていたが、聞いていいのかわからなかったから聞かないでおいた。気まずくなるような答えが返ってきたら後悔するかも知れないからだ。

 

そんな俺の内心を察したのかルシウスの方から事情を説明してきた。なんでも奥さんは今二人目を妊娠中で入院をしているそうだ。

 

安定期に入れば多少魔力が戻ってきて家に戻れるようになるそうだが、今は魔力の消失期で精神的に不安定になっていると言う。一人で家に置いておくより病院にいた方がいいらしい。二人目だから慣れたのかあまり重くないそうだがファムの時は結構大変だったそうだ。

 

いろいろ聞いてしまうのは失礼かと思ったが、この際だから突っ込んで聞いてみる。ルシウスの方から振ってきた話題だし学者だからそこまで遠慮しなくていいだろう。これは学術的な話だ。

 

俺が人間として生きる以上、知っておいた方がいい。何かしらの形でこういう事を問われる瞬間が訪れるかも知れない。

 

ファムも自分の出生に関わる話はあまりしてこなかったようで積極的にルシウスに質問を投げかける。ちょっとしたディスカッションのようなものになっていた。

 

気軽に話を聞く感じではなくなってきたな…

 

 

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