機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第225話 帝国料理 x 招かれざる客

トンネルを抜けるとそこは雪国……ではない。そこまで代わり映えのない景色が続く。

 

当然と言えば当然だが…

 

真っ直ぐな道を進んでいくと森林地帯から草原地帯になり、さらに農地が広がる場所を経て都市部に入る。オルバン公国北部の最大都市、アッシェバーンだ。

 

高速道路の出入り口は郊外でも外縁部付近ではあるが、街の中に直接入り込んでいた。ヴィルフォートよりもかなり大きな街だ。ビルの建ち並ぶ様子からいって非常に文明の発展を感じる。帝国の底力を見せつけられているかのようだ。

 

ここオルバン公国は帝国から任命された大公が治める、言わば帝国の飛び地といった国だ。地球で言うところのイタリアのように、内海に飛び出た半島とその根元から成り、北部は山々で囲まれていてトンネルが出来る前は他国と断絶されていた。

 

半島の先端にある南部最大の都市であり首都でもあるイシュバーンには大きな港があり、帝国と交易を行っているのだが元々そこから始まった国であるらしい。

 

帝国から船でやって来た人員と物資により半島部を開拓していった。そこを拠点にして北部を開拓していき東西の国へ繋がるトンネルを建設していったと言う。

 

トンネル自体は旧文明の時には既にあったらしいのだが長い年月を耐えることは出来なかったらしく崩落して塞がっていた。それを帝国が復活させたと言うことだ。

 

このルートを選んだ理由の一つは帝国に行く前にここを通るようにしたかったからだ。帝国に行く前に帝国がどんな国であるのかその一端でも感じてみたかった。

 

ひょっとすると帝国から離れているが故に、より顕著に帝国らしさを感じ取れるかも知れない。

 

長居をするつもりはないんだけれどな…

 

あくまで知れたら知ろうぐらいの軽い気持ちだ。

 

いつものように公的機関に寄って都市の情報を仕入れるとホテルを探して部屋を取る。

 

その後、ジュジュも入れるようなおすすめのレストランを聞いてそこに行く。メニューを開く俺の手は少々浮ついていた。なぜならばこの店は帝国料理を出す店だからだ。

 

他の帝国系の国々とあまり食文化は変わらないと思っていたのだが調べてみると帝国料理は結構事情が異なるらしい。

 

帝国は獣人連邦国を始めとする周辺の様々な国々と交易を行い食材を集めている。そうやって旧文明の料理を復活させようという動きがある上に、飲食店の競争が激しく新しい料理の開発も進んでいるという。

 

何が出てくるかわからないびっくり箱のようなわくわく感があった。

 

名前を見ても良くわからなかったので適当に前菜とかメインとかのジャンルから選んで注文した。

 

料理の到着を待っていると始めに前菜がやってくる。それは油で揚げた春巻きのような料理だった。上からソースがかかっている。ソースだけフォークにつけて舐めてみると甘辛くてクリーミーな、少しスパイスのきいたピリッとした味だった。

 

フォークで刺してナイフで切ると口に運ぶ。

 

噛むとパリパリとした食感の次に野菜のシャキシャキした歯ごたえを感じた。中心部分にはねっとりとした柔らかな食感がある。

 

なんだろうな、これ?

 

噛むと微かに甘いような酸っぱいような味がする。最初は芋かと思ったが違うようだ。断面を見ると白っぽい物が中心にある。

 

チーズ…? いや、違うな…熱で溶けていないし臭みや油っぽさがない。

これは、バナナか…

 

俺が知っているバナナとは異なるようだが、この世界にもバナナがあるようだ。面白い組み合わせだし、ちゃんとした料理になっている。調和の取れた味だ。油で揚げているのにサッパリとしていて上手い。

 

春巻きを食べている間に次の料理が運ばれてきてテーブルの中心に置かれる。俺はそれを見て既視感のようなものを覚えた。

 

なんだろうな? とても気になる…

 

いろいろな食材が混ざっている中に若干色づいているものの白っぽくて細長い粒のようなものが見える。

 

ひょっとして… 米か…?

 

スプーンで取り皿に掬って詳しく見てみる。

 

米だな…

 

形は食べ慣れているものとは違うが確かに粒の感じが米だ。長粒種というやつか極細で長い形をしている。食べてみるとパサつく感じがあるが米の食感と味がする。

 

米があることは確認出来た。たぶん、もっと種類は豊富にあるはず。日本のような米もきっとあるだろう。なんか希望が湧いてきたような気がする。

 

食べてみるといろいろな野菜や濃いめの味付けのそぼろが混ざっている料理のようだ。タコライスとかビリヤニといった料理に似ているのかな?

 

どっちも食べたことないけど…

 

味付けはエスニック風で香草の風味が強い。最初は上手いのかまずいのか良くわからなかったが食べているうちに味がわかるようになってきた。癖になる感じの味だ。

 

《・・・・・・》

 

ジュジュはあんまり好きじゃなかったみたいだな…俺が一人で食べることにしよう。その分、メインの肉料理をジュジュにあげるか。

 

そう考えていたらちょうどメインがやってきた。テーブルの上に置かれると俺は再び驚かされることになった。

 

芳ばしく焼き上がったふっくらとした丸いパン。それを真横に二つに切り分けて間に食材を挟んでいる。新鮮な生の葉野菜に輪切りにしたタマネギのソテー、そして一際存在感を放つ円盤状に成形されてから焼き固められた肉。そこに、茶色いとろっとしたソースがかけられている。

 

…ハンバーガーじゃねえか

 

てっきりパンとハンバーグみたいな料理のセットかと思っていたがまさか俺のよく知った形で一体となって出てくるとは思わなかった。だがまあ、これは嬉しい誤算だ。

 

どういった経緯で誕生したのか知らないがこれだけいろいろ試行錯誤がなされているなら鰹節や醤油といったものが存在する可能性が高まったと言えるだろう。

 

ぐっと丸ごと手づかみにしてかぶりつく。葉野菜とタマネギのシャキシャキ感がいいアクセントになっている。ソースと一体となった肉の旨味と油感をバンズが受け止めつつ、付け合わせの野菜がしつこさを和らげてくれている。

 

これぞ高級バーガーって感じの期待通りの味だ。

 

これでいいんだよ、これで…

 

《・・・・・》

 

既にバーガーを食べ終わっているジュジュから視線と念話が飛んでくる。俺はもう一口食べると残りをジュジュにやって米料理の方を食べることにした。

 

足りなければ追加で頼めばいいし…

 

 

食べ終わると店を後にして公園に来た。今日は俺もジュジュも体を動かしていない。時間もあるから腹ごなしついでに運動しておこう。

 

夜の公園は他に誰もいなかったのでちょっと激しめの遊びにする。近所迷惑にならないよう、音を立てないように跳躍や着地に気をつけて追いかけっこをしていく。周りのことを気にすると魔術は使えないので体術だけだ。

 

激しくも静かな遊びを行っていく。ほとんど音は立てていないはずだが近くに寄れば風切り音ぐらいは聞こえてしまう。

 

誰も来ませんように…

 

軽く汗が出そうなぐらい運動して二時間ぐらいは経っただろうか? 夜も更けていき早い人ならもう眠りについてもおかしくないぐらいの時間帯だ。

 

流石にこれ以上続けていけば迷惑になるかな…

 

敏感な人間なら魔力を感じているだろうし、普通の人でもベッドの中で静かにしていれば嫌でも捉えることになる。

 

《おしまいにしよう 》

 

ジュジュに呼びかける。だが、なんだか様子が変だった。虚空を見つめて頻りに耳を動かしている。

 

幽霊かな…

 

ムギとかも時々、あらぬところを凝視していることがあった。まるで、人間の感知出来ないものが見えているかのように。

 

ぱっと見でわからないような小さな虫が壁や天井に止まっていて、それを見ている場合もある。宙を舞うホコリを見ているなんてこともあるだろう。

 

人間の耳には聞こえないような家鳴りとか遠くの音、電磁波なんかが考えられもするが多くは原因不明だ。

 

それ故に幽霊を見ているとも言われる。

 

これはどういうことかな? 流石に幽霊はないだろうけど…

 

《・・・・・・》

 

そんなことを思っていたらジュジュから念話が飛んできた。魔物がいるらしい。

 

なんだ、魔物か

 

従魔ならちゃんと教えてくれるから安心だ…。

 

えっ、魔物?

 

ジュジュが反応するってことはネズミとかではなさそうだ。一定以上の害になりそうなレベルだろう。

 

こんな街中に!? ちょっと心配だな…

 

ジュジュに案内してもらって魔物を探していく。立ち止まって音を確認しては少し移動して立ち止まる。繰り返していき徐々に大きな通りの方に出てきた。

 

どうやら相手は下水道を移動しているようだな。ネズミか? どうなんだ?

 

どうやらジュジュはその音を拾っているらしいが俺にはサッパリ聞こえていない。

 

索敵術をフルに使っても下水道の中を網羅するのは難しいかな? 空術ならある程度いけそうだが…

 

そんなことを考えていると結構広い通りにやって来た。ジュジュはそこに入る手前で止まり、建物の影に隠れてじっと様子を見ている。視線の先には地面に設置されたマンホールの蓋があった。

 

あそこが終着点のようだな…

 

俺も身を隠して意識をそこに集中して探ってみると地下から何かが上がってきているようだ。マンホールに設置された梯子を器用に登ってきている様子がわかる。それに合わせて完全に気配を消していく。

 

? 人間じゃないよな?

 

きっちり梯子を登ってくる魔物に心当たりがない。まさかと思いつつ見ていると蓋がわずかに持ち上がり横にスライドしていく。

 

器用だな…これで下水道の職員だったら拍子抜けだが

 

ジュジュが魔物と言ってるなら間違いないんだろうけど、目の前の出来事が如何せん強烈すぎる。間違いである可能性も考慮しつつ事態を見守っていると、蓋が完全に開く前に隙間から何者かが頭を覗かせた。

 

暗くてよく見えないが形は人間に似ているようにも感じる。ただ、大きさは人間にしては小さい。

 

周囲を警戒しているのかキョロキョロと周りを見回すと俺達に気付かなかったのか穴から這い出てきた。

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