機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第232話 捜査官

土術により処理場から配管が通っている場所は発見したのだが直ぐに畑にぶち当たってしまい追跡は困難になった。

 

だが、見通しがいい場所である。方向がわかればアッシェバーンまで直線的に繋いでいるだろうし、おおよそのルートはわかる。途中途中で農道上から確認出来るしな。

 

脳内に地図を思い浮かべつつ周辺を見回していく。すると、農地の所々に大きめの建物が建っているのが目に付く。

 

なんだろうな?

 

人間がかかわっているかも知れないことを考えたら、なにやら怪しく見えてきた。

 

接近して調べてみると、どうやら収穫物を貯蔵したり農機具を保管したりするための建物のようだ。敷地にも中にも入るわけにはいかないが、外から魔力でさぐりを入れてみる。

 

その結果として怪しいところはないようだった。だが、良くないことを企むような輩がわざわざ怪しいものを造るなんてことはない。

 

《・・・・・》

 

念のためジュジュにもさぐりを入れてもらったが特になにもないようだ。

 

しかし…

 

怪しくないところが怪しい…

 

まあ、それを言ったら世の中の何もかもが怪しいんだけどな

 

上物に怪しいところがないなら地下ならどうだろうか? そう考えて地中に魔力を浸透させてみる。すると、地下にも構造物があると言うことがわかった。かなり深くまで伸びているな。

 

これは当たりか…? とも思ったが、穀物を大量に貯蔵するための容器みたいなものが地下に設けられていても不思議ではない。

 

周辺の他の建物も同様に調べてみたが、地下設備はあったりなかったりだ。その中に当たりがあるのかも知れないが、ふるいにかける方法はない。

 

おまけに対象になるような施設は下水処理施設側だけにあるわけでもない。

 

距離は遠くなるが河川とは反対側にある同様の建物も候補に入る。そこまでは調べきれないし調べたところで何もでないような気がする。

 

行き詰まってしまったな…

 

しかし、とある建物を探ってみた時だった。その深くに何かが埋まっているような感触がしていた。なんとなく気になる。

 

気のせいだったかも知れない。ただ大きめの石が埋まってるとか、硬い地層がそこら辺だけ盛り上がっていると言うこともある。

 

そこまで期待は出来ないが、もう一度調べてみることにしようか…

 

例の感触があった建物に引き返して再び地中に魔力を通していく。

 

やはり何かがあるようだな…

 

手応えはある。しかし、相当深くに埋まっているようで魔力の届きが悪い。指先だけ届いているような感じ。

 

コアブーストを使うか…

 

そう思って気持ちの準備をした時だ。何やら人がこちらに近づいてくるのを感じた。

 

中断してそちらを見ると一人の女性が歩いて来ている。ここは視線が通るからそれなりに距離があっても見えるな…。

 

女性は黒っぽい髪色をしていた。魔力変異だろうか? それを長く伸ばして後ろでポニーテールにまとめる。カッチリした紺色の制服のような服装で身を固めていた。よくよく見ると警察の制服に似ている。紋章もあるようだし警察官なんだろう。

 

相手は完全に俺を標的にしているようだ。視線も魔力波もこっちを向いている。

 

ひょっとすると職質ってやつかな?

 

日本だけだと思っていたけど、こちらの世界にもあるんだろうか? だとしたら不思議な縁を感じるな…

 

そんな俺の思いなど知る由もなく、女性はどんどんこちらに近づいてきた。何かしたわけでもないのだが、なんとなく悪いことをしたような気分にもなる。

 

距離が縮まると顔もはっきりと見えてきた。目の色も髪色同様黒っぽい紫をしているし魔力変異なんだろう。

 

しかし、表情に感情らしきものは表れていなかった。魔力からもどういった感情なのか読めない。

 

わからないと不安だ…

 

客観的に見ると確かに俺は不審な行動をしているように思える。狩人が農地で何やってるんだって話だ。もしかすると通報でもあったのかも知れない。

 

これは、署までの同行をお願いされちゃうか…

 

取り調べを受けることになったらその間ジュジュはどうなるんだろう? 賢いからひとりでも平気だと思うんだが…従魔が証拠隠滅に動くと判断されて軟禁だろうか?

 

それは良くない…せめてカツ丼でも出してくれればいいんだが…、まあ、今時ないか…古い刑事ドラマのワンシーンでしかない。

 

ああ… 無性にカツ丼が食べたくなってきた…

 

そんなことを考えていると俺の目の前までやって来た。相変わらず表情は読めない。そして、沈黙を破り女性の方から声がかかる。

 

「ここで何をしている? 」

 

凜と澄んだ声で質問をしてきた。しかし、ちょっとキツい感じだ。友好的であるとは思えない。

 

カツ丼コースか…

 

しかし、どこかで聞いたことのある声だ。

 

「街に現れた魔物について調査しているんだ 」

「それは我々の仕事だ。君は狩人なんだろう? 自分の仕事に専念してはどうかな? 」

 

あまり友好的に接してはくれないご様子…それもそうか、素人に引っかき回されては堪らないよな… しかし…

 

「今回はご協力感謝するって言ってくれないんだな… 」

「なに… 」

 

ここで始めて女性の顔に変化が表れる。顔も隠していたし声の感じも魔力の感じも変えているからわからないと思っていたんだろう。

 

でも残念…音声分析だよ。コアの力だ。

 

「この件にはもうそれなりに関わってしまっているからな。あんたが知らない情報を俺は持っているんだ。お互い協力し合った方がいいと思うんだが… 」

「ほう? どんな情報なんだ? 」

「………迂闊に話すと思うか? 」

 

やっべぇ、言うところだった。話したくてうずうずしている自分がいる。

 

「思わないな… 何が望みだ? 」

「そちらが持っている情報だ。協力するためにも情報交換と行こうじゃな「駄目だ 」

 

即答!? 食い気味に来たよ…

 

「信用は出来ないな。捜査情報が漏れる可能性がある。それに信用が出来たとしても部外者に漏らすことはしない 」

 

正論だな…

 

裏に人間がいるかも知れないことは警察も把握しているんだろう。情報漏洩はよろしくない。しかし、俺に嫌疑を持っていると言うわけではなさそうだ。

 

口ではそう言いつつも最低限の信用ぐらいはありそう…

 

「お前の持っている情報も狩猟ギルドに問い合わせれば手に入るだろう 」

 

……正解だよ

 

報告書にきちんとまとめて提出したからな。俺はやるべきことはやる人間だ…それが徒(あだ)になったようだが

 

まあ、情報はしかるべき人間に共有されてなんぼだ。それはいい。俺がこの警官にとってしかるべき人間ではないってだけだ。

 

ははっ…

 

「そうだな、是非とも手に入れてくれ 」

 

読まれない報告書はただの無駄さ… 便所紙にすらならない

 

「しかし、俺は俺で調査は続ける…あんたが邪魔に思おうとな。狩人は自由だ。指図は受けない 」

「そうか、それでは仕方がない。私に止める権限はないしな、、、だがくれぐれも我々の邪魔はしてくれるなよ? 」

「それは保証出来ないな。ケ・セラ・セラだ 」

「なんだそれは? 」

 

俺は女性警官の疑問には答えず背を向けて去って行く。

 

謎の捨て台詞を残して去る流れの狩人。ちょっと気になるだろう。せいぜいその意味を考えて悶々としてくれ。

 

調べたとしてもわからないだろうけどな…

 

たしかスペイン語だったかな?

 

トライクのところまで戻ると彼女と会わないように大回りをしてアッシェバーンに戻る。あんな風に去った手前、直ぐに再会するのは非常に気まずい。索敵まで駆使して全力回避した。

 

街に着くともう一度ホテルの部屋を確保する。幸い同じホテルで部屋が取れた。

 

貫徹をしたし朝食も昼食もろくに食べていない。なので、軽く何か食べたいと思い大通りに行って食事を済ませてからホテルに戻る。

 

調査を続けるか迷ったが、なんとなく気疲れがあった。これ以上外に出たくないなと思い、夕食はルームサービスで済ませて、この日はさっさと寝た。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

(別視点)

 

調査から戻るとリエラは割り当てられた部屋に戻り自分の席へ着く。

 

机の上には彼女の部下が調査してまとめ上げた報告書がいくつか置かれている。それを物凄い勢いでめくり上げながら読んでいく。それなりの厚さがある報告書が数冊あったのだが見る間にすべて読み終えてしまった。

 

(成果は無し、か… )

 

下水道の中を調査している班からの報告では未だに何も発見出来ていないとのことだ。それは無理もない。たった数人ではこの巨大都市の地下に複雑に張り巡らされた迷宮を隅々まで調査するのは不可能だ。混凝土に魔力を通すのは難しい。

 

帝国から来ているのはリエラの班ともう一つの班の計二班、総勢十二人でありいずれも精鋭と言って差し支えのない手練れが揃っている。それでもその中に混凝土魔術を使えるものは一人もいない。

 

使えるのであればもっと安全で割のいい仕事に就くだろう。魔術さえ使えればより詳しい調査が可能だと考えているがそれは今の持ち手では不可能だ。

 

水道局からの協力は取り付けてあるし情報はもらっているが、そちらも満足のいくものではなかった。

 

あくまで通常業務の範囲内で行われることで捜査のための特別なことはしていない。職員の中には混凝土魔術を使用出来る者が少なからず在籍しているがあくまで劣化箇所の調査や修繕のためのもので彼らは捜査の専門家と言うわけではない。

 

自分も下水道から繋がっていそうな場所をしらみつぶしに当たっているが、今のところ成果は得られないでいる。

 

この事件には人間がかかわっていると自分の勘が囁いているのだがそれ故に危機感を抱いている。捜査が進展していないことに多少の焦りがあった。

 

この件は不気味だ。下水道から現れた魔物の姿にも異質なものを感じたが事件の起こりや経緯から言って不気味なものを感じていた。

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