リューミオン遺跡と同じ感じがする。間違いないだろう。旧文明の遺産…理力によって稼働している生きた遺跡だ。
地下道を発見した時は遺跡じゃないかとワクワクしていた。結果としてそれは違っていてがっかりもしたのだが、本当に遺跡を発見出来たことで俺は結構感動している…はず……なんだが……
そこまででもないな…
おそらく既に誰かに発見されているからだろうな。しかも、隅々まで調べ尽くされている。こうして遺跡の周辺にきっちりと地下道が整備されているのだ。調査していないはずもない。
「レイン…ここはなんなの? 」
「ウワサぐらいは聞いたことないか? 遺跡だよ。旧文明の人々が作り上げてそのまま残った…大異変の遺物 」
「へぇ、こんな所にあったんだ…聞いたことないや 」
ニルスはウワサも聞いたことなかったようだ。俺も役所で聞いただけだからな…一般的には知らない話か。一部の歴史好きの間でしか聞かない話なんだろう。
「何のためにこんなのを作ったのかな…? 」
「それはわからない。だが、気をつけた方がいい… 」
遺跡そのものから敵意のようなものは感じられない。デザイン的にも、防衛機構を備えているような感じではなかった。ただ、コンクリ部分を作ったヤツらが何かをしている可能性もある。遺跡そのものをいじれるとは思えないが警戒するに越したことはない。
一見したところ、入ってきた場所以外に道はないようだ。となると、いくつかある床から飛び出ている円筒形をした構造物に入らなければならない。そこには扉がついていた。おそらく、エレベーターのような仕組みになっていると思う。
円筒にゆっくりと近づき扉の前に立つ。すると反応がある。
円筒全体が薄ぼんやりと光り、扉が開いていった。
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魔境側通路から遺跡部分に侵入者達が入ってくることを察知したオリバーは遺跡の制御室に移動してきた。
その間に、二人いた人間の反応が一人になったことに
制御室の中にある椅子に腰掛けると、制御盤に埋め込まれた理力石に魔力を流し起動させる。制御方法の解析には苦労したが、理力石を過去に扱ったことがあったので何とか制御できた。
四苦八苦しながらも、ある程度機能について使えるようにしていたのだった。
その時の感情が胸に去来したのだが、今、そんなことはどうでもいいと切って捨てて、目の前の事態に集中する。
空中に平面上の映像を出現させると、そこにはきらびやかな部屋の様子が映し出されていた。視点を動かし地下道への入り口を写す。そこに合わせたまましばらく観察していると、待ち望んでいた一行が姿を現した。
(やはり来たか… レイン・シス・プラムゼフレルド )
映像には、前に大学構内で会ったことのある黒髪の人物が写っていた。たった一度だけの接触であったがオリバーの記憶にしっかりと爪痕を残している。
あれからレインについて可能な限り調べてみた。多少の危険はあったが、狩猟ギルドに問い合わせを行いもした。その結果は予想の範囲内ではあったが、驚くべきものだった。
この数年の間に数々の功績を打ち立てている新進気鋭の狩人だと言う。狩人としての経歴は浅いながらも、“黒き旋風”、“千技”、“黒迅雷”など、様々な二つ名を付けられている。学会や騎士団との繋がりも深い。
レイゼルトに現れる前の経歴は一切不明。おそらく、この間に帝国との深い繋がりがあったのだとオリバーは考える。帝国の暗部、その一端を担う危険な男という認識だ。次に出会えば、ためらいなく自分の首を落としにかかるだろう。
確実にここで殺さなければならない。そう決意を新たにして他にも意識を向けていく。
当然のものとして猫系の強力な従魔が付き従っている。これを遺跡を利用して引き離すことが第一目標となる。
そして次に、従魔の上に乗っているものに視線をやるとオリバーは少々驚くことになった。
(こっ、子供…!? 何故こんな所に? )
魔石障害者も疑ったが、背格好から言って普通の子供のようにしか見えない。場違い感も手伝って、よくよく観察してみる。すると背中に何かが張り付いていることに気付く。
(これは…… ハンビィか!? )
この拠点を作り上げるに当たって、一時だが、ハンビィの存在が問題になった時があった。オリバーはその時のことを思い出す。通路を通していくときに、ハンビィ達の通路と接触したのだ。
もめそうになったものだが、大量の餌を与えて懐柔し、やり過ごすことが出来た。
社会性のある魔物は一匹でも殺すと全体と
そんなハンビィの習性と能力を考えるなら、地下道を発見出来たとしてもおかしくはない。
首輪をしているところをみると従魔のようだ。この少年が主人であるらしい。
レインが魔物使いの繋がりを通じて雇い入れたものだとオリバーは結論づけた。
アッシェバーンの件から、地下に何かを作り上げていると目星を付けたレインがハンビィの力を利用して探りを入れていく。その試みは見事に成功して魔境の地下道を発見した。そういう流れだろう。
突然、地下道の途中に現れたことにもそれなら納得する。
フルカヴントに辿り着いた経緯はわからないが、後ろには帝国の情報網がついている。物資の流れを掴まれたのだろう。その繋がりで街の入り口から侵入してきた者達がいる。同時期に二方向から侵入してきたのは偶然ではない。
「流石、と言っておこうか…… 」
思わず口から感想が漏れる。敵ではあるがその見事な手腕に舌を巻く思いだ。だが、感心してばかりもいられない。
切り替えて、レイン達の動きに注意して遺跡の仕掛けを作動させる瞬間を待つ。
映像の中ではちょうどレイン一人だけが発射口の入り口に接近してきた。
それを見てオリバーはとりあえず扉を開けてみる。
明らかに怪しい動きだ。誘っているように感じるだろう。しかし、普通なら入らないだろうが他に道があるわけでもない。
自身が建築した区域は事前に通路を塞いでいるのだ。目的が自分を殺すことならば危険を押して先に進む可能性も十分にある。
発射口は一人分の広さしかない。ここに入ったなら分断することは容易だ。
今か今かと、レインの行動を注視する。焦りにも似た興奮を抑えながら制御用の理力石に乗せた手に魔力を用意していた。
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開いた扉を前にしてどうすべきか考える。この遺跡に感じたように危険な感じはしない。
扉の中には特に何も無く、見ただけなら入ったところで何も起きないような感じがする。だがまあ、そんなことはないだろう。
おおかた、内部が動いて下の階に行くんだろうけど、コントロールを誰が行っているかわからないところが不安の種だ。
足だけ中に入れてみて床をつま先でちょんちょんと叩いてみる。
「なっ、何やってるのさ!? 危ないよっ! 」
それを見たニルスが心配の声を上げるが、特に反応らしきものはない。
完全に中に入らないと作動しないか…扉が閉まっていることも条件に入りそう
……まあ、入るしかないよな
正直ちょっとワクワクしている。旧文明の技術をみてみたい…
とは言えここは敵地だ。ニルス達の安全を確保する必要もある。やる前に方針を決めておくとしよう。
「これから俺はこの中に入るとする 」
「えっ、大丈夫なの? 」
「入ること自体は大丈夫だ。無事にどこかに着くことになるだろう。しかし、そこから先はどうなっているか分からない。安全って事はないな… 」
「じゃ、じゃあ引き返そうよ 」
「それはダメだな。ここで行われていることは街にとって危険だ。調べ上げて潰しておかないといけない。ニルスの望みは街にとっての脅威を取り除く事だろう? 誰かがやらないといけないことだ 」
「……うん 」
ニルスは俺の言うことに納得したのか深く頷いてくる。だが、恐怖が無くなるなんて事はない。ひどく不安そうだ。安心させるためにも、これからどうするのかしっかりと伝えておく。
「安心しろ、中に入るのは俺だけだ。ニルス達はジュジュとここにいて待っていてくれ 」
「危なくないの…? ひとりで… 」
「俺は大丈夫だ、強いからな。ニルスの想像よりもずっと強いと思うぞ 」
「そうなの? 」
「ああ、だから安心してここで待っていてくれ。ここなら安全だろう 」
《ジュジュ… ニルス達を頼んだぞ 》
「ニャ~ッ 」
いい返事が返ってくるが少し不満げだな。大丈夫だろうか?
ニルス達を置いていくことはないだろう。しかし、あんまり時間をかけるとどうなるかわからない。
A.S.A.Pでやるしかない
「それでは行ってくる 」
「気をつけてね 」
「ああ… 」
背中で答えながら円筒形の中に入っていく。完全に中に入ると音もなく扉が閉まった。
#
(何をしているんだ… )
オリバーは焦れていた。
レインが片足を入れた時はもう入るのかと面食らって、急遽、心の準備をした。だが、結局そこでは入らなかった。
なにやらハンビィ使いの子供と話をしているようだが、話の内容はわからない。
映像を呼び出すことは難しくなかったが、音声を理力で光信号に変換し、それをさらに元の音声に戻すことはそれなりに難しい事だった。
他にやるべき事があり、そちらを優先していた。そこまで遺跡機能の解読に労力を裂いていなかった。必要性の薄い機能だとずっと後回しにしていたのだが、今はそれが
ここまでの事態になるとは、計画の実行段階まで想像していなかったのだ。
(……入るなら早くしてもらいたいのだがね )
じりじりと映像を食い入るように見つめながら、無音の一挙手一投足を追っていく。
相手が壁を破壊するなど、別の経路を選択する可能性は少ないと考えている。だが、まったく無いわけでもなかった。
時間の経過とともに不安は
やがて、オリバーの待ち望んだ瞬間が訪れた。
レインは踵を返して扉の中に入っていく。
実際はそれ程の時間でもなかったが、オリバーには長い時間に感じられていた。
完全に体が中に入ると扉を閉める。移動先は既に指定してあった。あとは自動的に手順が遂行される。
(良しっ! )
これで分断にも成功し、実験体と戦わせることが出来る。心の中で軽く歓喜の声を上げた。