機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第55話 新しい生活 x 狩場の選定

翌日、借りた家まで行ってみる。外観はシャッターが閉まった商店と言った印象だ。違うのはシャッターの横にドアが付いていることか。

 

そのドアの鍵を開けて中に入る。入ってすぐの一階はほとんど何もない広い空間になっていてここに作業台や工具なんかを置いて工房として使用する設計になっている。シャッターは大型の機械かなんかを入れるためのものだろう。

 

奥に階段がありそれを上って住居スペースに行く。人一人が暮らすには十分な広さがある。キッチンにダイニング、清発室にトイレにベッドルーム。

 

一通り見て回ったが、築何年かわからないがなかなかきれいなものだ。おそらくこれも魔術で清掃や修繕(しゅうぜん)を行っているからかもしれない。

 

王立魔術学院か、、、どんな魔術を研究しているんだろうな、、、

 

魔術について考えるとあの荘厳な学び舎が頭に浮かぶ。

 

おそらく生活に役立つ魔術や産業に使用される魔術などあらゆることを研究しているのだろう。

 

いってみたいがだいぶ高いリスクを犯さなければならなくなる。もっと簡単な魔術教室みたいなものはないのだろうか? 今度ギルドで聞いてみるか。

 

それはともかく家具をそろえなければいつまでたっても引っ越しが出来ない。ベッドルームの広さを測り部屋のどこにどのぐらいの大きさのベッドを置くのかイメージする。

 

シングルでいいか

 

せっかくだからセミダブルぐらいにしようかと思ったが無駄にお金を使うのももったいないと考えてしまう。貯金はそれなりにあるがすべてイレギュラーな案件で稼いだものだ。通常の収入の程度がわからないうちに意義のあまりないことには使いづらい。

 

窓のサイズも測ってカーテンの選定に必要な情報を得ると家具店に向かう。(あつか)うものがものだけにかなり大きな店舗だ。入ってみると棚とか引き出し、テーブル、椅子、ベッド、さまざまな家具が所狭(ところせま)しと並んでいる。

 

日本より家具のサイズは大きめかもしれない。値段はやや高めかな。地球のように大工場で大量生産をしているわけではないだろうから比較にはならないけれど。

 

店員を捕まえて自分の希望を伝えておすすめを聞く。おすすめの理由を聞きながらその情報を元に考えを(めぐ)らせる。別の商品の説明を聞いたりして考えを固めていき購入する商品を決める。

 

購入したのはダイニングテーブルと椅子のセット、この国でシングルサイズに当たるベッドと枕やシーツなどの寝具、そしてカーテンだ。

 

配送してくれるそうなので住所を伝える。今日中に配送してくれるそうなので夕方前に受け取れるようにしていったんセリアの家に戻る。

 

今日中に出て行くことを伝えると、もうですかと言う顔をされたが言葉にするのは(こら)えたようだ。

 

こちらも名残惜しい気はしているがもう俺は狩猟免許を取った狩人だ。等級的には一流と言って差し支えないだろう。自分自身で生きていかなければならない。

 

こういうのはできるだけ早いほうがいい。獲物の方もヒモみたいな生活をしているやつに狩られたくはないだろう。そんなこちらの思いが伝わったのかもしれない。

 

セリアの家に置いてある自分の荷物をまとめるとセリアへの手紙が入った封を渡す。直接伝えたいところだがまだ帰ってきていないからしかたがない。

 

手紙にも書いたが新居の住所をジョエルさんに伝えて別れの挨拶をする。別れと言っても同じ王都内だ。会おうと思えば会えなくもない。

 

ここは城壁内だから気軽にとは行かないが。定期的に連絡も取らなければならない。軽い挨拶程度に済ませておいた。

 

自宅に戻り家具の到着を待つ。玄関のドアノッカーが叩かれる音を聞き対応にでると道路にトラックが止まっていた。シャッターを開けて適当に中に運んでもらうと設置の申し出を断り書類に受け取りのサインをするとそのまま帰ってもらう。

 

亜空間を使えば簡単に設置できるしな

 

そこまでしてもらうのは悪い気がした。まあ、こちらの世界の人間なら50キロ程度のベッドなんて簡単に運べるだろうが。実際自分で設置することも多いのか運送屋もすんなりと受け入れていた。

 

トラックで運んだのは一度に安全に運ぶためだろう。人がリアカーを引いて運ぶでも出来そうだが巨大なリアカーを人間が高速で引いて走ることを考えると危なそうな気がするな。この世界なら不可能ではないけれど。

 

地下軌道網の整備とか自動車専用道の設置から考えると徐々に人が走って移動することは減っていくのかもしれないな。

 

運び込まれた家具を亜空間にしまい二階に上がるとちょうどいい場所に向きを考えて亜空間から取り出していく。カーテンやシーツをセッティングして一応人が住める環境にはなったか。足りないものは住みながら発見して買い足していけばいいか。

 

これでいよいよ明日から狩人として本格的に活動をしていくことになる。俺は新たな生活の始まりに高揚していた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

まずはギルドに来て狩場の情報を集めよう…

 

なるべく他の狩人に会わないように狩り場を選択しなければならない。いざって時には亜空間を全力で利用することになるだろう。

 

深層を狩り場にするなら接触することはないと思うが他の上級狩猟者なら可能性がないとは言えない。

 

俺が狩り場に求める条件を整理してみる。他の狩り場から孤立していること。王都への帰還がしやすいこと。金になる獲物がいること。ギルドとして狩り場にして欲しい場所であること。上級狩猟者が訪れない場所であること。

 

、、、そんなところか

 

ギルド職員と地図を挟んでやりとりをして場所を絞り込んでいく。最終的に王都から真北に行った山脈の手前にある森、ラディフマタル森林となった。

 

「、、、しかし、よろしいのですか? 」

 

「なにがでしょうか? 」

 

「説明が重複(ちょうふく)しますがこの森林はどういうわけか魔物の生息域が不規則に変わる場所でして深層はおろか中層でも狩人はあまり近寄らない場所です。表層で初級狩猟者が狩りをするくらいで条件には合致しますが事故が絶えない場所です。

 

危険が周知され今では死人こそあまりでないものの危険な場所です。むしろ狩人が入らないことで危険性は高まっているかもしれません。あまり(すす)められる場所ではないのですが、、、」

 

「危険は承知の上だ。十分に下調べをしてから挑むつもりだしな。俺も命は惜しいんでな 」

 

歴戦の狩人っぽい言い回しをイメージして言ってみる。不敵な笑みを添えてだ。これで安心できるだろうか? 魔力の大きさは感じていると思うのだが。

 

「、、、わかりました。くれぐれも無茶はしないでください 」

 

「善処します 」

 

そう言っておけばとりあえずなんとかなるって俺は前世で政治家から学んだ。

 

、、、ならないか

 

「正直ギルドとしてはありがたい申し出ではあります。この魔境の周辺では他と比べて魔物被害が多いです。騎士団も定期的に魔物を間引いていますが魔境の情報が少ないので深い部分にまでは手が出せない状況です。情報を上げてくれるだけでも報奨金がでます。ですのでくれぐれも無茶はしないでください 」

 

同じようなことを二回言う。何とかなってないようだ。やはり政治家は当てにならない。

 

「もちろん無茶をするつもりはないさ。可能な限りギルドをあてにさせてもらうよ。可能な限りな 」

 

「そうしてください 」

 

実際にダメそうだったら他を当たるつもりではある。まずは情報を集めて準備を整えてそれから現地に行って更に情報を集めつつ中級の魔物でも狩るとする。そうしながら上級の魔物を狙っていくのがいいだろう。

 

手始めにギルドの書庫でラディフマタル森林についての情報を集める。書庫は図書館とは違って本が並んでいると言うよりは報告書の保管庫といった方が正しいのかもしれない。本も多いがまず膨大な量のファイルが目に付く。

 

書庫を管理する職員に該当の資料の場所を聞いてみる。そこに行くと聞いたとおりに魔境の名前が記載されたファイルが置かれていた。

 

やはり少ないな、、、

 

あまり狩猟者が入らない魔境という話だったがその通りのようで資料は少ない。主に表層の情報で中層がそこそこ、深層に至ってはほぼ情報がない。あとは討伐情報と事故情報か。

 

あやふやな魔物の目撃情報がいくらかあった。その中に気になるものがいくつかあったがはっきりしない情報だから気に留めて置くぐらいでいいだろう。

 

思いのほか速く調べ終えてしまったので魔物に関する学問的な本を少し読んで書庫を後にする。

 

ギルドを後にして狩人が狩猟に使う道具を扱う店にいく。ジスタやオードがいろいろな道具を使用しているのをみて俺もいろいろと用意した方がいいと思っていた。店の中を見て回って手当たり次第に買い物籠に入れていく。

 

発光筒、臭い玉、ロープ、丈夫な糸、テント、タープ、ガスランタン、ガス缶、鍋、フライパン、背負い水槽(すいそう)、燃油。ホイホイと買っていくが値段は見ていない。所狭しと並ぶ商品のジャングルの中でテンションが上がりすぎている。自覚はあるが止まるつもりはない。

 

商品棚を確認しているとある商品に目が行く。コウモリが襲ってきたときにオードが危険を知らせるために吹いていた笛だ。

 

15万っ、 けっこうするな

 

当面使う場面は想像できないが興味はある。どうやら魔導具ってやつに分類されるようだからな。店員に話を聞いてみると人間にだけ感じられる魔力の波動を発生させる装置で人間なら簡単に使えるようになるとのことだ。

 

人工的に作り出した魔石を使用していて値段は本来ならもっとするらしいが組合員だからこの値段で買えるらしい。

 

人工的に魔石を作り出せるのか。俺もいつか挑戦してみるか

 

保管には注意が必要で定期的に魔力を込めていかないと魔石が小さくなっていって機能しなくなるらしい。一定以上小さくなると魔力を込めて大きさを戻しても機能は回復しないそうだ。魔石の中の情報、魔力回路がなくなるからかな?

 

人間にしか使用できないものとなると使えるか確認しておかなければならないだろう。購入を決定する。

 

ほかにも見て回ると意外なものが棚に置いてあった。手榴弾と思われる丸い物体が置いてある。レバーとピンが付いているところは前世でも画像でみたことがある。むき出しで置いてあるのは模型のようで持ってみると中は空のようで軽い。在庫は木箱に封をされている。

 

火薬があるのか。俺も使ってみたいな~

入手できないか今度ギルドで聞いてみるか?

 

、、、難しい気がするな。等級が上がったらいけるかな?

組成を亜空間で解析すれば製造は可能か? 窒素が必要になるか…

 

コアから魔力を通すことが出来れば引き込むことは可能だが気体を効率よく取り込むには魔術を習得する必要がある。魔術学院に行きたいところだが危険か。

 

考えながら周辺の棚も物色してみるとやや形状が異なる手榴弾がある。こちらは円筒が主体の形状をしている。スタングレネードというものか。商品説明を読んでみるとやはりそのようなことが書いてある。

 

値段は手榴弾が2万でスタングレネードが5万か、、、

 

お試しで使用するには少々高い。コウモリ相手だったらスタングレネードがあった方が断然有利に戦えたと思うがあんな戦闘がそうそう起こるとも思えない。

 

今回はやめておくか。これに使うなら本に使った方がいいかな。狩りがうまくいって収入が安定したらにする。

 

会計をすると40万ぐらいになってしまった。グレードの高いものにし過ぎたか。だがこれは仕事で使うものだ。初期投資と割り切ってしまおう。

 

人目に付かないところで買ったものを亜空間にしまい、また工業地帯に出向く。製鉄所を人づてに何件か周り鉄を購入した後、自宅に帰る。

 

いつものようにトレーニングをしようかと思うがその前に買ってきた鉄を使ってトレーニング器具を作ることにする。一つ上の筋肉を目指していこうかと思う。

 

懸垂(けんすい)マシンやダンベルなど形が単純なものを作って工房に設置する。床は石で出来ているから耐荷重は問題ないがバーベルを落としたら割れるかもしれないな。今度下に絨毯(じゅうたん)のようなものを敷いておくことにしよう。

 

出来たばかりのトレーニング器具を使ってトレーニングを行い魔力順化の訓練もさらに出力を上げて行う。終わったら本を読んで一日が終わる。

 

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