機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第57話 ベースキャンプの設営 x 狩りの始まり

支部長との接見を了承すると案内してくれる。

 

「では案内いたしますのでこちらへお越しください。」

 

案内されて付いていくと特に飾り気のない普通のドアの前に来る。職員がドアを開けて中に通される。

 

窓側にこちらに向かって正対する机が置いてありオードより若干年齢がいってそうな中年の男性が椅子に腰掛けている。部屋に入るなり椅子から立ち上がりこちらに向かってくる。

 

背は結構高い。体つきはがっしりしていて魔力量も多い。感じられる圧から元狩人だと推定される。それもかなり高位だったんじゃないかと思われる。

 

「俺がセンタス支部長のレアンドルだ。お察しの通り元狩人で狩人名はレドという。お前さんと同じ七ツ星だった 」

 

上級狩人だったのか。どうりで圧が強いわけだ。

 

「レインだ。異国の出で最近この国に流れ着いたものだ。よろしく頼む 」

 

「まあ、立ち話もなんだからそこに座ってくれ 」

 

入り口側にローテーブルを挟んで二人掛けが向かい合って並んでいる。そこに向かい合って座る。

 

「それでラディフマタル森林について聞きたいんだったか。ギルド本部からも変わった上級狩人がこちらに来るってことは聞いていたんだがまさか本当に来るとはな、、、 」

 

「本部からか、、、。ある程度注目されているってことか 」

 

「まあ上級狩人ならギルドとしても動向は把握(はあく)しておきたいものだろう。俺の現役のときもそうだったしこの立場になってからは俺が気にする番になった 」

 

「そういうものか。それで魔境について聞きたいのだが 」

 

「ああ、そうだったな。あそこはそこまで知名度は高くないが知っている人間にはやっかいな場所と思われている。ギルド本部でもそう聞いていると思うがどうだ?」

 

「ああ、やっかいだと聞いたから狩り場に選んだ 」

 

「実態は少し違っていてな。俺の知る限りだとすぐ近くにある村には表層の魔物ぐらいしか出た試しがない 」

 

「では狩りにいく必要はないってことか? 」

 

「いや、そうじゃない。村には出てこないが表層には中層の魔物が、中層には深層の魔物が結構な頻度(ひんど)ででてくる。理由はわからないがな。そうなると中級狩人や初級の狩人、とりわけ免許取り立ての初心者がやられる可能性が高くなる。そこで三ツ星程度の狩人で組を作って表層で狩りをするような体制にしたわけだ 」

 

「なるほど。それが功を奏して死人が出なくなったと言うことか 」

 

「そうだ。組を作れば初級狩人でも中級下位の魔物ぐらいなら狩れるしな。中級中位でも場合によっては狩れるしそうでなくても逃げるぐらいなら出来る。だがそれでも狩り場としての魅力には欠ける。

 

一ツ星の訓練場所には使えないし中級狩人は居付けないしな。周辺の狩り場も大きく巻き込んで順繰(じゅんぐ)りに狩り場を融通(ゆうづう)して何とかやっているのが現状だ 」

 

「それを俺がなんとかできるかもしれないと、、、」

 

「話が早いな。そういった期待もある。上級の魔物を間引くだけでも今後やりやすくなるかもしれないし、原因が判明するかもしれない 」

 

「結果を確約することは出来ないがな 」

 

「それはわかっている。今でも十分と言えば十分な状況だ。あの魔境は他の魔境と違って異変は起こらないからな。村や町に中級程度の魔物が降りてきたり、大異変が起こって上級の魔物が降りてくることもない。大きな利益が見込みづらいってだけで贅沢はいってられねぇよ 」

 

「まあ、とりあえず上級の魔物を狩っていればいいってことか 」

 

「そうだな。あの村、トラス村って言うんだが、そういう事情があって解体場はそれほど充実していない。だがなにか面白いもんでも狩ったら優先的に解体師を回すから安心してくれ。それとあの魔境は道も拠点も整備されていない。昔に作った道の(あと)は今でも残っているだろうからそれを見つければ多少運搬しやすくなるはずだ 」

 

話が終わるとレドはローテーブルの上の資料を勧めてくる。

 

「あの魔境に関する資料だ。王都にあるものとかなり重複(ちょうふく)するだろうが狩人の書いた走り書きなんかもある。正式じゃないのは本部にはいかないからな。役に立つかもしれないから全部を用意しておいた。眉唾(まゆつば)な情報もあるがないよりはましだろう。読み終わったらそのまま置いといてくれていい 」

 

噂程度の情報もあるのか。面白そうだな。ありがたく読ませてもらおう。

 

「感謝する 」

 

「おう、俺は別の仕事に行く 」

 

レドが部屋から出て行くのを見送ると早速資料に目を通す。やはり大半はギルド本部の資料と同じものだ。

 

しかしかなり古い資料や狩人が雑にメモを取ったような生々しい資料もありなんだか冒険心をくすぐられる。王都で資料を見たときに気になったことが狩人のメモ書きにも書かれている。

 

果たして俺の予感が当たるのか、、、

 

資料を見終わると整えて置いておく。部屋を出て受付に行くと謝辞(しゃじ)を伝えて泊まれる宿を聞く。食事付きの宿に行き部屋を確保すると早めに食事を済ませ部屋で日課のトレーニングをして眠りに就く。

 

翌朝、宿で朝食を取った後、トラス村に行き村にあるギルドの出張所を訪れる。丸太を組み上げて頑丈な塀で囲まれた村にあってなお頑強に固めた建物はギルドの精神を感じさせる。

 

なかで地図を見ながら話を聞き狩り場を相談する。なるべく中級中位から上位の魔物を狩って欲しいと要望を伝えられたのでまずは自身の訓練も兼ねてそのあたりの魔物を狙っていくことにする。

 

レドの話にあった昔に整備されたていた道は表層部分では途中まで生きていると聞いたのでそこから魔境に侵入していく。ある程度進むと植物で(ふさ)がれていたりするので土魔術や刀を駆使して切り開いていく。

 

おそらく中層に達したであろうところまで来たので昼食にする。面倒だったので亜空間の中でパンや野菜、チーズ、ハムを切ってサンドウィッチを作って食べる。物足りなかったのでリンゴを切って食べると少し休憩を取って作業を再開する。

 

日が暮れる前に作業を中断して野営の準備をする。テントを張り終えて夕食はどうしようかと考える。テント内で調理をするか外で調理をするか迷ったが肉を焼いて食べようと思うので外でやることにした。

 

土魔術で簡易的にかまどを作り上に網をのせて皿にその上にフライパンをのせる。暖まったら油をひいて味と香りの強いスパイスをまぶした薄切りの羊肉を焼いていく。

 

火が通ってきたら甘塩(あまじょ)っぱいソースと絡めて、焼き上がったらフライパンごと亜空間にしまい、切った生野菜の上にのせて亜空間内に置いておく。パンを焼いて作り置きの野菜スープをそえる。簡易テーブルの上にすべてをそろえて食事を開始する。

 

生野菜と一緒に羊の肉を頬張(ほおば)る。(くせ)の強い羊肉の味をスパイスの風味がうまみに変えてくれる。強めのソースの味も肉を食べやすくしてくれる。スパイスとソースの濃い味付けを生野菜が和らげ、シャキシャキした食感と清涼感を足してくれる。飲み込んだ後、パンをかじりスープを飲む。

 

平らげるまでそれを繰り返すとあらかじめ入れて置いたお茶を取り出して口に含む。紅茶ともウーロン茶とも違う良くわからないお茶だが適度な苦みと独特な風味があってうまい。お茶を飲みつつ使い終えた食器を亜空間にしまい他のものも片づけていく。

 

恐ろしく便利だな、亜空間

 

不明な部分も多いが屋外の環境で洗い物などの仕事を簡単に済ませることが出来る。あらかじめ用意しておけばいつでも温かい飲み物や食事をそのまま取り出して摂取することが出来る。

 

かゆいところに手が届くと言った万能ぶりだがこれに慣れすぎてしまうといつか人前で堂々と使用してしまわないか心配だ。

 

今は周りに人がいないことは確認済みだが少し使いすぎたかもしれない。自分の肉体を使うことを心がけなければ擬装(ぎそう)がいつの間にか()がれていることになると思わなければ。

 

作業が楽になるように道具の準備や開発、場合によっては魔術の修得も視野に入れておこう。

 

気がつけばあたりは暗くなってきていたので今日はもう寝ることにする。魔物を察知する仕掛けとかは用意していないし、近づけないような罠とかは張っていないが体を休めつつもコアは起きていられるので魔物が近づいてくればわかる。気にせず寝ることにした。ここも何とかするべきだろうか。

 

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翌朝、簡単に食事を取ってテントをしまい、作業の続きを開始する。昼食の時間よりも早い段階で元々あった道の終着点に来てしまった。

 

場所は中層にたどり着いて少しいったくらいだろうか。もっと進めようかとも思ったがこれ以上進むなら木を切り倒さなければ建設できそうにない。だいぶ面倒そうではある。

 

それに道が出来ることで魔物が村に行くことになるかもしれない。定期的に間引けるならいいがいつまでここにいるかわからないしな。搬送(はんそう)は面倒になりそうだがここまでか。

 

俺はそう見切りを付けると中層の奥の方に進んでいく。いよいよ狩りの始動だ。目的は中層上位の魔物にする。それを何体か狩ったら深層で狩りを始めることにしよう。

 

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そう思って中層の深部で数日、獲物を探しているが手がかりが見つからない。途中で珍しく雨が降ったのも影響しているのか? 少しは魔力の痕跡とかが残るかと思ったが目を凝らしても発見できない。

 

獣道(けものみち)とか草が倒れたり折れていたり(ふん)があったり抜け毛が落ちていたりとかそういう物的な証拠を集めてたどっていかないと無理かもしれない。やはり経験を積まなければ真に一流の狩人にはなれないものなのか。

 

最初にいた魔境では結構魔物に遭遇(そうぐう)していたんだけどな。魔物の密度の違いか、種類の違いか、コアの気配で寄ってきていただけなのか。

 

ウサギとかネズミの魔物は表層に限らずどこにでもいる。それを狙ってそれほど強くないオオカミの魔物とかも表層から中層を移動している。

 

そういった魔物は強い魔物の縄張りを避けて移動すると魔物の生態の本に書いてあった。それらの気配を感じないから縄張りには入っていると思うがどうだろうな。

 

相手より確実に弱いと判断されれば向こうから襲ってくるとも書いてあった。俺の強さを感じ取って避けているのだろうか。気配は消しているはずなんだが野生の勘というやつなのか。

 

考えても仕方がないので注意深く捜索を進める。草の生え方とか木の幹に傷がないかとか毛が付いていないかとか意識して見ていくとなんとなくだが(かす)かな違和感に気付けるようになってきた。

 

そういうものに気付いた状態で魔力視を行うと見えなかった魔力痕跡が見えてくることがある。やはり経験は重要か。

 

さらに二日ほど捜索を行うとついに相手の姿を目でとらえることができた。黒い毛並みのオオカミ型の魔物だ。大きさは体長1.5メートルほど、体高は1メートルとちょっとぐらいか。中級上位の魔物でレガル・ゼファというらしい。一匹でいるところを見ると群れから独り立ちした比較的若い雄といったところか。

 

こちらにはまだ気づいていないようだ。ただ鼻や耳がいいから気づかれるのも時間の問題か。偶然風下から接近する形になっている。この状態を利用したいところだが弓の様な遠距離武器は魔力が抜けていく関係でほぼ効かない。

 

どうやって攻めていこうか…

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