木の上で待っていると予想通りにヤツが姿を現す。
ゆうゆうと下を移動していく姿を見下ろし、タイミングをはかって飛び降りる。
手にした刀を首をめがけて振り下ろし、切りつける直前に魔力を込められるだけ込める。
ズシッとした重い手応えを押し切るように振り抜くと押し返されながらも下まで切ることが出来た。切り口から血が吹き出ると返り血を浴びないように後ろに飛び退く。
堅ってえな、、、
刀を持った手に若干しびれが走る。首を切断するつもりだったが隠密性を保つため魔力が十分でなかった。鱗が見た目より堅いことも影響したか、、、
しかし、一撃で仕留めることは出来なかったが出血はさせることが出来た。
俺はトカゲが傷を回復させるまで待つことにした。傷を回復させれば傷んだ素材が復元される。魔力の消費と出血をさせて弱らせてから素材に傷が付かないようにとどめを刺すことが大きな収入への定石だ。
黒狼のように最後は脳天への一撃にするか、、、
算段を立てていると十分に回復したようで魔力を練り上げてくる。
また土魔法か
足下を通り越して魔力線が延びていく。立っている位置の後ろの地面に魔力の集中を感じ前方に飛んでよけると、元いた場所に太い土の牙が突き刺さる。
瞬発力も威力も申し分ない一撃だ。魔力消費も少ない。ここの土を知り尽くしているのだろう。土の質も関係しているようだ。もちろん魔術回路の性能に
前方に飛んだ俺を待ち構えるように尻尾による一撃が襲う。全身をしならせての強烈な
―
それを読んでいた俺は土魔術を発動させて壁を作り出し受け止めようとする。
壁と尻尾が接触した瞬間、受けきれないと感じて上に受け流すように変化させて身を低くする。
土壁を破壊しながら薙ぎ払われる尻尾が頭上をかすめて通り過ぎる。予想より威力があるな。
相手は続けざまに土魔術を放ってくる。飛び退くと一瞬遅れて地面から土の牙が飛び出してくる。
モグラたたきの逆をやらされている気分だ、、、
さらに何回か避けていくといい加減にしろって思えてくる。
刀を
トカゲを中心にして円を描くように動きながら音響魔術を連続して放っていく。緩急と強弱を付けて変則的に攻撃して相手の魔力消費を狙う。
逆に防御で手一杯になり攻撃が止まった相手に攻撃を加えながら俺は近接攻撃に移ろうと徐々に接近していく。
また切りつけて出血を狙っていくか
あと数歩の距離まで近づくとトカゲは急に魔力を高め出した。
大技が来る予感に警戒して少し距離を開けると魔術が発動する。
トカゲを中心に地面に円を広げていくように魔力が広がっていきその一帯から硬質な土の
それを上に大きく
射程に入った瞬間に魔術を放つ。
―
落下しながら電撃を放つと途中で枝分かれして全身に降り注ぐ。電流は体の内部を焼き、血液を
形成された土の杭は魔力を失って崩れて周囲に土の山を作り出していく。トカゲから距離を取りその土の上に後退して様子を見る。
手応えは十分にあるがこれで死んでしまうと素材の価値は落ちる。どうなるか見ていると回復しだした。
まだ生きているか
残念なような良かったような気持ちを感じながら見守る。完全に回復するとこちらを向いて出方をうかがっているようだ。
お互いににらみ合いをしたまま空気が流れていくが先にトカゲの方が動き出す。
魔術で土を自身を
防御を固める気か?
地面に盛られた土の山となった相手に蹴りを放ってみる。すると山は粉々に吹き飛ぶ。意外にも全く固められていなかった土は周辺に散り散りに飛ばされていくが肝心の本体はない。
地面に潜ったのか、、、
逃げたのかとも思うが警戒をしておく。地中に魔力領域を広げてみると反応がある。
真下かっ!
地中からぐんぐんと迫ってくる反応に危険を感じて後ろに飛ぶ。次の瞬間に地面が爆発したかのように土が飛び散り大口を開けたヤツが飛び出てくる。
反撃しようとすると再び地中に潜って姿を消す。索敵のために再び地中に魔力領域を展開すると反応が遠ざかっていき索敵範囲内から消えてしまう。
どこから来る? 地表に出て襲いかかってくる場合もあるか、、、
地中だけでなく周辺も目視で警戒をする。しかし、一向に襲いかかってくる様子はない。
、、、こりゃ逃げたな
本気で逃げられたのは初めてな気がする。警戒をといて追跡に切り替えると地面に手を当てて魔力を流して
俺が土魔術の使い手なのが相手にとっての不幸だな。土魔術がなければ追跡はなかなかに難しいだろう。十分に逃げ切れた。
痕跡をたどりながら進んでいくと30分ほどで居場所を突き止めることが出来た。どうやらいくつか住む場所を確保しているらしく俺にはなじみのない場所だった。
まあ、そうするよな。俺だってそうする
ネズミとして巣穴を作っていた時期を思い出す。若干相手に共感を覚えつつ様子をうかがう。相手は警戒しているようで周囲をキョロキョロと見回している。すでに俺の気配を感じ取っているのかもしれない。
どうするか?
ダメージは十分に残っているはず。魔力もある程度は消耗しているはずだ。ここで一気にたたみかけたい。
背中に設置した水槽から水をすべて使い切るつもりで攻めよう。水魔術式を展開して魔力を限界まで練り上げる。相手はそれに気づいて逃げようとする。
逃げる背中に向けて水の触手を伸ばしていく。その速度を上げるために俺自身も相手に向かって全力で駆ける。
再び地面に潜られる前に触手を胴体に巻き付けて引き寄せる。引き寄せながら全身を
―複合術式、
巻き付いた水の内部で送り込んだ魔力の性質を変化させる。電荷を移動させてトカゲの体内に電流を起こしていく。
これなら防御しづらいはず、、、
狙い通り相手は体が
正面に回り込んで脳天に刀の切っ先を突き入れる。電流を流して脳組織を破壊してとどめを刺す。
結局このやり方が一番獲物の価値を落とさずに狩ることができるような気がする。
もっとも、技のバリエーションが増えていけばもっとうまい方法が見つかるのかもしれないが。
獲物の種類によっても変わってくるだろうし一筋縄ではいかないだろうな。そこが面白いところでもある。
さて、このトカゲを運べるようにしたいところだがでかいな…
せっかくきれいに仕留めたのでこのまま運びたいところだがなかなか難しそうだ。
持っている中で一番大きい布を敷いてそのうえに運んで尻尾と頭を向き合うように曲げてたたもうかと思ったがうまくまとまらないな。
考えた結果、細めの木を切って細長い角材を何本か作って心材にしてトカゲと一緒に布で簀巻きにする。ロープで縛って固定して棒状にする。尻尾の先は少しはみ出ているが何とか地面に擦らないように運ぶことが出来るだろう。
前回と同じように途中まで亜空間を利用して解体場に運んでいくと受け渡しをして物資を町や村で補給してまた魔境に戻る。
あと二、三体中級上位の魔物を狩ったら一度王都に戻るか。それから深層に挑戦しよう。
そう決めて中層での狩りを続けていく。
その後、三週間ほど掛けて獲物を二体狩ることに成功した。
黒狼が一体とバルテス・ウゼラムが一体だ。黒狼は最初に狩ったものより成熟した個体だったが二体目ともなると慣れてきたのか楽に狩れた印象だ。
バルテス・ウゼラムは火魔術を使う巨大なイノシシの魔物で爆発を多用してくるやっかいな魔物だった。自分の丈夫さに賭けての自分自身をも巻き込んだ爆発をしてくるせいでなかなかこちらから攻撃できなかった。
しかし、動き自体は単調で隙を突いて新魔術を脳天にたたき込むことで早期に決着を付けることが出来た。
王都を
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王都の自宅に帰ると郵便受けを確認する。何通か入っていた。送り主を確認すると一通はセリアからだった。他は公共料金や家賃の引き落としに関してのものだ。
ダイニングに移動してテーブルにつくとセリアからの手紙を開封する。
今度、机も用意しよう
今後書き物をすることなどを想像しつつ文面に目を通していくと狩猟免許取得に対する
もう一度魔境に行く前に会っておこうか
今後の予定を考えると今日はトレーニングをして寝るだけにしようと決める。
翌日、狩猟用も含めた食材の買い出しを行い、鉄を購入する。机と椅子も購入し配達をしてもらい即日受け取って寝室に設置した。
これで手紙を書くときなんかは人としての格好が付く…
もちろん合間合間にトレーニングをするのも忘れない。武器や防具もさらなる魔力順化に取り組んでいる。
深層がどれほどのものかわからないがあのドラゴン、アルグラントがこれ以上行くなって言うほどの領域だ。
あの頃よりだいぶ強くはなったはずだがあいつには全く歯が立たないだろう。流石にあいつより上はないと思うがあれを上限としてもその間のことを考えると正直撤退を視野に入れていなければならないと思う。
魔術の強化も図りたい。トカゲの魔石からは土魔法の魔術回路が入手できた。すでに持っている物と共通部分は多いがより性能を引き出すヒントは得られた。
バルテス・ウゼラムについても同様だな。メタン魔術を使用していたが熊よりも洗練された魔術で効果を限定して運用している感じだな。体の中にメタンを発生させてため込む器官も出来ていてどうやら発酵魔術と呼べるような術式も使用していたらしい。
人間がそれほどの魔力変異をするとは思えないからな。道具で
亜空間を使えばすぐにでも解決出来るのだが何でもそれに頼るのは良くない。携行用のガス缶はあるのでガス屋とかボンベとか作っているところとかはあるのだろう。今度ギルドに聞いてみるか。