機鋼神エイジャックス ー神石転生異世界記ー   作:井上斐呂

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第60話 祝の席 x 深層へ

自分の強化にはげみつつセリアの家を折を見て訪ねてみた。

 

すると夕方ぐらいなら仕事から帰って家にいると言うことなので城門が閉まらない程度の時間帯に改めて訪れてみる。

 

そこでもう少ししたら帰ってくると言うことなので家で待たせてもらうことになった。

 

この世界というかこの星、セナスは地球みたいに通信手段が充実しているわけではないから多少の不便はしょうがない。スマートボット(注)があれば齟齬(そご)のないやりとりが出来るのだが。自動的に会うタイミングを調整してくれるしな。

 

(注):画像認識と音声認識機能を持ったAI執事。ロボット型やイヤホン型、メガネ型などいくつもの形態がある。ジャックスファイト中は使用が禁止されている。

 

しばらく待っているとセリアが帰宅してきたようで魔力を感じる。その後もしばらくは呼ばれることがなく待合室にいるとジョエルさんが呼びに来た。

 

案内されて食堂に行くとそこには女性らしい(つや)やかなドレスを(まと)ったセリアが待っていた。

 

戦いの服か旅をするときの格好しか見たことがなかったので驚いてしまう。絶句して棒立ちになった俺にセリアから声がかかる。

 

「新たな上級狩猟者どのを敬意を持ってもてなしたいと思ってな。宴会用の盛装(せいそう)で着飾ってみたのだがどうだろう? 似合っているかな?」

 

「、、、似合っている、、、その、、、なんだ、あ~、綺麗だ。(はな)やかでそれでいて落ち着きがある 」

 

なぜが日本語が出てきそうになったのを抑えて必死に言葉を(つむ)ぐ。意味をなしているだろうか?

 

「ふふっ、、、。まんざらでもないようだな。安心したよ。こんな格好をしたのは何年ぶりかわからないぐらいだからな 」

 

(つや)っぽく笑うセリアにちょっとどきっとした。今更気がついたがうっすらと化粧をしているな。ただでさえ美人なのが更に()えるように装飾されている。メイドさんがしたのかな? セリアが自分で化粧をするイメージが浮かばない。

 

「それでは夕食にしよう 」

 

席につくと料理が運ばれてくる。食事をしながらお互いに近況についての報告をしあう。自然と俺の狩りについての話しになる。

 

「ほう。今はラディフマタル森林で狩りをしているのか。あそこは初級の狩人しかいないところだな。小さな領地で騎士団も手が回っていないようだ。王都騎士団もずいぶん前からあそこには派遣されなくなったと聞いている 」

 

「危険なところだと聞いて狩り場に選んだんだが実態は複雑なようだな。確かに強い魔物はいるが特別なものは今のところ感じてはいない。魔境についてそこまで詳しいわけじゃないが普通の魔境と大差はないように思う 」

 

「そうだな。魔境はそもそも何処(どこ)だろうと危険なものだしな。力の(およ)ぶうちは魔境でないとも言える。強ければどこでだって大丈夫だ。だが力を過信したらいつか痛い目をみることになる 」

 

狩りの話になると狩人の目になるな。女性らしい雰囲気は鳴りを(ひそ)めてピリピリしたオーラが出てくる。正直こちらの方が話しやすい。

 

「痛い目に遭ったことがあるのか? 」

 

「私が、、、ではないな。、、、ほら、一緒に葬式に出ただろう? ああいうことだ。それなりの数はああいったことに関わってきた 」

 

「ああ、事故に()うように死ぬことはどうしても()けられないな 」

 

「運が悪かった。そんなことはなんの(なぐさ)めにもならないな、死んでしまった場合はな。強い狩人は臆病なまでに慎重だ。死ぬような窮地(きゅうち)にあってなお生き残る為の策が残るように振る舞う。問題はそこに辿(たど)り着けるかどうかだ 」

 

「俺は、、、どうなんだろうな? 」

 

つい、口にでる。死のうとは思っていないが慎重かと考えたらあまり慎重じゃないように思える。この肉体は俺が作り出したものだ。心のどこかでまた作ればいいと考えているのかもしれない。

 

最悪コアの状態なら逃げられる。そんな考えがあってもおかしくはない。この体を作ったときはあんなに感動してたのにな… 我ながら現金なものだ。

 

「レイン。正直お前を利用しようとしていることを心苦しく思っている。危なっかしい性格をしているのは蛇との戦いでわかっていた。だがそういう人材が必要なのも確かだ。他に代えがたい特性でもある。もっと強くなって欲しいと思うのは私のわがままなんだろうな 」

 

自嘲(じちょう)気味(ぎみ)に笑ってグラスのワインを少し飲む。ワインでいいんだよな? そうにしか見えない。飲んだことはないけど。どう答えるべきかな。

 

「利用されているつもりはないな。俺はいつだって自分の意思で行動している。セリアがどう思おうと自分の都合を自分の責任で優先していくだろう。結果はどうであれセリアが気にすることじゃない 」

 

「そうかな? 」

 

いたずらっぽく笑ってこちらを見る。いつもの感じに戻ったな。アンニュイな感じよりこの方が落ち着く。

 

「そうだろう。、、、多分、な、、」

 

「ところでラディフマタル森林を狩り場に選んだ理由を聞いてもいいか? 」

 

「別にかまわない。王都からそれなりに近くて他の狩人があまりいないところがいいと考えたからだ 」

 

「危険な場所だからとも言っていたな。どうしてだ? 」

 

「、、、ギルドに恩を売っておきたいからな。信用を築いていく必要があると考えている。俺のような流れものが生きていくには必要なものだろう? 」

 

本当は異国の人間どころか異世界から来た謎生物だからな… 信頼関係があるなら正体がばれてもなんとかなるとは考えているが果たしてどうだろう?

 

外来生物は絶対に入れてはいけないなんてルールがあるなら無理だろうけれど…

 

少し甘いのか、俺は…

 

「、、、そうか。それほど気にしなくてもいいと思うんだがな。他の国の狩人が渡ってくるのは珍しいことじゃない。この国の気風として強ければ尊敬されるものだ。別に差別を受けたわけじゃないだろう? 」

 

「それはそうなんだが、、、 」

 

差別を受けるどころかずいぶんと良くしてもらっているように思う。それは単純に俺が人間として強力で有益であるということに由来しているのはわかっているつもりだが感謝の念はある。

 

「まあ、俺がそうしたいと思っているだけだ。なぜそうしたいと思っているのかは俺にも確かなことはわからない 」

 

本当のことを話せない以上はあまり(みの)りのある会話にならないだろう。それに、これ以上続けるのは危険でもある。話を切り上げるとセリアはそれ以上聞いてこなかった。納得してくれているといいのだが。

 

そのあとは他愛もない話をして食事会は過ぎていった。城門がすでに閉じているからと泊まっていくことになる。泊まる部屋は当然のように前回と同じ部屋だ。

 

この部屋で寝るのも久しぶりに思う。よくよく考えてみると新しく借りた現在の家もまだそんなに長いこと過ごしていないな。

 

王都に来てからも一番長く居るのが森の中であることを考えるとつくづく魔境に(えん)があるものだと思う。最初にいたのも魔境だしな。

 

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翌朝はセリアと一緒に朝食を取って自宅に帰る。むこうは普通に仕事にでかけた。勤め人なら当然のことだが自由人のこちらとしてはなんだか申し訳ない気持ちにもなる。

 

一応予定はあるのだがいつでも変更可能な気楽な身分だ。しかし、その分不安定ではあるか。

 

まだ報酬は受け取っていないがその額しだいでは狩りの頻度(ひんど)を変える必要が出てくるだろう。命がけの仕事ではある。決して気楽というわけでもないか。

 

自宅に着くととりあえずトレーニングをしてからギルドにおもむく。自分自身の装備について相談をしてガスを扱っている店の情報を聞く。そうしたやりとりの中で職員から報酬をここで受け取れると言う話があった。

 

てっきり魔境を管理する支部でしか受け取れないと思い込んでいたのでそれは盲点だった。

 

それならばとここで手続きを行う。組合員証を提示してしばらく待っていると呼ばれて明細書を受け取る。

 

4体分まとめて総支給は400万エスクほど。平均して1体当たり100万か。中級上位だとそれくらいか。討伐依頼ってこともあったが上位の魔物であるあのコウモリはやはり別格か。

 

税金など諸々(もろもろ)が引かれた金額は300万を少し切るぐらい。経費はいろいろかかっているんだけど年末調整とかあるのかな?

 

そしてその後、ガス屋に行き液化メタンの入ったガスボンベを購入する。

 

これに自作のアタッチメントを作成して装着すれば火魔術が使いやすくなるな

 

帰りに手芸店のような店に寄りゴム素材を購入する。家に戻ってくると早速制作を開始する。ガスボンベをホールドする部分にグリップを付けて持ちやすくする。グリップを握るとロックが外れるようにして親指でボタンを押すとガスが噴出される仕組みだ。

 

問題があるとすれば雷魔術を使用したときに引火しないかということだ。

 

魔術の雷は普通の雷と異なり自分の意思である程度方向を制御できる。おそらく引火することはないと思うが制御をミスることもあり得なくはない。

 

使用時はボンベが絶縁されるようにゴムをホルダーの内側に貼り付けておこう。

 

実際に使用しなければ効果の程はわからないがなかなかいいものが出来たのではなかろうか。自画自賛してみる。

 

獲物の損傷を防ぐため火魔術で仕留めることは考えづらいが戦局を(くつがえ)すような使い方はできると考えている。戦術を考えるのはやはり楽しい。新しいものを作るとわくわくするな。

 

その後はトレーニングを中心とした生活を続けていく。

 

空いた時間にもっと普通の人間に添った生活をしようと冷蔵庫などの電化製品を購入したり普通に料理をして洗い物なんかをしたりする。

 

亜空間に頼らずに生活をしているうちにとうとう“雷豪丸”の性能が5等級クラスになった。

 

狩りをしようか…

 

鉄の購入はストックが500キロを越えたぐらいでやめている。そろそろロボットを作ろうかとも思うが先に狩人としての実績を作っておきたい。

 

ふたたびラディフマタル森林へ出発することにした。

 

 

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