移動時間と速度から考えると奥地までここから100キロメートル無いぐらいか。やはり魔境は広いな。
と言っても夜が明けたら町に行って報告書を書いて提出して王都に戻る、それだけか。
王都に戻った後が思いつかないな。しばらく狩りはいいかと思うのだが王都でやりたいことが思いつかない。だらだらするか。
やることがなくなったのでステルスバイパーの分析でもするか。
体の構造で特徴的なのはなんと言っても
真皮の中に四色の色素を溜める袋があり、そこから鱗側に色が供給されて周囲の景色をディスプレイのように鱗に投影させて周りの風景に溶け込んでいくのだろう。
夜だからその能力は使えなかったのだが…
黒色の色素には赤外線を吸収する性質もあるのか。真っ黒に見えていたのは可視光以外を吸収していたからだと思うが実際も黒かったらしい。
鱗の間にいくつか皮脂腺のような器官がありそこから電磁波などを吸収する特殊な油が出てくる構造になっている。魔力で操作して全身に広げるのだろう。
いろいろ視覚をだますための構造が備わっている。魔力変異でありながら魔術だけに頼らない自然の知恵と言うべきか、脅威のメカニズムだな。
愛機に生物の構造を取り入れるバイオミメティクスが流行したことを思い出すな。結局その試みはたいした成果を生み出すことなくブームが
俺もいろいろと
こちらに来て初めてその時学んだことが役に立っているな。皮肉と言うべきか怪我の功名と言うべきか、あるいは失敗は成功の元と言うやつか。
次は魔石の情報を調べてみる。魔力量はどんなもんだ?
最大魔力量 40058
4万超えか。流石は深層の魔物と言ったところか。俺が毒の効かない体じゃなかったら危なかったかも知れないな。気づかないうちに毒を注入されると
魔術の精密さもかなりのものだな。攻撃するための魔術はあまり練られていないが身を隠すための魔術はあのコウモリより完成度が高いな。
一応綺麗な状態で狩ることができたがこれはギルドにはまだ出さないことにするか。
あの鳥の報告書だけで手一杯になるだろう。必ずしも報告書を出さなければならないわけではないが頼まれたら断りづらいしな。
いろいろ調べたり考えていたりしたら外が明るくなり始める。しかし、疲労を考慮して長めに休みを取ることにして体をそのまま寝かせておいた。
そうしていると部屋の中もだいぶ明るくなってくる。
日も完全に昇ったしそろそろ町へ行こうか…
朝食を食べて荷物をまとめると町に向かう。しばらくここに来ることもないと考えると名残惜しいような気になるから不思議だ。さっさと王都に帰りたいと思っているのにな。
町まで来るとギルド支部に行き、巨大怪鳥の羽根をサンプルとして提供して報告書を書くことを伝えるといろいろ用紙などをもらい受ける。
ホテルに泊まり机に向かうと観察した記憶を呼び起こしていく。情報を整理して分類しなるべく詳細がわかりやすいようにまとめる。
色を付けた絵なども付けて使う魔術やその威力、規模、予備動作などの情報を書き加えていく。
自分で納得がいくまで書き連ね、とうとう完成した時には二日が経っていた。改めて報告書にチェックと入れていると大きな問題に気づく。
これ、詳しすぎないか…
どうやってこの情報を得たのか? あり得ないぐらいに詳細が過ぎるのではないか?
この報告書を読んだ人間はそんな疑問を持つことになるだろう。
これはいかんな…
再びギルドで用紙をもらってくると情報を削って推測部分を増量した劣化版を作り出す。
この劣化版でも少々やり過ぎな気がしないでもないがまあ何とかなるだろう。企業秘密だから話せないの一点張りで押し通せると思う。こちらは七ツ星の上級狩人だ。
都合三日かかった報告書を提出して王都に出発する。
てっきり熊の件とか呼び出しを食らうと思っていたが何もなかったな。レド支部長には会わなかったがまあ狩人ならそういうものか。
放任主義というかそうせざるを得ないとか…
王都の自宅に帰還してからまずギルド本部に行き熊の討伐報酬を確認する。
明細に目を通してみるとちょっと驚くような金額だった。
総額が3700万ぐらいで
このぐらいになると報酬が
十分な額が貯まっているので本屋で本を買い集めて生活の合間にいろいろと学習していく。高めの専門的な本にも挑戦しつつ日々を過ごしていく。
数週間後、再びギルド本部に行って提出した報告書の審査がどのぐらい進んでいるか確認してみる。
どうやらあまり進んではいないらしい。確認に現地に行けるわけでもなく物的証拠は提供した羽根だけ。一応本物であることは確認が取れているそうだが審理は難航しているらしい。
そればかりをやっているわけでもないので数年はかかるかもしれないと言う話だった。いつか直接話を聞かせてもらいに連絡が行くかも知れないと言うことも聞いた。
それは面倒だな…
断ってくれてかまわないと言われたが悩むところだ。そのときになってみないとわからないものではあるが… ちょうど断るのに都合の良い理由があればいいんだけどな…
提供するサンプルを追加してギルドを後にした。この件については放置だ。
さて、これからどうするか…
何をするか考えながら家に戻る。
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(別視点)
狩猟ギルド本部に珍しい来訪者があった。
外見からは14,5歳ぐらいと推測される。魔力変異と思われる暗めの桜色をした髪を伸ばして左右に分けて垂らしている。幼さの残る顔立ちは性別の判断を難しくさせるが髪型から女性であると推測される。
子供が狩猟ギルドに一人で来るなんてことはありえないことではあるが彼女が着ている魔術学院のローブは教授のもの、それも最高位に位置する立場のものである。
一般の人間には身分はわからないものの
感じる魔力量により建物に入ってくる前から
(まさか賢者、、、シャーリーン・シス・プラムゼフゼリアか、、、 )
プラムゼフゼリアの部分は職業性と呼ばれるものでプラムが出身地もしくは職業登録を行った場所を表し、ゼフゼリアが職業を表す。この場合は王都プラニス出身の最高位の学者という意味になる。
話には登場しても普通、会うことがない人物の登場に職員は内心で沸き立つが表面上は特に反応を表さない。
「ちょっといいかしら? 」
「は、はい。なんでしょうか? 」
そんな職員達の内心を知ってか知らずかシャーリーンは受付の前に立ち書類を見せる。
「この報告書を書いた狩猟者と連絡を取りたいのだけれど情報を教えてくれるかしら?」